今日の経済教室のタイトルは「増税と併せ量的緩和を」なのだが、本文の内容とズレがあるように感じられる。こういうことが時々あるのは、タイトルやポイントは編集の方で付けているためだろうか。編集の志向性が滲んでいるように思える。
筆者なりに、本多祐三先生の論旨をまとめると、復興増税などの財政面からの負のショックをできるだけ小さくしつつ、復興需要の表れに際し、金融緩和をすることで、デフレ脱却を図ろうとするものであろう。タイトルから受ける、「増税しても量的緩和をすれば良い」という印象とは異なるものだ。
本多先生の論旨には、筆者も賛成である。筆者の場合、量的緩和の景気浮揚の効果は限定的だと考えているが、程度の差に過ぎない。仮に、復興需要が出てきて、長期金利が上昇し始めたときに、量的緩和によって抑制をするなら、それは景気回復を促進し、デフレ脱却にも効果があろう。問題は、本当に復興需要が出てくるかである。
日本の財政当局は、補正予算で財政出動をしていると見せかけて、実はしていないというトリックをかけてくる。そのため、十分な監視が必要である。先日、KitaAlpsさんが指摘していた「カラ積み」の問題だ。これは、昨日の会計検査院の指摘に関する報道で、はしなくも証明された形だ。
世間的には、一次と二次の補正で大規模な復興費が実施された印象があろうが、昨年度予算の補正後の規模と比べると、まだ小さく、現時点では「緊縮財政」の状態にある。三次補正にしても、東電賠償の保証費のように、直ちに需要にならないものがあり、復興需要を期待するのは早計だ。
しかも、財政当局の増税と絡めた仕掛けによって、三次補正は遅れにおくれ、成立しても、被災地の東北は、既に冬に入り、公共事業の執行は困難となる。何とも酷い事態である。その一方、地方自治体の震災関係の補正予算1兆円や、損害保険の1.2兆円の支払いなどによる復興需要があるにしても、動向は慎重に見極めなければならない。
それにしても、本多先生のような冷静で穏健な判断ができず、デフレでも増税という論者が目立つのは、なぜ、なのだろうか。「増税しても、景気には無関係」という主張は構わないが、政策論としては、リスクがないとは言い切れなければ、悪影響を小さくするように工夫するのは当然ではないか。
すなわち、緩やかな増税なり、景気に応じた増税では、金利急騰といった財政破綻のリスクが大きいという主張をしてもらって、それが一気の増税による景気失速のリスクを上回るとしてもらわないと納得しかねる。例えば、今日の本多先生の論考に反対なら、緩やかな増税では、日銀が金融緩和を行っても、長期金利の急騰が抑えられないとかね。
この三日間の経済教室の議論を見るにつけ、日本の経済運営の課題は、財政需要の動向が正確に認識されていないことにあると思う。財政当局は、敢えて、説明をせずに不知を放置している。2010年度の財政運営の実態を知れば、月曜の池尾先生も考えが変わるかもしれないし、火曜の宇南山先生も緊縮財政の悪影響に気づくかもしれない。今日の本多先生も、復興需要を当然視しているようなところが心配である。問題の根源は、ここなのだ。
さて、こうした財政当局の情報操作ぶりについては、本コラムは、たびたび指摘してきた。先日も、「成長しても財政は改善しない」という趣旨の報告書が内閣府から出されたが、これも、その一つである。こういうもので、「成長より増税」という機運を醸そうとしているのだろう。紙幅もないので、そのトリックを暴くのは明日にしようかね。
(今日の日経)
地震保険の補償を拡大、部分損壊の支払い増額も、保険料は引き上げ。農地集約へ売却奨励金。コマツ増益幅縮小。復興債償還20年を提案。奮発消費が世相を映す。円高対策へ専門組織。積算か逆算か、東電7000億円支援。中国、9.1%成長に減速。輸出は減速で12年度には5%、成長率は8%割れ・汪涛。対ミャンマーに米が軟化。欧州銀資本20兆円不足。しまむら、生産国で検品仕分け。経済教室・増税と併せ量的緩和を・本多祐三。
※奮発消費は円高が原因ではないか。昔のシーマ減少だよ。歳がバレるね。※面倒だから、実需向けに「円高保険」でも作ったらどうか。介入するより安上がりになるだろう。※UBSの汪涛さんの見通しは傾聴に値する。
