経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

コロナ禍の経済的な見通しと対策

2020年03月29日 | 経済
 昨日は新たに確認された感染者が200人を超えた。前日は120人余、前々日が90人余なので、数字を見る限り指数関数的に増えており、オーバーシュートの入り口にある。集団感染例や海外からの移入例が含まれるので、何とか持ちこたえる希望は残っているが、いずれにせよ、長期戦になる。これを踏まえた経済対策が必要になっており、リーマン・ショックを超える巨大なものにすれば良いという短期決戦型の大艦巨砲主義で済まなくなっている。

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 世界的な流行になってしまった以上、経済が半年ほどでV字回復を果たすシナリオは、急速に現実味が薄れている。大規模な消費刺激策を打っても、感染が怖くて消費に出られず、ムダになる公算が高い。長期戦には、順次、対策を打って行かなければならないので、最初が空回りすると、後手が続かなくなり、却って苦境に陥りかねない。危機感に煽られず、冷静に実行可能性を見極める必要がある。

 コロナ禍は、長くて2年間と考えている。第一段階は、半年程で、アビガンのような特効薬が普及して死亡率の低下が見込めるようになったとき、第二段階は、1年から1年半でワクチンが開発され、普及によって防疫体制が整ったときである。これに合わせて、段階的に行動抑制が緩和され、経済活動がコロナ禍前へと復していく。抑制を緩和するだけで、自然に経済は戻っていく。刺激策で急速に戻すのは防疫の上で危険ですらある。

 基本戦略は、2年後には戻ると見定め、事業と雇用を維持することである。まず、事業者には、徹底的な融資が必要だ。売上激減やイベント中止でも支払うものに、無利子無担保で融資し、2年後に債務整理を行い、払える範囲で超長期で返済する。額が少ないと、事後加入の保険料やDES化のようなものになろう。重要なのは、2年後も需要拡大策を持続させ、成長が見込め、十分に払える経済状況にすることである。

 雇用については、雇用調整助成金で失業を予防し、失業者には失業給付を実施する。問題は、雇用保険から外れるパートや個人請負だ。期間が長引くことを踏まえれば、自治体を通じての給付ではなく、事後にはなるが、特別措置として雇用保険に組み込むべきではないか。2年を限度に定額の給付を行い、給付の終了後に、定額の保険料を払い続けて「返して」もらい、短期で脱退するなら、一括支払を請求する。

 低所得者への生活支援を行うのであれば、年金保険料の定額免除が考えられる。厚生年金であれば、天引きをする事業者に還元を求めることで早く実施できるし、そもそも、低所得者に定率の保険料率をかけるのは、料率の高まりで無理が生じていたので、実質的な控除が実現する。これは、経済対策として始め、恒久化するのが望ましい。長期的な財源は、料率で調整することも可能だ。

 ところで、売れ残った高級農産物を処理するために、「お肉券」や「お魚券」が取りざたされているが、事業者に販売促進費を補助する方が遥かに手間がかからないし、早く対応できるのではないだろうか。未曽有の事態だからと言って、新手の思いつきを次々に施策にすれば、自治体などの現場に無理がかかる。危機に在っては、無闇に総動員とか叫ばず、既存の制度を拡充しつつ、徹底して活用すべきである。

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 今後、企業は、どのような形なら、感染リスクを下げて、事業ができるかを考えていかなければならない。お上の基準を待っていては、いつになるか分からず、業界なり、トップ企業が範を示すほかあるまい。例えば、香港のように、レストランでは半分の席を空け、テーブルを1.5m離すというようなものだ。むろん、できる場合だけでなく、キャバレーのような密接場面が伴う営業は禁止といった、できないことを示すのも社会的な責任である。

 幸い、通勤電車、オフィス、学校や保育所での集団感染の例はないようである。検温や体調不良者の出勤禁止などの最大限の感染防止策を講じながら、社会機能を維持しつつ、この2年間を耐えなければならない。長期戦ではあるが、先は見えている。そこまで見通した経済対策が用意され、コロナ禍を抜けた後も持続的な需要拡大策が続き、成長が約束されていると分かれば、苦難を乗り越える勇気も得られよう。


(今日までの日経)
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(図)



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