波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

個室     第2回

2016-04-11 11:51:32 | Weblog
独身時代は誰でも自由であり、何でもできることの楽しさがあった。一夫も結婚前の初めての就職で毎日が楽しかった。通勤は時間がかかったが苦にしたことはない。生来ののんびりやであることが幸いしているのか、気にならなかった。ただ父親の行動から成人になって酒を飲むことを覚えて過ごす時間だけが楽しかった。
仕事は客周りを巻かされて毎日出かけることが多かった。客先は塗料を扱う会社だったが一夫は
どこへ行っても大きな会社でたくさんの人がいて驚くことばかりだった。
田舎言葉でとつとつと話すのが、好感を持たれて評判が良く仕事は順調だった。三年ほど東京での仕事をして慣れてきたころ、ある日上司に呼ばれた。
「今度大阪へ店を出すことになった。誰かに行って貰うことになるが、君は独身だし身軽だから君に言ってもらおうと思うがどうだ。?」「えー、私がですか。大阪なんか行ったこともないし
全く何も知りませんよ。」「心配しなくても大丈夫だ。其のうちすぐ慣れるしおぼえるよ。それに地元で一人採用するからその人に教えてもらいながら仕事は君が責任を持ってくれれば良いのさ」事務所は天満と言うところだったが、下宿はなぜか西宮のほうで、少し電車で通うには時間がかかった。それでも地理を覚えるには都合が良く、時間があるとぶらぶらと歩きながら地理を覚えることが出来た。
彼のアパートの隣に新聞配達の販売所があった。朝が早いので、一夫も何時しか早起きが見につくようになった。館林にいたときから早起きは習慣だったし、苦にならない。
起きると隣へ行き、新聞を読むのだが、はじめはお金を払っていたが、何時しか金を払わないでもらえるようになっていた。何人かの若者が配達に回るのだが。其の店の娘が其の手配をしていた。それが時子とのであいであった。時子は明るく、いつも元気な声で挨拶をする。
「松山さんおはよう。元気。二日酔いじゃないの」いつのまにか一夫のことを知っていたのだ。
「うん、、今朝も頭が重いんだ」「しょうがないわね。」それが毎朝の会話になっていた。