人事戦略研究所

人事戦略研究所の紹介と情報の発信をするブログ

人事で会社が変わるについて

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
人事で会社が変わるは平成17年4月から平成18年3月まで日本商工会議所の依頼で執筆した物です。
日本商工会議所からの要望は、「中小企業の中でユニークな人事制度を実施している実例を紹介してほしい。」
というものでした。
人事で会社が変わるは、日本商工会議所から全国の商工会議所へ会議所ニュース原稿として配信され、
各地の会議所ニュースに掲載されました。
掲載された会議所の一覧はここをクリックしてください。

平成17年4月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
新卒採用で会社が変わる

 中小企業にとって新卒者の採用はとても勇気の要ることです。しかし、新卒者の採用を
きっかけに社内が変わった会社も多くあります。
 一例を紹介しましょう。宿泊業のA社はそれまで業界の経験者ばかりを採用してきまし
た。社員の入れ替わりが頻繁で会社としては常に即戦力を求めていたのでした。中途採用
者に困ることは少なかったのですが、それはそれで悩みもありました。サービスを提供し
てその対価をいただく宿泊業なのにそのサービスの質にばらつきがあったのです。中途採
用者ばかりで構成された社員はそれぞれ自分が過去に学んだサービスの方法をお客様に提
供していました。会社は統一したサービスを提供するようにと社員に呼びかけるのですが、
現場までその声が反映されていません。
 しかし、新卒者を採用することでこれが解消していきました。新卒者を採用するに当たっ
て会社が現場の責任者に出した指示は次のようなものでした。「会社の業績は好調に推移
している。もちろん現場も忙しい。その中で新卒者を採用するのだから3ヶ月でお客様の
前に立てる社員に育てて欲しい。」現場の責任者はその指示を受けて考えました。「これ
までの個人の能力に頼った仕事のやり方には限界がある。仕事を短期間で覚えさせるには
統一した指導方法が必要だ。」そう結論づけると、各部署の責任者を集めて指導マニュア
ルの作成に取り掛かりました。この中で、これまで統一感のなかったサービスの方法が見
直され、A社のサービスを作り出すことができました。そしてそれは現場の社員によって
作成された物であったので素早く社内に行き渡り、本当の意味でA社の統一サービスとし
てしっかり根づきました。

平成17年5月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
昇給の仕方で会社が変わる
 賃金は社員にとって生活の糧であると同時に、自分自身への評価尺度でもあるので非常
に関心の高い事柄です。ですから逆に賃金の扱いを間違えると社員の志気を下げたり、優
秀な社員の社外流出を招いたりと会社にとって損失になることもあります。
 このことをわかってうまく賃金を活用している例を紹介しましょう。商社のB社は賃金、
ことに昇給に気を使っています。B社は成果重視、能力主義賃金を標榜しているので昇給
は上がったり、下がったりします。B社が気を使っているのは、賃金が上がり下がりする
こと自体ではなく、その根拠です。中小企業でよく行われている経営者による総合決定型
なのですが、賃金の額を決める時にはかなり明確にその理由を付けます。なぜこの社員は
賃金が上がるのか、別の社員はなぜ下げなければならないのか、そしてその額はどのよう
な計算で求めているのか等です。商社という業態の性格上営業社員の成績はつかみやすい
と思われがちですが、実態はそれほど単純なものではなく、担当する地区や顧客や扱う商
品によって売り上げや粗利に相当な差があります。B社ではこれを克服するのに目標管理
を使うことにしました。目標は会社が社員に要求するだけでなく、社員と綿密に話し合わ
れ実現性の高いものにしました。目標実行期間中も毎月1回はそのことについての話し合
いが持たれ、進捗状況や周囲の環境に応じたその後の対策がきめ細かく決められていきま
す。その積み重ねの結果が成績として評価されます。昇給は成績だけでなく、勤務態度や
能力も評価され最終決定されるのですが、それらの評価結果も全て本人には公開され、こ
こでも次年度に向けた努力ポイントが社員と話し合われます。重要なのはどこが駄目なの
かを会社が一方的に通告するのではなく、どうすれば評価が上がり、賃金が上がるかが話
し合われることです。そうすることで社員は会社が下した評価に納得し、次のステップに
動き出そうとしているのです。

