経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

1-3月期GDP2次・設備投資の先を読む

2021年06月13日 | 経済
 今期のGDP速報で一番意外だったのは、設備投資のマイナスだ。輸出の伸びからすると、もっと高くて良かったからだ。成長の原動力は設備投資であり、日本の場合、バカバカしいほど輸出に従う。すなわち、今期、設備投資が輸出と逆の動きになったことは、次期、設備投資が追いつく形で大きく伸び、成長が加速することも示唆している。こんな具合に、経済の先を読んでいくわけである。

………
 1-3月期GDPの輸出は、前期比で+2.2%になったのに対し、設備投資は、反対に-1.2%と低下した。前期に+4.3%も伸びた反動があったにせよ、未だ水準も低いので、プラスでもおかしくないと思っていた。実際、名目では-0.3%まで縮まる。基礎統計の鉱工業生産を眺めると、資本財(除く輸送機械)は、1-3月期が前期比+5.1もある。結局、機械・設備が大きく伸びても、建設投資など他が振るわなかったということになる。

 今後については、4-6月期の資本財(除く輸送機械)の見通しは、更に高く前期比+15.5にもなっている。むろん、これには海外向けも含まれるが、4月の出荷内訳表と総供給表を見ても、国内向けが前月比+9.8、輸入が+7.3と高い伸びだ。建設投資も底入れが見られるから、いつものように、設備投資は輸出を追いかけていくと思われる。輸出増を受け、生産に必要な設備を整えるという、常識でも分かる因果関係にある。

 こうした、設備投資は輸出次第という関係、より的確には、住宅や公共を加えた追加的需要に従うことは、図を見れば明らかだ。実は、この関係は、バブル期の過剰投資が解消した1995年以降、25年余りも続いている。この間、様々な金融政策や産業政策が試みられてきたが、それらで、直接、設備投資が動くわけではない。結局、需要によるという、企業家精神とは無縁な至極つまらない実態にある。

 とは言え、少しおかしいとは思わないだろうか。設備投資が追加的需要に反応するなら、景気拡大に伴う消費や設備投資自身の需要に反応しても良いはずだ。実は、日本経済も、デフレになる以前は、そうだったのである。輸出を契機に、設備投資から消費へと波及し、成長が加速して行った。残念ながら、今では、消費税と社会保険料が波及を妨げ、財政再建を焦って、回復期の自然増収を堰き止めるものだから、低成長にくすぶり続けることになる。

(図)


………
 GDPに占める設備投資の比率は、2018年10-12月期には16.6%に達していて、リーマンシッョク前の景気のピーク時に匹敵するレベルだ。その意味で、設備投資の促進策は成功していたとも言える。もっとも、それは消費を徹底的に抑圧し、伸ばしていないことの裏返しでもある。グリーンだ、デジタルだとしつつ、財政再建も堅持とするというと、もっともらしく聞こえるが、経済の一部だけを可愛がる偏頗な政策でしかない。


(今日までの日経)
 個人資産2000兆円の憂鬱。米国の物価上昇圧力続く 消費者物価、5月5%上昇。財政再建目標、年度内に再確認。米富裕層「節税」あらわ ベゾス氏らの納税記録報道で。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 6/9の日経 | トップ | 6/17の日経 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事