波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

「5人の仲間」

2020-04-20 10:57:19 | Weblog
世間を知らないで突然世の中に飛び出し、事務所を任されたものが、何ができるか、何をしなければいけないか、わかるはずはなかった。まして家族の人間しか知らないで育ってきた者が家族以外の人間をどう扱うかなど知る由もなかった。人を判断することも自分中心で考え自分と違うとどう判断したらよいかもわからないのである。取引先の部長さんが弟を頼むといって帰った後、数日後、ふらりと一人の若者が事務所にやってきた。形ばかりの挨拶はかわしたものの、経歴、履歴を話すわけでもなければ何も言わない。「何をすればよいんだ」という態度でいるだけである。とりあえず岡山の本社へ行って研修を受けてもらうことにしてもらう。
その間に兄の部長さんに再度会い、今までの経緯を聞くことにした。「彼は最近までプロのゴルファーだったらしい。所謂アシシスタントプロとよばれているしごとである。大学を中退しどこかのゴルフ場に籍を置き金持ちのお客さんを相手にゴルフを教えていたらしい。もちろん正式なゴルファーになるのが目的である。
普段はゴルフ場で何人かの客を相手にして終わると、接待でご馳走になり飲んで食っての時間で過ごす。いつの間にかヘビードリンカーになり、酒がないと居られないアルコール中毒に近い状態になっていたらしい。体も悪くして医者に見立てではこのままでは体がもたないと注意を受けたという。希望のゴルフアーへの道も断念せざるを得なくなってしまった。兄として何とか助けてやりたいという思いで連れてきたのだという。なるほどそれでいくらかわかってきた。態度も横柄で挨拶もきちんとできないし、余計な口は利かない。果たして営業としての仕事ができるのか、心配になってきた。ある意味で落ちこぼれ状態だが、大丈夫か、?
そんな思いで岡山から帰ってくるのを待ちかねていた。そして「君にはこの地区のお客さんを任せるので一度挨拶に行ってもらいたい」と指示してみた。
一人の侍の旅たちである。

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