平成17年6月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
朝礼で会社が変わる

 社員の教育は会社にとって最も重要な事柄です。その社員教育の第一歩が朝礼だと言わ
れています。朝のわずかな時間ですが、それをうまく活用することで社員の意識を変えた
会社があります。
 製造業のC社は社員数30名程度の会社ですから、朝礼は全社員が一ヶ所に集まって行わ
れます。朝礼の内容は、その日の連絡事項、当番社員の朝の一言と続くのですが、C社の
朝礼はそれだけではありません。全社員が会社の理念、その年の方針、目標を唱和するの
です。そして社長がその意味を少しずつ解説していきます。これを毎日行うことで、社員
は理念や方針、目標を暗記してしまいます。これだけでも教育効果は非常に高く、暗記さ
れた理念等は社員に自動的に浸透してゆきます。さらにそれらを社長自らが解説すること
で、社員の理念や方針や目標に対する理解は相当深くなります。
 このことは会社にとって重要な意味を持ちます。会社はそこにいる社員が同じ方向に向
いて進むことで企業としての活動が成り立ちます。その方向を示すのが、会社の理念であ
り、方針であり、目標です。これを理解している社員が多くなればなるほど組織としての
結束力が強くなり、社員の判断基準が統一されます。ある社員がとった行動が正しいのか
そうでないのか、トラブルに見舞われたときに行われる判断の根拠はどこにあるのか等全
てにこの会社で毎朝唱和され、社員に浸透している理念、方針、目標をよりどころにする
ことができるのです。判断の際に社長や管理職がそれらをその都度持ち出すのではなく、
社員自身がそれらに照らすことができるのです。全社員が揃う時間しかできない教育をC
社は朝礼という時間に見出したのです。

平成17年7月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
権限委譲で会社が変わる

 権限委譲。この言葉は世間のあちこちで聞くことができます。若手の社員を伸ばすには
権限委譲が効果的とか権限委譲のできない会社は大きくなれないとかその効用について説
かれていますが、これを実行に移せている中小企業が少ないのも事実です。一つの部署の
運営を全て社員に任せてしまうのは社長にしてみればものすごく怖いことでしょう。その
部門の成否が会社の経営を左右することにでもなれば大変なことです。ましてや中小企業
は資金力が強くないのでちょっとしたミスが会社の経営を脅かす元になることがあります。
 このような中、権限委譲をしながら業績を上げている会社があります。専門商社のD社
は、若手社員に新商品開発の権限を与えています。商社では顧客の求める商品は何かを一
番肌で感じやすいのが営業の最前線にいる社員です。営業社員は毎日の顧客との折衝や同
業他社の動向等から今売れそうな商品は何か、顧客は求めているが市場にはあまりない商
品は何かを感じています。そのことに注目したD社は、最前線の営業社員に新商品の開発
を任せることにしました。もちろん、できるだけヒットする確率の高い商品、会社の能力
に見合った商品を売り出す事になります。そこで、D社では、毎年年度末に営業社員から
聞き取り調査を実施します。「来年の営業目標、営業方針を勘案して、当社の来年の新商
品は何が良いと思うか。」という質問です。それに対して営業社員一人一人が売れそうな
商品とその理由や競合他社の状況等を述べます。そのやり取りの中から、自社で取り扱い
ができそうな商品を選定します。発案者は、新商品と決まった商品の仕入れ先の選定、仕
入れ価格、商品ラインナップ、標準販売価格、販売先ターゲット、販売方法等を取りまと
め、リーダーとして新商品の営業活動を繰り広げます。リーダーは年齢、勤続年数、役職
に関係ありません。時には先輩社員や上司に対して指導や指示をします。このことで、リー
ダーとなった社員は成長していくのです。

平成17年8月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
明快な方針で会社が変わる

 会社の方針が社員に伝わらない、社長の考えていることが社員にわかってもらえない。
と嘆く社長さんが多いようです。それはある意味当たり前のことで、社長さんが持つ情報
の量や先見性等に比べて社員のそれはどうしても劣ってしまいます。その上社長の口から
出る言葉は、様々な意味を含み過ぎて抽象的になりがちなのです。聞く側がもっと相手の
意を酌んで聞けば良いのかもしれませんが、コミュニケーションはそれほど簡単なもので
はありません。小売業のE社も同じ悩みを持っていました。お客様第一主義、売上拡大、
利益向上、社長さんの口から出る言葉は念仏のように繰り返されます。しかし、社員には
その真意は伝わりません。お客様第一主義、売上拡大、利益向上の三つの言葉はそれぞれ
矛盾しているようにしか思えてならなかったのです。ですから、社長から売り上げを上げ
ろと言われると、キャンペーンやセールを行い薄利多売に走り、利益を取れと言われると
利益のとれる商品を優先に売っていました。その度に社長は社員の行動の方向転換をする
のですが、同じことの繰り返しが続きました。社長が自分の思いが伝わらないと思い悩ん
でいる時、ある人からアドバイスを受けました。「自分の思いが伝わらないのは、自分の
表現の仕方に問題がある。」と言うものでした。それを聞いた社長は気付いたのです。表
現を単純化しないと駄目だ。もっと分かりやすく方針を伝えよう。そして社員を前にこう
言ったのでした。「これからの半年は、売上拡大に力を入れます。我が社の存在をお客様
に知ってもらいましょう。」それを聞いた社員は安心した顔をしました。社長の言葉が社
員に伝わった瞬間でした。社員はそれぞれ工夫をし、お客様に知っていただく宣伝をし、
売り上げを上げる店作りを始めました。D社の業績はその後順調に推移しました。

