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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

新規求人数に見る消費減退の予兆

2014年05月11日 | 経済
 今日の日経は「景気は夏にも回復」だが、駆け込み需要で調子の良かった3月の指標が出尽くして、「消費税でも平気」の強気もこの辺が峠ではないだろうか。4月の反動減の数字が出はじめると、「一時的」と唱えつつも、言い知れぬ不安がよぎるようになる。人心とは、そんなものである。その第一弾が5/9公表の「急低下した」景気先行指数といったところか。

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 景気先行指数は、3月のデータだから、「未知への不安を映しただけ」とも言えようが、「これほどの低下はリーマン・ショック以来」となると、不気味さも感じよう。先行指数を構成する9指数のうち、8つまでが低下しており、その中で筆者が注目するのは、新規求人数である。これは、株価や金利と違って、実態的な指標だからである。

 新規求人数の低下は、ある意味、当然のものだ。駆け込み需要に対応するために、12月から1月にかけて大量に出した求人が剥落したものと考えられる。そうした求人急増のあおりを受け、採用難に陥ったのが、いわゆるブラック企業なのだろう。そして、この3月の低下によって、新規求人数は秋のレベルにまで後退することになった。

 実は、新規求人数は、この1年半ほど、消費と密接に関連してきている。駆け込みと反動という撹乱によって、消費の基調がつかめない中で、その動向は、消費の実態と動向を占うために、有用な指標となる。要するに、新規求人数の増は、消費者が持つ雇用への見通しを好転させ、所得増が現れる前でも消費増をもたらす、そんな傾向がある。

 アベノミクスは、2013年の前半に景気を持ち上げ、後半は停滞を見せたが、その主役は、収入が大して増えていないのに、消費が急伸したという不思議な現象だった。世間的には「マインドの改善」の一言で済まされているが、そこには雇用への見通しの改善という実態がある。それが消費を促したわけである。

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 その新規求人数が逆に急低下したのだから、消費が落ちるであろうことは、容易に想像がつく。むろん、3月は駆け込み需要があったから、消費の実態は隠されているが、基調は厳しいと思わなければならない。つまり、反動減だけでなく、雇用の見通しの悪化によって、消費性向が低下することまで考える必要がある。

 3月の家計調査は、勤労者世帯の収入が異様な低下を見せた。家計調査の収入や消費は、新規求人数と似たような動きを示していたので、符合する動きである。近年は非正規労働の比率が高まっているので、雇用にも駆け込みと反動が出るかもしれない。むろん、これは消費の低下を増幅することになる。

 足元の消費については、「消費税率引上げ後の消費動向等について」の5週目が5/9に内閣府から公表されたので、これを見ると、家電販売の前年比は、前週の-12.7%から-20.5%へとマイナス幅が広がり、飲食料品も-6.1%が-8.1%へと落ちた。内閣府は休日数の違いが出たとするが、家電は、それを調整しても、前月の平均からマイナス幅が縮んでいない。早くもリバウンドの力が衰えているのかもしれない。

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 筆者は経済学を奉じており、「価格が上がれば、消費は減る」という原理を信じている。増税を超える収入増や雇用増でもなければ、増税をすれば消費は減るのが普通だ。したがって、これに反するような日本のエリートの強気さには、どうしても違和感を覚える。むろん、1997年の大型金融破綻のようなクライシスを予想しているわけではない。ただ、低迷に逆戻りしたときに、「不運だった」とは考えないでほしい。なぜなら、そう考えること自体が不幸の真の理由なのだから。

(今日の日経)
 景気・増税後足踏み短く、夏にも緩やか回復。南シナ海「深刻な懸念」ASEAN外相会議。大統領が残した尖閣の棘・伊奈久喜。台頭するトルコ家電産業。読書・なぜ貧しい国はなくならないのか、小学4年生の世界平和、人類進化700万年の物語。

(昨日の日経)
 残業代を中小も5割増。不動産大手が強気の増床。上場企業決算見込み増益率34%。景気先行指数が急低下。大機・デフレ脱却の皮肉。

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