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花ごよみ

映画、本、写真など・

悪党 (薬丸 岳)

2010-01-26 | 本 ま、や行(作家)
不祥事が原因で、
警官を懲戒免職になり、
今は探偵事務所に勤めている、
佐伯修一が主人公。

佐伯は被害者家族。
その加害者に対しての、
おさまることのない復讐心。

佐伯の勤務する探偵事務所にも
佐伯と同じ心を持った、
被害者の依頼がくる。

人を探し出すことによって
両者の人生を狂わすことになる。
加害者の幸福な姿は、
被害者にとっては
余計に憎しみの心が、
増殖していく原因となる。

加害者が不幸にならないと、
心の癒しは遠のいていく。
被害者にたいしての赦しとは?

重い内容です。
でも各章によって
罪の内容が異なっていて、
連作になっているので
ストーリーの展開は分かりやすく、
職業もミステリー小説には、
よくある探偵ということなので、
意外と楽に読み進めることができました。

忌まわしく、つらい過去を持つ、
冬美との心のふれあい。

冬美が何度も顔を変えた悲しい理由。
彼女の癒されることのない、
残酷な運命と孤独。
冬美の心情に涙がこぼれます。

心の中に憎しみの火をいつも内蔵し、
爆発寸前の復讐の感情を、
胸にかかえる佐伯修一。

彼の父親のことば、
笑えるようにならなければいけない。
親にとって子とはいつまでも
幼い子供のままです。

過去の犯罪、
それによって心をずたずたに
傷つけられた周囲の人々。

赦すべきか、赦すべきでないのか、
犯罪を犯した人物、その家族、
犯罪被害者、犯罪被害者の遺族。
それぞれの心の内面。

強い印象が残るタイトル。

揺れ動く主人公の心情。
心の変化。
読み応えのある物語でした。

天使のナイフ以降2冊目の、
薬丸岳氏の小説です。






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火天の城 (山本 兼一 )

2009-09-10 | 本 ま、や行(作家)

一年ほど前に、
この本を手に入れましたが、
図書館で借りてきた本など、
他の本を読むのに忙しくて、
長らく放置状態。

映画封切り直前に、
やっと読み終えました。

内容は、織田信長の命を受け、
安土城を築城に至った人物、
岡部又右衛門を主人公として、
彼の息子や
お城造りに関わった職人達の物語です。

映画では西田敏之主演で、
今月12日から公開されます。

織田信長の偉容を、
人々に知らしめすために
建造された安土城。

壮大で、そして華麗。

信長の願望を現実のものとしようと
又右衛門は、既成概念を取り払い
城造りに臨みます。

天にそびえるような、
城を造ってみせるという
又右衛門の意志の強さ。

らっぱ達の抵抗に遭遇しながらも
地雷の赤い炎をめでたい火天として、
築城完成へと突き進む強固な信念。

ひな形を燃やす実験は、
映画ではどの様にしたのか
興味深いです。

材木を組み合わせることによって
木に生命力をもたらす。
木に力を生み出しながら、
城を造営していきます。

城造りのプロセスは、
知識のない自分には
あまり理解できなかったですが…

鏡のような湖水、青い比良山、
比良山の白い冠雪。

情景描写も知っている場所なので
風景を想像することができて
物語にはいっていきやすかったです。

紅蓮の炎の中にそびえる五層の塔、
壮大な夢をかけた城誕生から
悲劇的な安土城の最期の描写、
赤い炎が目に浮かびます。

なんて、もったいない!! 
この目で幻の名城、
安土城を見てみたかったです!!









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告白 (湊かなえ)

2009-08-19 | 本 ま、や行(作家)
第一章 聖職者
終業式、退職を控えた、
中学の女性教師が
クラスの生徒を前にしての一人語り。

愛する一人娘を失った原因となる
教え子を告発。

その少年に対する復讐。

衝撃的な第一章の幕開け、
最初から、引き込まれます。

感情を交えないで語る、
女性教師がこわい。

第一章聖職者は驚きのラスト。
さらっとした書き方も、
よけいに不気味さを感じます。

第二章後は、登場人物が順々に、
真実を語るという構成。

感情移入は出来ない人達。
あまりに陰鬱で救いがないです。

事件を本人、級友、
家族から語らせ真相に導く。

どの章にもある悪意というベース。
それはラストまで続きます。

心の恐ろしさが伝わってきて、
気分が悪くなりそうな暗い話。

普通に生きてきた人達、
そんな人々が心に歪みが生じ、
傷つけ、憎み合う怖さ。

人間的な暖かさの
感じられない登場人物は
救いがないです。

それが不気味さを増大させます。

読書中の不快さはあっても
それでも止められない、

もっと先を読み進めたくなる小説です。

本を読み進めていくにつれ、
繋がりをみせるストーリー。

絡み合う伏線、すぐれた構成。

本作がデビュー。

「熱血やんちゃ先生」という名前、
なんか妙に浮いていて
この小説の薄暗い雰囲気に、
そぐわない感じ。
それが不思議と強い印象をもたらして
忘れられない名前になりました。