平成17年9月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
社員旅行で会社が変わる
 社員旅行を実施することで会社が変わると言うのは希有な例でしょう。社員旅行は社員
間の個人的なコミュニケーションをよくし、仲間意識が生まれるという効果はあります。
しかし、それが目に見えて会社を変える力にはなりにくいものです。ここで紹介するF社
は社員旅行そのものが会社を変えるのではなく、社員旅行の副産物が会社を変えていると
いう例です。
 小売業のF社は毎年三日間程度の社員旅行を実施しています。これに参加できるのは、
F社に入社してから一年以上の社員です。社員旅行で会社が変わるF社の秘密は三日間と
勤続一年以上の二点にあります。しかも、社員旅行は原則的に参加資格のある社員全員が
参加します。つまり社員の旅行の間、F社の中から勤続一年未満の若手社員しかいなくな
るのです。時には海外旅行も実施されます。こうなれば、若手社員は先輩や上司に携帯電
話をかけることもできなくなります。社員旅行の時期にF社の店頭へ行けば、勤続一年未
満の不慣れな社員しか見ることができません。お店は通常通り営業されますから、先輩社
員が旅行に出かけている間は若手だけで全てのことをこなさなければならない状況に陥る
のです。先輩社員や上司はそのことをわかって敢えて彼らに指示を出します。「旅行の間
も我々がいる時と同じようにお店を運営してください。この間に問題が起これば全てあな
た達の責任です。」お客様はいつもと同じようにショッピングに来られます。商品も毎日
入荷します。中にはクレームを付けるお客様がおられます。小売店ですから、お店を開け
ている以上これらのことの全てをうまくこなさないといけません。若手社員にとってはも
のすごいプレッシャーになります。しかし、逆に何物にも換え難い経験を積むことができ
ます。わずか三日間の経験ながら、それまで先輩や上司に甘えていた社員が自分で考え、
行動するようになるのです。彼らにとってはとても貴重な三日間なのです。

平成17年10月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
教育計画で会社が変わる

 会社にとって社員の教育は重要かつ最優先の課題です。しかも優秀な人材ができるだけ
多い方が良いのです。これを実現するために多くの会社で研修計画が企画され、社員が社
外研修に派遣されます。しかし、その効果の程が疑わしい例も数多存在します。研修計画
は社員の能力、立場、職務に応じて体系的に構築され、研修終了後は身に付けた知識や技
術を現場にどのように結びつけるのかをしっかりやらないと研修に行っただけということ
になりかねません。
 建設業のG社では、これらのことを考え研修計画を立て優秀な人材を多数育てています。
建設業は業務を行うに当り必要な資格が多くあります。しかも有資格者が多く、様々な資
格保持者が社員である方が仕事を受注する上で有利に働きます。それと社員の教育を関連
づけたG社は、社員の勤続年数、能力、職場、役職に応じて個人別資格取得目標を作成し
ています。社員の一人一人の名前を縦軸に資格名称を横軸にしたマトリックスを作成しま
す。そこに既に取得した資格とこの一年で取得すべき資格に印をつけます。さらに、それ
を見ながら個人別の資格取得に向けた研修計画を作成します。ここまでできたところで、
表を本人と上司に見せます。この社員の今年の取得目標はこれです。そのためにこれだけ
の研修にこの期間行ってもらいます。と二人を前に会社が説明します。本人は資格取得の
チャンスを会社が与えてくれるのですから文句を言うはずがありません。上司は何ヶ月も
前に予告されますから、事前にその準備ができます。しかも、現場に有資格者が増えるこ
とで仕事の幅が広がり逆に資格取得後は段取りがスムースになるのです。こうして毎年何
人もの有資格者が増え、G社は成長を続けています。

