引頭佐知(いんどうさち)の料理ブログ

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08鰹節店・タイコウ  出会い篇

2008年06月10日 | 天然出汁とのめぐり合い

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日本で1番おいしい !

と確信する削り節と出会いました。

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こんな出会いは2度とない、

不思議な不思議なめぐり合い方で。

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今年の1月21日のこと。

隣駅にある、いつもの魚屋さんで、

1人の女性を紹介されました。

「こちらの方ね、

大阪から転勤でいらしたんですよ」と。

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「え、そうですか、

大阪からですか?

実はわたし、大阪でさがしてるところが

あるんです」

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わたしは、5年前から3年間、

不定期でしたが、仙台で、

<だしを取って料理をする教室>を

催していました。

そのときのエピソードから、

天然のだしを必要としている人がいること、

天然のだしが救える人がいること、

天然のだしを待っている人がいることを

その方に、一気に話しました。

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さらに、昨年は、北海道の道南地方、

南茅部の真昆布の産地を訪ねたりし、

自分の中で、

だし取りをライフワークと決めたことも。

だしといえば鰹節と昆布。

鰹節は東京。

鰹節・削りかつおは、築地の店で、

そこそこ満足していましたから、

昆布も最高の昆布を、。

昆布といえば大阪、と。

そして、わたしは、なぜか、

ほんとうに、なぜなのか、

今お会いしたばかりのその女性に、

こう言ったのです。

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「いや、すみません、

初めてお会いしたのに、どうしてこんなこと

お話しするのかわかりませんし、

すごく唐突ですが、

昆布といえば大阪です。

で、

最高の昆布を扱う大阪一の昆布屋さんを

訪ねたいと思ってるんです」

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「最高の昆布屋さん、あります、知ってます。

ご紹介しますよ。

そうそう、

そうだ!

その昆布屋さんが信頼されてる鰹節屋さん

東京にありますよ。

東京ですから、まずは、その鰹節屋さんと

会われたらいかがですか。

タイコウという会社の、稲葉さんです」

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なんと、魚屋さんの店先での立ち話しで

最高の品質を扱うという昆布屋さんと

鰹節屋さんをおしえていただいたのです。

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こんなことってあるのだろうか・・・。

自分の足で訪ね、じっくり探そう、

そう思っていたのに、なんの苦労もなく

・・・・・・・・・・・・・・・・。

その方と別れて、自転車に乗り、

地元の経堂の酒屋「つきや]へ。

いつものみりんと醤油を選び、

トンとカウンターに置いた時、

B5サイズのフリー・ペーパーが目に飛び

込んできました。

Crew Crewネット・ワーク主催のセミナー。

数人の講師の中に、鰹節・・・・、稲葉・・・・。

???

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鰹節屋が語る、鰹節の話・・・・・稲葉泰三

???

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目を疑う、とはこのこと。

先程、会いなさいと勧められた人の名前と

10分後に出会い、

しかも、セミナーが催されるのは、経堂。

不思議だな、不思議すぎる、とは思った

のですが、こういうことに耽溺するのは

よくないと、ムクムク湧きおこる不思議雲

を払拭しました。

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11日後の2月1日。

文京区大塚で催された、

安倍司さんのセミナーに出席しました。

開始時間ギリギリに到着したわたし。

主催者のSさんが席を指さしながら、

「引頭さん、ここ座って」

「稲葉さん、ここ座って」

イナバサン?・・・マサカ・・・・・・。

わたしの隣席に案内された稲葉さん。

同行者との話し声が聞こえる

「俺、今度さ、経堂で鰹節について話す

ことになってさ」

もう、驚いたのなんの。

なんのエクスキューズもせず、

「あの、タイコウさんの稲葉さんで・・・」

「そうだよ」

活きた鰹のような目に迫力がある。

「いやー、わたし、

お会いしたかったんです」

「え、なんで?」

ナニ、コノオバサン・・・トイウ ヒョウジョウ。

「大阪のある昆布屋さんが、唯一、

信頼されてる鰹節屋さんとうかがいました。

で、タイコウさんの鰹節って、

どんな鰹節なのか・・・」

.

「あ、

そうかぁ、そういうことね。

わかりやすく言うとさ、

まず、鰹節はね、1本釣りか、まき網で

獲るんだけど、獲り方で味がちがうの。

うちの鰹節は1本釣りの鰹で作ってる。

なんで味がちがうか、わかる?」

「ストレスがないからですか」

「そう、まき網は、網の中で鰹同士が

ぶつかったりして、傷ついて、死ぬまでに

ストレスがいっぱいかかってるから

身体中に乳酸が回ってて酸っぱいんだ」

「わかります」

.

