経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

10-12月期GDP2次・上方修正の中身は悪い兆し

2019年03月10日 | 経済
 3/8公表の10-12月期GDP2次速報の実質成長率は年率1.9%と、1次速報の年率1.4%から上方修正された。ただし、中身は、在庫の寄与度が-0.2から0.0に変わった要因が最も大きく、最終需要で見れば、わずかながら低下したという結果だった。このため、1-3月期は、在庫の復元で需要増となる可能性が薄れ、マイナス成長に陥る恐れが一層、強まった。実際、次回の1次速報で仮置きされる原材料と仕掛品の在庫の寄与度は-0.1となり、一つ重荷を抱える形になっている。

………
 2018暦年のGDPは534.3兆円であり、2017年10-12月期が534.0兆円であったから、この1年は、ゼロ成長だったということになる。設備投資は増したが、消費がほぼ横バイで、輸出が伸び悩み、住宅と公共投資が足を引っ張ったことで、こうした数字となった。この間、財政収支は、GDP比で1%程の大幅な改善となったが、国民生活はまったく豊かになっていない。なにしろ、今期の家計消費(除く帰属家賃)の水準は、6年前のアベノミクスのスタート時の2013年1-3月期より低い。特に、消費増税以降の停滞ぶりは明らかだ。

 増税と緊縮で、家計を徹底してイジメ抜くのがアベノミクスの特徴なので、当然の帰結だが、それでも成長して来られたのは、輸出があればこそである。その輸出が停滞した2018年はゼロ成長となり、ここに来て、輸出は減少へと向かっている。中国の1,2月の貿易動向からすれば、日本の1月の輸出減は春節の季節要因とは言えないようだ。2月上中旬までの貿易統計も今一つであり、1月毎勤の製造業の時間外労働も連続で減っている。アベノミクスは、成長の支えを失おうとしており、1-3月期は、なかなか厳しいものとなろう。

 今週は1月の消費指標が出たが、統計によってバラバラの状況だ。とりあえず、統計局・CTIを引くと、前月比が+0.2、10-12月期からは+0.1となっている。1月は、商業動態と日銀・消費活動指数が大きく食い違ったりしているので、2次速報に従って調整される内閣府・消費総合指数に注目したい。他方、1月に大きく下げた景気ウォッチャーは、2月に底打ちしたものの、この2か月の落ち方が激しかった反動の範囲内である。先行きはマイナスとなっており、消費も楽観できない。

(図)


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 経済は循環である。輸出増が設備投資と所得を増やし、所得増が消費を拡大させ、それが更なる設備投資と所得をもたらす。こうして物価も上昇する。日本は、需要超過で物価が上昇するところまで待てず、早々と緊縮をするので、消費が停滞し、いつまで経っても好循環に至らない。そのうち、輸出が衰退して成長を失い、税収も含めて元の木阿弥となる。これがデフレ経済の正体であり、緊縮のタイミングという微妙な違いが日本経済のパフォーマンスを大きく変えている。

 政治的には、国民生活がまったく向上していないのに、増税で消費を圧殺して構わないとする思想が蔓延している。教育無償化で還元する分はまだしも、純増税の分だけ景気対策でバラまくくらいなら、両方やめるべきだろう。消費増税がすべてに優先するのでなければ、あり得ない政策選択である。他方、法人税収については、野村と日興から3月の企業業績見通しが出て、経常利益の伸び率の平均は、2018年度が4.8%、2019年度が6.6%と下方修正されたが、それでも、2018年度で6千億円、2019年度で9千億円、政府予算を上回る計算だ。

 財政再建に欲をかいて無理な純増税を試み、法人税収の過少な見積りで隠れ緊縮を貫徹する。こんな杜撰な需要管理をしているから、いつまで経っても、デフレ脱却も、財政再建も成らない。民のかまどを顧みない政治とは、このようなものになる。


(今日までの日経)
 中国、輸出入とも減少 1-2月。景気判断、分かれる見方 「後退局面」との声も。
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