平成17年11月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
勤務態度評価で会社が変わる
 勤務態度、情意、執務態度色々な呼び方がされますが、これらは会社を維持発展させて
いくのに基本的な能力だと言われています。それらは、規律性、責任性、協調性、積極性
の四つに分類されます。勤務態度を評価するすることは、人事考課を行っている会社では
ごく当たり前の事ですが、その中身が曖昧なまま評価されることも多いものです。規律性
が良いとか、協調性がある等の評価は普段の仕事ぶりを見ればだいたいわかるというのが
その理由です。しかし、本当にそうでしょうか?評価する側は、規律性とは何か、積極性
があると言うのを何ではかっているのかわかっているのでしょうか。ましてや隣の評価者
と自分の評価に整合性がとれていると考えているのでしょうか。
 これらのことに気付き、勤務態度評価の方法を工夫したH社を紹介しましょう。H社は
教育産業です。教育産業は人対人の産業です。提供する商品も人ならそれを受ける側も人
です。その上、サービスを提供されるのは子供ですが、その子供の後ろには両親がいます。
H社は他社との差別化の一環として社員の勤務態度評価を実施することにしました。それ
がサービスの向上、ひいては会社業績の向上につながると考えたのです。H社は曖昧な勤
務態度評価ではなく、具体的な行動を列記したリストを作り、それができているか評価す
るようにしました。そのリスト作りには、現場の社員も参加しました。どのような勤務態
度が望ましいか。教育産業としてできていなければならないはずなのにできていない事柄
は何か。リスト作りは議論を重ね、四十項目の勤務態度評価リストができ上がりました。
それらは具体的な行動の形式で書かれ、一つ一つを四段階で評価できるようにしました。
四段階にしたのは、「普通」とか「まあまあ」という評価をしないための工夫でした。こ
の評価を毎月行うことで、社員の意識が変わり、行動に変化に現れました。H社ではこの
リストを少しずつ見直し、社員のレベルアップにつなげています。

平成17年12月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
社長との対話で会社が変わる
 我が社の社員は何を考えているのか、いったい何に不満を持っているのか、会社に何を
期待しているのか。どれも知りたいことなのに社長の耳には入って来難いことです。これ
らのことは少し前に話題になった社内満足を高めるためにも重要な事柄です。
 これらをなんとか収集してできるだけ良い会社にしようと立ち上ったのが、I社の社長
でした。I社は運送業を営んでおり、社員はほとんど社内にいません。社長は社員の考え
を聞き出す方法はないものかと考えた末、一つの結論を出しました。自分が待っていても
社員から話しかけられるはずがない。自分から社員の方へ近寄って行こう。そのための方
法として、手始めに毎朝全社員に一言ずつ声をかけることにしました。社員から出てきた
日報やその日の予定等を事前にチェックし一人一人に合った内容の話をしました。この方
法は上手くいっていたのですが、多忙な社長は出張する機会も多く、また社員が朝早く出
てしまうこともあって長続きしませんでした。そこで次にとった行動は、社長との対話時
間を設けることでした。毎週決まった曜日の決まった時間に会社の応接室を開放し、社員
が来るのを待つことにしました。そこにはお茶やお菓子も用意されました。始めた当初は
社長一人が応接室に座っていましたが、何週か立った頃から社員がそこに顔をのぞかせる
ようになりました。社員は始め緊張していましたが、いつもと違って温和で、社員の話に
耳を傾けようとする社長の態度に社員も打解け次第に心を開いて行きました。これを始め
た頃、集ったのは若手社員ばかりでしたが、何回も対話を重ねるうちにベテラン社員も参
加するようになり、社長は若手社員とベテラン社員の人間関係や交友関係まで目の当りに
することができました。I 社は社内満足の高い会社として社員の定着も良くなりました。

平成18年1月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
抜擢人事で会社が変わる

 ベテラン管理職と若手社員のあつれきはよく話に出てきます。ベテラン管理職のふがい
なさを嘆く話もあちこちで聞くことができます。長く会社に勤め貢献度の高いベテラン社
員を冷遇するのは得策ではありません。しかし、現状を考えるとベテランよりも若手の能
力の高さを認めざるを得ないということも多々あります。特に管理職とは名ばかりで仕事
の内容は若手と変わらない社員の扱いには苦慮するものです。
 この問題を正面から捉え、思い切った処置をしたのがJ社です。J社は商社でかつては
特定の商品を特定の顧客に納品していましたが、社業の拡大で商品数、顧客数ともに増大
していました。顧客には大手企業が名前を連ねるようになり、人間関係を重視したかつて
の営業方法では通用し難くなってきていました。そこで会社は能力の高そうな若手を管理
職に抜擢することにしました。かつての管理職は新任管理職の部下という扱いです。当然
若手管理職は自分の力を発揮しようと一生懸命仕事をします。会社は管理職としての彼に
期待し、彼もそれに応えようと努力します。彼の成績は上がり、会社の業績も上向いて行
きました。ここで重要なのは、抜擢された若手社員のがんばりだけでなく、管理職から降
格されたベテラン社員の扱いです。一般にベテラン社員は仕事の中心から外され、やる気
をなくしていくのですが、J社はそうならないように手立てを打ったのです。それは配置
転換でした。ベテラン社員の能力を活かせる仕事を見つけ出し、そこに彼を配置したので
す。人間関係を重視した営業スタイルは若手の顧客や大手企業には通用しなくなりつつあ
りましたが、古くからある顧客や小規模な顧客には有効でした。ベテラン社員にはそれら
の顧客を担当させたのです。無論降格された以上権限は無くなりましたが、会社からの要
求で仕方なくやっていた管理業務からも開放されました。ベテラン社員は「降格してもらっ
たおかげで、肩の力を抜いて仕事ができるようになった。」と語っています。

