阪神・淡路大震災20年 復興を問う② 「棄民政策」
絆断たれ孤独死1097人
「半分くらいミイラ化していて、腰が抜けそうでした」
神戸市垂水区の復興市営住宅「ベルデ名谷(みょうだに)」の7号棟に住む松成秀子さん(73)は、ふり返ります。
数年前、同じ棟の自室で亡くなっていた年配男性の遺体の検視に立ち会いました。
隣室の80歳すぎの女性が亡くなったときは、第一発見者でした。布団のなかで息を引き取っていました。
「娘が毎日声をかけ、私も夕飯を持って行っていた。心臓が悪いようでしたが、ショックでした」
地震では助かった命なのに、誰にもみとられず亡くなっていく―被災者の孤独死が震災後、社会問題になり、ずっと続いています。
復興公営住宅の孤独死は2014年も40人で、累計864人に。仮設住宅の233人と合わせて1097人に達しました。
住居も財産も失った被災者に自力再建を押しつけ、助けようとしない国・自治体の復興の姿勢は「棄民政策」と呼ばれました。痛ましい孤独死は「棄民」の象徴といえます。

山を切り開いて建てられた復興市営住宅団地「ベルデ名谷」=神戸市垂水区
仮設の“絶望死”
大量の孤独死は、生活再建の見通しがなく生きる希望を持てないこと、人と人とのつながりが断ち切られたことが主な要因と指摘されています。
「男性は餓死に近い。枕元に酒パックと履歴書。冷蔵庫は自治会が配ったリンゴだけ」(1997年、神戸市中央区)。報道された仮設住宅の孤独死の一例です。
仮設住宅では、仕事がなく公営住宅も当たらず、アルコールに依存して健康を悪化させる人が急増。このなかで起きた孤独死の多くは“絶望死”の様相を帯びていました。
地域のコミュニティーが上から壊されました。仮設住宅と復興住宅は数が少ないうえ、郊外など遠方に多く建設。被災者は仮設入居時と復興住宅入居時の2度にわたって、抽選でバラバラにされました。
鉄のドアで仕切られた復興住宅ではさらに孤立が進み、高齢化、貧困が孤独死増に拍車をかけています。
被災者まかせに
「ベルデ名谷」では、孤立をなくそうと有志が、独居者への声かけや安否確認にとりくみ、自治会もカラオケの会を開くなど努力を続けています。
5号棟自治会役員の出田幸男さん(61)は「それでも誰ともつきあわない人が多い。自治会も高齢化で催しも減った」といいます。
「被災者への援助が被災者にまかされています。政治は被災者に手を差し伸べず、神戸空港を造ったり三宮(神戸市の中心繁華街)の巨大開発を計画したり…。いつまでこんなことを続けるのか」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年1月11日付掲載
大量の孤独死は、生活再建の見通しがなく生きる希望を持てないこと、人と人とのつながりが断ち切られたことが主な要因。
絆断たれ孤独死1097人
「半分くらいミイラ化していて、腰が抜けそうでした」
神戸市垂水区の復興市営住宅「ベルデ名谷(みょうだに)」の7号棟に住む松成秀子さん(73)は、ふり返ります。
数年前、同じ棟の自室で亡くなっていた年配男性の遺体の検視に立ち会いました。
隣室の80歳すぎの女性が亡くなったときは、第一発見者でした。布団のなかで息を引き取っていました。
「娘が毎日声をかけ、私も夕飯を持って行っていた。心臓が悪いようでしたが、ショックでした」
地震では助かった命なのに、誰にもみとられず亡くなっていく―被災者の孤独死が震災後、社会問題になり、ずっと続いています。
復興公営住宅の孤独死は2014年も40人で、累計864人に。仮設住宅の233人と合わせて1097人に達しました。
住居も財産も失った被災者に自力再建を押しつけ、助けようとしない国・自治体の復興の姿勢は「棄民政策」と呼ばれました。痛ましい孤独死は「棄民」の象徴といえます。

山を切り開いて建てられた復興市営住宅団地「ベルデ名谷」=神戸市垂水区
仮設の“絶望死”
大量の孤独死は、生活再建の見通しがなく生きる希望を持てないこと、人と人とのつながりが断ち切られたことが主な要因と指摘されています。
「男性は餓死に近い。枕元に酒パックと履歴書。冷蔵庫は自治会が配ったリンゴだけ」(1997年、神戸市中央区)。報道された仮設住宅の孤独死の一例です。
仮設住宅では、仕事がなく公営住宅も当たらず、アルコールに依存して健康を悪化させる人が急増。このなかで起きた孤独死の多くは“絶望死”の様相を帯びていました。
地域のコミュニティーが上から壊されました。仮設住宅と復興住宅は数が少ないうえ、郊外など遠方に多く建設。被災者は仮設入居時と復興住宅入居時の2度にわたって、抽選でバラバラにされました。
鉄のドアで仕切られた復興住宅ではさらに孤立が進み、高齢化、貧困が孤独死増に拍車をかけています。
被災者まかせに
「ベルデ名谷」では、孤立をなくそうと有志が、独居者への声かけや安否確認にとりくみ、自治会もカラオケの会を開くなど努力を続けています。
5号棟自治会役員の出田幸男さん(61)は「それでも誰ともつきあわない人が多い。自治会も高齢化で催しも減った」といいます。
「被災者への援助が被災者にまかされています。政治は被災者に手を差し伸べず、神戸空港を造ったり三宮(神戸市の中心繁華街)の巨大開発を計画したり…。いつまでこんなことを続けるのか」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年1月11日付掲載
大量の孤独死は、生活再建の見通しがなく生きる希望を持てないこと、人と人とのつながりが断ち切られたことが主な要因。