経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

先行き不安と税収の矛盾

2011年12月16日 | 経済
 昨日の日銀短観を受けて、日経は、微妙に社説のスタンスを変えてきた。「社会保障と税の一体改革は重要だが、成長への目配りも」ということになった。さすがに、「消費増税を決定するとともに、四次補正で景気対策を」とは書けないだろうね。読売や毎日と違い、景気の先行きに不安を感じるだけ、まともだよ。

 今回の短観の特徴は、日経にもあるように、業種でのばらつきだ。製造業が悪く、内需向けの非製造業が良い。製造業の中でも電気機械が極端に悪く、自動車は良い。輸出型の製造業は、稼ぎ頭だし、声も大きいが、日本は内需の国である。今回の結果は悪くないというのが、筆者の認識だ。

 内需が堅調な背景には、2010年度の大規模な緊縮財政の傷がようやく癒えてきたことがある。家計調査を見ると、子ども手当の影響の振れで分かりにくいが、収入も、消費支出も着実に伸びてきている。それゆえ、日経にあるとおり、ファミマは最高益になるし、マンションの復調も顕著になるわけである。

 正直、来年は外需には頼れない。危機にある欧州だけでなく、日経が「対中直接投資9.8%減」と報じるように、中国の減速は著しいだろう。昨日のロイターは、中国商務省の見方として、「2012年第1四半期の輸出は非常に深刻な状況になる」と伝えているほどだ。それだけに、経済運営としては、内需をいかに大事にするかがカギになってくる。

 一方、日本の財政当局は、緊縮財政を目指し、今日もプロパガンダに余念がない。日経によれば、「税収は42兆円規模で、国債発行44兆円を3年連続で下回る」のだそうだ。2011年度の税収は、見込みの40.9兆円から、1.1兆円上ブレし、四次補正で42.0兆円に修正される。2012年度は、横ばいの42兆円規模にするという。

 政府の経済見通しは、まだ出されていないが、おそらく、2%程度の成長率だろう。そうすると、成長はするが、税収は増えないということになる。普通に考えれば、2兆円程度の増収はあるはずだから、また「隠蔽」である。今年度も、1.1兆円の上ブレが隠されていたのだから、同じことである。

 今年度の上ブレは、予定していた8000億円の法人減税ができなかった影響はあるものの、震災や円高によって、大手企業が1割の減益になることを踏まえると、税収の見込みが適正だったなら、相殺されて予定どおりくらいだったろう。それが1.1兆円の上ブレなのだから、見込みが過少であったと考えざるを得ない。

 日経の記事には、「2012年度は法人減税が下押し要因になる」としているが、復興増税によって実質的な減税にしないという説明だったはず。下押し要因になるなら、それこそ問題だろう。こんなことをしているようでは、財政赤字の原因は、消費増税を政治や国民が嫌がるからとは、とても言えない。

 国債発行44兆円の方も、今年度は四次補正で1.3兆円も余ることが明らかになっている。成長を見込んで、予定利率を上げるなら、来年度の44兆円も分かるが、それなら、他方で税収が上がることになる。税収が横ばいで、国債費が増大というのは、経済成長を頭に入れると、最初から矛盾しているのである。

 こういう宣伝する人たちに、大事な内需にかかる経済運営を、任せて大丈夫なのかと不安を感じずにはいられない。日経も、そろそろ当局の説明を無批判に受け入れるのはやめて、FTのように自己の見解を持つべきだろう。景気の先行きに不安を感じた今こそ、変わるときてある。

(今日の日経)
 ネット大手が大量採用。国保保険料の県内格差を縮小。米銀CDSが上昇、欧州が揺れると何が起こるかわからない。海外急減速、復興需要は出遅れ。マンションで電力を一括購入、大手が本格採用、太陽光も。株式・割安でも界鈍く、損失恐れ、現金のまま保有、PBRは1倍割れ。子ども手当の事業主負担300億円増。イラク戦争終結宣言。インドネシア国債が投資適格。法人減税で下方修正相次ぐ。10年債0.980%に。経済教室・TPP補償・斉藤淳。

※欧州危機の米国波及の記事第1号かな。※電力改革の政策はなくとも、民は進む。※リスクがあると合理的にはなれないのだ。

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