経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

7-9月期GDP2次・虚しき上方修正

2019年12月17日 | 経済
 2次速報によって、7-9月期の成長率は、実質年率1.8%に上方修正されたが、家計消費と設備投資の駆け込み需要に支えられたもので、実態はゼロ成長以下である。これに消費増税が加わる10-12月期は、消費の駆け込みの反動減を考慮しても、マイナス成長に陥ってしまう。景気の実態は、消費増税に攪乱されて見えにくくなっているが、深刻さを増しており、消費税の大打撃からの戻りがほとんどないL字型の様相が濃くなっている。

………
 7-9月期2次速報では、各需要項目が軒並み上方修正された。最も大きいのは、設備投資が前期比+0.87から+1.78になったことである。しかし、ほとんどが駆け込み需要によるものと考えられる。なぜなら、設備投資は、追加的な3需要、すなわち、輸出、住宅、公共を足し合わせたものとパラレルに動くのが普通なのにもかかわらず、これとは大きく食い違っての上昇になっているからである。

 案の定、12/12公表の10月機械受注では、民需(除く船電)が前月比-6.0%と大きく下落し、当局も基調判断を引き下げることになった。製造業がジリジリ低下する中で、堅調を保っていた非製造業も崩れたのがポイントである。当局は、農林漁業を除いて駆け込みと反動はないとするものの、非製造業については、2014年増税の際も同様の動きが見られたので、下落は予想されたものだった。今後の設備投資を占う機械受注がこれでは、見通しは暗い。

 おそらく、10-12月期には、設備投資でも大きな反動減が出る。しかも、3需要のうち、輸出の停滞、住宅の減少が確実なため、その後の反動減からの戻りも期待薄だ。設備投資は、需要を見ながらなされるもので、政策的に動かし得る3需要から設備投資に、そして、消費へと波及し、需要が循環する中で成長する。物価高でもないのに、増税で需要をカットするのは、成長を拒否するのに等しい行いなのである。

 他方、家計消費は、この2四半期になって急に伸びるという不自然な形になっている。もし、駆け込みがなければ、上ブレは4-6月期のみで、7-9月期は良くて横バイだったろう。こうした消費の寄与と、設備投資での駆け込みの大半がないとすると、7-9月期の成長率は、ゼロを割る水準にまで下がる。続く、10-12月期は、増税による所得削減の効果によって、消費が1%程度落ちるから、駆け込みの反動減がなくても、マイナス成長は確定的である。

 結局、消費増税の攪乱のために見えにくくなっているだけで、ゼロ以下の成長のところへ、消費増税をぶちかまし、二期連続マイナス成長という立派な景気後退に仕上げてしまったということなのだ。おそらく、10-12月期は、駆け込みの反動が加わり、びっくりするようなマイナス成長になる。東日本大震災時の-5.6%級の「震度」になるおそれがあり、こうなると、駆け込みの反動が大きかった前回増税の実質的な落ち幅を超える打撃である。

(図)


………
 12月の日銀短観でも、代表的指標である大企業製造業の景況感がゼロとなって、2013年3月以来の低水準になった。ここでも、アベノミクスのスタート時に逆戻りし、景気回復の成果は無に帰した。2014年の前回増税の際は、低下が小さく、輸出が堅調で崩れることもなかったが、今回は増税前から崩れてしまっている。非製造業も全規模の低下は、予測を含むと前回増税並みで、果たして前回のようにV字で戻れるか心配になる。先行きについて、「非製造業は堅調」と安易に構えることはできない。

 不況下の緊縮財政は怖い。なぜなら、需要減が需要減を呼ぶという不合理なスパイラルを起こしかねないからだ。2014年増税の際は、一時、減産しても在庫増が止まらず、輸出の支えがなければ、悲惨な事態になりかねない冷や汗ものの乗り切りであった。日本は、「財政再建は善」というナイーブな発想から、怖いことも平気でやってしまう。前回も上手く行ったから、今回も大丈夫だろうというのは、ハイリスクの「桶狭間」での運の良さに味をしめ、繰り返し試みるような危険な行為である。


(今日までの日経)
 米中、火種抱えた休戦 第1段階合意 関税や農産物購入の説明にずれ。 英保守党が過半数 総選挙 1月末EU離脱へ。日銀短観、大企業製造業は4期連続悪化。雇用保険、育休給付分離へ 厚労省が素案、財政膨張を懸念。安いニッポン 人材流出 高まるリスク。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 12/11の日経 | トップ | 12/19の日経 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事