第29回小説推理新人賞受賞
2009年本屋大賞受賞
『このミステリーがすごい!2009年版』 国内第4位
『週間文春ミステリーベスト10』第1位

評価高いんですね!
図書館でもなかなか順番が
まわってきませんでした。











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プリンセス・トヨトミ (万城目 学 )

2009-05-16 | 本 ま、や行(作家)

会計検査院の調査員3人が
大阪に調査のためやってくる。

大輔と茶子、この二人の中学生、
彼等が住む空堀商店街での事件。

この事件を端緒として
会計検査院の3人も巻き込んで
大阪全停止という事態に…。

前半はなぜか読み出すと、
なんか眠いな♪って感じ。

大輔の女装願望も、
会計検査院のおもしろキャラも
中途半端な感じ。

それに反して後半は一気に読みました。

知っている地名がたくさん出てくるので
話について行きやすかったです。

大阪城、松屋町筋、上町筋、
森ノ宮駅、NHK、大阪府庁に大阪府警、
グリコの看板、大川の川面、京阪電車…
大阪に住んでいるものには、
すぐ目に浮かんでくる
おなじみの風景の数々が登場。

難波宮や大阪女学館など、
【鹿男あをによし】
想起させるサービスも。

空想と現実、父と息子の絆、
そして歴史をごっちゃまぜ。

大阪人の秘密とは?
大阪国って?

登場人物達の名前が
松平、真田、橋場、旭 …
歴史でおなじみの名前と、
おなじみの地名。

奇想天外な発想。
ばかばかしさ。

決してありえない話なのに
引き込まれていきます。

無限に拡がりをみせる話、
どんな感じで収まっていくのか 
心配までさせてくれました。

万城目氏作品、
京都、奈良、大阪ときて
次の舞台はどこかな?









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臨場 (横山 秀夫 )

2009-04-15 | 本 ま、や行(作家)

捜査一課調査官・倉石義男、
事件現場での初動捜査、
死者の発する声を読み取り、
捜査を的確に行う。

あだ名は『終身検死官』。

八編の短編からなる警察小説。

倉石という調査官、
各短編それぞれの登場人物の
性格描写もすぐれていて、
短編集ながらも内容の濃い物語です。

細微なことでも見逃さない、
倉石の確かな目、
被害者に向かう心ある目。

短編集に登場する人物は変わっていても
対する倉石のぶれない心性。

暗い感じのストーリーの中にあっても、
事件の被害者に接する、
彼の心はあたたかく、
優しさがこもっている。

特に印象に残った物語は「餞」。
悲しい女の心が涙を誘います。

テレビ朝日でドラマ化
今夜から始まります。
倉石役には内野聖陽さん。
倉石をどういう風に演じるのか
楽しみです。

倉石という人間の魅力、
各短編の主人公達の巧妙な心理描写、
謎解きに至るまでの過程。
緻密な構成。
短編ながらも奥が深い物語でした。








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償い (矢口敦子)

2008-09-27 | 本 ま、や行(作家)
子供の病死、
そして妻の自殺。

絶望の果ての36歳の医師。

その他諸々が
重なって、絶望感の果てに、
主人公日高はホームレスに…。

舞台はある郊外の街。

その地でたまたま連続殺人事件に遭遇。

ある事情によって
刑事に頼まれ「探偵」となった日高。

過去に自分が命を救った15歳の少年。

もしかしたらこの少年が犯人?

日高の疑念は徐々にふくらんでいく。

日高と過去に日高が命を救った少年。

この二人の魂の救済は
あり得るのか?

50万部突破!!
人の肉体を殺したら、罰せられるのに、
人の心を殺しても罰せられないのですか?
新聞に載った宣伝と、
帯にかかれたこの文に興味を持って読みました。

ミステリーの形をとっています。
読みやすい文章。

でも何かが心に引っかかり、
しっくりきません。

償いというタイトル、
主人公の償い?
ホームレスを続けることがなぜに償い?
どうしてホームレスという選択が
なされるのか?
償いの道は他にもあるはず。
過去を清算して、
無医村で医者として生活するとか・・

感動ものとしてより探偵もの。
ホームレス探偵登場!!といった
イメージが浮かんできます。

登場人物の心の闇が
こちらに伝わりきれないもどかしさ。

不可解な人間の心に
悩ませられました。

この小説の中にある、
日高と少年の深い心の傷。

絶望の中で生きるということ、
なんとか理解したくて
読んでいたので、
結構ストーリーには
入り込むことはできました。
でももやもやは残ります。
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鴨川ホルモー (万城目 学 )

