経済は需要で動くので、輸出増、所得増、消費増、投資増、所得増と展開する。クルマで例えれば、輸出はスターターであり、消費と投資の循環はエンジンに相当する。いつまでもスターターに頼れないのと同じで、好循環のエンジンが始動しないと、経済成長は持続的にならない。輸出が衰える前に、国内での自律的な成長が始まるのか。日本にとって、それが最重要のポイントになる。
………
輸出は、2016年10-12月期以来、高い伸びが長く続き、成長を牽引してきたが、それは、いつまでも続くわけではない。この1-3月期は、伸びてはいるものの、少し鈍ってきたように思える。週末に公表された2月の鉱工業指数は、3月の生産予測を含めると、1-3月期は前期比-2.0となって、10-12月期の+1.8を吐き出してしまった。4月の生産予測が+5.2と高く、4-6月期に高い伸びに戻る可能性はあるにせよ、予断を許さない。
足下の状況を鉱工業指数の出荷で見ると、全体では横バイにあり、輸出に関係する資本財(除く輸送機械)の緩くなった伸びを、内需とつながる建設財の衰えが減殺している形になっている。消費財については、低下局面がようやく底入れしたところだ。そろそろ、この消費財が上向いてもらわないと困るわけである。それがまた資本財の生産を促することによって、自律的な成長へと移行する。
消費に関しては、2月の商業動態の小売業が前月比+0.4になったものの、前月に-1.9も落ちているため、1,2月の平均は前期比-0.5にとどまる。これは名目だから、物価上昇を加味すれば、かなり低い水準となる。主な消費指標は、来週、公表のため、判定にはまだ早いが、1-3月期は、わずかなプラスくらいの状況だ。高騰していた東京都区部のCPIが3月は一段落を見せたので、ここでどれだけ上積みできるかになる。
(図)
他方、雇用は着実に積み上がって来た。2月の労働力調査は、就業者数が前月比+52万人だった。前月の+42万人に続いて、かなりの多さだ。男性についても、就業者数、雇用者数とも加速感が見られる。失業率こそ、前月の2.4%から2.5%に上がったが、前月が一気に-0.3も低下した割に、戻りは小さい。とりわけ、非労働力人口が男女とも大きく低下しており、中身も良好である。
今後については、2月の新規求人倍率は、全体が2.30倍と-0.04の低下であったが、「パート」の減によるもので、「除くパート」は2.06倍と前月比横バイである。産業別では、建設業と製造業で伸びているものの、やや鈍っている。特に、2月は卸小売業や宿泊飲食業の「パート」の求人が少なかったようだ。消費者態度指数や景気ウォッチャーの2月の雇用が低下したこととも整合的である。
………
春が来て、生鮮が出回り、物価が低下したとき、雇用の積上げを土台に、順調な消費が姿を現すかどうか。そうなれば、たとえ、輸出が勢いを失っても何も問題はない。輸出が牽引しても、緊縮でエンジンがかからないようにしてきた「失われた20年」に別れを告げ、自律的な成長へと新たなページを記すことができるのか。楽しみでもあるし、不安でもある。そろそろ、復活の姿を見たいものだ。
(今日までの日経)
若者 移住先はアジア。社会保障の抑制政策 響く・唐鎌直義。高齢化する貧困 年金で対応を・小塩隆士。こっそり値上げ 見破る消費者・エコノ。
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輸出は、2016年10-12月期以来、高い伸びが長く続き、成長を牽引してきたが、それは、いつまでも続くわけではない。この1-3月期は、伸びてはいるものの、少し鈍ってきたように思える。週末に公表された2月の鉱工業指数は、3月の生産予測を含めると、1-3月期は前期比-2.0となって、10-12月期の+1.8を吐き出してしまった。4月の生産予測が+5.2と高く、4-6月期に高い伸びに戻る可能性はあるにせよ、予断を許さない。
足下の状況を鉱工業指数の出荷で見ると、全体では横バイにあり、輸出に関係する資本財(除く輸送機械)の緩くなった伸びを、内需とつながる建設財の衰えが減殺している形になっている。消費財については、低下局面がようやく底入れしたところだ。そろそろ、この消費財が上向いてもらわないと困るわけである。それがまた資本財の生産を促することによって、自律的な成長へと移行する。
消費に関しては、2月の商業動態の小売業が前月比+0.4になったものの、前月に-1.9も落ちているため、1,2月の平均は前期比-0.5にとどまる。これは名目だから、物価上昇を加味すれば、かなり低い水準となる。主な消費指標は、来週、公表のため、判定にはまだ早いが、1-3月期は、わずかなプラスくらいの状況だ。高騰していた東京都区部のCPIが3月は一段落を見せたので、ここでどれだけ上積みできるかになる。
(図)
他方、雇用は着実に積み上がって来た。2月の労働力調査は、就業者数が前月比+52万人だった。前月の+42万人に続いて、かなりの多さだ。男性についても、就業者数、雇用者数とも加速感が見られる。失業率こそ、前月の2.4%から2.5%に上がったが、前月が一気に-0.3も低下した割に、戻りは小さい。とりわけ、非労働力人口が男女とも大きく低下しており、中身も良好である。
今後については、2月の新規求人倍率は、全体が2.30倍と-0.04の低下であったが、「パート」の減によるもので、「除くパート」は2.06倍と前月比横バイである。産業別では、建設業と製造業で伸びているものの、やや鈍っている。特に、2月は卸小売業や宿泊飲食業の「パート」の求人が少なかったようだ。消費者態度指数や景気ウォッチャーの2月の雇用が低下したこととも整合的である。
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春が来て、生鮮が出回り、物価が低下したとき、雇用の積上げを土台に、順調な消費が姿を現すかどうか。そうなれば、たとえ、輸出が勢いを失っても何も問題はない。輸出が牽引しても、緊縮でエンジンがかからないようにしてきた「失われた20年」に別れを告げ、自律的な成長へと新たなページを記すことができるのか。楽しみでもあるし、不安でもある。そろそろ、復活の姿を見たいものだ。
(今日までの日経)
若者 移住先はアジア。社会保障の抑制政策 響く・唐鎌直義。高齢化する貧困 年金で対応を・小塩隆士。こっそり値上げ 見破る消費者・エコノ。