けいざい四季報2018Ⅱ① 世界経済 「米国第一」孤立深める
①米国が安全保障を理由に鉄鋼とアルミニウムの輸入品に対して追加関税を導入
②米国が知的財産権侵害を理由に対中制裁関税。中国が報復して貿易摩擦が激化
③G7サミットで米国に批判が集中。米中間選挙を意識し、貿易問題で支持狙う
貿易赤字の削減を最優先する「米国第一」への批判で、米国が孤立を深めています。米中間では、米国の制裁関税と中国の報復関税の応酬で、貿易摩擦が激化しています。
安全保障理由に
米国は5月31日、欧州連合(EU)、カナダ、メキシコに対して鉄鋼とアルミニウムの輸入品への追加関税を導入すると発表しました。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を上乗せします。
これに対し、EU、カナダ、メキシコはそれぞれ、報復関税計画を表明しました。
3月23日導入された鉄鋼・アルミへの追加関税は、安全保障を理由に貿易制裁を認める通商拡大法232条を根拠にしたものです。導入時には、EUと、カナダ、メキシコ、韓国、オーストラリア、ブラジル、アルゼンチンの6力国が除外されていました。
安全保障を理由にしていますが、貿易赤字の削減を最優先するトランプ政権が、貿易交渉での取引材料にしようとしていることは明らかです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/54/5d5d3f3ab2fd4b1797e17e5c2e378e8f.jpg)
会議に出席したG7首脳=6月8日、カナダ・シャルルボワ(ロイター)
世界経済の主な出来事(4~6月)
中国に制裁関税
3月末に実施した鉄鋼・アルミへの追加関税のほか、米国は4月3日、知的財産権侵害を理由に通商法301条に基づく対中制裁関税の原案を公表しました。貿易摩擦を回避する協議が行われましたが、6月15日には米国が制裁関税の最終案を公表しました。総額500億ドル(約5兆5300億円)相当の1102品目を対象に25%の追加関税を課します。第1弾として7月6日から818品目に課税し、残りの284品目は企業などの意見を聴取した上で判断します。
中国は16日、同規模の総額500億ドルの米国産品に25%の関税を上乗せする報復を正式に決定しました。これに対しても、トランプ大統領は18日、2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に10%の関税を課す追加制裁を検討すると発表しました。
鉄鋼・アルミへの追加関税に対しては、中国はすでに報復関税を実施済みです。
中間選挙目当て
主要国首脳会議(G7サミット)が8~9日、カナダで開かれました。地球温暖化防止のパリ協定やイラン核合意からの離脱のほかに、鉄鋼・アルミへの追加関税など経済問題でも「米国第一」への批判が集中しました。
首脳宣言は、トランプ大統領の主張を入れて「自由、公平かつ互恵的な貿易・投資」を書き込みました。同時に、そのほかの諸国の主張に基づき「ルールに基づく国際貿易体制の重要性」に言及しました。
しかし、トランプ大統領は会議後、発表済みの宣言を「承認しない」と表明しました。その理由は、今後、自動車の関税措置を検討するためだとされます。
鉄鋼・アルミ・自動車への関税は、秋の中間選挙を強く意識したものです。トランプ大統領は衰退した工業地帯(ラストベルト)の有権者の支持を得ようとしているのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月26日付掲載
アメリカは自由貿易と言いながら、自分に都合の悪いことについては、いちゃもんを付けて制裁関税を課す。でも、世界では「米国第一」が通用しなくなっています。
①米国が安全保障を理由に鉄鋼とアルミニウムの輸入品に対して追加関税を導入
②米国が知的財産権侵害を理由に対中制裁関税。中国が報復して貿易摩擦が激化
③G7サミットで米国に批判が集中。米中間選挙を意識し、貿易問題で支持狙う
貿易赤字の削減を最優先する「米国第一」への批判で、米国が孤立を深めています。米中間では、米国の制裁関税と中国の報復関税の応酬で、貿易摩擦が激化しています。
