引頭佐知(いんどうさち)の料理ブログ

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香港の思い出。①上環の問屋で。

2009年07月16日 | 旅はいつでもワンダー・ランド

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「これ、奄美大島から送ってきたの、

畑でもいで、すぐ送ったんですって」と、

農大通りの木原文具店の洋子さん。

なんと、ご主人が奄美大島出身なのです。

先月は、山川さん、今月は、洋子さんと

奄美大島がつながりました。不思議。

Img_0844

パッション・フルーツ。

ほんのちょっぴりの酸味が

あとくちの良い甘さに。

香港や台湾で はおなじみのトロピカル・

フルーツです。

ミネラル、ビタミン豊富な、栄養的に優れも

のなんですよ。

Img_0842

ひとさじひとさじスプーンを運んでいるうち、

行きたくなりました。

香港、台湾。

下の記事は、返還前の香港での思い出。

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旅先では、なるべく1人で歩くわたし。

香港島・上環駅西の乾物・漢方薬、

海産物街でのことです。

上品(じょうほん)ものばかりを扱っている、

いかにも老舗と思われる店で、

ふっくらと大きくて美しいクコの実を

ながめていました。

こんなに立派なのはない、

買おうかな、と顔をあげると、

店頭から10数m位奥に半間ほどの入り

口があり、その奥に,少し背の丸い

おばあさんの動く姿が見えました。

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おばあさんは、年齢は80歳前後か、

ピンク地の花柄のチャイナブラウス、

黒いパンツ姿。

ほとんど白髪の直毛の髪は、横分けにし、

緑色の髪留めで留めたおかっぱ。

かわいいおばあさんだ。

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しかし、なにをしているんだろう、と

目を据えて見たら、30cm位のお盆に

果物を盛り付けているところでした。

3段に盛り合わせている果物。

いちばん上の桃だったかが、

うまく盛れなくて何度も盛りなおしています。

お盆は2つあり、もう1つのお盆には、

鶏の丸焼きが盛られています。

果物と鶏の丸焼き。

夕飯に近い時間ではあるけれど、

夕飯のおかずではなさそう。

なんなんだろう?

.

店には4~5人の従業員。

初めは、普通にお客としてわたしに接していましたが、、

おばあさんを見ているわたしに気がつくと、

従業員全員、

ほんとうに温かな表情に変わり、

わたしをみています。

1人の従業員(多分、息子さん)がおばあさん

のそばに行き、

「ほら、あの人がみていますよ」、

と伝えたようでした。

おばあさんは、ゆっくりと振り向き、

店頭にいるわたしを確認するように見るや、

にっこり、微笑みます。

わたしも会釈を返します。

従業員が右腕を差し出すと、

おばあさんはその腕を杖がわりに、

背を伸ばし、ゆっくりと歩き始め、

腕から手を離すと腰に手を当てて、

再びわたしを確認。

また軽く会釈をし、笑いかけると、

微笑んでうなずくおばあさん。

.

そのまま、

わたしはまたクコの実を物色しはじめました。

従業員は、おばあさんに聴こえるように、

口々に「ヤップンヤン(日本人)、

「ヤップンヤン」と言っています。

おばあさんは、

片足を引きずりながら歩を進め、わたしの横に。

え?と内心戸惑っていると、

おばあさんは、にっこり笑い、

わたしの腕に腕をからませるや否や、

そのまま店の奥に連れて行こうとします。

言葉が通じないので、

従業員に助けを求めるべく

立ち止まり、困惑していると、

手のすいている従業員数人は、

「どうぞ、どうぞ」と手で奥を指し、

奥に入るようすすめます。

1人旅だったら、奥に入ったのですが、

20分後に友人とレストランで待ち合わせを

していたので、断わるために、

顔の前で大きく手を振り断りました。

それでも

おばあさんは、ごはんをかきこむ仕草をし、

わたしの腕を組み、「奥にいきましょう」と、

腕を引っ張ります。

広東語ができればなあ、と思いつつ、

仕方がないので、

今度はわたしの方が、

おばあさんの肩をたたき、

オーバーなフリで、上環駅の方を指差し、

ごはんを食べる真似をし、

腕時計を指さし「ノー、ノー」と手を振ったら

理解したようで、奥に誘うのはあきらめました。

.

