引頭佐知(いんどうさち)の料理ブログ

引頭佐知(いんどうさち)の料理ブログ

林先生と薄井先生

2008年12月29日 | ときどき日記

.

「12月、日本に参ります。薄井先生を

お訪ねしませんか」

台北在住の林(リン)先生からメールが舞

い込みました。

.

林先生は、現在T湾在住、

故ご主人・戴教授のご遺稿の翻訳に専念

されていますが日本(井の頭線・久我山)に

お住まいのころは中華薬膳料理研究家と

してご活躍でした。

先生は、昭和30年代にT湾からT大留学、

農学修士という才媛。

その豊富な知識と経験から、他では学べ

ない活きた薬膳料理を教わりました。

.

また料理だけではなく、

トリリンガルの先生の、知的好奇心の

アンテナにひっかかったニューズや

政治の裏話を、

ちょっぴりブラックなユーモアで伝えて

くださるのでした。

さらに自然派でエコ主義。

夏の教室はクーラーなし。

あんなものは不自然!というわけで、

網戸でした。

網戸はお手製。

足はいつも裸足。

ガスレンジに点火するときのマッチ1本も

2回使ったりの、

無駄をなくした徹底ぶりでした。

生徒は、そんな先生を楽しんでいました。

.

写真は、林先生の著書。

Img_2037

.

薄井喜美子先生は、そのとき、わたしたち

と同じクラスの生徒さんでした。

元、私立某女子高校の校長先生。

明治45年のお生まれ。現在96歳。

いつお会いしても、

おばあさんではありません。

シャープな頭の働き、上品さ、さらには慈し

みの心と笑顔など、

人として見習うべきものを数多く備えた方。

教室でお会いできるのも、みんなの楽しみ

のひとつでした。

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写真は、薄井先生の著書。

Img_1982_2

2年振りの訪問です。

実は、突然お伺いしました。

お2人の会話です。

.

浜田山の瀟洒なホームのお部屋にお邪魔し、

座が落ち着いたところで、

薄井先生の第一声。

林先生に

「T湾のニュースは、テレビや新聞で拝見しております。

なかなか、お国の政情も、たいへんでございますね」

「はい、もう、次から次へと問題が起こります。

情報を集めましてね、これは許せない!

と思いましたらデモに参加いたします」」

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「やはり!!!

テレビでT湾のデモを見ますたびに、

林先生がいらっしゃらないか、

お姿を探しておりました(笑」

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「デモのとき、わたくしは、

ちょっとつばの広い野球帽をかぶって、参加してます(笑)」

「わかりました。

今後は帽子を目印に探すことにいたします」

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「娘が、テレビのニュースでみつけまして

ママ、前に出ないで!と申します(笑)」

「(笑)危険でない程度に、

前にお出になってください。

そうでないと、テレビで見れませんもの」

「前にでて、

大きな声で言いたいこと言わなきゃ、

デモに参加する意味がございません。

声が届くよう、大きな声を張り上げてます」

林先生、片手を突き上げてます。

.

他の生徒

「え、先生、そんなにいらしてるんですか?」

.

「許せない!と思うと行くのよ。

これは、国民の義務であり、権利ですから」。

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薄井先生「・・・日本も、どうなりますか。

年々おかしくなります」

「久しぶりに日本のテレビを見まして心配

になりました。程度が低すぎますね。

心配というより、不安になりますね。

くだらない番組の垂れ流し。

あんなもの、将来のある子供に見せては

いけません。

危機感、なさすぎ。

T湾も日本のことなど言ってられない番組

があります。

でも、政治番組に熱心な局があります。」

.

