マクロ経済で最も重要な概念は、「誰かの借金は、誰かの貯蓄」である。どうも「貯蓄」というと、蔵の中の米俵とか、金塊とかをイメージするようだが、蓄えた米は劣化して無価値になるし、金塊とて、少子化で受け取る人が居なくなれば、無価値になる。貯蓄とは、人から何かを得る「権利」であり、借金とは、人に何かを与える「義務」であって、一対でもって始めて意味を持つ。ところが、財政赤字というと、片面だけしか見えなくなるようである。
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ダメな財政学者は、赤字の削減を叫んでも、それで余らせた貯蓄を誰が使うかを考えない。主流派の経済学では、財政赤字が減ると、金利が下がり、設備投資が盛んになって、貯蓄が有効に使われるというのが標準的な考え方だが、今の日本では、金利の下がりようがないので、緊縮財政は、単に経済の縮小させるだけになる。少なくとも、外需が補う状況でないと非常に危いことになる。
実際の経済では、設備投資は金利に感応的ですらなく、需要に従って動く。そのため、金利の低下によって、住宅投資が盛んになるか、自国通貨安に振れて輸出が伸びるかしないと、金融緩和をしても、設備投資は出てこない。別に新しい話ではなく、昔から、金融緩和について、「ヒモでは押せない」と言われて来たことである。金利よりも、需要動向に関わるリスクの方が設備投資を支配しているのだ。ちなみに、住宅が感応的なのは、自分が住むという需要が確実だからである。
さて、日本は、住宅投資はやり尽くしているし、一層の円安で輸出増を望める状況でもなくなっている。だから、金融緩和は効かない。仮に、産業政策を加えて、設備投資を刺激できたとしても、増税で消費が減退し、輸出が伸び悩む中では、需要に対する設備投資の比率が上がってしまい、過剰な投資になりかねない。良くて、将来にする設備投資の先食いになるだけである。
2014年の消費増税の際は、前年に異次元緩和と財政出動を組み合わせて、景気回復への転換を果たし、円安を背景とする輸出の大幅増が緊縮財政をオーバーライドする希望があった。実際には、リーマン前のような設備投資ブームとはならず、異次元緩和の第二弾は空振りに終わり、追加の消費増税は先送りとなった。今回は、こうした希望すらないにもかかわらず、増税が敢行される。
政府は、今回の純増税分について、景気対策を打って相殺するつもりのようだが、これは、いつ止められるのか。民需や外需が出て来なければ、止めるにやめられず、結局、高齢化に伴う財政需要の増大に置き換わるまで続けざるを得まい。これでは、ムダ使いの誹りは避けがたい。少子化という国の存続を揺るがす課題がありながら、余計なことに費やすから、人口崩壊が止められないのである。
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(図)
木曜に出た全産業指数で、頼みの綱の建設投資の状況を眺めると、民間住宅は早くも減衰の局面にあり、設備投資を支えた企業の建設投資に揺り戻しがうかがえ、ひとり公共だけが、2018年に絞ったものを返す形で、建設投資を支えている。輸出の状況については、8/21に触れたように、底バイ状態にあって、更にリスク要因が押し寄せてきている。とても、消費の抑圧をしているような場合ではない。
こんな有様に反発して、消費「減税」を唱える向きもあるが、もし、本当にやってしまうと、輸入を急増させて終わりとなる。現在の弱い駆け込み需要の状況でさえ、輸入が膨らんでいる。消費税は、下げるにしても、小刻みにやらないと、ショックを与えるだけで、設備投資を促進して、成長を加速させるようにはならない。経済にとって、需要を安定的に管理することが何より大切である。現実として、設備投資は、臆病であり、需要に反応して徐々に出て来るものだからである。
(今日までの日経)
FRB、9月利下げに傾く、貿易摩擦に懸念強く。中国、米関税第4弾に報復 750億ドル分に最大10%、トランプ氏「対抗」 NY株一時急落。
