真空管プリアンプの差動ラインアンプが完成したので、続いてイコライザー(EQ)アンプ部も見直しを実施しました。
私のイコライザーアンプは、かの有名なマランツ7型です。私の物のオリジナルの設計は米国人。
現在の回路図を眺めていると、マランツ7・オリジナルと違う所が数箇所見つかりました。
マランツ7のイコライザーアンプはNF型で、非常に微妙で不安定な回路という事も有り、下手な設計や配線になっていると同様な音が出ないだけでなく、発振する事も有るらしいです。
しかし1958年頃に設計・製造されたオリジナル品は、今でもこれを超える音は無いとの事。
特に、EQアンプ部は秀逸とのこと。
そこで、少し踏み込んで回路を見直してみました。
<オリジナルと現状回路を比較して検討が必要な箇所>
①スタガ比:3段構成になっているので注意が必要。(初段~2段目~出力段)
②カップリング・コンデンサ:マランツ7はバンブルビーが使用されており、これが音の決め手。
③EQカーブ
④出力の1kΩ
順を追って説明しますが、長くなるので数回に分けて投稿します。
①スタガ比
(現状の回路図)
緑で囲った部分が検討必要なカップリング・コンデンサ。
一般的にはスタガ比は5倍以上の時定数を確保すると良いとされています。
この回路は3段になっているので、初段と2段のスタガ比を充分確保した上で、さらに初段と出力段のスタガ比も確保する必要があります。(そんな事は知ってるわいと言う人は読み飛ばして下さい。あくまでも私の備忘録です。)
私は表計算を使い、夫々の時定数を計算し実験してみました。音質の変化を聴き分け。
厳密には各真空管のインピーダンスも考慮する必要が有りますが、今回無視。
その結果、当然ですがマランツ7と同じ時定数が一番良かったです。当たり前か。
しかし、厄介なのは抵抗にA&Bを使うと実測抵抗値は表示の5~10%大きいという事。またコンデンサにBlack Beautyを使うと実測容量値が表示の20~30%大きいという事。ここも計算に考慮しなくてはいけません。
結果、初段と2段目のスタガ比は『30程度』が必要という事が分かりました。
参考までに、初段 0.01uF x 330k=3.3ms(48Hz)、2段目 0.13*uF x 1000k=120ms(1.6Hz)
*0.13uF : Black Beauty 使用のため表示より実測容量大。
この時のスタガ比は『30』となります。(Marantz#7と同じ)
初段のカットオフ周波数が高い様に思いますが、レコード再生の場合、そんなに下まで伸ばしても針の走行ノイズ(低域)やハウリングを招くだけので割り切って捨てます。聴感上でもこの位で切った方がベースの音運び、ドラムのスティック運びが明瞭になりスッキリとした音になりました。低音が物足りないという感じもしませんでした。
出力段の時定数計算が厄介です。カップリング・コンデンサにぶら下っている1MΩだけでなく、NF抵抗、ラインアンプ入力に入っているボリューム(VR)も合算しなくてはいけません。私の場合、VR 250kΩでしたので合算値は約120kΩ。これを元に時定数を計算すると、0.47uF x 120k=57ms(2.8Hz)。(Marantzの場合はバランス(1MΩ)とボリューム(500K)を計算に考慮)
これで初段と出力段のスタガ比は『17』となります。(Matantz#7は『26』)
なお、2段目と出力段のスタガ比が2倍程度(Matantz#7は『1.2』)になりますが、初段と2段、初段と出力段のスタガ比が充分確保できているので、ここはあまり関係が無い様です。スタガ比2の2段アンプとみなす事が出来る?
上に載せた現状の回路図では、初段0.047uF、2段目0.22uF、出力段0.47uFとなっており、スタガ比は初段と2段が「14」、2段と出力段が「11」、初段と出力段が「1.3」の状態でした。何でこんな設計になっていたのだろう?。
(見直し後の回路図)
ピンクで囲んだ部分が見直した箇所です。
かなり良くなりました。
音の見通しが良く、分解能も良く、スッキリとした音になりました。
次は、ここのカップリングコンデンサに何を使うかです。
この選定が音質に大きく影響します。
これについては、次回投稿します。