3月16日付で「中教審、「教員免許更新制」を抜本的見直し」という記事を書いた。その後中教審には「教員免許更新制小委員会」が置かれ、すでに2回の審議が進んでいる。その進行状況を見てみたいが、その前に今年になっても「うっかり失効」が相次いでいる。その実情を先に紹介しておきたい。(この「うっかり失効」という表現には違和感を感じるが、マスコミでもその表現が定着しているようなので、ここでも使うことにする。)
(神戸市のケース)
特に神戸市で7人が一挙に失効したケース(上記画像)には驚くしかない。教員免許更新制は2011年度末から実施されたので、すでに10年が経過した。35歳、45歳、55歳で更新だから、45歳、55歳の該当者はすでに2回目のはずだ。前回を経験したのに、今回「うっかり」したのはどういうことか。(なお、年齢は都合がある場合、申請により延期ができる。産育休、病休など。)
それは「コロナ禍」と「管理職」のケースである。2020年度に関しては新型コロナウイルス問題で、大学等の対面での更新講習はほとんど出来なかっただろう。また春先の全国一斉休校のため、ほとんどの学校で夏休みを短くした。夏休み中に更新講習があることが多いから、参加したくても無理だった。そこでウェブ講習を受講することも多かっただろうが、また申請により更新時期を延期する措置も取られた。一人はその延期申請を失念したということだ。
「管理職」というのは、10年前は更新講習を受けたのに、その後講習を受けなくてもいい立場になった場合である。今回は「主幹教諭」が2名、「校長」が1名、「指導主事」が1名失効した。主幹教諭は管理職じゃないけれど、校内で指導的立場にあるから受講しなくてもいいとされているので、免許の更新に関しては管理職と同じである。しかし、更新講習を受講する義務がないだけで、更新免除の手続きは必要なのである。それを忘れたというわけだ。
一方、30代の小学校教員2人に関しては、「更新講習を受講したが、申請手続きを失念」という今までにも多くあったケースである。運転免許を考えると、視力検査を受け、講習を受講すれば、その日のうちに新しい免許証が交付される。教員免許更新制も同じようなものと思うと、それが全然違う。運転免許は受講するだけでいい(70歳以上の高齢者講習を除く)、教員免許更新講習は「合格」する必要がある。その後に教育委員会に更新の申請をしなくてはいけない。運転免許も、講習を受講した後で各個人が公安委員会に改めて更新を申請する仕組みになっていたら、「うっかり忘れる」人が大量に生まれるに違いない。
(失効すると官報に掲載)
神戸市のケースは5月17日付東京新聞に出ているが、他にも4月6日付朝日新聞によれば、熊本市の小学校の主幹教諭、埼玉県の特別支援学校の臨時教員のケースが報道されている。それぞれ教員を続ける意欲があったのに、「うっかり」で公務員の地位そのものを失った。このような失効教員の統計はないと言うが、2020年3月末に失効し6月末までに再取得した人は、幼稚園12人、小学校1人、高校11人の計24人だという。その後の人生が大きく狂ってしまうし、勤務校でも大変な損失になる。
これは大変に大きな人権問題だと思うけど、なぜ弁護士会や野党は追求しないのか。教育職員免許法では、刑事裁判で禁錮以上の刑が確定したときや懲戒免職処分を受けたときには教員免許が失効するとしている。かつては教職員組合によるストライキが刑事裁判になったこともあった。そのような場合でも免許失効するのはおかしいと思うが、それはそれとして免許が失効するには何か具体的な「事件」があるのが普通だ。
都教委のホームページには教員の処分ケースが掲載されている。3月に発表された例では、電車内でスカートの下からスマホの動画撮影をしたとか、店で2万8千円ほどの万引きをしたなどのケースで「停職6ヶ月」の処分になっている。刑事裁判にならなかったのだろうし、本人は辞表を提出し退職したという事情もあったのだろう。事情は全然知らないけれど、少なくとも「更新手続きを失念」したことよりも大問題だろう。しかし、「うっかり失効」した方が重い結果になるのだ。「法の下の平等」に反していると思うけれど、どうなんだろうか。