筆者なりに、本多祐三先生の論旨をまとめると、復興増税などの財政面からの負のショックをできるだけ小さくしつつ、復興需要の表れに際し、金融緩和をすることで、デフレ脱却を図ろうとするものであろう。タイトルから受ける、「増税しても量的緩和をすれば良い」という印象とは異なるものだ。
本多先生の論旨には、筆者も賛成である。筆者の場合、量的緩和の景気浮揚の効果は限定的だと考えているが、程度の差に過ぎない。仮に、復興需要が出てきて、長期金利が上昇し始めたときに、量的緩和によって抑制をするなら、それは景気回復を促進し、デフレ脱却にも効果があろう。問題は、本当に復興需要が出てくるかである。
日本の財政当局は、補正予算で財政出動をしていると見せかけて、実はしていないというトリックをかけてくる。そのため、十分な監視が必要である。先日、KitaAlpsさんが指摘していた「カラ積み」の問題だ。これは、昨日の会計検査院の指摘に関する報道で、はしなくも証明された形だ。
世間的には、一次と二次の補正で大規模な復興費が実施された印象があろうが、昨年度予算の補正後の規模と比べると、まだ小さく、現時点では「緊縮財政」の状態にある。三次補正にしても、東電賠償の保証費のように、直ちに需要にならないものがあり、復興需要を期待するのは早計だ。
しかも、財政当局の増税と絡めた仕掛けによって、三次補正は遅れにおくれ、成立しても、被災地の東北は、既に冬に入り、公共事業の執行は困難となる。何とも酷い事態である。その一方、地方自治体の震災関係の補正予算1兆円や、損害保険の1.2兆円の支払いなどによる復興需要があるにしても、動向は慎重に見極めなければならない。
それにしても、本多先生のような冷静で穏健な判断ができず、デフレでも増税という論者が目立つのは、なぜ、なのだろうか。「増税しても、景気には無関係」という主張は構わないが、政策論としては、リスクがないとは言い切れなければ、悪影響を小さくするように工夫するのは当然ではないか。
すなわち、緩やかな増税なり、景気に応じた増税では、金利急騰といった財政破綻のリスクが大きいという主張をしてもらって、それが一気の増税による景気失速のリスクを上回るとしてもらわないと納得しかねる。例えば、今日の本多先生の論考に反対なら、緩やかな増税では、日銀が金融緩和を行っても、長期金利の急騰が抑えられないとかね。
この三日間の経済教室の議論を見るにつけ、日本の経済運営の課題は、財政需要の動向が正確に認識されていないことにあると思う。財政当局は、敢えて、説明をせずに不知を放置している。2010年度の財政運営の実態を知れば、月曜の池尾先生も考えが変わるかもしれないし、火曜の宇南山先生も緊縮財政の悪影響に気づくかもしれない。今日の本多先生も、復興需要を当然視しているようなところが心配である。問題の根源は、ここなのだ。
さて、こうした財政当局の情報操作ぶりについては、本コラムは、たびたび指摘してきた。先日も、「成長しても財政は改善しない」という趣旨の報告書が内閣府から出されたが、これも、その一つである。こういうもので、「成長より増税」という機運を醸そうとしているのだろう。紙幅もないので、そのトリックを暴くのは明日にしようかね。
(今日の日経)
地震保険の補償を拡大、部分損壊の支払い増額も、保険料は引き上げ。農地集約へ売却奨励金。コマツ増益幅縮小。復興債償還20年を提案。奮発消費が世相を映す。円高対策へ専門組織。積算か逆算か、東電7000億円支援。中国、9.1%成長に減速。輸出は減速で12年度には5%、成長率は8%割れ・汪涛。対ミャンマーに米が軟化。欧州銀資本20兆円不足。しまむら、生産国で検品仕分け。経済教室・増税と併せ量的緩和を・本多祐三。
※奮発消費は円高が原因ではないか。昔のシーマ減少だよ。歳がバレるね。※面倒だから、実需向けに「円高保険」でも作ったらどうか。介入するより安上がりになるだろう。※UBSの汪涛さんの見通しは傾聴に値する。
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