「あ、そうそう、そういえば、

この方、素晴らしいですね、

日本に着いてから数冊買いました」。

薄井先生「あ、姜さんですね」

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「時間があると、この方の本を読んでいます。

場所によって読み物は変えます。

電車の中では、読みやすい対談をバッグに

入れてます」

「対談ですか。では、ちょっと出版社をメモ

らせていただきます」

薄井先生は、素早くペンとメモノートをひざ

上に置くや否や、まるで書記のように、

手早くペンを走らせます。

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「このたびは、娘と孫も一緒に参りました」

「台北では、お孫さんにおいしいお食事を

作ってさしあげて・・・」

「いいえ、孫のことは娘がすればいいと

思ってます。

それは娘の仕事です。

わたくしの時間は、わたくしが使います。

主人の遺した仕事を含め、

死ぬまでにしておきたいことがたくさん

ございます。時間がもったいなくて」

「薄井先生は、毎日、どんな風にお過ごしですか」

「読書と、いただいたお便りに、

毎日お返事を書いて過ごしております」

「毎日ですか」

「はい、毎日。

毎日お便りを頂戴しますので。お返事を・・・」

.

*薄井先生の後ろの整理ダンスの上は、

クリスマスカードです。

床には、大きな紙袋に手紙がぎっしり。

毎日、どこかで誰かが先生を思い、

ペンを走らせているんですね。

.

2時間半程たのしくおしゃべりし、

再会を約束し、おいとましました。

清々しい気持ちってこういうもの、

と思いました。

お2人の先生は、本物の先生です。

.

その2日後のこと。

あるお店で、

薄井先生が校長をなさってた高校の、

現役の先生を紹介されました。

偶然の出会いに驚きながら、

薄井先生のお話をしたところ、

「あ、薄井先生、

わたしはお会いしたことはありませんが、

お名前は存知上げております。

学校では、伝説の方です。

薄井先生以上の教師、校長は、

現れていない、と。

<別格の方>ということです」。

.

うれしくなりました。

残念ながら、

3月2日、大雨の日、

薄井先生は、おひとつ歳を重ねられ、

97歳で天国へ召されました。

親しくしてらした方のお話によると、

毎日、お便りが届くのはもちろんのこと、

毎日、どなたかが訪れていらした、とのこと。

クリスチャンの薄井先生。

お墓は、みなさんと一緒の共同墓地に、

とお望みだった由。

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さよなら!セタガヤママ

2008年12月25日 | ときどき日記

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*写真は、今年7月に撮ったものです。

.

経堂駅から徒歩18分、住宅街、桜小学校のそばに、

「セタガヤママ」という自然食のお店があります。

6畳位のログハウスを2軒ジョイントさせた小さなお店。

自然食の食品や有機栽培の野菜、

店主・正子さんの手作りのランチが人気のお店でした。

昭和50年代末、開店当初は、

店内で、1日数時間、ミニFM放送局つくり、発信していたとか。

.

あれは昭和60年代の後半だったか、

わたしが初めて訪れた日、

お客の姿はなく、正子さん1人。

「いらっしゃいませ」

と言った声がくぐもっており、彼女は涙ぐんでいました。

初めて飛び込んだお店で事情がつかめないわたし。

困ったな、と思いつつも、

「どうなさったんですか?」とたずねたら、

西道路に面した窓辺に手招きし、

「明日、お隣のその桜の樹、切られちゃうんです。

敷地にマンションが建つんですよ。

小さいころから眺めてた、大好きな桜なんです。

今も、業者の人に、残す方向で考えてください、と言ってみたけど、

切らないとマンションが建たないって・・・。

40数年見てきた桜です。

もう、悲しくて・・・」

.

「樹との別れのとき、

これは植木屋さんから聞いた話なんですけで、

お酒を根のまわりに撒いて、

「ありがとうございました」って、

お別れするといいと言ってましたよ。

送る人の自己満足かもしれませんけど」

すると、ぱっと、顔が明るくなり、

「じゃ、明日、職人さんが来る前にしてみます」

西向きの小さな窓辺に2人で並んで立ち、明日、伐採されることなど

なにも気がついていない

言葉を知らない

大きな桜の樹をながめていました。

大きいな、

どれだけ長い間、多くの人を楽しませてきたのだろう。

ながめているうち、わたしも、初めて見る桜なのに、

鼻がツンと痛くなりました。

.

正子さんは、その日の印象通り、感受性の豊かな、

文学少女がそのまま大人になったような人でした。.

