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花ごよみ

映画、本、写真など・

新釈 走れメロス 他四篇  (森見 登美彦)

2008-01-13 | 本 ま、や行(作家)
古典を原作として
現代に置き換えて書かれた短編集。

全ての作品が京都を背景としていて、
学生が主人公です。

登場人物はリンクがなされていて、
斎藤秀太郎が、
ちょこちょこ登場します。

詭弁論部も出てきます。


原作は「走れメロス」「藪の中」位しか
憶えていませんが、
他の作品も原作に興味がわきます。


☆『走れメロス』(太宰治)
『夜は短し歩けよ乙女』を、
読んだ直後だったので愉快です。

逆転発想の面白さ、
思わず吹き出してしまいます。
これは楽しめます。


☆『山月記』(中島敦)
斎藤秀太郎の
不思議なキャラクターに、
おかしさがあります。


☆『藪の中』(芥川龍之介)
原作同様な物語りの進行。

☆『桜の森の満開の下』(坂口安吾)
哲学の道の桜並木。

春に同じ所を歩きたい気分にさせます。
ひんやりとした風を感じます。


☆『百物語』(森鴎外)
ちょっぴり、
うす気味悪い。
蒸し暑い~。


一編一編バラエティーに富んだ物語。
それらを集めた贅沢な作品集でした。



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夜は短し歩けよ乙女 (森見 登美彦)

2007-12-22 | 本 ま、や行(作家)
まるでストーカー。
情けなさが漂っている先輩。

お酒を求めて先斗町、
絵本を求めて古本市。

学園祭には緋鯉を背負った姿、
読者にさわやかな魅力を、
感じさせる黒髪の乙女。

何てほほえましくて愛しい人達なんだろう。
本を読み終えての第一の感想です。

また、本を閉じて表紙の絵を見ると
そこに描かれている二人も可愛い。
ほんとに心がほんのりする物語でした。

恋の道は波瀾万丈なプロセス。
途中の経過もそれはそれは面白くて…。

古典的な文章に笑いを誘う楽しい擬音。

格調ある文体で
描かれてはいながらも、
くすっと笑える場面満載。

初期の小説から変わらない過剰な表現、
この物語もその路線を踏襲しています。
 〔太陽の塔〕でファンタジー・ノベル大賞を
獲得している森見 登美彦の
これも妄想をバネとして
現実とファンタジーワールドを
駆けめぐる物語です。

この小説で大ブレークとのこと、
うれしいです。



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真相 (横山秀夫)

2007-11-10 | 本 ま、や行(作家)
2003年に刊行の短篇集。
5作品が収録。
事件の奧の隠された意外な「真相」。

『真相』
逮捕された犯人の供述から知る。
息子の今まで知らなかった真実とは?


『18番ホール』
主人公の選挙の本当の目的は?
主人公の過去に犯した事件とは?

『不眠』
睡眠治療の治験薬を飲むアルバイトをしている、
失業中の主人公の心のわびしさ。
眠れぬ眞夜中に目に入ったものとは?

『花輪の海』
学生の頃の友人の死に関する
封印したい過去の出来事。

『他人の家』
行き場のない夫婦。
助けてくれた老人。
老人の死後に明らかにされた、
驚きの真実。

読み進めていくのがつらくなるほど、
どの作品も暗い内容で、
どっしり重い読後感。

人間の悲しさ、ずるさ、悩み、
心の中に隠された闇の部分が描かれ、
読み終えた後は、
疲労感が残る作品でした。

そんな心が滅入ってしまう小説など、
もう読みたくないと思いながらも、
またきっとこの作家の小説を
読んでしまうのでしょうね。


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名もなき毒 ( 宮部 みゆき )

2007-08-09 | 本 ま、や行(作家)
だらだらとかなりの
時間をかけて読みました。

途中、図書館の返却期限が来たので、
一度返却して、
再度予約して、また借りてきて、
読み終えた続きのページから、
読みはじめたり…。

でもラストに近づくにつれて物語は、
俄然おもしろくなっていきます。

途中で断念して読み進めるのを
止めずによかった。

退屈しながらも
読み進めていく価値ありです。

原田いずみの性格の異常さには
恐ろしさがあります。

このような人格の壊れた人が
現実にいるとしたら恐怖です。

心の毒、社会の毒、環境にも潜む毒、
被害者、加害者、毒の連鎖…。

日常生活の中で気づかない毒、
「名もなき毒」。

毒にはもちろん遭遇したくはありません。
でも、知らず知らずに関わっていたり、
自分自身がなっていたりして。

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出口のない海  (横山秀夫)

