第2次世界大戦終結70年 第2部 安倍首相と逆流の系譜③
メディア支配への欲望
安倍晋三氏にとって、侵略戦争を肯定・美化する歴史認識に立って、教科書攻撃をした「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(「教科書議連」)の活動は“過去”のものではありません。
否定する運動一貫
昨年10月3日の衆院予算委員会。朝日新聞の「慰安婦」問題での訂正報道に関連して、首相はつぎのようにのべたのです。
「中川(昭一)さん(元議連会長)を中心に教科書に事実であるかのごとく強制連行を書かれるのはおかしいという運動を展開してきた。ずいぶん時間はかかったが、だんだん強制連行の記述はなくなっていった。さすがに朝日新聞も、この段階においては認めざるをえなくなった、こういうことだろう」
勝ち誇ったかのような発言は、旧日本軍の関与と強制性を認め、謝罪した「河野談話」を否定する運動が首相のなかで一貫していたことを示しています。そこには、「慰安所」での強制使役=性奴隷状態という本質を無視し、「官憲による人さらい」のような「強制連行」だけに問題をわい小化する、国際的に通用しない立場が現れています。
2000年から01年にかけても、首相は歴史改ざんのメディア介入事件を起こしています。01年1月30日に放映されたNHK教育の番組「ETV2001シリーズ戦争をどう裁くか」の第2回「問われる戦時性暴力」が、政治家の圧力を受けて作り変えられた問題です。

安倍氏らのNHK番組介入を報じた「しんぶん赤旗」2005年1月13日付
骨抜きとつぶしに
「日経」記者出身でジャーナリストの阿部裕氏は、「この『女性国際戦犯法廷』の放送は真正面から、日本軍『慰安婦』をはじめ戦争犯罪をとりあげたものでした。内部の通報によってそれを知った安倍氏、中川氏はみずからの政治生命にかかわる問題として骨抜きとつぶしにかかりました」と指摘します。
実際、05年1月の記者会見で当時のNHK理事は、安倍氏に番組内容を説明したと表明。その理由を、安倍氏らが「教科書議連」の幹部であり、そのなかで番組のことが話題になっていたことをNHK幹部が知っていたため、と説明します。
この事件は安倍氏の考えに近い人物のNHK経営委員への選任、籾井勝人会長の選出(昨年1月)への伏線となっています。
阿部氏は指摘します。「第1次政権が失敗した主な原因を『メディア対策』と『官僚の離反』に求めた安倍氏らは、『特ダネ提供』と冷遇という差別・情報操作による『対策』を強化しました。その最中に『朝日』の『慰安婦』検証問題が起きて、戦前・戦中のような翼賛的状況を再現した。これには、欧米の政権やメディアも『戦後秩序の否定』につながると警告したのです」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年1月19日付掲載
安倍政権は、公共放送のNHKをまるで国営放送と取り違えて、いや意識的に「国営放送」化して世論誘導しようとしてる。
メディア支配への欲望
安倍晋三氏にとって、侵略戦争を肯定・美化する歴史認識に立って、教科書攻撃をした「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(「教科書議連」)の活動は“過去”のものではありません。
否定する運動一貫
昨年10月3日の衆院予算委員会。朝日新聞の「慰安婦」問題での訂正報道に関連して、首相はつぎのようにのべたのです。
「中川(昭一)さん(元議連会長)を中心に教科書に事実であるかのごとく強制連行を書かれるのはおかしいという運動を展開してきた。ずいぶん時間はかかったが、だんだん強制連行の記述はなくなっていった。さすがに朝日新聞も、この段階においては認めざるをえなくなった、こういうことだろう」
勝ち誇ったかのような発言は、旧日本軍の関与と強制性を認め、謝罪した「河野談話」を否定する運動が首相のなかで一貫していたことを示しています。そこには、「慰安所」での強制使役=性奴隷状態という本質を無視し、「官憲による人さらい」のような「強制連行」だけに問題をわい小化する、国際的に通用しない立場が現れています。
2000年から01年にかけても、首相は歴史改ざんのメディア介入事件を起こしています。01年1月30日に放映されたNHK教育の番組「ETV2001シリーズ戦争をどう裁くか」の第2回「問われる戦時性暴力」が、政治家の圧力を受けて作り変えられた問題です。

安倍氏らのNHK番組介入を報じた「しんぶん赤旗」2005年1月13日付
骨抜きとつぶしに
「日経」記者出身でジャーナリストの阿部裕氏は、「この『女性国際戦犯法廷』の放送は真正面から、日本軍『慰安婦』をはじめ戦争犯罪をとりあげたものでした。内部の通報によってそれを知った安倍氏、中川氏はみずからの政治生命にかかわる問題として骨抜きとつぶしにかかりました」と指摘します。
実際、05年1月の記者会見で当時のNHK理事は、安倍氏に番組内容を説明したと表明。その理由を、安倍氏らが「教科書議連」の幹部であり、そのなかで番組のことが話題になっていたことをNHK幹部が知っていたため、と説明します。
この事件は安倍氏の考えに近い人物のNHK経営委員への選任、籾井勝人会長の選出(昨年1月)への伏線となっています。
阿部氏は指摘します。「第1次政権が失敗した主な原因を『メディア対策』と『官僚の離反』に求めた安倍氏らは、『特ダネ提供』と冷遇という差別・情報操作による『対策』を強化しました。その最中に『朝日』の『慰安婦』検証問題が起きて、戦前・戦中のような翼賛的状況を再現した。これには、欧米の政権やメディアも『戦後秩序の否定』につながると警告したのです」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年1月19日付掲載
安倍政権は、公共放送のNHKをまるで国営放送と取り違えて、いや意識的に「国営放送」化して世論誘導しようとしてる。