しかし、おばあさんは、次には、

再びわたしの腕に腕をからませ、

店の外、つまり道路に連れ出し、

店の左端へ立ちました。

柱に貼りつけてあるお札(ふだ)を指差します。

道教の仏様のお札?のようです。

すると、

先程の従業員が、店の奥に行き、

おばあさんの盛りつけた2枚のお盆を運んで

柱の下にお供えしました。

そうです。

果物と鶏の丸焼きは、御供物(おくもつ)でした。

おばあさんは、

わたしの腕をツンツンとつついたかと思うと、

「こうするのよ」とばかりに、

ゆっくりと膝を折り、地面に膝頭をつけ、

頭を下げ、手のひらを上にして拝みます。

えーー、ここ道路なんですけど・・・。

と突っ立っていると、

おばあさんは、わたしを振り向き、

右横の地面を指さします。

「あなたも一緒に拝みなさい」と、

いうことだな、と、わたしも従い膝まづき、

拝みました。

拝んで立ち上がり、また膝をつけて拝みます。

「まいったな」と、上目使いで従業員を見ると、

従業員の中にはお腹をよじって笑っている人も。

日曜日ということもあり、多くの通行人が通る中、

拝む私たち。

他国のわたしを誘って拝んでいるあのお札は、

なんなのか。

今日はご先祖の命日なのか、

単に信仰心なのか、

クコの実を買おうとこの店で立ち止まって

たった10数分で道路でひざまずき拝んでるわたし。

なにが起こるか、わからない。

旅はいつでもワンダーランドだ。

友人との待ち合わせの時間が迫り、

おばあさんに時計を指差し、

ゆっくりと、「拝拝」と言ったら

背は大きくないけれど、ごつい手で

わたしの手を両手でしっかりと包み

強い目でわたしの目をみて

短くつぶやきました「多謝」。

多謝=ありがとう

.

レストランに向かうわたし、

見送るおばあさん。

何度も振り返り、

ときどきふざけて、ジャンプしたり、

両手を上げ、左右に振り、踊ってみせながら

おばあさんに手を振るわたし。

腰に手を当てて笑うおばあさん。

たくさんの通行人がおばあさんの姿を

隠します。

小さくなったおばあさん。

それでもビルの角を曲がるまで、

お互いに手をふっていました。

.

日本人のわたしを、

歓待しようとしたおばあさん。

心に残りました。

同じ問屋街で年配のおじいさんに

「日本人だ」と塩干物を投げつけられ

たこともありましたから。

.

帰国後、

あのおばあさんの着ていた木綿のピンクの

花柄のチャイナブラウスを思い出し

よく似た生地をみつけ、オーダーしました。

.

こんな柄の服に白髪、

緑の髪止め、かわいいでしょう?

Img_0869

汚いものお見せします。

チャイナのブラウスには、

靴はやっぱりこれ。

shanghaiーtang製

ちょっと穿いただけでこうなっちゃうんです。

でも捨てられなくて・・・。

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2 コメント

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うふふ・・・ (大阪出身)
2009-07-16 20:55:35
うふふ・・・
まるで映画のワンシーンのようでした。

①ということは続編も期待して良いのでしょうか。
楽しみにしていますね。

返信する
香港も台湾も、忘れられない思い出がたくさんあり... (いんどうさち)
2009-07-17 11:22:50
香港も台湾も、忘れられない思い出がたくさんあります。

他人の思い出話なんて、読んでもそんなに面白いものとは思えませんが、国がちがえば不思議な人に出会えます
おかしなことに出会えます。
おかしなことを求めて歩いているのではなく、おかしなことが、転がってくるのです。

夏休み。何篇か、書けるかな。
読んでくださる方があると思うとがんばれます。
返信する

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