経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・スターターの衰え

2018年04月01日 | 経済(主なもの)
 経済は需要で動くので、輸出増、所得増、消費増、投資増、所得増と展開する。クルマで例えれば、輸出はスターターであり、消費と投資の循環はエンジンに相当する。いつまでもスターターに頼れないのと同じで、好循環のエンジンが始動しないと、経済成長は持続的にならない。輸出が衰える前に、国内での自律的な成長が始まるのか。日本にとって、それが最重要のポイントになる。

………
 輸出は、2016年10-12月期以来、高い伸びが長く続き、成長を牽引してきたが、それは、いつまでも続くわけではない。この1-3月期は、伸びてはいるものの、少し鈍ってきたように思える。週末に公表された2月の鉱工業指数は、3月の生産予測を含めると、1-3月期は前期比-2.0となって、10-12月期の+1.8を吐き出してしまった。4月の生産予測が+5.2と高く、4-6月期に高い伸びに戻る可能性はあるにせよ、予断を許さない。

 足下の状況を鉱工業指数の出荷で見ると、全体では横バイにあり、輸出に関係する資本財(除く輸送機械)の緩くなった伸びを、内需とつながる建設財の衰えが減殺している形になっている。消費財については、低下局面がようやく底入れしたところだ。そろそろ、この消費財が上向いてもらわないと困るわけである。それがまた資本財の生産を促することによって、自律的な成長へと移行する。

 消費に関しては、2月の商業動態の小売業が前月比+0.4になったものの、前月に-1.9も落ちているため、1,2月の平均は前期比-0.5にとどまる。これは名目だから、物価上昇を加味すれば、かなり低い水準となる。主な消費指標は、来週、公表のため、判定にはまだ早いが、1-3月期は、わずかなプラスくらいの状況だ。高騰していた東京都区部のCPIが3月は一段落を見せたので、ここでどれだけ上積みできるかになる。

(図)



 他方、雇用は着実に積み上がって来た。2月の労働力調査は、就業者数が前月比+52万人だった。前月の+42万人に続いて、かなりの多さだ。男性についても、就業者数、雇用者数とも加速感が見られる。失業率こそ、前月の2.4%から2.5%に上がったが、前月が一気に-0.3も低下した割に、戻りは小さい。とりわけ、非労働力人口が男女とも大きく低下しており、中身も良好である。

 今後については、2月の新規求人倍率は、全体が2.30倍と-0.04の低下であったが、「パート」の減によるもので、「除くパート」は2.06倍と前月比横バイである。産業別では、建設業と製造業で伸びているものの、やや鈍っている。特に、2月は卸小売業や宿泊飲食業の「パート」の求人が少なかったようだ。消費者態度指数や景気ウォッチャーの2月の雇用が低下したこととも整合的である。

………
 春が来て、生鮮が出回り、物価が低下したとき、雇用の積上げを土台に、順調な消費が姿を現すかどうか。そうなれば、たとえ、輸出が勢いを失っても何も問題はない。輸出が牽引しても、緊縮でエンジンがかからないようにしてきた「失われた20年」に別れを告げ、自律的な成長へと新たなページを記すことができるのか。楽しみでもあるし、不安でもある。そろそろ、復活の姿を見たいものだ。


(今日までの日経)
 若者 移住先はアジア。社会保障の抑制政策 響く・唐鎌直義。高齢化する貧困 年金で対応を・小塩隆士。こっそり値上げ 見破る消費者・エコノ。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-04-03 13:32:32
本当に今回こそ脱出してほしいですねー。あまりに官製不況が長く続いたので、最近は「人口が増えてたおかげ」「冷戦だったおかげ」とか、日本経済の高度成長は幸運が重なっただけに過ぎないという主張が目につき、先人の努力を否定する動きさえ出始めているのが大変不愉快です。
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