経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

成長のための金融と財政の連携

2023年02月15日 | 経済
 10-12月期GDPの1次速報は、実質の前期比が+0.16%で、年率換算が+0.6%の成長だった。水準は、消費税前の2019年7-9月期と比べると、まだ10兆円近いギャップがあるが、名目だと並ぶところまで来ている。雇用者報酬は、名目では前期比+0.8%と順調に増えているので、今後、賃上げを通じて、消費を中心に、どこまでGDPを伸ばしていけるかだ。そうなれば、金融政策でのリフレの手仕舞いも見えてくるというものである。

 日本経済のGDPの読み方は、実はシンプルで、輸出の増→設備投資増→消費増という流れである。だから、輸出が見通せれば、景気の先行きが分かる。ただし、財政が消費への波及を邪魔しなければである。それゆえ、バラバラな輸出・住宅・公共を合成すると、設備投資にピッタリ重なるし、それに消費の推移が似てくるわけである。先行きは、輸出に陰りが見えるものの、足下の消費は、ここまでの蓄積で増している。 

 金融政策の役割は、ハッキリ言えば、ドル円レートの管理だ。為替に割り当てないとするのは建前でしかない。黒田日銀は、円高の是正に成功したが、昨年の行き過ぎた円安局面では、妙な拘りで景気を下押しし、リフレの手仕舞いのチャンスを逃してしまった。植田日銀の課題は、金融市場の歪みを直すことも然ることながら、やや円高寄りに保ちながら、それを達成するということであろう。

 10年前の政府日銀の共同声明では、白川日銀総裁が、政府の役割として競争力の強化と財政の健全化を入れ込んだが、消費増税の完遂によるリフレの失敗を見込むブラックなものではなく、異常な金融緩和と大胆な財政出動の最悪の帰結であるバブル発生というリスク要因に注意を払うホワイトなものだったろう。実際、円高への過剰な危機感から、1972年と1987年には、それで失敗しているからね。

 いずれにせよ、成長のためには、金融政策に無理をかけないように、安定的な財政を行わなければならない。税収の急増とコロナ・資源高対策の剥落で緊縮になるのを、どう防ぐかがポイントになる。小林教授が言うように賢明な支出が必要だが、「戦略的かつ効果的な財政支出」の解像度が低いことが問題で、それは産業政策でなく、少子化を緩和する再分配ということになろう。

(図)



(今日までの日経)
 国内景気、弱さ浮き彫り コロナ禍からの回復鈍く。中国半導体、工場建設遅れ 米制裁で計画に狂い。バイト時給高 フード系5.0%。経済教室・財政と金融の連携・小林慶一郎。「N分N乗」案、中所得から低所得の世帯で負担増。米利上げ継続観測 再び。公私立大の3割が理工農系の学部新設や定員増を検討。


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