2008-07-31 | 本 ま、や行(作家)
『鹿男あをによし』もおもしろかったが
同じ作者の、この本もおもしろい。

一度は譲ってもらった本なのですが、
また、返してしまったのです。
なかなか手元には、
戻って来そうにないので
図書館で借りました。

舞台は京都の学生サークル
主役は大学生。

奇想天外な展開。

「ホルモー」という競技
(京都産業大、立命館、龍谷、京大が対戦)を通しての
登場人物達の人間関係、片思い。

青春小説です。

葵祭、祇園祭りなどを背景に
過ぎし日の懐かしさを、
感じさせるストーリーです。

吉田神社、百万遍、上賀茂神社、
京都のおなじみの地名もたくさん登場。

ホルモーとは?
一人の戦士が力尽きるときに叫ぶ、
断末魔の叫び。

京都大学青龍会?
謎めいた名前のサークル。

そのサークルの目的は、
立派なオニ使いとなること。
そのオニを使役しての戦いなのです。

京都で密かに、
生き抜いてきた一種の競技。

京都という地にはあり得るかのような… 。

歴史のある街、 京都こそ舞台として
この物語が成立するような感じがします。

オニという架空の存在なのに
なぜか現実感を感じてしまうのです。

真面目な口調で語られるオニ達の戦い。
ラストは夢中になってしまいました。

特に後半、
指揮官として実力を発揮する楠ふみ。

友人のちょんまげの高村。

登場人物が個性的に描かれていて
楽しいです。

映画化されるようで、
配役は山田孝之が主人公。

おかっぱ頭、
大きな黒縁眼鏡の女子大生
楠ふみを演じるのは栗山千明。
意外な配役です。


これじゃ、誰か分かりません。

映像化してもきっと、
おもしろいでしょう。
楽しみな映画になりそうです。





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インシテミル  ( 米澤 穂信 )

2008-05-15 | 本 ま、や行(作家)

情報誌に掲載されていた
時給11万2千円という、
驚くべき高額のバイトに、
12人の男女が集合。

地下にある「暗鬼館」での7日間の
生活を要求される。

モニタリングされた行動。
途中抜けはできないという条件。
ボーナスルールの規定付き。

そういう中で開始される、
7日間の閉ざされた世界での出来事。

帯に書かれた推理小説の、
飢餓状態からの脱出…
脱出どころが大満足、
満腹です!!

登場人物、各自の個性も出てるし、
一人ずつに与えられた、
与えられた凶器として使用するアイテムも、
著名なミステリ―小説の
出典が存在していて
想像力を駆り立てられます。

徐々に疑心暗鬼に、
なっていくところも自然だし、
結末に行く過程の、
エピソードも秀逸です。

全く退屈することなしに、
読み進めていくことができました。

久しぶりに出会った納得の一冊でした。
本当におもしろかったです。

図書館で予約もなしに、
たまたま見つけて借りた本。
返却するのが惜しい気持ちです。

主催者の目的、タイトルの意味が不明。

内容とはギャップが感じられる
可愛い表紙もミステリアス。

女の子は登場人物の一人の
これも謎が多い須和名さんかな。





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きつねのはなし (森見 登美彦 )

2008-01-30 | 本 ま、や行(作家)
デビュー作品『太陽の塔』、 
「四畳半神話大系」
「新釈走れメロス他四篇」
「夜は短し歩けよ乙女」などと同じく、
この作品も舞台は古都京都。


骨董屋、
きつねのお面、
胴の長いけもの…。

奇妙な出来事が、
現実に起こりそうな、
京都が舞台の独特な世界。

4編からなる奇譚集。

この作品は、
今までの彼の作品とは、
かなり異なっていて、
新たな挑戦を感じます。

古都、京都の町ならではの
一種異様な空間を背景として
湿度の高さを感じさせる物語。

非日常的な雰囲気を漂わせている。

静かで不気味な空気。

あり得ないことは分かっているのに
どこかにあり得そうな話。

ほの暗い恐怖が直ぐそばに…。

不思議は不思議のままなので
読み終えた後、
不気味さがそのまま心の底辺に沈殿して
すっきりした気持ちにはなれない。

きつねにバカされたような…

そこが作者のねらい目なのかも。




譲ってもらった本です。
読む本は、いつもは図書館で借りるか、
買うとしても文庫本だけなのに…。
うれしいです。

でも「鴨川ホルモー」だけ、
返してくれと‥。
まだ読んでいないのに…。









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鹿男あをによし (万城目 学 )

2008-01-23 | 本 ま、や行(作家)

玉木宏主演のドラマがはじまる前に、
読んでしまおうと思っていたのですが
間に合いませんでした。

もう始まってしまいました。

奈良が舞台、
知っている場所が出てくるので
本を読む楽しみが倍増します。

猿石、鬼のせっちん、鬼のまな板、亀石。
 
石舞台、飛鳥大仏。

待ち合わせの目印となる
近鉄奈良駅の行基像。

黒塚古墳の墳丘から見る紫色の夕焼け、
これは知らないので一度見たいです。

鹿化した鹿男、
テレビでの映像も気になるところです。

朱い鳥居が続く伏見大社、
広大な平城京も行ってみたいです。

ラスト近くには鼠、狐、鹿が入り乱れて
複雑なことになってきます。

ドラマではどう映像化するんでしょう?
期待大です。

偶然と必然が絡み合い、
奇想天外な展開が…。

奈良へ出掛けて、
東大寺 辺りで鹿に会ったら、
話しかけられそうな気がします。
危ない……。

ポッキーが大好物の鹿って…。

先生、何はともあれ、
とにかく…よかったね!!

読後感は爽快です。


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