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日本国憲法の一日一条ずつの解説、8月23日は、第23条。学問の自由

2014-08-23 00:31:37 | 日本国憲法

 一日一条ずつの日本国憲法の解説と、自民党改憲案の問題点の考察。

 8月23日は、憲法23条。

 日本国憲法は、補則まで入れると全部で103条有りますが、ひとつ好きな条文を選べと言われると、私は、迷わずこの23条を選びます。

 「学問の自由は、これを保障する」

 その規定の重要性とともに、五七五の調子で日本語が並べられた美しい日本語の文体であるからです。
 日本国憲法全体が、美しい文体で格調高く構成されておりますが、そのことを象徴するような条文です。


 学問の自由を保障する規定は、明治憲法にはなく、また、諸外国の憲法においても、学問の自由を独自の条項で保障する例は多くないといいます。
 明治憲法時代に、学問の自由ないし学説の内容が、直接に国家権力に侵害された歴史(例、1933年滝川事件、1935年天皇機関説事件)を踏まえて、特に規定されました。


 学問の自由の内容としては、1)学問研究の自由、2)研究発表の自由、3)教授の自由の三つのものがあります。

1)学問研究の自由

 真理の発見・探求を目的とする研究の自由、内面的精神活動の自由であり、思想の自由の一部を構成します。


2)研究発表の自由

 1)でいう研究の結果を発表することができないならば、研究自体が無意味に帰するので、学問の自由は、当然に研究発表の自由を含みます。
 外面的精神活動の自由である表現の自由(21条)の一部であるが、憲法23条によっても保障されています。


3)教授の自由

 大学その他の高等学術研究教育機関における教授の自由(これら“のみ”とするのが従来の通説・判例「東大ポポロ事件最高裁判決」)、および大きな議論が有るところではありますが、初等中等教育機関における教育の自由(今日において支配的見解)。
 ただし、普通教育においても、「一定の範囲における教授の自由が保障される」ことをみとめるが、教育の機会均等と全国的な教育水準を確保する要請などがあるから、「完全な教授の自由を認めることは、とうてい許されない」とされています(旭川学テ事件最高裁判決昭和51・5・21)

(以上、参照『憲法 第5版』芦部信喜 164−165頁)
 
 

 次に、自民案との比較をします。

*********************
日本国憲法
第二十三条 学問の自由は、これを保障する。

自民党案
(学問の自由)
第二十三条 学問の自由は、保障する。
**********************

 ほぼ、同じと言えます。

 ただ、冒頭のべましたが、私は、私の好きな条文の美しい日本語の五七五リズムを失った自民党案は、個人的には認めることはできません。

 


 さて、学問の自由は、明治憲法下で、国家権力により侵害された歴史が有り、正しい真理の追究が国に都合が悪ければ、いつなんどき、国が介入するかもしれず、表現の自由とともにまもらねばならない大切な大切な規定です。

 今でさえ、見えない形の国の介入はあるのかもしれません。

 例えば、原子力研究で、国の意向に添う研究に多額の研究開発費が、国及び電力会社から与えれること、データをねつ造してまで、薬の効果をよくみせることで、製薬会社からの研究開発費を得ようとすることなど、ありうる話かもしれません。


 もうひとつ注意せねばならないことは、「学問の自由は保障する」のであって、憲法19条内心の自由で見た「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」のような「学問の自由は侵害されない」ではないということです。(ちなみに、残念ながら自民案19条「思想及び良心の自由は、保障する。」)
 どんな研究でもやってよいかというとそうではなく、「公共の福祉」と調和のとれた研究が求められることはいうまでもありません。
 例えば、医学分野では、生命と直結するためその倫理性が問われることが常です。最先端研究が周囲の住民に危害を加えるリスクがある場合なども考えられます。


 (ちなみに、19条が出たついでに述べますと、自民案19条が現実化すると、私達が考えることや思うことその内容そのものが、国により強制される場合が出てくることになります。それも「公共の福祉」との理由ではなく、「公益及び公の秩序」すなわち「国のため及び国の意向に沿った秩序」にはずれないようにするという理由のもとの強制がありえることとなります。)

 
 学問の自由の保障は、とても大切です。

コメント
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