わたしは、それからときどき通うようになり、

お店でいろんな人と知り合い、経堂での友達もできました。

.

正子さんは、約20数年、セタママを1人できりもりし、

集まる人たちの話を聞き、

背中を押したり、

くらしの知恵を与えたり、

子供を預かったり、

どこか教会や学校のような場をつくっていました。

しかし、

昨夏、病に倒れ、あっという間に他界。

お店は、

お嬢さんとそのお友達があとを引き継ぎ、1年半経ちましたが、

27日(土)、閉店することになったそうです。

.

写真は、19日、当時の仲間が集まってのさよならパーティ。

12人集まりました。

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手前は、引き継いでがんばってきたゆっこさん。

アイルランドに短期留学することになりました。

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さよなら、セタガヤママ。

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ありがとう、セタママ、正子さん。

.

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日本料理教室(2008年12月)つぶ貝の煮物、鶏手羽肉の醤油煮、昆布巻、まながつおの柚庵焼き、小かぶ

2008年12月17日 | いんどうさち日本料理本科

.

このクラスは、昆布巻き以外のお正月料理のほとんどを

履修済み。というわけで、昆布巻きプラス冬の料理です。

お正月料理を期待された方、ごめんなさい。

.

<おまけ料理について>

料理をつくることが楽しみな教室ですから、材料が残ると、

これでなにかつくりましょう!っていうことになります。

残すのもったいない!と。

たとえば、今回、まながつおの柚庵焼きの<あしらい>は、

小かぶのあちゃら漬け。

すると、「葉は、炒め煮ですね?」って必ず声がかかります。

油揚げは冷蔵庫にいつもありますから茹でて油ぬきし、

葉を炒め、出汁を加えて少し煮て油揚げを加え、

みりんとしょうゆを加えて火を止めて、器に。

生徒さんが自発的につくり、1品出来上がりです。

久松農園の野菜を使うことが多いので、野菜によっては、

2~3ヶ月同じ材料が続くこともあります。

水菜、小松菜、スティック・セニョール・・・などなど。

食卓に毎日あってもあきない、2~3分でつくれる

「葉野菜の炒め煮」のようなおかずをくり返すのは、とてもいいこと、

と、わたしは思っています。

繰り返すうち、自然に身につきますから。

みぞれ酢もそう。

大根がないことはない、この季節に、よく作ります。

三杯酢で作る方法もありますが、

かんきつ類が出回り始めたら、かんきつ酢としょうゆ5:5、

合わせてポン酢を作り、おろし大根に加えれば、

みぞれ酢のできあがり、です。

今回は、大根おろしが余り、冷蔵庫にはなまこがあったので、

なまこのみぞれ酢のできあがり。

教室のおまけ料理は、なにも考えず、ふんふんふ~~ん♪と、

ささっと作れる料理です。

.

さて、下の写真の魚、なんという魚かご存知ですか?

まながつお、です。

「西海に鮭なく、東海にまながつおなし」といわれてて、

関東から以北方面の方は、初めて見る方が多いと思うので、

軽くご紹介しましょうね。

.

まながつお。

かつお、といっても、鰹とは別種で、マナガツオ科の魚です。

えぼ鯛、メダイも同科。

旬は12月~2月。

料理法は、新鮮ならば刺身でもよし、、

焼きものなら照り焼き、柚庵(幽庵)焼き、西京焼きに。

あ、揚げ物にも使います。中華料理にもよく使われますね。

台湾の魚屋さんでもよく見かけます。

.

教室では、今回は、柚庵焼きに。

今日のは、1,170g

これくらいあると、10人分の焼きものがつくれます。

5枚おろしにします。

このクラスでは初めてのまながつお。

扁平だし、骨がやわらかいから、ちょっとむつかしいかな。

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顔、アップしましょう。こんな顔してます。

誰かが「こんな目のおじさん、会社にいます!」

と、言ってましたが、こんなに目の澄んだおじさん、

いるのでしょうか?

