チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

無条件の愛

2018年09月16日 08時27分32秒 | 日記
今養蚕の技術も織りの技術も日本は瀕死状態
テレビドラマでは明治維新を近代国家として高らかに持ち上げているが
蚕の状況はこも明治維新から苦節の時代を迎えている

絹が日本の近代国家を推し進めたことは
多くの方は知っているだろう
日本の蚕の種、糸は世界で最も優秀であった

その輸出で日本は富栄えた
そのことに少しでも頭を働かせる政治家がいれば
日本絹はここまで酷い状態にはならなかった

絹から化学繊維への移動はどこの国よりも早く
私たちは絹を捨てた

絹の生産輸出が世界一の頃は昭和40年代で終わった
そういう中で
当然養蚕農家も日々減っていく全国で50軒足らず
個人で続けているところを入れればもっと数は増える

さてそこで
どんな時代になってもひたすら糸を吐く「蚕」の存在

蚕は糸が糸を吐き繭を作るのは自分の命を守り次の世代に命を引き継ぐためだ

種ー幼虫ー成虫ー蛹ー蛾と蚕は変態動物でもある
その一つ一つに人間が関わって
蚕から恩恵を受けている

種は利殖になる
今でも種の取引は金が絡む 日本はこれで稼いだ
虫の間は貴重なタンパク質 食料にしたり粉末にしサプリメントに強精剤
繭は糸
それ以外もセリシンというタンパク質、ポルへノールが含まれているので
石鹸や化粧水シャンプーなどに
またオイルをとって料理に使う

蛹は今キロ四万円で取引されるが
それもサプリメントに使われている
鎮静剤や利尿剤、腸の運動をよくし血流も速やかにする

蚕は自分が糸を吐く場所をあちこち歩いて定める習性がある
その時糸を吐きっぱなしにするがその糸を「きび素」と言う
そのきび素を粉末にして野菜などの肥料にする

蛾になって命が終わっても粉末にして肥料となる
アミノ酸が含まれているから上等の肥料だ

つまり
蚕には捨てるところが一つもない
自分の命を全て人に差し出している
見返りは何か?

それは
着物の仕立てに一ミリも布を捨てないという人間の志が蚕に対する礼かとも思う

自ら見返りを求めない蚕の姿こそ「無条件の愛」

さらに驚くべきことは
蚕が伝染病にかかっても
その病原菌が気管支や呼吸器の漢方になる
そのことを先日養命酒の工場へ行って知った

絹を身につけよう
蚕に対する御礼はそれしかない

コメント
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