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日韓の歴史をたどる㉒ 創氏改名 天皇への忠誠迫りながら差別維持

2020-05-21 08:32:26 | 日韓の歴史をたどる
日韓の歴史をたどる㉒ 創氏改名 天皇への忠誠迫りながら差別維持
水野直樹
みずの・なおき 1950年生まれ。京都大学名誉教授。『創氏改名』、『在日朝鮮人歴史と現在』(共著)ほか

朝鮮の植民地支配期に行われた政策の中でもっともよく知られているのは、創氏改名であろう。一般には、朝鮮人の名前を日本名に改めさせたもの、同化政策の端的な表れと理解されているが、この政策の本質を明らかにするにはその理解では不十分である。社会の基本である家族制度の問題として考える必要がある。

朝鮮の家族制度 戦争協力の障害
日本の家族制度と朝鮮の家族制度には大きな違いがある。日本では明治期に、家(イエ)制度が成立し、家長(戸主)を中心とする「イエ」が天皇制国家の社会的基盤となった。現在でも結婚する際は夫婦どちらかの姓を選び、家族はすべて同じ氏(名字)を名乗らなければならないのは、家制度の名残である。
それに対して、朝鮮の伝統的家族制度は、父系(男系)の血族集団を中心としていた。子どもは父の姓を継ぎ、それは一生、変わることがないという慣習があり、女性は結婚しても姓は変わらない。結婚相手には異なる姓を持つ者を選ぶ慣習もあったため、必然的に夫婦別姓となった。
日本が朝鮮を支配し、朝鮮人に天皇や日本国家への忠誠心を抱かせ戦争に協力させるうえで朝鮮の家族制度は障害と考えられた。



創氏改名によって「李茂畑」を「武田茂」に書き換えた通信簿(在日韓人歴史資料館所蔵)

国家中心の観念「培養」するため
父系集団への帰属意識が強いままでは、天皇への忠誠心を抱かせることができない、日本の家制度を朝鮮に持ち込む必要がある、そのためにはまず名前のあり方を変えねばならない、と植民地支配者は考えた。
朝鮮総督南次郎は創氏の目的を、「半島人〔朝鮮人〕をして血族主義から脱却して国家中心の観念を培養し、天皇を中心とする国体の本義に徹せしめる」ことにあると説明していた。
朝鮮人に家族の名称である「氏」を名乗らせる(=創氏)ために、日本の民法にあたる朝鮮民事令を改めて、1940年2月11日(当時の「紀元節」)から6カ月間に「氏」を届け出ることが義務化された。公務員や教員などが手本を示し、村や町では役所、愛国班などが家々を回って届け出を「督励」した。氏は2字からなる日本的な名字がよいとされた。
それでも届け出ない場合は、戸主の姓がそのまま「氏」となった。例えば、戸主である金○○が氏を届け出ない場合は、戸主はそのまま金○○だが、妻である李△△の法律上の名前は金△△になった。これは本人の意思と関係なく、法的強制であった。

日本人との区別つけられる名前
一方で、植民地支配秩序の維持のために、名前で日本人と朝鮮人を区別する必要があると考える当局者もいた。特に警察当局は、取り締まりのためには区別がなければならないと考えていた。適用する法令が日本人と朝鮮人とで違っていたり、同じ仕事でも給料や待遇に差別が設けられたりしていたので、名前で区別できるほうが便利だという考えである。
そのため、氏の設定では、なるべく日本人と区別できるものにするよう誘導された。もとの姓に1字を加える(金→金山など)、本貫(父系集団の祖先の発祥地)にもとついて氏を定めるなどで、「朝鮮的な氏」を定める例が多かった。さらに、「改名」、つまり下の名前を改めることは実際にはあまり奨励されず、8割の家が創氏を届け出たのに対し、改名をしたのは人口の1割にとどまった。
「創氏改名」は、朝鮮に日本的な家制度を持ち込むことによって、天皇と日本国家への忠誠心を植え付け、戦争に協力させる一方で、植民地支配の維持のために日本人と朝鮮人を区別・差別するという相反する目的をもつ政策であった。
1940年から45年まで実施されたこの政策で朝鮮社会に家制度が根付いたわけではない。その一方で大きな混乱を引き起こした。例えば、日本軍兵士とされた朝鮮人戦死者は創氏名で記録され、遺族を探す障害となっている。何よりも社会の基礎である家族のあり方を強権的に変えようとした政策であるだけに、強制された人びとに癒やしがたい傷を残したことを忘れるべきではない。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年5月20日付掲載


戦前、日本と朝鮮とでは、家族の制度が違っていたのですね。
男系が優位という点では共通した点がありますが、朝鮮では妻は結婚しても性を変える必要はなかった。
そのままでは、天皇への忠誠心に障害が出る。
日本の家(イエ)制度を持ち込ませることと抱き合わせの創氏改名だった。


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