経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

世界経済の転機を見る目

2010年11月17日 | 経済
 日経は「円高ドル安に転機の兆し」と言うが、もう「転機」になっている。「G20会議後、流れに変化」と言っても、FRBがQE2を決定し、市場が反応した段階で変化しているのであって、政治的な会議は関係ない。会議では認識を共有しただけなんだがね。

 こういう「見出し」が出ると、日本のエコノミストの大勢は、揃って円高トレンドの見方を修正するのだろうな。QE2のときに、「まだ円高が続くおそれ」なんて言っていたのが誰か、チェックする良い機会だ。

 その点で言うと、第一生命研の熊野英生さんは傑出している。10/15の時点で、「円高の潮目は近い」と的確に分析し、QE2直後に「ドル安修正の予兆」としている。なかなかのものだ。熊野さんの分析は、基礎がしっかりしていて、いつも読ませる。11/15のドル建て日経平均の分析も、ぜひ欲しい思っていたものだった。今後の御活躍を陰ながら期待しています。

 さて、転機と言えば、韓国にも訪れたように思う。今日の日経の一連の記事は、興味深い。物価上昇圧が増し、昨日、韓国銀行が利上げをしたところだったので、「おや」と思っていたが、内需が拡大し、企業業績が拡大しているとの記事をみれば、ウォン安局面も終ったことが分かる。にわかに起きた「韓国企業を見習え論」も、これで一服であろう。

 改めて言うまでもないが、内需が広がれば、低金利を続けることは出来ないし、そうなればウォン高になる。これまでのような為替介入も難しい。むしろ、ウォン高にして資源価格の上昇を緩和することが、マクロ経済的には正しい選択だ。

 韓国というのは日本以上の格差社会であり、少子化も日本を超える深刻さであることを踏まえれば、国内厚生を犠牲にしてきた面は否定できまい。これは韓国企業の世界的な躍進の陰の部分である。ある意味、韓国は、日本を極端にしたような存在だ。

 これまで、韓国の電機大手が揃って好調だったのは出来すぎであり、こうしたことには、マクロ的ファクターがあると見なければならない。今日の日経で、「二極化進む」というのは、普通の姿に戻ってきたことを示している。内需こそが国の豊かさなのだから、「サムスンに良いことが、韓国にとって良いこと」とはならない。

 韓国の電機大手が成功を収めてきたのには、リスクの高い巨額の設備投資を行っても、「最後はウォン安がある」という後ろ盾があった。しかし、今後は、当たり前のリスク管理が必要になる。日経の商品欄にもあるように、液晶パネルが急落したりと、電子デバイスは全般に軟調だ。高転びに気をつけなければならない。

 そういう懸念はあるにせよ、韓国経済が全体として良い方向にあることは確かだ。内需を大事に育てていけばよい。間違っても、日本の財政当局のように、緊縮財政で内需の芽を摘むようなことをしてはいけない。まあ、そんな外れたマネをするのは、日本だけか。

 それにしても、予算要求では、無理な1割削減をした上、要望枠で出ださせて批判の的を作ったり、税調では、各界が最も嫌う対抗案を連発してみたりと、恨みを買うようなことばかりしているが、奢れる者は久しからずだ。自己認識はどうか知らぬが、権限にモノを言わせて、知恵のないことばかりしているのだから、謙虚さを忘れぬようにね。

(今日の日経)
 円高・ドル安、転機の兆し、G20後に変化。企業第6部・タイ工場に敗北、NTTD、郵船、日揮。新防衛大綱、島しょ強化。イトカワで採取確認。中国不動産に海外マネー急増。マグロ乱獲国を来年禁漁に。税制論議、財務省寄り鮮明。介護保険・賃上げで入職も。家電エコポイント10月は3倍に。米小売り持ち直し。韓国、内需型回復広がる。工作機械受注・中国は調整期。FED来冬にも量産。13大学が仕分けに反発。

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