経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・財政は早くもV字回復へ

2021年09月19日 | 経済(主なもの)
 4-6月期の資金循環が公表され、資金過不足は、4四半期移動平均で見ると、一般政府がマイナス幅の縮小、企業がプラス幅の拡大、家計がプラス幅の縮小という結果だった。一般政府のマイナス幅の縮小は、1年前の巨大なコロナ対策の赤字に比して、今期の赤字が小さかったためだ。今後、異常な赤字からは急速に脱していくが、景気の動向を見ながら、進度の調整をどうするのかが問われることになる。

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 一般政府の資金不足(赤字)は、前期よりGDP比1.2%の縮小となり、いわば、急速に財政再建が進んだ。特に、中央政府は、地方と社会保障の赤字が拡大する方向にあったので、単独だとGDP比2.1%もの縮小となっている。むろん、昨年の巨大赤字の反動のゆえだが、リーマンショック後には、なかなか戻らなかったことを踏まえると、財政はV字型の回復をしていると言えるだろう。

 リーマンショックの際は、雇用が急速かつ長期に悪化し、それに伴って、公的年金の赤字が大きく拡大した。コロナ禍では、幸いにして、特段の変化は見られない。この点でも、一般政府の大幅な赤字は、長引かずに済みそうである。社会保障の黒字の水準が少し低下しているのは、医療の増大によるものと思われる。むろん、これも感染が収まってくれば、平時に帰っていくことになる。

 政府の赤字は、誰かの黒字であり、その縮小は、家計の黒字の縮小で賄われた。ただし、家計の黒字は、コロナショック以来、未だ、かなりの高水準をキープしている。また、企業の黒字も増えており、「金余りの平時」に復した観がある。産業政策が叫ばれているが、投資資金が足りないわけではない。海外の資金不足については、GDP比1%弱という平時のレベルだが、今後は、輸出の好調にも関わらず、原油の高騰で不足が縮小するかもしれない。

 8月の貿易統計は、輸出が前月比+0.8%の増で、7,8月の平均は、4-6月期より+1.2%高い水準にある。他方、輸入は、それより高い+2.3%となっている。輸出の伸びが鈍ってきていることもあり、4-6月期にはGDPの外需の寄与度が-0.3もあったのに続いて、7-9月期でもGDPのマイナス要因になりそうだ。輸出の鈍化は、自動車の半導体不足などの一時的要因によるところがあるとしても、景気の牽引役だけに、気になるところだ。

(図)


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 自民党総裁選では、財政出動が焦点になっているが、兆円単位でお金を使うのは容易ではない。公共事業では消化しきれなくなるし、産業政策をしたつもりで、基金を積み増すだけだったりする。普通の手段としては、減税があるが、高度成長期のような所得税中心の時代ではないから、低所得層へ再分配するのは、かなり難しい。それゆえ、消費税「減税」のような効果的でないものまで飛び出してくる。

 今の時代は、消費税と社会保険料という、低所得層に容赦のない比例型の負担が重きを占める。それゆえ、給付つき税額控除のような定額の再分配が強く求められるが、日本は制度的インフラが欠如している。これこそが日本が抱える経済的、社会的な最大の課題だ。資金過不足で分かるように、家計にカネがないわけではない。必要なのは、低所得層への再分配をどうやってするかである。

 定額の再分配をする際、保険料が未払いでも給付をするというでは、なかなか理解が得られない。税も保険料も負担していない人でも、給付がもらえるというのも、赤字財政でするだけに似たところがある。結局、低所得層の社会保険料、とりわけ年金の軽減が最も自然だ。これにより、非正規の社会保険の適用拡大も進み、格差もなだらかとなろう。誰が次の総理になろうとも、取り組むべき課題は一つである。


(今日の日経)
 自民党総裁選2021 経済政策「詰め」残す 年金・エネ・成長戦略で論戦 財源など踏み込まず。


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