経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

スガノミクス・消費増税後の対策をお忘れか?

2020年12月06日 | 経済(主なもの)
 10月の経済指標を見る限り、「外出自粛」のコロナショックから戻せるところは戻し、昨年10月の消費増税後の水準まで回復した。次の課題は、消費増税で既に落ち込んでいた水準から、それ以前の水準へと持ち上げることになる。それには、増税によって強まった消費抑制の構造を再分配の整備で緩和しなければならない。現実には、感染を抑制するために戻すに戻せない飲食宿泊などの業界への対応にかかずらわり、手当てできる部分にすべきことがどこかへ飛んで行ってしまっている。

………
 10月の商業動態・小売業は前月比+0.4と順調に増加した。CPIの財が前月比-0.7になっているので、実質では、もっと高い伸びとなる。103.5という水準は、コロナ前の2月を上回り、消費増税前の昨年4-6月期と同じくらいの高さである。モノの消費については、ここまで戻った。ただし、デコボコはあり、インバウントを失った百貨店等の各種商業、外出減の影響を受け多と見られる衣料・身回り品は、かなり差がある。

 また、10月の鉱工業指数で、消費財出荷を見ても、前月比+0.4の98.8であり、この水準はコロナ前の1月と同等である。鉱工業生産は、全体的には、コロナ前水準には今一歩であるが、資本財(除く輸送機械)の遅れによるところが大きい。これも、10月は前月比+11.2と大きく伸び、11月の予測も+8.6となっており、追いついて来ている。あとは、出遅れている建設財の戻りを待つばかりである。

 雇用に関しては、失業率が+0.1の3.1%に上昇したものの、雇用者数は、前月比+19万人と4か月連続の増となって、減らした分の4割を回復している。新規求人倍率は、求職増と求人減により、前月比-0.20の1.82倍と一歩後退だ。建設業、製造業、医療福祉の求人は回復傾向にあっても、卸小売、宿泊飲食の戻りが弱い。業種によって回復に差があるのは、コロナの影響に差がある以上は致し方あるまい。

 先行する11月の消費者態度は、やはり、感染拡大を受けてか、前月比+0.1と回復が止まったような様子である。「暮らし向き」や「収入の増え方」は増えた一方で、「雇用環境」は、未だ低い水準にありながら-0.6と低下して、頭打ちとなった。コロナの拡大で宿泊飲食業に陰りが出ているものと思われ、来週の11月の景気ウォッチャーで明らかとなろう。ここでも、戻せるものが戻ったという状況だ。

(図)


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 ところで、経済はコロナ禍で大打撃を受けたので、さぞや、税収が落ち込んでいると思うかもしれないが、実際は、10月までの国の一般会計の税収は、前年同月比+0.2%となっている。法人税は-18.0%の減なのに、消費税は+18.0%もの増となっているからだ。言うまでもなく、昨年10月に税率を10%に引き上げたせいである。今後、法人税が更に前年度を下回る可能性が高いが、不況下に増税したために、安定化機能が損なわれている。

 10%消費増税は、半分が教育無償化に使われ、半分は純増税だった。消費税は消費削減の効果が強い反面、教育無償化は消費拡大の効果が薄く、当然ながら、純増税は効果ゼロだ。少なくなくとも、純増税分をどう還元するかが課題になるが、コロナ禍に紛れ、消費増税の対策が剥落した後の手当てすら意識に上っていない。次の補正予算では、平常でも行う3兆円に、純増税分2兆円を加えた5兆円が緊縮にならないレベルになる。

 これに、コロナ禍で減少した消費を補うよう、10兆円を積み上げたくらいが必要な規模であろう。もっとも、使い方も重要で、温暖化対策の基金にするとか、予備費で置くとか、すぐに需要に結びつかないもので膨らませても意味はない。本当は、所得再分配を行うべきであるのに、迅速に給付するインフラがない問題は放置されている。英国はコロナ支援を6日で実施できたが、給付つき税額控除がない日本では、無いものねだりである。

 GoToのような業界支援策は、感染が拡大する中では、使うに使えない。それが分かっていながら、野党ですら時間を巻き戻すような消費減税を言うくらいで、既にある消費税の増収分を用いて再分配のインフラを作ろうという発想さえない。デジタル化は注目を集めるにしても、国民に恩恵の及ぶ制度のためのものでなければ、個人情報の集約や連携などで理解が得られるはずもない。デジタル化は手段であって目的ではないはずだが、手段の目的化はよくある話である。


(今日までの日経)
 政府、臨時交付金1.5兆円 時短協力金の原資に。社説・児童手当の見直しは丁寧に。脱炭素支援に2兆円基金 経済対策。英、コロナ支援6日で。コロナ、通常医療を圧迫。所得保障は最適解か。米英、ワクチン迅速承認 月内に接種。


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