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ダメな財政学者は、赤字の削減を叫んでも、それで余らせた貯蓄を誰が使うかを考えない。主流派の経済学では、財政赤字が減ると、金利が下がり、設備投資が盛んになって、貯蓄が有効に使われるというのが標準的な考え方だが、今の日本では、金利の下がりようがないので、緊縮財政は、単に経済の縮小させるだけになる。少なくとも、外需が補う状況でないと非常に危いことになる。
実際の経済では、設備投資は金利に感応的ですらなく、需要に従って動く。そのため、金利の低下によって、住宅投資が盛んになるか、自国通貨安に振れて輸出が伸びるかしないと、金融緩和をしても、設備投資は出てこない。別に新しい話ではなく、昔から、金融緩和について、「ヒモでは押せない」と言われて来たことである。金利よりも、需要動向に関わるリスクの方が設備投資を支配しているのだ。ちなみに、住宅が感応的なのは、自分が住むという需要が確実だからである。
さて、日本は、住宅投資はやり尽くしているし、一層の円安で輸出増を望める状況でもなくなっている。だから、金融緩和は効かない。仮に、産業政策を加えて、設備投資を刺激できたとしても、増税で消費が減退し、輸出が伸び悩む中では、需要に対する設備投資の比率が上がってしまい、過剰な投資になりかねない。良くて、将来にする設備投資の先食いになるだけである。
2014年の消費増税の際は、前年に異次元緩和と財政出動を組み合わせて、景気回復への転換を果たし、円安を背景とする輸出の大幅増が緊縮財政をオーバーライドする希望があった。実際には、リーマン前のような設備投資ブームとはならず、異次元緩和の第二弾は空振りに終わり、追加の消費増税は先送りとなった。今回は、こうした希望すらないにもかかわらず、増税が敢行される。
政府は、今回の純増税分について、景気対策を打って相殺するつもりのようだが、これは、いつ止められるのか。民需や外需が出て来なければ、止めるにやめられず、結局、高齢化に伴う財政需要の増大に置き換わるまで続けざるを得まい。これでは、ムダ使いの誹りは避けがたい。少子化という国の存続を揺るがす課題がありながら、余計なことに費やすから、人口崩壊が止められないのである。
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(図)
木曜に出た全産業指数で、頼みの綱の建設投資の状況を眺めると、民間住宅は早くも減衰の局面にあり、設備投資を支えた企業の建設投資に揺り戻しがうかがえ、ひとり公共だけが、2018年に絞ったものを返す形で、建設投資を支えている。輸出の状況については、8/21に触れたように、底バイ状態にあって、更にリスク要因が押し寄せてきている。とても、消費の抑圧をしているような場合ではない。
こんな有様に反発して、消費「減税」を唱える向きもあるが、もし、本当にやってしまうと、輸入を急増させて終わりとなる。現在の弱い駆け込み需要の状況でさえ、輸入が膨らんでいる。消費税は、下げるにしても、小刻みにやらないと、ショックを与えるだけで、設備投資を促進して、成長を加速させるようにはならない。経済にとって、需要を安定的に管理することが何より大切である。現実として、設備投資は、臆病であり、需要に反応して徐々に出て来るものだからである。
(今日までの日経)
FRB、9月利下げに傾く、貿易摩擦に懸念強く。中国、米関税第4弾に報復 750億ドル分に最大10%、トランプ氏「対抗」 NY株一時急落。
https://twitter.com/LHSummers/status/1164490326549118976
https://twitter.com/LHSummers/status/1164490361881931777/photo/1
https://twitter.com/paulkrugman/status/1164604703424090112
(和訳)
https://anond.hatelabo.jp/20190824134241
清滝信宏のような著名なマクロ経済学者も同じですな。
代わりに分かってる人は誰でしょう?三橋さんですか?藤井さんですか?中野さんですか?
どうしてこうなったのでしょうか?