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まな板の上に新聞紙を敷いて、うろこ取り。

魚は、内臓を取り去るまでは新聞紙の上でさばきます。

今回の5枚おろしは、4人で交替してさばきました。

まながつおを捌くのは初めてなので、

「あ、包丁が骨の下に」

「あ、ちょっと包丁が骨の上に」

失敗したら、みなさん手際よく(?)切れ端を分け合って、

お醤油つけて、つまみぐい。

「おいしーー!」

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背側は、3枚。腹側は2枚に。

柚庵地に漬けます。

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昆布巻き用のごぼうです。

昆布巻にごぼう?

今回は、穴子と一緒に巻き込みます。

ごぼうは、ぬかでゆでます。

ぬかの量は、ひとつかみ。

大きな手のKさんのひとつかみでした。

もう、少し、少なくていいです(笑)。

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やわらかくなりました。

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戻したかんぴょうです。

おっと、写真、取り忘れそうでした。

右はゆで汁。おいしいんです。みんなで飲んだ残りです。

かんぴょうは、無漂白の天日干しのものを選びましょうね。

真っ白いかんぴょうは、亜硫酸ガス処理しています。

亜硫酸ガス=硫黄蒸し。

どうしてそんなことするかっていうと、

かんぴょうは、長くおくと、

色が茶色っぽくなり、かびやすく、虫がつきやすいのです。

硫黄蒸しすれば、、漂白、殺菌、殺虫でき、保存性が高くなるのです。

消費者にとっては、恐い処理です。

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かんぴょうは、おすしに使うだけじゃありません。

無漂白の上質のかんぴょうを煮物にしてもおいしいし、

産地の栃木近辺では、味噌汁や吸物の実としてもよく使われています。

そうそう、とってもカルシウム、豊富なんですよ。

ちょっと使って袋に入れっぱなし・・・ではなく、使い切りましょう。

水洗いして、よく塩もみし、やわらくしてからゆでてくださいね。

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日高昆布を戻し、ゆっくり煮ます。

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煮汁が少なくなってきました。

あらら、左上の昆布、かんぴょうの帯がほどけてますね。

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下は、20分でつくれる鶏の醤油煮。

前日、六本木を歩いてて見つけたお肉屋さん。

(六本木通りをはさんで、全日空ホテルの、斜め向かい側辺りです)

肌が美しく、ふっくらみごとな手羽先に、一目惚れ。

クリスマス、お正月料理におすすめ、と、

ついつい、みなさんに食べさせてあげたくて献立に加えました。

ま、はっきり言って、わたし、手羽先、好き。よく登場します。

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煮汁、少ないので、ときどきひっくり返してね。

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かきごはん用のかきは、小さいかきを使います。

かきの選び方は、ひだの色が黒く、ぷっくりしていること。

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福森雅武さんの、土楽窯のお釜です。

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炊きあがりました。

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これは、橙(だいだい)です。

5月のブログで、とろろ昆布の吸物の吸口に使ったのが、

この橙の花です。

かんきつ酢の中で

いちばんすっきりしている味の橙。

河豚や水炊きに欠かせません。

一昨年まで、この時期、1箱取り寄せ、

絞って一年分の酢を作っていました。

.

今回は、大根おろしが余ったので、

なまこのみぞれ和えに使います。

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こんな風にまん中をむいて、さらに横半分に切り、しぼります。

1回でしぼります。

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根菜のおいしい冬。

蓮根もそうです。

蓮根をおろして、蓮蒸し。

具は、百合根、銀杏、紅葉麩、しめじ、三つ葉。

八方だしで下味をつけて蓮根と混ぜあわせて蒸します。

穴子や海老を加えるとおいしいのですが、今回は、精進で。

蒸しあがったら、熱々のたっぷりの銀あんをかけて。

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下のお椀、これ、まだ発展途上の吸物。

お椀の名前、まだ、書かないことにします。

ちょっと満足できなかったのです。

どうしたらいいか、考えてて、昨日、小田急線の電車の中で、

頭に電球がつきました。

電車に乗っててもね、いろいろ考えるのです。

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鶏手羽先の醤油煮。調味料もほんとに少なく、時間も20分だけ。

でも、おいしい。

この盛り付け、「巣ごもり」というものです。

鶏が卵を抱いて巣にこもるとひよこが生まれるでしょう?

