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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

日本製鉄復活 意味と狙い② 世界的再編の波の中で

2018-06-04 10:23:05 | 経済・産業・中小企業対策など
日本製鉄復活 意味と狙い② 世界的再編の波の中で
鉄鋼産業研究会 大場陽次さん

製鉄業は紀元前13世紀ごろ、トルコ中部の古代王国ヒッタイトで主に武器用に実用生産されて勃興し、しだいに各地に普及していったものです。鉄鋼生産は国づくりの基本であり、「鉄は国家なり」という言葉が万国共通にあります。

国づくりに必須
現在では、軍需に限らず、一般住宅から超高層ビル、高速道路、空港、港湾などの建設、自動車、造船、機械などの生産には不可欠の基礎素材となっています。そのため、先進工業国では国づくりの必須アイテムとして鉄鋼生産、製鉄業の発展に国を挙げて力を注いできました。米国以外の国では、鉄鋼業は例外なく国営企業、国家企業として発祥、発展を遂げてきました。
しかし、1980年代後半に至り、いわゆるシカゴ学派による新自由主義が急速に台頭しました。イギリスのサッチャリズムに代表されるように、国営企業は国家予算を費消するだけの“穀つぶし”的存在であるとしました。イギリスでは鉄鋼(BSスチール)に限らず、炭鉱、自動車、航空機などほとんどの国営企業が労働者の反対の声を圧殺して民営化されました。



新日鉄住金の君津製鉄所=千葉県君津市

価格主導権争い
80年代後半の民営化の波は、フランス、イタリア、スペインなどに波及しました。国営企業と民間企業が統合し、80年代末には、欧州ではほぼ1国1メーカー体制が現出しました。ただ、その背景には、自動車向け鋼材の販売価格をめぐる主導権争いが絡んでいたことがあります。
世界規模で6大グループに再編された自動車産業に対し、鉄鋼業が1国1企業に統合しても太刀打ちできないことは明白でした。自動車に対抗するためには鉄鋼業も国境を越えた統合再編が必要とされ、古くからの鉄鋼国ルクセンブルクのアルベド社が主軸となり、ドイツ、フランス、スペインのメーカーを糾合し、2001年に当時世界最大規模のアルセロールが発足しました。イギリス・オランダ統合のコーラスも誕生しました。
一方、世界規模で中小企業を統合していたミッタル・グループが米国に進出し、インランドスチールを足掛かりに、現米商務長官のロス氏が保有していたISGグループと統合、アルセロールを上回る多国籍企業を誕生させました(05年)。ミッタル氏の野望はそれにとどまらず、06年アルセロールにTOB(公開株式買い付け)を仕掛け、同年9月ディール(取引)を完了、史上最大の1億トンメーカー、アルセロールミッタルが出現することとなりました。翌年には、インドのタタ・グループが英蘭コーラスを買収しています。

中国鉄鋼業台頭
欧米メーカーが危機的状況を打開することに懸命になっていた時期、中国ではかつての日本を上回る高度成長期を迎え、2000年代に入って急成長。鉄鋼業は1990年の6700万トン、2000年の1億2800万トン、10年の6億3700万トン、15年の8億300万トンと、わずか25年で12倍という奇跡的成長を遂げました。
しかし、一方では鉄鉱石など原料価格の高騰、鋼材輸出市場の急変動、米国の「反中国」保護主義化という副作用を招いています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月1日付掲載


鉄鋼は、かつての重厚長大産業、造れば売れるって時代から価格競争へ。日本の鉄鋼産業も生き残りをかけて…
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