「あ、それから、

お会いしたかった理由がもうひとつ。

実は、今年から

天然だしの<だし取り教室>を主宰する

積りですが、そのときのために鰹節のこと、

いろいろ教えていただきたくて」

江戸っ子の稲葉さん、テキパキ早い。

「いいよ、わかった、協力する」

ピンポンのような、

ほんの少しの会話で決まりです。

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天然だしとのめぐり合い、

この日から助走し始めました。

この日から9日後、

crew crew net work主催の

セミナーがあり出席。

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出会いました、

タイコウさんの鰹節、削り節。

鰹節,続きます。

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鰹節店・タイコウ 仕上げ方と味

2008年06月09日 | 天然出汁とのめぐり合い

築〇の削りかつおなら、大丈夫、

最高のいいだしが取れる、

そう思ってました。

そうですね、約30年近く、そう思ってました。

教室でも、自信をもって紹介してきました。

 

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ところが、

あるんですね、上には上が。

東京・晴海のタイコウという会社のは、

1本釣りの鰹節。

日本一おいしいという噂でした。

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2月10日、わたしの暮す町・経堂で開催された

<CrewCrewネットワークのセミナー>に出席。

タイトルは「鰹節屋が鰹節について語る」 。

お話は鰹漁の話からです。

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◎鰹漁には、1本釣りと、巻き(まき)網があります。

タイコウさんが扱っている鰹節は、

1本釣りした鰹です。

 

巻き網漁ので水揚げされた鰹は、

網の中で鰹同士がぶつかりあって、苦しみ、、

外形も外傷を受けていますが、

精神的(?)にもストレスを受けており、

人間同様、そのストレスで魚体に乳酸がまわり、

結果、

すっぱい、酸味のある鰹節になるのだそうです。

◎1本釣りの鰹は、そのストレスを受けていないため、

形も整っているし、

酸味もない、

旨み成分のイノシン酸も損なわれていない、

だからおいしい鰹節というわけです。

やっぱり、原料の段階から、ちがうのですね。

釣り上げられた鰹は、船内で凍結され、

鰹節生産者に届けられます。

 

鰹節製造の最初の仕事は、解凍です。

解凍作業には、丁寧さが要求されます。

一晩かけてゆっくり解凍されます。

さらに、

ここから、

多くの手作業が積み重ねられるのです。

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◎鰹節の種類.

大きくわけて「荒節」と「枯本節」の

2種類があります。

荒節は、かび付けをしていないもの

(その荒節を削ったものが花かつおです)

 

枯本節は、荒節の表面を仕上げてから、

かび付けを3回施したものです。

干して乾かして箱に詰めてかび付けし、

また干してかびを取り、

という手作業を繰り返して製品に仕上げます。

◎枯本節の「だし」の旨みは、このかび付けの間に、

醸成されます。

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セミナー修了後、

わたしは、その場で、

枯本節の鰹節と枯本節の削り節を購入。

そして、会場をぬけ出し、

自転車に飛びのり、自宅のキッチンへ急ぎました。

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どんな香りなんだろう、

どんな味なんだろう、

のどごしは?

Img_0397_2

「花くらべ」の袋を開けてみました。

すっきりとした高い香り。

香りがすくっと、立っています。

冴えているといえばいいのかな。

薄さも、乾きぐあいも、ちがいます。

ふわっふわ。

さらっさら、

つかんだときにわかります。

これは楽しみです。

さすが、噂通りの削り節、

だしは、料理をする者にとっては、

料理のいのちを決めるもの。

まずは、香りで、うれしくなりました。

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大急ぎで2つの鍋を用意し、

水を入れ、

真昆布を加えて火にかけます。

実は、ありあわせの三つ葉と焼き麩。

昆布がゆらりの浮き上がってきたら沸騰直前。

昆布を取りだします。

さて、

左の鍋には築地の削り節。

右の鍋には本枯節の削りがつお「花くらべ」を投入。

なるほどーーーぉ。

タイコウさんのは、薄いので,すぐに浸透し、

鍋の中に、旨みを抽出しきっているようです。

吸物の味も香りも、色も

濁りがなく冴えています。

塩で味をきめて、薄口しょうゆで香りを添えます。

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すごくおいしい。

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価格は、安くはありません。

原料をはじめ、品質が違うのです。

価格に見合った品質、そう思います。

 

手ぬきをしない手作業、

いいものを、という姿勢を守るには,仕方のないことなのです。

伝えたいことたくさん。

続きはまたそのうち。

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タイコウのさんの鰹節のHP。

http://taikoban.chicappa.jp/

TEL=03-3533-4834

FAX=03-3533-4622

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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母とだし。削りかつお篇