2006-09-15 | 本 ま、や行(作家)


戦局は悪化の一途。 
 
戦争なんてただ悲しいだけ。 
勇ましいことも男らしいこともないと
今までずっと思っていたのに・・・

国が危機に陥っていると言われては
聞かないふりは出来なくなってしまう。
負けるのは自分の中で分かっているのに、 
戦地へと赴いて行く。

特殊兵器=特攻兵器=回天
=海中で発進する兵器=魚雷 
=最終的には、 
巨大な棺桶ということになる。

脱出装置のない回天・・・ 

今まで遠くの存在であった、
死という文字が、
自分の側に否応なしに近づいてくる。 
 
約束された死なんて 
未来のある若者にとって
余りにもむごすぎます。 

美奈子との東京駅での別れのシーン 
二度とは帰ることのない故郷。
涙で本の字が読めなくなりました。

再び、陸地はもう踏みしめることは出来ない。
海を目の前にしながら、
写真の中の友人みんなの名前を 
呼ぼうと心に決める。 

そしてもう一度ボレロを聞きたい・・・
 
悲しすぎます。 
 
間もなく映画が上映されます。
映画ではどのように描かれているのか、
興味あります。


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神様ゲーム (麻耶 雄嵩)

2006-08-24 | 本 ま、や行(作家)
小学生の芳雄が住んでいる市で、
事件が発生。 
 
同級生達と探偵団を結成し、 
犯人捜しをはじめる。 
芳雄は同級生の「神様」に 
本当のことを教えてほしいと頼むのだが…。

 

小学生が主人公で、 
絵も文章も童話みたい。
何だ、子供向きの本だったのかと思って、
読み続けていると…、
アレレ、びっくり、恐ろしい物語でした。

半分以上読み終えたところ位から
思惑が違ってきました。
様子がガラッと変わって来たのです。

この小説の内容もなにも分からず、
作者もどんな人なのかも知らないで、
ただ[2006年度版このミス 5位]ということだけで
興味を持って、手に取りました。 
 
先入観なしで読んだのが、 
インパクトの強さを感じ取るには、
よかったと思っています。 


装幀も児童書っぽく、挿絵も、 
文章も子供らしくて、
漢字にはご丁寧にルビが振ってあります。 

でもこの本、なにも知らずに子供が
読むとしたら、子供心に刺激が強すぎて、
少し心配です。。 
話の内容は残酷です。
読了後も後を引くこわさがありました。 

この作品の性質上、 
詳しいことは書けないのですが
トリックもあり、
犯罪は淡々と何気なく書かれています。 
最後はあっけにとられる終わり方。
これでもうお終い?と思いました。

この作者にはやられました。 
とんでもない怖い物語です
児童書のふりをした、
大人のミステリー小説でした。


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天使のナイフ (薬丸 岳)

2006-06-08 | 本 ま、や行(作家)
「裁かれなかった真実」と
必死に向き合う男を描いた感動作! 
第51回江戸川乱歩賞受賞作。  
 ………………………………帯より 

 
少年犯罪を題材として扱っていて、 
少年法の問題点、
贖罪という重いテーマ。 

込み入ったストーリー展開、 
緻密な構成、そして張り巡らされた伏線。

登場人物、特に女性の名前がなかなか覚えられず、 
頭の中で混乱してしまい、
前ページに戻り確認することがたびたび…。 
 
我慢仕切れずラストをちらっと 
読んでしまい、←(よくあるんです。) 
自分の弱さに少し後悔もありましたが、 
ある人の過去を知った位では、
余り影響はなかったようです。 

