経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

我々はすべて消費増税論者である

2011年10月21日 | 経済
 お上に逆らうようなことを書くと、「大衆迎合の放漫主義」のようなレッテルを張られがちだが、多少なりとも経済に通じていれば、高齢化に伴う社会保障費の増加に対応して、長期的に消費増税が必要なことを否定する者は、ほとんど居るまい。

 問題は、どうやって上げるかである。もちろん、政治や国民をいかに丸め込むかという政治的な話ではなくて、経済に悪影響を与えずに上げるための工夫である。あるいは、悪影響が出ないような景気の状況はどの程度かという配慮でも良い。もし、日本経済がインフレ気味であれば、増税は好影響さえ与えるだろう。

 1997年のハシモトデフレの反省点を上げれば、住宅投資の駆け込みと反動減が経済を大きく揺さぶったことがある。対応策としては、住宅への消費課税の減免をしないまでも、課税時期をずらしたり、住宅エコポイントを与えて相殺し、それを徐々に削減するといった工夫が必要である。それは、クルマなどの耐久財にも応用できる。

 低所得者が消費を減らさないための工夫も必要だ。消費税増税の前後でマクロ的に消費は減らなかったなどと主張するだけでなく、消費を減らすしかない低所得者のために、社会保険料を増税時に軽減するなど、ウォームハートの部分が欠かせないように思う。そうした工夫が、結局は増税を成功させるのである。(基本内容の「雪白の翼」を参照)

 景気の状況についても、消費税は1%で2.5兆円も所得を吸い上げてしまうのだから、ある程度の物価上昇率が必要である。デフレでも増税などというのは、およそ考えられないことだ。そうした状況で増税をすれば、増税の負担が帰着するのは、最も弱い者になるので、中小零細企業が転嫁できずに引っ被るという悲惨な事態になる。

 しかるに、財政当局は、昨日のコラムで指摘した中間報告などで見られるように、いろいろと理屈を並べては、工夫も、配慮もなく、時期を決め打ちして、一気の増税をするということばかりである。もう、こうなると狂気の沙汰である。経済の理論とか、実証とかいう以前の、一般常識で考えても、おかしな行動である。

 あたかも、消費増税に工夫や配慮を求める者は、財政再建への抵抗勢力であり、理屈で煙に巻いて蹴飛ばせば十分といった雰囲気さえ感じられる。「消費増税は景気失速の主因ではない」と突っ張ったところで、「一因であるのは否定できないのだから、工夫や配慮をする慎重さが必要ではないの?」という常識論にすら答えられまい。

 もはや、消費税は是か非かという入口論は十分である。どうやって、経済的に無理のない形で上げるかに知恵を結集すべきである。「2015年から7%にする」という財政当局の政治的方針を正当化するためだけに、経済学の知見が都合よく集められている現状は、まことに憂慮にたえない。

 「このままでは財政破綻」と叫んで無闇な増税を行うのは、「このままではジリ貧」と叫んで真珠湾攻撃を敢行した、かつてのメンタリティと変わるところがない。不安に耐え、粘り強く努力をしておれば、情勢の変化によって悲劇は避けられたかもしれない。大事なのは、条件付賛成論にも耳を貸し、焦りと孤立感から極論に走らないことである。もはや、「我々はすべて消費増税論者」なのだから。

(今日の日経)
 復興財源法案の成立強まる、公明が評価。カダフィ大佐死亡。パナ・太陽電池増産を撤回。デジカメ発売延期・タイ洪水で。独1%成長に鈍化。パナ・落日のテレビ事業。農地集約で平均面積5年で10倍。ポスト京都の合意困難に。欧州・波乱含みの資産圧縮。ホンダが国内10万台増。経済教室・ユーロ問題・庄司克宏。

※パナの選択と集中の結果がこれか。経営より経済の問題だ。※ロイターは緩慢な金融危機が進行中とするが、同感だね。※ブルームバーグによれば、三次補正の市中増発は1兆円の由。前倒し発行で、当局は拡張財政でも市場に影響ないことを知っていたわけだ。そんなものなのよ。

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2 コメント

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97年消費税の家計への影響 (KitaAlps)
2011-10-21 11:49:02
今日は。
 10月18日付け日経「経済教室」の宇南山先生の消費税の経済への影響に関する論説に関連して、考えられる点を簡単にまとめ、次のページの下段に、項目「4」として追加挿入してみました。よろしければご参照下さい。
http://kitaalps-turedurekeizai.blogspot.com/2011/01/blog-post_17.html
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97年消費税の家計への影響《修正》 (KitaAlps)
2011-10-24 12:23:26
上記の追加挿入部分を恥ずかしながら、再修正しました。

http://kitaalps-turedurekeizai.blogspot.com/2011/01/blog-post_17.html
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