憲法
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
条約は違憲審査の対象となりうるか、考えてみたいと思います。
Q君
条約(国際法)と憲法の関係についてはどのような説がありますか。
A先生
一元説と二元説があります。
一元説では、条約と法律は一元的な法律関係にあるとします。
二元説では、条約と法律は交わらない別の法律体系であるとします。
通説は一元説であり、一元説を取った上で、条約優位説と憲法優位説に分かれます。
憲法優位説に立たない限り、条約の違憲審査は説明がつかない、というのが従来の考え方です。
また、条約(国際法)優位説をとりながらも、条約の違憲審査を肯定する見解も有力に主張されており、説得力をもった考え方です。
Q君
憲法優位説の根拠を説明してください。
A先生
以下、3つの理由があります。
1)条約優位説では、憲法より簡易な手続で憲法改正がなされることになり、国民主権及び硬性憲法の建前に反すること。
2)国際協調主義からから直ちに、条約優位が導き出されるわけではないこと。
3)98条1項は、国内法における最高法規性を示したものであるから、その規定に条約は当然含まれないこと、98条2項の意味は、条約の中には批准と同時に国内法規になるものもあり、それを遵守するように求めたものであること。
Q君
憲法優位説を取ったとしても、すべての条約を審査することが可能なのでしょうか。
A先生
条約といっても、批准と同時に国内法的効力を有する条約(self-executing)の条約とそうではないものがあります。
前者の審査が問題となります。
後者は条約の内容を実現する国内法規が存在しない場合は、審査する必要がないし、また、国内法が制定された場合は、通常の法令の審査と同じことになります。
例えば、カルデロン事件で、在留特別許可を下すべきであるという主張の根拠に、子供の人権条約の該当規定が挙げられていましたが、これは、対応する国内法規がないので、その精神を主張することはできても、実体法上の主張にはなりませんでした。
Q君
憲法優位説を採用し、条約を審査することを積極的に肯定する根拠は、何ですか。
A先生
1)憲法81条は、違憲審査の対象を限定列挙したものではないし、条約は国会での批准手続を経ている以上、「法律」に準じるものである。
2)条約は国家間の合意であるから、その国際法上の効力は一国のみで決定することはできないが、その国内法上の効力は当該国の国内の問題である。
3)条約の内容が政治的かどうかは、統治行為あるいは自由裁量の問題である。
Q君
判例は条約の審査を肯定していますか。
A先生
砂川事件では、「安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査の原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。」と判示しました。
裁量権が逸脱しているかを審査するのであるから、実質的に条約の審査を肯定していることになります。
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
条約は違憲審査の対象となりうるか、考えてみたいと思います。
Q君
条約(国際法)と憲法の関係についてはどのような説がありますか。
A先生
一元説と二元説があります。
一元説では、条約と法律は一元的な法律関係にあるとします。
二元説では、条約と法律は交わらない別の法律体系であるとします。
通説は一元説であり、一元説を取った上で、条約優位説と憲法優位説に分かれます。
憲法優位説に立たない限り、条約の違憲審査は説明がつかない、というのが従来の考え方です。
また、条約(国際法)優位説をとりながらも、条約の違憲審査を肯定する見解も有力に主張されており、説得力をもった考え方です。
Q君
憲法優位説の根拠を説明してください。
A先生
以下、3つの理由があります。
1)条約優位説では、憲法より簡易な手続で憲法改正がなされることになり、国民主権及び硬性憲法の建前に反すること。
2)国際協調主義からから直ちに、条約優位が導き出されるわけではないこと。
3)98条1項は、国内法における最高法規性を示したものであるから、その規定に条約は当然含まれないこと、98条2項の意味は、条約の中には批准と同時に国内法規になるものもあり、それを遵守するように求めたものであること。
Q君
憲法優位説を取ったとしても、すべての条約を審査することが可能なのでしょうか。
A先生
条約といっても、批准と同時に国内法的効力を有する条約(self-executing)の条約とそうではないものがあります。
前者の審査が問題となります。
後者は条約の内容を実現する国内法規が存在しない場合は、審査する必要がないし、また、国内法が制定された場合は、通常の法令の審査と同じことになります。
例えば、カルデロン事件で、在留特別許可を下すべきであるという主張の根拠に、子供の人権条約の該当規定が挙げられていましたが、これは、対応する国内法規がないので、その精神を主張することはできても、実体法上の主張にはなりませんでした。
Q君
憲法優位説を採用し、条約を審査することを積極的に肯定する根拠は、何ですか。
A先生
1)憲法81条は、違憲審査の対象を限定列挙したものではないし、条約は国会での批准手続を経ている以上、「法律」に準じるものである。
2)条約は国家間の合意であるから、その国際法上の効力は一国のみで決定することはできないが、その国内法上の効力は当該国の国内の問題である。
3)条約の内容が政治的かどうかは、統治行為あるいは自由裁量の問題である。
Q君
判例は条約の審査を肯定していますか。
A先生
砂川事件では、「安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査の原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。」と判示しました。
裁量権が逸脱しているかを審査するのであるから、実質的に条約の審査を肯定していることになります。
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