(神戸市のケース)
特に神戸市で7人が一挙に失効したケース(上記画像)には驚くしかない。教員免許更新制は2011年度末から実施されたので、すでに10年が経過した。35歳、45歳、55歳で更新だから、45歳、55歳の該当者はすでに2回目のはずだ。前回を経験したのに、今回「うっかり」したのはどういうことか。(なお、年齢は都合がある場合、申請により延期ができる。産育休、病休など。)
それは「コロナ禍」と「管理職」のケースである。2020年度に関しては新型コロナウイルス問題で、大学等の対面での更新講習はほとんど出来なかっただろう。また春先の全国一斉休校のため、ほとんどの学校で夏休みを短くした。夏休み中に更新講習があることが多いから、参加したくても無理だった。そこでウェブ講習を受講することも多かっただろうが、また申請により更新時期を延期する措置も取られた。一人はその延期申請を失念したということだ。
「管理職」というのは、10年前は更新講習を受けたのに、その後講習を受けなくてもいい立場になった場合である。今回は「主幹教諭」が2名、「校長」が1名、「指導主事」が1名失効した。主幹教諭は管理職じゃないけれど、校内で指導的立場にあるから受講しなくてもいいとされているので、免許の更新に関しては管理職と同じである。しかし、更新講習を受講する義務がないだけで、更新免除の手続きは必要なのである。それを忘れたというわけだ。
一方、30代の小学校教員2人に関しては、「更新講習を受講したが、申請手続きを失念」という今までにも多くあったケースである。運転免許を考えると、視力検査を受け、講習を受講すれば、その日のうちに新しい免許証が交付される。教員免許更新制も同じようなものと思うと、それが全然違う。運転免許は受講するだけでいい(70歳以上の高齢者講習を除く)、教員免許更新講習は「合格」する必要がある。その後に教育委員会に更新の申請をしなくてはいけない。運転免許も、講習を受講した後で各個人が公安委員会に改めて更新を申請する仕組みになっていたら、「うっかり忘れる」人が大量に生まれるに違いない。
(失効すると官報に掲載)
神戸市のケースは5月17日付東京新聞に出ているが、他にも4月6日付朝日新聞によれば、熊本市の小学校の主幹教諭、埼玉県の特別支援学校の臨時教員のケースが報道されている。それぞれ教員を続ける意欲があったのに、「うっかり」で公務員の地位そのものを失った。このような失効教員の統計はないと言うが、2020年3月末に失効し6月末までに再取得した人は、幼稚園12人、小学校1人、高校11人の計24人だという。その後の人生が大きく狂ってしまうし、勤務校でも大変な損失になる。
これは大変に大きな人権問題だと思うけど、なぜ弁護士会や野党は追求しないのか。教育職員免許法では、刑事裁判で禁錮以上の刑が確定したときや懲戒免職処分を受けたときには教員免許が失効するとしている。かつては教職員組合によるストライキが刑事裁判になったこともあった。そのような場合でも免許失効するのはおかしいと思うが、それはそれとして免許が失効するには何か具体的な「事件」があるのが普通だ。
都教委のホームページには教員の処分ケースが掲載されている。3月に発表された例では、電車内でスカートの下からスマホの動画撮影をしたとか、店で2万8千円ほどの万引きをしたなどのケースで「停職6ヶ月」の処分になっている。刑事裁判にならなかったのだろうし、本人は辞表を提出し退職したという事情もあったのだろう。事情は全然知らないけれど、少なくとも「更新手続きを失念」したことよりも大問題だろう。しかし、「うっかり失効」した方が重い結果になるのだ。「法の下の平等」に反していると思うけれど、どうなんだろうか。