尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

外国人政策の抜本的改革が必要だ

2021年05月25日 22時48分51秒 | 社会(世の中の出来事)
 政府が進めていた「入管法」(出入国管理法)の「改悪」は、政府が今国会での成立を断念した。これについては5月11日に「入管法「改正」案に反対するー反人権的な入管行政」を書いた。その時点で本当に成立を阻止できるかどうかは判らなかったが、可能性はあると思っていた。それにしても衆議院は通過してしまうのかと思っていたが、緊急事態宣言が長引き内閣支持率が大きく下がる状況の中で、もう「強行採決」することは出来なかったのだろう。

 今回の「改正」は従来の政策を完全にひっくり返すもので、とても認めるわけにはいかないものだった。だから成立断念は当然だと思うが、それで終わりではない。衆院選が終わって(再び自公連立政権が過半数を確保し)、2022年の通常国会で成立させるということになってはいけない。「外国人政策」には抜本的見直しが必要だ。

 「外国人問題」は「現実を見て考える」必要がある。現時点で最大の問題は、コロナ禍で外国人の多くが困窮していることだと思う。仕事が無くなり、故国に帰ることもならず、何とか仲間同士で助け合っているという。クルド人が集住している埼玉県川口市では、市独自の対策では限界があるという(朝日新聞5.23)。困窮する外国人支援のための「テント村」も開かれた。(そもそもトルコに帰れないクルド人に「難民認定」しない日本政府に大きな問題がある。安倍前首相がエルドアン大統領と親しく、トルコ政府の主張を優先しがちな実態がある。)
(川口市のテント村)
 5.23付朝日新聞には長野県川上村のことも出ている。見出しを見ると「失踪実習生に就労許可を 村長の訴え」「人手不足 国は現実を見て」とある。川上村は「川上犬」の里だが、「日本一のレタス産地」として知られている。その収穫作業は外国人の「実習生」に頼ってきた。だがコロナ禍で今年は「実習生」は入国出来なかった。体力的にも大変な作業で、日本人の働き手は少ないという。「(失踪した)実習生本人に過失がないような例も多い。働きたい外国人と、働いてもらいたい農家をうまくマッチングできれば、誰にも迷惑はかからないのではないでしょうか。」
 (川上村とレタス収穫作業)
 今回見ていると、「不法滞在外国人」は全員帰国させろというような書き込みをする人がネット上には多くいた。確かに、観光ビザで来て、実際は「就労」して、期限が切れても滞在している外国人は「不法滞在」だ。しかし、誰も雇わなければ、そのような人々は日本にいられない。外国人に働いて貰うしか働き手が確保出来ない職場があるから、外国人が働いているのである。「日本いい国」なことを保守派はよく言うが、「いい国」だったら日本を目指す外国人が出て来るのは当然だろう。「グローバル社会」で完全にシャットアウトは出来ない。
 
 もちろん外国人の中には日本で違法行為を行う人もいるだろう。だが母国に残す家族のために少しでも働きたいと思う外国人が圧倒的多数だと思う。ちゃんと働く場を用意すれば、税金も払って年金や保険料も負担する。その方がいいことが多いのではないか。ドイツは労働力不足を補うためトルコから移民を受け入れた。その結果確かに問題もあると思うが、ファイザー社のワクチンを開発したビオンテック社はトルコ系ドイツ人が作った会社だった。それだけで世界の大きな貢献をしたことになるではないか。長い目で見れば、そういうことも起こるのである。 
(ウィシュマ・サンダマリさんの写真を掲げて名古屋入管に向かう遺族)
 そのワクチンは「全国民に無料接種」とうたっている。ということは外国人は除外されるのか。「外国人登録」をしている人には接種券が届くのだろうが、そもそも滞在が確認出来ない人は置いていかれる可能性が高い。それは住民登録がないホームレスも同じだろう。また刑務所や拘置所にいる人はどうなるのか。外国人や刑務所の人権状況がその国の水準を示すと言われる。気になるところである。そして「成立断念」をいいことに、スリランカ人ウィシュマ・サンダマリさんの死亡問題がうやむやにされてはいけない。
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