2008年06月03日 | 天然出汁とのめぐり合い

だし素材を入れていた海苔の缶は全部で4缶、

かつお節削り器とともに、木のトレイにのせていました。

置き場所は、ガスレンジに遠く、しかし、すぐ手の届く場所に。

缶に入ってたのは次のだし素材四天王。

①掃除をした煮干し。

②削りかつお

③使いやすいように大きさを変えて切った昆布、

③干し椎茸

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さて削りかつお。

削りかつおは、たまに市販品の100g入りを買い足すこともありましたが、

ほとんどは、わたしか母が削っていました。

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同世代の人とかつお節の話になると、

「削ってた。あれは子供の仕事だった」

と、懐かしがります。

兄や弟が削ってた絵が浮かばないのですが、

あのころは、男の子に台所仕事の手伝いはさせなかったのかも。

かつお節削り、男の子向きだと思いますけどね。

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かつお節削りは嫌いではありませんでした。

なんでもそうですが、

上手になると、自分なりの楽しみを見つけるようになりますしね。

わたしの場合、

削るときのシュイ、、シュイ、、シュイ、、シュイ、、という音は、

刃と鰹節の奏でる楽器のようで、

気持ちのよい音だと思っていました。

自らの呼吸にあわせて、シュイ、、シュイ、、と削っていくと、

鰹節をつかみ、押さえている掌から腕、腕から肩、肩から後頭部に爽快感が伝わり、

気分がすっきりするのです。

しかも、削るたびに、あの、鰹節特有の呈味アミノ酸

そうです、イノシン酸の香りが深さを増し、

削りはじめると、いつも箱いっぱいに削っていました。

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脂がまわるから、と、

母は、その日の使う分だけを削る主義。

シュイ、シュイ調子に乗って削っていると、

「もう、ええよ、もう、いらんから」と、制止しました。

余ったのは、缶に。

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だし取りで、

鍋に削りかつおを入れたときは、

真剣で、

じーーっと、鍋の前で頃合いをみていました。

このときは、なにか話しかけても

「あとにして」。

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1度だけ、

たった1度だけ例外がありました。

中3のとき、台所をのぞいて、

「幾何100点だった」と言ったら、

だし取りしてたのに、箸をもったまま、

「ホント????」と、飛びだしてきました。

し、し、失礼な!

そんな大事件かいな。

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かつお節削り器は、下の箱の方が壊れ、

2台買いなおしたのを記憶しています。

鉋(かんな)の台木は、つやつやして、いい味だしてました。

もったいないなぁ、って、思ってました。

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夕方、玄関をあけたときに漂っていた

昆布と削りかつおのだしの香り、

そのだしを使って作った温かな煮物、汁物は、

家族をまとめる力があった、と、今思うのです。

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おいしい料理の基本はおいしいだしにあります。

「天然だしとのめぐりあい」、これからも続きます。

これからです。

点や線で続けます。

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母とだし。煮干し篇

2008年05月31日 | 天然出汁とのめぐり合い

わたしの母は、食材の買い物と読書以外は、

ほぼ1日中を台所で過ごし、料理をしている人でした。

1日中料理をするというと、

やさしいおかあさんのイメージがありますが、

「おかあさん」、というよりは料理作りが

仕事のような人でした

.

母の買い物の手伝いで商店に行くと、

ときどき尋ねられたものです。

「おかあさんの、お店どこにあるん?」と。

「おかあさん、何屋さん?」

「お母さん、お菓子屋?」というのも。

わたしが「なんでね?」と聞くと、

「うるさいんよ。

品物の選び方が。

普通の主婦には思えん」

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今思うと、本当にそうでした。

たとえば、煮干しを買ってきたとき。

テーブルに、広告のチラシの裏の白い方をパー-ッと、ひろげ、

袋から煮干しをあけ、指の先で払うようにして山をくずし、

手早く、少しづつチェックしていくのです。

そして頭とはらわたを取っていきます。

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そばで聞いていると、

「ああ、だめだ!

わーー、失敗。

もう、00(店名)はやめた」

とがっかりしたり、

それでも捨てるわけにはいかないので、

悪いのをていねいにはねたり、

「あーー、今日のは、触ったときからわかった、

いいわ」

「からからに、よぅ、乾いとる」

とか、言いながら選別し、

紙に落ちた小さなごみを掃除してから、

(*ゴミは、庭のちしゃ(サラダ菜に似た味の葉)の肥料に)

1~2本つまみぐいし、

「うん、いいわ」

わたしにも

「どう?」

と、味見をさせるのでした。

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どう?といわれても、

子供のわたしには、おいしい以外の適当な

形容詞も浮かばず、

見た目で、

「うん、この間より、銀色が(皮の)きれいな気がする」

などと、適当に、こたえていました。

月に数回の、日常的な作業ですから、

いつものことと、別に気に留めていませんでしたが、

煮干しの見方は、

腹の部分が銀色に光り、目玉も透明感があってきれい、

乾燥状態がいいと、さわると軽い、

食べても生臭みがない、

ということも、少しはわかるようになって

いました。

尾道のことですし、母のことですから、

腹が脂焼けして酸化し、黄色味を帯びている

なんてことは

なかったような気がします。

母がはねていたのは、うろこが落ちている煮干し、

身割れした煮干しだったのでは、と思っています。

これは、もともと鮮度の落ちた鰯を加工し

たときにあることです。

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掃除した煮干しは、缶に入れて保存していました。

しょっちゅうではありませんが、

習字の半紙の中央に掃除した煮干しをおき、

そのまま缶にスポッっといれていたことも。

乾燥剤がわりだったのでしょう。

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そう、煮干しだけではなく、だしは、海苔の缶に入っていました。

東京・日本橋の山本山の海苔の缶。

あのロゴをみると、母の「だし」への手間のかけ方を思い出すのです。

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母と「だし」。

続きます。

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