日本製鉄復活 意味と狙い③ 海外勢の台頭に対応
鉄鋼産業研究会 大場陽次さん
新日鉄住金は、国内では4262万トン、約40%(2016年度実績)の生産シェアを持ち、独占的地位を占めています。
地球規模の戦略
しかし、海外展開はどうでしょうか。かつてはアルセロールが生まれるまで、世界第1位の企業として、実力を誇示してきました。
ただ、鉄は国家(軍事)政策と不離不即の関係にあることから、20世紀までは「国境を越えれば、自ずと矩(のり)を超えず」という不文律を守り、鉄づくりの上流工程(溶鉱炉)での独自海外投資を避け、下流の製品圧延分野に特化した展開を図ってきました。これは、新日鉄住金にとって最大需要家であるトヨタ自動車の世界戦略とまったく符合するものです。連携グローバリゼーション(地球規模化)といってもいいものです。
今日では、自動車用鋼板製造拠点として、アメリカ(3)、メキシコ、ブラジル、中国(2)、タイ、インドネシア、インドに合弁投資企業を配置。欧州でもアルセロールミッタル(仏)に同鋼板の技術給与を行っています。このほか、自動車以外の用途(建材、ブリキ缶など)向けの鋼板工場は、中国、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、アラブ首長国連邦、ナイジェリア、南アフリカ―と、ほぼ地球規模に広がっています。

新日鉄住金の君津製鉄所=千葉県君津市
競争的共存図る
21世紀に入って、アルセロールミッタルが誕生し、中国企業がどんどん台頭してきて、1企業としても1国としても「世界一」の座を奪われた新日鉄住金として、1国で「1億トンメーカー」を実現するのは、国内でただ1社になるしか方策はありません。これは常識的にみて無理です。そこで海外製鉄メーカーとの連携、経営統合が進むべき道であるという結論になって、方向転換がなされました。
例えば、隣国韓国の最大企業POSCOも4000万トン強規模なので、統合すればすぐにでもアルセロールミッタルに肩を並べることができます。現在数%規模ですが、アルセロールミッタルの買収に対する防衛策として株式の持ち合いをしています。このほか、建設当初から関わってきたブラジル・ウジミナス製鉄の株式を31%保有、仏バローレック株を14%(ブラジルで鋼管の一貫製造)、台湾の高炉メーカーCSCとも戦略的提携関係を強化。さらに、スウェーデンの特殊鋼「オバコ」を買収、傘下の山陽特殊製鋼と合わせて、完全子会社化する方針です。また、インドの一貫メーカー「エッサール」(年産750万トン)をアルセロールミッタルと共同買収し、再建していきます。
新日鉄住金グループの技術力は、自動車用鋼板、シームレス鋼管、同継手、電磁鋼板、大径鋼管、耐熱鋼など、他の追随を許さない優れた製品群を保持しています。しかし近年、急成長した中国鉄鋼業の製品の台頭によって、「悪貨は良貨を駆逐する」のたとえのように、鋼材市況の下落に悩まされ続けています。アルセロールミッタルとは一部連携しつつ、中国企業とは竸争的共存を図ろうというのが、今回の「日本(にっぽん)製鉄」復活の歴史的意味と考えられます。その“錦の御旗”の前に、かつての名門企業、住友金属や日新製鋼などの名前がまた一つ消されていきます。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月2日付掲載
新日鉄とか日本鋼管など、かつては世界に冠たる企業だったけど、それは今は昔。
その企業も統合しないと世界を渡り歩けないようになっています。
鉄鋼産業研究会 大場陽次さん
新日鉄住金は、国内では4262万トン、約40%(2016年度実績)の生産シェアを持ち、独占的地位を占めています。
地球規模の戦略
しかし、海外展開はどうでしょうか。かつてはアルセロールが生まれるまで、世界第1位の企業として、実力を誇示してきました。
ただ、鉄は国家(軍事)政策と不離不即の関係にあることから、20世紀までは「国境を越えれば、自ずと矩(のり)を超えず」という不文律を守り、鉄づくりの上流工程(溶鉱炉)での独自海外投資を避け、下流の製品圧延分野に特化した展開を図ってきました。これは、新日鉄住金にとって最大需要家であるトヨタ自動車の世界戦略とまったく符合するものです。連携グローバリゼーション(地球規模化)といってもいいものです。
今日では、自動車用鋼板製造拠点として、アメリカ(3)、メキシコ、ブラジル、中国(2)、タイ、インドネシア、インドに合弁投資企業を配置。欧州でもアルセロールミッタル(仏)に同鋼板の技術給与を行っています。このほか、自動車以外の用途(建材、ブリキ缶など)向けの鋼板工場は、中国、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、アラブ首長国連邦、ナイジェリア、南アフリカ―と、ほぼ地球規模に広がっています。

新日鉄住金の君津製鉄所=千葉県君津市
競争的共存図る
21世紀に入って、アルセロールミッタルが誕生し、中国企業がどんどん台頭してきて、1企業としても1国としても「世界一」の座を奪われた新日鉄住金として、1国で「1億トンメーカー」を実現するのは、国内でただ1社になるしか方策はありません。これは常識的にみて無理です。そこで海外製鉄メーカーとの連携、経営統合が進むべき道であるという結論になって、方向転換がなされました。
例えば、隣国韓国の最大企業POSCOも4000万トン強規模なので、統合すればすぐにでもアルセロールミッタルに肩を並べることができます。現在数%規模ですが、アルセロールミッタルの買収に対する防衛策として株式の持ち合いをしています。このほか、建設当初から関わってきたブラジル・ウジミナス製鉄の株式を31%保有、仏バローレック株を14%(ブラジルで鋼管の一貫製造)、台湾の高炉メーカーCSCとも戦略的提携関係を強化。さらに、スウェーデンの特殊鋼「オバコ」を買収、傘下の山陽特殊製鋼と合わせて、完全子会社化する方針です。また、インドの一貫メーカー「エッサール」(年産750万トン)をアルセロールミッタルと共同買収し、再建していきます。
新日鉄住金グループの技術力は、自動車用鋼板、シームレス鋼管、同継手、電磁鋼板、大径鋼管、耐熱鋼など、他の追随を許さない優れた製品群を保持しています。しかし近年、急成長した中国鉄鋼業の製品の台頭によって、「悪貨は良貨を駆逐する」のたとえのように、鋼材市況の下落に悩まされ続けています。アルセロールミッタルとは一部連携しつつ、中国企業とは竸争的共存を図ろうというのが、今回の「日本(にっぽん)製鉄」復活の歴史的意味と考えられます。その“錦の御旗”の前に、かつての名門企業、住友金属や日新製鋼などの名前がまた一つ消されていきます。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月2日付掲載
新日鉄とか日本鋼管など、かつては世界に冠たる企業だったけど、それは今は昔。
その企業も統合しないと世界を渡り歩けないようになっています。