平成18年2月号掲載

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
会社が変わるはずなのに・・・

 人事で会社が変わるというタイトルのこの記事ですが、成功した事例をまねても自社で
はうまくいかないこともよくあります。上手くいってる例は上手くいくなりの理由がある
のです。また逆に失敗するには失敗の理由があるのです。
 典型的な失敗例を見てみましょう。例えば昇給です。成果主義、能力主義を唱えて賃金
を上げたり下げたりします。成果は社員の成績をざっと眺めて社長が決めます。なぜ昇給
したのか、降給したのは何が悪かったのかわかるのは社長だけです。このような状態にな
るとこの仕組は社員の不満の元になります。成功事例を見ればわかりますが、賃金が決まっ
た理由をはっきりと社員に説明しないと社員は納得しません。それが賃金アップであって
も社員の不安は拭去ることはできません。社員にしてみればいつ自分が降給の対象となる
か、何をしたら評価が低くなるかわからないのですから当然です。また、会社が勝手に目
標を決めてその達成度が悪いからと降給するのも好ましくありません。会社から一方的に
与えられた目標は本人にとって過重なものかもしれません。それにただ結果だけを見て賃
金を下げるとなると社員は会社の姿勢を疑うようになります。ここでもコミュニケーショ
ンが重要な要素になります。
 別の失敗例を見てみましょう。社長がどこかで見聞きした事例をよいことだと感じて始
めます。しかし、それを継続しようとしません。これを繰り返すと社員は社長の行動を信
用しなくなります。どうせすぐに飽きてしまう。結局前と何も変わらない。それなら社長
の始めたことに付きあうのは適当に。と思い出すのです。このようになってはせっかくの
行動も無駄になります。良いと思って始めたことは、我慢強く継続することが大事です。

平成18年3月号掲載分

2006年03月31日 | 人事で会社が変わる
先輩研修で会社が変わる

 新入社員が入ってくると新入社員研修を実施する企業が多くあります。新社会人として
のマナーや心構え、会社の成立ちや仕事の内容等基礎的なことが教育されま す。しかし、
この研修を役立たせるためには、新入社員だけを対象に教育を行っても効果が 薄れること
があります。殊にマナーや心構えなどはその傾向が強いようです。なぜなら、 研修で学ん
だことと、実態に大きなギャップがあるからです。例えば挨拶一つをとっても 研修では大
きな声で元気よくと教わるのに現場の先輩がそのようにしていないと新入社員 は現実に迎
合し、いつの間にか挨拶をしなくなります。
 この問題を解決するために製造業のK社は二つの取組みをしています。一つ は、新入社
員研修のインストラクターに入社二年目の社員を当てています。こうすること で、自分が
一年前に学んだことを再確認できます。また、研修のインストラクターですか ら、間違っ
たことを教えないように注意します。自ずと姿勢を正して研修に臨むことにな ります。
 二つ目の取組みは、新入社員が入ってくる前に全社員を対象とした新入社員 受入れ研修
です。新入社員は先輩社員の姿をみて育ちます。それの点を理解させ、先輩社 員自らが襟
を正す機会を設けているのです。ベテランの社員は毎年同じ基本的なマナーを 研修するこ
とになりますが、それが仕事の上で重要な研修だとわかっていますから、さ ぼったりしま
せんし、ベテラン社員の行動を見ている後輩社員がたくさん以上手を抜くわけ にもいきま
せん。若手の社員はベテラン社員が一生懸命研修に取組んでいる姿を見て同じ ようにしよ
うとします。こうして、K社の社員マナーは向上して行きました。新入社員が 入社して時
間が経っても研修で学んだマナーが崩れることはありません。それは先輩社員 も同じこと
です。K社にとってそれが当り前になっているのです。これがK社の社風です。