尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

安倍内閣=「中高一貫校政権」論

2014年02月20日 22時40分41秒 |  〃  (安倍政権論)
 安倍晋三首相は成蹊大学を出ているわけだが、では中学や高校はどこを出ているのだろうか。公式ホームページの経歴を見ても、それは出ていない。自民党有力議員のホームページを見ても、高校以前の学歴が載っていない人が多い。それは何故かは後で考えるとして、ウィキペディアを見てみると、成蹊小、成蹊中、成蹊高を経て成蹊大学を卒業と出ている。(ついでに書けば、その後南カリフォルニア大学に入学したが中退とある。)おーっと、この人は大学受験どころか、高校受験、それどころか中学受験すら経験していないのか。まさか小学校に入る時に自分で決めたわけはないから、親が決めたルートに沿って大学まで行き、一回も外部受験しなかったのか。一回も公立学校を経験していないのか。それなのに、今の教育はおかしいとか、道徳を教科にするとか、教育委員会制度を変えるとか、はたまた教員組合がどうのとか言って来たのか。

 では、麻生太郎副首相はどこの学校を出ているか。こちらも公式ホームページにはないので、ウィキペディアを見ると、麻生家の作った麻生塾小学校なるところに小学校3年まで在籍、その後上京し、学習院初等科に編入とある。その後の中学、高校の記載はないけど、学習院大学政経学部卒業とあるから、ずっと学習院だったのだろう。なんと首相、副首相ともに、一回も公立学校に通った経験がないのか。大学は私立も多いけど、世の中全体としては小中高は公立学校の方がずっと多い。小学校から大学まですべて私立という人は、日本でどのくらいいるだろうか。ものすごい少数だと思うが。

 では他の自民党有力者を見てみようかと思い、調べていくと…。谷垣禎一法相(前総裁)は東大法学部なので、首相になっていれば久方ぶりの東大宰相だったのだが、中学高校は私立の麻布学園。岸田文雄外相は早稲田大学だが、開成高校卒業とある。ここも中高一貫校。石原伸晃環境相は慶應義塾中、高、大学と中学から慶應一筋。石破茂幹事長はウィキペディアには慶應高校、慶應大学とある。小中はどこかは出ていないが、高校と大学はつながっていた。以上、6人すべて二世政治家。麻生、石原を除き、直接親の地盤を受け継いでいる。

 ちょっと不思議に思うのだが、安倍晋三は山口4区、麻生太郎は福岡8区、谷垣禎一は京都5区、石破茂は鳥取1区…と西日本の各地から選出されている衆議院議員である。しかし、その選挙区は父親(またはそれ以前)の出身地であり、父が東京に地歩を築いたために子どもは東京の有名私立学校に通ったわけである。これでホームページに大学しか載っていない理由が判った。地元の有名進学高校を出ていれば、同窓会組織もしっかりしていて、選挙対策上ものすごく有利なはずである。だから書いてるはず。大学は東京の有名大学を出ている方が有利な情報である。かくして、大学しか書いてない人が多いわけだ。

 でも、これは一体何なのだと思わないだろうか?「新しい封建制度」ではないか。祖先の功で地方に領地を与えられ、選挙の時には「参勤交代」のように選挙区に帰る。でもベースは「江戸定府」であって、子どもは東京で教育を受ける。特権階級のように、ほとんど受験もせず大学まで出る。そして「親の領地」を引き継いで支配していく。そんな時代になっていたのである。

 最近の総理経験者の子どもで、親の地盤を引き継いで衆議院議員となっている人の学歴を見ておこう。橋本龍太郎を引き継いだ橋本岳は、関西学園岡山中学、高校を経て慶応大学。小渕恵三を引き継いだ小渕優子は、成城学園中学、高校、大学。小泉純一郎を引き継いだ小泉進次郎は、関東学院六浦小から関東学院中、高、大学。皆、中高一貫校である。(福田康夫を引き継いだ福田達夫は慶應大学卒業ということしか判らない。)これらの経歴を見ると、総理となるほどの政治家は、後継者を私立の中高一貫校に進学させるという「暗黙のルール」があるのではないかと思うほどだ。さすがに自民党全員を調べる余裕はなかったけれど、内閣で言えば林芳正農水相など二世政治家であるが、下関西高から東大法学部という「昔ながらの学歴」という政治家もいる。(ちなみに林農水相のホームページには小学校からの学歴が掲載されている。)そういう人も多いのだが、以上で見たように現政権の有力政治家に「中高一貫教育を受けた人」が圧倒的に多いことは事実なのである。

 この事実はなんだか考えさせられることが多い。政治家なんだったら、選挙区の学校とまでは言わなくとも、公的な予算で運営されている公立学校に自分の子どもを通わせるべきではないのか。だけど、全く(またはほとんど)公立学校という経験がないのに、何故か公立教育に関する問題点だけは声高に語るのである。今は教育委員会制度をめぐる議論がされているが、私立学校は教育委員会の管轄下にはない。だから自分の実際の学校体験では実感がないはずなのである。さて、今回は事実の提示を中心にして、そのことから考えられる問題については次回以後に書くことにする。
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