安全保障理由に
米国は5月31日、欧州連合(EU)、カナダ、メキシコに対して鉄鋼とアルミニウムの輸入品への追加関税を導入すると発表しました。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を上乗せします。
これに対し、EU、カナダ、メキシコはそれぞれ、報復関税計画を表明しました。
3月23日導入された鉄鋼・アルミへの追加関税は、安全保障を理由に貿易制裁を認める通商拡大法232条を根拠にしたものです。導入時には、EUと、カナダ、メキシコ、韓国、オーストラリア、ブラジル、アルゼンチンの6力国が除外されていました。
安全保障を理由にしていますが、貿易赤字の削減を最優先するトランプ政権が、貿易交渉での取引材料にしようとしていることは明らかです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/54/5d5d3f3ab2fd4b1797e17e5c2e378e8f.jpg)
会議に出席したG7首脳=6月8日、カナダ・シャルルボワ(ロイター)
世界経済の主な出来事(4~6月)
4/3 | 米国、知財権侵害を理由に対中国制裁関税の原案を発表 |
4/4 | 中国、米国の対中制裁関税案に対し追加報復関税の用意を表明 |
5/23 | 米国、自動車・同部品輸入の安全保障への影響調査開始と発表 |
5/25 | EU、個人情報保護規制強化の「一般データ保護規則」を施行 |
5/31 | 米国、カナダ・メキシコ・EUに鉄鋼・アルミ追加関税と発表 |
6/8~9 | G7サミット開催 |
6/13 | 米国、政策金利を0.25%引き上げ、年1.75~2.0%へ |
6/14 | 欧州中銀、量的金融緩和政策を今年末で打ち切りの方針を決定 |
6/15 | 米国、知財権侵害を理由に中国製品500億ドルに制裁関税案 |
6/16 | 中国、同規模の報復関税を決定 |
6/18 | 米国、中国製品2000億ドルに対し追加制裁関税の検討を発表 |
中国に制裁関税
3月末に実施した鉄鋼・アルミへの追加関税のほか、米国は4月3日、知的財産権侵害を理由に通商法301条に基づく対中制裁関税の原案を公表しました。貿易摩擦を回避する協議が行われましたが、6月15日には米国が制裁関税の最終案を公表しました。総額500億ドル(約5兆5300億円)相当の1102品目を対象に25%の追加関税を課します。第1弾として7月6日から818品目に課税し、残りの284品目は企業などの意見を聴取した上で判断します。
中国は16日、同規模の総額500億ドルの米国産品に25%の関税を上乗せする報復を正式に決定しました。これに対しても、トランプ大統領は18日、2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に10%の関税を課す追加制裁を検討すると発表しました。
鉄鋼・アルミへの追加関税に対しては、中国はすでに報復関税を実施済みです。
中間選挙目当て
主要国首脳会議(G7サミット)が8~9日、カナダで開かれました。地球温暖化防止のパリ協定やイラン核合意からの離脱のほかに、鉄鋼・アルミへの追加関税など経済問題でも「米国第一」への批判が集中しました。
首脳宣言は、トランプ大統領の主張を入れて「自由、公平かつ互恵的な貿易・投資」を書き込みました。同時に、そのほかの諸国の主張に基づき「ルールに基づく国際貿易体制の重要性」に言及しました。
しかし、トランプ大統領は会議後、発表済みの宣言を「承認しない」と表明しました。その理由は、今後、自動車の関税措置を検討するためだとされます。
鉄鋼・アルミ・自動車への関税は、秋の中間選挙を強く意識したものです。トランプ大統領は衰退した工業地帯(ラストベルト)の有権者の支持を得ようとしているのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月26日付掲載
アメリカは自由貿易と言いながら、自分に都合の悪いことについては、いちゃもんを付けて制裁関税を課す。でも、世界では「米国第一」が通用しなくなっています。