経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・移民とは貧困層の輸入

2018年11月04日 | 経済(主なもの)
 今週、相次いで出された経済指標からすると、7-9月期GDPは実質で年率-0.8%程度のマイナス成長になりそうだ。停滞する消費を始め、内需はいずれも弱いが、最も足を引っ張るのが公共投資になりそうなのは苦笑させられる。他方、税収は過去最高を望めるハイペースで、急速な財政再建が進む。今期マイナスになる外需は、中国の様子からすると要警戒である。こうした中、消費増税と移民受入れを打ち出すのは、どういう思想なのだろう。

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 7-9月期の消費は、商業動態の小売業が前期比+1.0と名目では健闘したが、消費者物価指数の財が、食料とエネルギーの上昇により、前期比+1.3と、これを上回っているため、日銀・消費活動指数の動きからすると、実質では、若干のマイナスにとどまることになりそうだ。名目での健闘ぶりから分かるように、消費の下地は悪くなく、物価上昇が一巡した後の浮上に期待したいところだ。

 次に、設備投資については、多少のプラスになると見ている。内外需ともマイナスの中にあって、設備投資がプラスにとどまることには希望が持てる。機械受注も製造、非製造ともに上向きである。このように消費と設備投資に粘りがあることから、自律的成長の段階にあるという見方は崩していない。それでも、早いところ力強い成長の姿を眺めたいものだ。そうこうするうち、1年足らずに消費増税が迫ってきているのでね。

 他方、輸出は、9月の下げが大きく、外需のマイナスにつながった。災害による影響が大きく、10月以降、回復することになろうが、もともと、今年に入ってから、輸出は伸びなくなっていた。問題は、伸びないまでも、今の水準を保てるかだ。その点、中国の景気の陰りは気がかりである。もし、輸出が崩れるようだと、自律的成長のシナリオは修正を余儀なくされる。そうなったら、リーマン並みでなくとも、消費増税どころではない。

(図)



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 臨時国会が始まり、災害対応の補正予算が審議されているが、補正で+0.9兆円となっても、今年度の歳出額98.6兆円は、前年度の補正後と比較すれば、まだ0.5兆円ほど少ない。加えて、今年度の税収は、9月までの実績が前年度を4.1%上回っており、このまま推移すれば、前年度の決算額58.8兆円より2.4兆円多い61.2兆円に達し、過去最高を大きく超えると予想される。それだけ財政再建は進捗し、経済にはデフレ圧力がかかっている。

 今のアベノミクスは、金融緩和、緊縮財政、そして、外国人労働者の受入れ緩和と来れば、もはやネオリベそのものである。日本をアメリカのようにしたいという思想では、保守主義とは言えまい。戦後の保守における経済政策、すなわち、石橋湛山から池田勇人に至る流れは、積極財政と国内人材の組み合わせであり、人手不足を通じた賃金上昇によって、平等化を実現するものであった。そうして「総中流」の日本らしさは作られた。

 「外国人も日本人並みに」というのは甘い罠であり、「貧困層」の日本人並みという言葉が略されている。少なくとも、永住資格を与える外国人については、「中間層」並みにしないと、貧困層を膨らませる。しかも、人種などでセパレートされた形でだ。日本も福祉国家である以上、貧困層への再分配があり、外国人にはハンデに合わせ、日本人以上に手厚くせざるを得まい。そんな社会保障の負担を、この国は抵抗なく引き受けられるのであろうか。

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 移民の問題は、欧米で深刻な事態になっているのに、今さらマネをしようというのだから、人は目先の利益にいかに弱いかを示している。今の人手不足の原因の一つは、雇用の非正規化を進め、若者の結婚を難しくし、少子化を招いたことがある。そのツケを別のツケに変え、再びトバシをやろうというわけだ。そんな切羽詰まった人に、先々の困難や周囲の迷惑を説いても聞く耳を持つまい。せめて、国が雇用主から「手配料」を取って、帰国の支度金を積み立てて置くことをお勧めする。


(今日までの日経)
 「転職で賃金増」の動き続く 7~9月は3割超、氷河期世代にも恩恵。米賃金10月3.1%増 9年半ぶり水準。混載トラック運賃上昇。4~9月の税収、27年ぶり高水準4%増。中国株は日本の「01年」。「非輸出」企業に波及 中国景況感さらに悪化 10月。

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