経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

2012年度予算を評価する その2

2011年12月24日 | 経済
 今日の日経の見出しは、「国債依存最悪の49%」というものだった。税収が増えているのに、何のことかと思ったら、2012年度は、「埋蔵金」が少なかったために、相対的に、国債依存度が増しただけのようだ。何とミスリーディングな。まあ、復興の特別会計を含めれば、本当に最悪かもしれないが、解説を吹き込んだであろう財政当局が、震災をダシにしなかったことは、多としておこう。

………
 この「埋蔵金」は、一般的には「税外収入」と称されるが、今年度は7.2兆円だったものが、2012年度は3.8兆円になった。3.3兆円の減である。基礎年金の1/2国庫負担分2.6兆円の財源が交付国債という形で分離されて、計上されなかったので、概ね、その分が減ったということである。

 交付国債にしたのは、埋蔵金が底をついたというより、消費税を上げないと担保されないと主張して、増税のテコにするためだろう。埋蔵金については、特別会計の剰余金が1~2兆円あるようだし、復興財源の検討の際、郵政株は簿価ベースで7兆円程度あるとされた。また、10/18には、リーマンショック対策の使い残しの基金が地方に約2兆円もあると、会計検査院が指摘したりもしている。

 冷たいかもしれないが、「国債依存最悪」にしたのは、制度改革を間に合わせられなかった財政当局の責任だろう。日経も、責任の所在が明らかな形で書いてほしいね。なお、交付国債の場合は、年金積立金を取り崩すことになるので、実質的には、年金積立金という埋蔵金が掘り出される。2009年度に1/2国庫負担が始まって、歳入歳出の規模が膨らんでいたが、元に戻った形だ。

………
 積立金と言えば、昨日の日経は、地方公共団体金融機構の積立金3500億円を取り崩して、出口ベースの地方交付税を補填するとしている。他方、四次補正でも、2012年度に繰り入れる地方交付税を3600億円確保している。国の税収見込みは横ばいだが、2012年度も税収増があると暗に期待して取り崩したと見るのは、うがち過ぎだろうか。

 ところで、筆者としては、予備費の行方も気になる。何しろ、概算要求基準の段階で1.3兆円も確保するとしていたからである。災害対応などの本来の予備費は3500億円ほどで十分だから、約1兆円もの「余裕」がある。昨日の日経では、「特別枠」を予定の7000億円から1兆円超に拡大したのようなので、これに使ったのかもしれない。昨年、管首相の指示で科学技術予算を積み増すのに使った手だからだ。

 もう一つ、昨日の日経にあった「戸別所得補償の減額」も興味深い。13%減の6900億円と、1000億円も減るわけで、この分はどこに使われるのだろう。おそらく、別の農業予算に回るのだろうが、四次補正での1600億円の農業対策の追加と言い、農業には、ずいぶんと手厚い印象を受ける。おっと、細かい話になってしまったね。

………
 2012年度予算の大きな特徴は、別途、復興特会に、復興事業費と予備費が3.8兆円も計上されたことだ。これで、当初5年間で必要とされていた19兆円が用意されることになる。正直、途方もない額である。数字を確認すると、警察庁(12/22現在)によれば、全壊12.7万戸、半壊23.0万戸である。半壊を全壊の1/2に換算すると、1戸当たりの予算額は、7850万円にもなる。これは、復興費が多すぎるのではなく、被災地以外への経済対策的な支出、長期的には通常でも整備されていたものへの支出などが含まれるためと考えられる。端的に言って、予算管理の失敗なのである。

 失敗の理由は、復興増税を狙って意図的に膨らませたことにある。阪神大震災の際は、当初の応急復旧の段階のみ補正予算で措置し、復興の段階は通常予算の中で消化していった。また、ショックに対応して、別途、経済対策を実施し、その年の成長を財政出動で確保している。今回の震災では、三次補正が11月に成立するまで、前年度補正後と比較して、マイナスの状態だったのだから、ゼロ成長へ転落するのも当然だ。阪神の際と比較すると、財政運営の拙劣さが際立つ。

………
 それでは、全体を位置づけよう。本予算を見る限り、財政再建は着実に進んでいる。国民は悲観する必要はない。順調に行けば、税収の自然増が2兆円、予備費の不要が1兆円出る。その一方、復興特会で、3兆円強の支出増があるとすれば、全体では、実質的に歳入歳出がほぼ同じ「均衡予算」と言えるだろう。

 別の観点では、今年度三次補正の真水分約7兆円の半分程度が2012年度に執行されると仮定すると、2011年度二次補正後の歳出規模(71兆円+補正実質4.5兆円=75.5兆円)と比較して、ほぼ同規模の歳出規模(三次補正3.5兆円+本予算68.3兆円+年金2.6兆円=74.4兆円)となる。これに、四次補正の真水分の1.6兆円が加わる。

 おそらく、2012年度の日本経済は、財政に足を引っ張られないという一事だけで、力強い成長を見せるだろう。予算案は、今日、閣議決定され、明日の紙面は、予算の細目で埋め尽くされようが、マクロ的に位置づけ、戦略的な評価をするところは、果たしてあるのだろうか。それを誰も変に思わないのが、今の日本なのである。

(今日の日経)
 ホンダ全車種1割軽く。猪木武徳・課税などによって金融取引を適度にコントロールする必要がある。社会保障改革に数値目標・3歳未満の保育サービスを75万人から118万人に。建設の人手不足が復旧に影。中国が新体制に食糧援助。ベトナムCPI鈍化。インドネシア新車1位に。貿易相が日本を誘致。

※カイゼン力は健在だ。※猪木先生もこう言っているのだから、若手からトービン税を超えるアイデアを出してほしい。※少子化には、これがカギ。※補正で全国の耐震工事まで計上したが、供給力を被災地に集中できなくなる。予算管理の悪い見本。※中国は支えるか。※思い切ったドン切り下げが奏功した。※友好国の繁栄はうれしいね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2012年度予算を評価する その1 | トップ | やはり特会は良くない »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事