子孫繁栄、という意味があります。

お祝いのパーティなどにおすすめです。

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昆布巻きです。

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向こうに見えるのは、つぶ貝の煮物、

まながつおの西京漬け、写真は、この教室の生徒さんのブログ

FOOD MEMORIESをごらんください。

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食後の、片付け中。

片付けは、1人だと楽しくないけど、みんなと一緒なら、あっという間。

笑って終りました。

今回は、品数が多く、同時進行だったため、

カメラが追いつきませんでした。

.

このブログをお読みくださってるみなさま、

来年も、どうぞよろしくお願いいたします。

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出汁とり教室2008年11月 削りかつおと昆布の食べくらべ、里芋と鶏肉の煮物、豆腐と海苔の吸物、炊き

2008年12月10日 | いんどうさち だしとり教室

今月は、初参加の方がお2人。

お1人は、杉並区在住のSさん。

月初めに,こんなお電話を頂戴しました。

.

「タイコウさんの削りかつおを使ってます。

「花くらべ」で正しい出汁の取り方を知りたいのですが、

そんなリクエストできますか?

というのは、実は、「花くらべ」、ふりかけて食べてるだけなんです。

でも、とってもおいしいので、お出汁を味わってみたくなりまして」。

.

もう、お1人は、ロサンジェルス生まれ、日本滞在4年、

小学校英語教師アンディさん。

日本語ぺらぺら、大の和食好き。

昨年滞在していた沖縄・那覇でマクロビオティックに触れ、

以来、自炊のときは、玄米食だそう。

和食のスープストックの出汁に興味津々。

.

Sさんのおっしゃるように、

「花くらべ」は、旨みの強い最上品、

ふりかけて食べるのもおいしいのですが、

やはり昆布の最上品、真昆布とで一番出汁を取れば、

これ以上ない、最上級の出汁が味わえます。

鰹節と昆布に限らず、出汁素材は、組み合わせて

出汁を取れば、相乗効果で、より旨みの強い出汁になります。

このことは、ご自分で実験してみればわかります。

.

さて、教室をはじめましょう。

まずは、出汁素材を食べてみて、味(塩分も)と香りを把握します。

タイコウさんの削りかつお、

枯本節の「花くらべ」と、花かつおの「だしはこれ」の2種と、

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スーパーなどでよく見かける削りかつお、昆布を同時に並べて

味くらべをします。

Sさん、アンディさん、

市販品の<めんつゆ>が出汁がわりだそう。

アンディさん、和の繊細な出汁素材の味、わかるでしょうか。

.

3種の削りかつおの味くらべ

上が、某社の削りかつお。

下の2種は、タイコウさんの削りかつおです。

右が、かび付けをしていない荒節、花かつおの「だしはこれ」。

左が、かび付けを3回重ねている枯本節の「花くらべ」

みんなで試食をします。

アンディさん、積極的につまみ、味見をしています。

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「いかがですか?」

.

なんと、

なんと、

アンディさんが即座に、某社の削りかつおを指さし、

「すぱい(すっぱい)です」

他の方も、異句同音に、すっぱい、酸味を感じる、渋味がある、

いつまでも酸味と渋味が残る、という感想でした。

.

「では、タイコウさんのは?」

アンディさん、

「両方共、すぱくない」

「花くらべ」を指さして、「これは、味が深いです」

「だしはこれ」を指さし、「あさり(あっさり)してます」

アンディさんの的確な反応に、もう、みなさん、口をあんぐり。

そうなんです。

タイコウさんのは、2種共、全くすっぱくありません。

メンバーのある方は

「いやー、某社の、わたし使ってました。

すっぱいということ、

こうして比較したからわかりましたが、

それがかつお節の味だと思ってました」

.

