経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・増税による財政再建の虚しさ

2020年06月28日 | 経済
 2019年度後半は、消費増税を断行したのだから、財政赤字が減っても良さそうなものたが、実際には、日銀・資金循環統計における一般政府の資金過不足は、4期移動平均のGDP比で見ると、少しづつ悪化している有様だ。むろん、4-6月期からは、コロナ禍による大規模な財政赤字の拡大が予想されるが、その前にして、こうなのである。財政赤字は企業黒字と表裏一体の関係にあるため、増税で消費を減らすと、企業の設備投資が滞って黒字が増し、財政の赤字も減らなくなってしまう。

………
 一般政府の資金過不足の推移を眺めていると、「賽の河原」を感じる。小泉政権下の4年及ぶ苦難の緊縮財政でGDP比-2%を割るまでに積み上げたのに、リーマンショックで、元の木阿弥となった。第二次安倍政権も、緊縮財政を続けて、同じレベルまで持って来たが、企業の設備投資が崩れると、またフリダシに戻りかねない。ポイントは、財政運営より、企業の設備投資にある。

 リーマンショックの際は、緊縮財政で設備投資が停滞していたときに、輸出が急減し、一気に冷え込んだ。設備投資の水準が元に戻ったのは、輸出の水準が回復した2014年になってからである。今回も、輸出の急減は避けられないにせよ、リーマンショックの際のように、長引きはしないのではないか。結局、輸出の戻りが早ければ、設備投資の停滞も短く済み、財政赤字も一過性で終わる。

 すなわち、今後の動きは、リーマンショックのときより、東日本大震災のときに近い形になると思われる。大震災の場合は、水準は低かったにせよ、輸出の急減は1四半期で戻って、設備投資に大きな悪影響は出なかった。消費も2四半期で回復に至っている。今回は、1四半期で済まないとしても、未曽有の危機だからと言って、リーマンショック並みになると決めつけることもない。

 ここで注目したいのは、消費の行方である。経済対策がマクロ経済を大きく左右することは、あまりないのだが、10万円給付金は、13兆円にも及ぶ巨大なものであり、年間の消費税を半分にする程の規模があるため、仮に9割が貯蓄されたとしても、それなりに経済を動かしてしまう。徐々にでも大半が消費に流れ出すとなれば、意外な回復をもたらすかもしれず、期待半分で眺めているところである。

(図)


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 新型コロナの感染確認数は、増加傾向になっているが、緩やかである。接待や宴会は無理でも、旅行や物販は大丈夫ではないか。これまでの経済成長は、外需頼みであった。緊縮財政で消費を抑圧していたので、それしか道がなかったわけだが、外需だけで成長し、財政再建を果たすことには、元から無理があり、GDP比で2%を割るくらいが限界だったように思う。これからは、消費も成長させなければならない。

 しかるに、第2波の備えとして、再分配の機構を整備しようという声は聞かれない。国民年金の保険料納付は、4割程が口座振替になっているので、この口座を通じて給付も行うこととし、これを契機に振替の割合を高めてはどうか。一律に給付し、事後に所得減を証明したら、返済を免除するようにすれば、所得に応じた給付も可能である。所得に関係なく、全国民に一律10万円というのは、何度もやれるものではあるまい。


(今日までの日経)
 ワクチン 来春にも国内に 政府・アストラゼネカ合意。10万円支給 IT化遅れ 事務作業 予想超えた。

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