チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 22

2018年09月24日 14時14分07秒 | 日記
山崎青樹さんは少年の頃から日本画家になりたいと思っていた
青樹さん中学二年生のとき
「日本画の勉強をしたい」
と父斌さんさんに申し出た
反対されるかと思いきや当時親交のあった横山大観先生に斌さんは相談し
「美校に行くよりまずはスケッチを送ってくるように」といわれ
しかもスケッチも毛筆で書くようにということであったそうだ

早速春休み写生旅行に和綴じの写生帳を手作りし矢立を持ってでかけた
この日から日本画家の顔と草木染作家の顔を持つ山崎青樹になる

口の重い青樹さんだが
私の突っ込み質問にぽつりぽつりと答えてくれる
これも
「オヤジの最後の弟子だから」
という一目の置かれ方で、それを逆手とって質問攻め
なんたって知らないことばかりだし
高々染織のことを書いていると言ってもまだ一年にも満たない
ペーペーのひよこもいいとこだ

柿生の斌さんの工房から私の取材は高崎の青樹さんのところに移っていた
というのは
生意気にもいくら草木染めでも織の無地だけではページに変化がつかない
あくまで編集者の目線なのだが
そういうわがままな申し出も
「草木染めというのはどんなものにも対応できる、また深くて広い楽しみ方ができる」
というか草木染めに対する信頼が山崎親子にあったので
すぐに変化を楽しむことができた

その第一歩が「型染め」
7月の草木染めに関しては絽の生地に秋の七草を型染めすることになった

絽織という生地は姉の着物で知っていたが
「絽に型染めは難しいよ既に絽目があるからね」
「絽目ってなんですか」
なるほど手に取ると既に規則正しく穴が空いている

型紙を乗せ型紙の穴から糊を落として行くのでひょっとして絽目に落ちる糊は別のところに行くかもしれない

「初めてだけどやってみよう」
青樹さんは学者タイプで従来の技法に別の技を加えるということを嫌がらず
しかもそうするとどうなるかという科学者の目を持っていた

絽の端切れはあったが反物はない
はて反物はどこで購入するのか
なにせ「一生着物はきませんよーーだ」と母に宣告している私のこと
母に購入ルートを聞くには女がすたる(笑)とばかり
姉に「絽の反物って買える?買ったら送ってきてすごい着物を作るから」
作る前からもう売りつけている

しかしこの着物は昨年なくなった姉のタンスの中から風呂敷に形が変わって出てきて感動した
何回も洗っては着ていたのであろう
生地はへたっていたが草木の色はいい具合に枯れていた
(つづく)
コメント
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