昆布の味くらべ2種

左は、川汲浜の天然真昆布、

右は、天然羅臼昆布です。

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羅臼は、根元が細く、うちわのような形をしています。

昆布によって、形がちがいます。

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下の写真、

右は、真昆布、左は、羅臼昆布

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昆布の味のちがい、いかがですか?

.

また、また、アンディさん!

真昆布を指さし、

「これは、甘いです。味は、やさしい」。

羅臼は、

「少し塩が強いです。味は、濃いです」

う~~~ん、アンディさんすばらしい。

思わず、拍手したくなりました。

右の真昆布、切り口が白いのは、

わたしが、わざと、ぺクンと折ったもの。

厚みがあるでしょう?昆布は厚みが大切です。

この厚み(とくに中央部分)に旨みが詰まっているのです。

.

さて、

今回の出汁、

削りかつおは「花くらべ」と「だしはこれ」の2種、

昆布は、北海道・道南地方、川汲浜の天然昆布1種です。

鍋をならべて、同時に取りました。

.

実際は、もう少し、薄いのですが・・・。

澄んでるでしょう?

① だしはこれ+真昆布

白い器によそってみました。

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②花くらべ+真昆布

同じく白い器に。

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.

さぁ、取った出汁をつかって料理しましょう!

<献立>

一、里芋と鶏肉の煮物

一、豆腐と海苔の吸物

一、炊き込みごはん

一、白菜、きゅうり、昆布の浅漬け

昆布は、出汁を取ったあとのものを再利用

.

.里芋と鶏肉の煮物用の里芋です。

皮をむいたそばから水に放してアクぬきします。

9月にも書いたと思いますが、今年は、里芋の当たり年のよう。

みずみずしくて、むっちりしています。

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久松農園の白菜、見た目よりずっしりと重い。

ちぎると、切り口から水けがふきだしてきました。

味も、みずみずしくって甘い。

浅漬けにします。白菜ときゅうり、出汁をとった昆布,塩できまり。

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アンディさんは、白菜をちぎってます。

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炊き込みご飯用の下ごしらえです。

具は5種。干し椎茸、ごぼう、にんじん、こんにゃく、油揚げです。

あ、そうそう、

炊き込みごはんは、出汁で炊きますよ。

今回は、真昆布と花かつおの「だしはこれ」で取った出汁で。

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ごぼうは、I さん、笹がき、がんばってます。

干し椎茸はボウルに入れ、ひたひた程度の水を加えて戻します。

油揚げは、必ず、沸騰湯に入れて約2分、ゆでましょう。

油ぬきのためです。

最近、油ぬきしない方法が流行っているそうですが、

油ぬきをしないと、料理のあとくちがよくありませんし、

出汁や、調味料をふくみません。

.

カンタン、という言葉に、魅力を感じる人が多いようですが、

手抜きをしておいしくない料理を作り、料理作りに興味を失う

若い人、ほんとうに多いのです。

残念ですし、その人の一生を考えると恐いことです。

必要な手間、少しは、かけましょう。

それでグンとおいしくなるのですから。

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はい、炊き上がりました。

香りが台所いっぱいに広がります。

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ごはんを炊いたときの、いちばん幸せなとき。

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里芋は、出汁を大目に使って味をふくませました。

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炊き込みごはんです。

みなさん、おいしいと、おかわりに忙しいことでした。

そっと、3膳食べた人、誰?

全員です。

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浅漬け。出汁をとったあとの昆布の再利用です。

左下の昆布、厚み、見えるでしょう?