少しぐらい先が分かってしまっても 
そこに行くまでの多様な人間関係。
そして隠された秘密の過去。 

ラスト近づくにつれ
複雑に込み入って 
2転3転するストーリー。

後半はもう息つく間もないくらい。

読み進めていくうちに
いつのまにか、無意識のうちに、
かすかに予想していたような、結末。

一体、誰が何の為に?
ミステリーとして推理要素もたっぷり。

同じ様なテーマの東野圭吾、 
 〔さまよう刃〕の方が 
重厚な気がしましたが、
この本は単純ではない、
ストーリーの構成に、
また別の魅力がありました。







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犬はどこだ (米澤 穂信 )

2006-06-02 | 本 ま、や行(作家)

社名は紺屋S&R。
犬捜し専門の仕事を開始。
 
25歳の私立探偵・紺屋の仕事始めの依頼は、 
犬捜しではなく、
失踪人捜しと古文書の解読。 

調査を進めていくプロセスで
失踪人捜しと古文書の解読、 
この二つの依頼は、
影響し合い複雑に交錯していく。
 
でもそれは読者が分かるだけで、
調査している当人達(紺屋とハンペーくん)
は読めてはいないのです。
 
「二人とも早く気づいてよ」といった感じで、
読んでいてじれったい気がしてきます。

主人公はもちろん、
探偵に憧れている後輩の社員?のハンペーくん、 
ネット上の匿名の相談相手、GEN、
それに主人公の妹、
ほのぼのとした、
好感のもてる登場人物達。

読みやすい内容で、
爽やな物語…と思っていたら、
最後のどんでん返し。
恐怖感を覚えるラストでした。 

(犬を探せ)はなるほどって言う感じで、
よくできたタイトルです。 

楽しめました!




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震度0  (横山秀夫)

2006-03-21 | 本 ま、や行(作家)
 
県警幹部の一人が大震災の朝に失踪。 
幹部達の内部抗争。
人間模様のミステリー。 

登場人物の名前、人間関係が複雑で、
最初は読みづらいことも
ありましたが、
名前と職務が徐々に理解できてからは 
面白くなってきました。 
 
もつれた人間関係、
機能不全の状態に入り込んでしまった 
N県警の脳幹。 
 
情報の遮断、そして失踪刑事の身を 
案ずることまで遮断されてしまう。 

我が身の保身のため、 
なかなか進まない議論。

登場人物の中で好感の持てる女性が皆無。
少し気になります。
でも、男性も保身と野心だけの人達…。 

本部長室はなにゆえ震度0??

「N県警の中に警察官はいないのか。」
言い得ています。 
 
人間の弱さ、愚かさ、やりきれなさが残ります。
 
衝撃のラスト。 
最後に少しの明かりがみえるのが救い。
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いつかパラソルの下で  (森 絵都)

2005-12-11 | 本 ま、や行(作家)
25歳の独身女性が主人公。 
名前は野々。 

厳格すぎる父親を疎み20歳の時、
家から出て行く。  

父親が亡くなって四十九日の法要が近くなった頃、
父と関係のある女性の存在を知るようになる。 
兄妹と共に父親の知られざる過去を探るため、
父親の故郷の佐渡へ旅発つ。

父親のせいで心と体に傷を負ったと
思いこんでいる主人公。 
ストーリーはどんな方向に展開していくのか?
 
児童文学出身の作家なので 
そんなにドロドロにはならないだろうとは 
思っていました。 
 
生きていくことの難しさ、
自分のダメさ加減など、
なんでもかんでも、父のせいにするのは 
責任転嫁かなとも思うけど……
共感出来ないというより、あまり共感したくない。

佐渡へ旅立ったことによって、 
その時点で、本人達は感じずとも 
振り返って見れば、
兄妹三人それぞれの心が
成熟していく過程をみることが出来る。

(イカイカ祭り)イカのシーン、おいしそー。 
香ばしさまで漂って来そう。 
すごい食欲。
食べてみたくなります。 

父の娘であってもなくても 
人は等しく孤独で人生は泥沼で……。 
 
生きるということの 
尻尾をつかんだような気持ちになり
もう大丈夫、生きていけると
確信するに至っている。 

家族兄妹の問題が山積みの
暗く湿った話だったのが、 
旅をすることによって 
だんだんと目の前が開いてきて 
からっと明るい話になってくる。 

深刻さもあまり感じられなくなり 
一安心の読後感でした。


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