波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

           オヨナさんと私   第64回

2010-02-05 09:52:06 | Weblog
何故だか、何時からかそんなことは良く分らないのです。でも出会ってから二年もたち自分よりずっと年下の彼のことが忘れられない。もちろん家庭もあり幸せに生活している。
そんな彼のことが忘れられなくて、何時も自分の中では何とか乗り越えていかなければと思いつつ、彼のことを思うとつらくなり、自然に涙が出てきてしまうのです。
そして暫くは自分の気持ちを処理できなくなってしまう。今はもう半年も会えなくて、本当はもう終わりかけているのですが、悩んでいます。「こんな事ってあるんですね。」と彼女は訴えるように話す。あたりは誰も訪れる人も無く、静かである。オヨナさんは歩きながら
話を聞き、彼女の顔をまじまじと見た。話が額面どおりだとして聞いて、確かに彼女にとっては大きな問題かもしれない。しかし、彼には何故か伝わってくるものが無かった。
何か其処に作られたもののようなものが感じられたからである。
人生の中では男であっても、女であっても、このような出会いはあり、心が動くことはしばしばあるだろう。しかし、一時の感情で動いて自分の大事なものを失ってはならないと思うし、まして築いてきた家庭の一人一人の心を傷つけることは許されないであろう。
「良い思い出が出来ましたね。そんな素敵な時間を持つことが出来ただけで幸せだったと思ってください。そして今を大切にしてください。」オヨナさんの気持ちには本当はもっと強く咎めたい思いもあったが、彼女の思いを大事にしたかった。そして裁くことが本意ではなく、自分ではないことも知っていた。彼女も暫くは心を痛め、傷つくだろうけど、その内時間と共に癒されていくことだろう。そのことを願ってのことだった。
其処から再びバスへ乗り、南に行くと瀬戸内海へ出る。そしてその途中に「伊部」と言う町があることを知っていた。そこは「備前焼」の産地として有名である。
何時か機会があればこの焼き物を本場で感じて見たいと思っていたので、この機会にと立ち寄ることにした。釉薬を一切使わないこと、地元の田を掘り起こして取り出した土と黒土を混ぜ合わせた鉄分を含んだものを原料として焼く。一見何の派手さも無いが、一つとして
同じ模様にならないことが特色であり、飽きがこないのも良いとされている。
明日はこの夢を堪能することが出来ると、少し興奮する思いでその夜をすごしていた。