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他の料理を食卓に運んでからお吸物の仕上げです。

このお吸物の出汁の削りかつおは、枯本節の「花くらべ」。

調味料は塩をつかわず、薄口しょうゆだけ。

そのかわり、海苔と吸い口に柚子の皮をあしらっています。

塩をつかわないお吸物、「花くらべ」ならではの、冒険です。

とっても好評でした。

汁の実の木綿豆腐も、お豆腐の味がしておいしい、と。

アンディさん、外人風に頭をふり、

「う~~~ん、とっても、おいしいです」

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「里芋大好きなんです。

おいしいです」と、左端の松木さん。

翌日の日曜日、親娘2人で復習しました(おかあさんの証言)、

とのことでした。

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食事がはじまって、数分後、

Sさんと、アンディさんから、こんな発言がありました。

「おいしいです・・・、めんつゆ、もうやめます」。

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今月つかった出汁素材

●削りかつお

鹿児島・枕崎産

枯本節「花くらべ」700円(50g)

荒節・花かつお「だしはこれ」500円(80g)

取扱い店=(有)タイコウ

東京都中央区晴海3-4-9鰹節センタービル

電話03(3533)4834

FAX03(3533)4622

●昆布

天然まこんぶ(並)1800円100g

大阪市中央区谷町7丁目6番38号

こんぶ土居

電話06(6761)3914

FAX06(6761)7154

12月の出汁教室(だしきょうしつ)

12月27日(土)午後2時~4時

毎週第4土曜日です。

<料理>

年越しそばorお雑煮=リクエストできめましょうね。

筑前煮

紅白なます

費用4000円(材料費込み)

料理、出汁、初めての方、歓迎します!

引頭佐知・出汁教室

<お申し込み>

E-mail indou-dashitori@aurora.ocn.ne.jp

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はじめまして。

2008年12月08日 | ごあいさつ

料理研究の仕事をしている引頭佐知(いんどう

さち)と申します。

.

このブログは、主に料理を中心とした内容+趣味

少々で展開していく積りですが、始めるにあたり、

料理に関して本当にたくさんのことを教えていただ

いた方に、ご挨拶をしたいと思います。

東京・杉並区A駅の関西料理店「竹本」さんのご主

人です。

知る人ぞ知る有名店でした。

たとえば食関係の人々との、おいしい日本料理店

の話題のとき、お店の名前がひと通り並んだあと、

「では、中央線A駅の竹本さんをご存知ですか?」

何度聞かれたことでしょう。

「とっておき」の、そういうお店でした。

.

1年12ヶ月。おとうさんの手による、

巡りくる季節の、香り高い料理には、気品と華があり、

おいしい、などという簡単な言葉では表せないもので

した。

その一品、一品に、

材料をみる眼の厳しさ、

手間を惜しまない完璧な仕事ぶり、

高い美意識、

陶磁器への造詣の深さがうかがわれ、

その芸術的な素晴らしさは、枚挙の暇がありません。

当然、上質のお客にめぐまれ、愛されたお店でした。

多くのマスコミ取材を断り、

常連客を大切に料理し、騒がず、淡々と料理に向う

方でした。

休日は、読書や次男Hさんと陶磁器を中心とした

美術館通い。

コレクションの器の数も夥しいものがあり、

料理をいただいたあとの、器談議も竹本のおとう

さんならでは。

「まるで、ゼミのよう」、と称した人もいました。

.

築地でも「あんなに見る目のある職人さんはい

ないね」、

「最後のちゃんとした職人さん」と業者の方にも

高く評価されていた方でした。

師匠とはとても呼べない、雲の上の方でしたが、

不肖の客のわたしの仕事によく眼を通してくだ

さり、感想を頂戴しました。

ほんのひと言でしたが、そのひと言でまた次の

仕事のときのヒントになり、すこしづつ育ってき

たような気がします。

調理法で悩んだときは、夕方4時ごろ電話でう

かがうのでした。

わたしの質問のボールは直球でミットにストン

と入るのですが、おとうさんの回答は、ワンバ

ウンドやカーブで投げ返され、

自分でもう少し考えなさい、というものでした。

どんな仕事でも、作業中に「竹本のおとうさん」

の眼をいつも意識することができたのは、本当

に幸せなことだったと、思います。

2年前、現役でお亡くなりになられました。

享年82歳。

このブログも、1番最初に読んでいただきたい、

その積りで書きこみます。

わたしのことですから、ときどきふざけますが

「ほんっとにもう、しょうがないねぇ」と許しても

らえるはずです。

では、おとうさん、始めます。

チェック、よろしくお願いいたします。

2008年5月10日。

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