JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

小原温泉探訪

2020年01月04日 | 運用スタイルなど


 年始は飯坂温泉でゆっくりというのが恒例だったのですが、今年は昨年9月にお世話になった白石市の小原温泉に泊まってきました。

 寂れゆくというより、すでに寂れてしまった感そのままの温泉地であることは前回も書いたとおりです。加えて10月の台風19号が追い打ちをかけ、国道113号のがけ崩れにより小原地区への道が寸断されてしまいました。白石駅から15分で着くところ、2ヵ月半の間、う回路により40分もの時間を要するようになったのだとか。期せずして「秘境の宿」になってしまったわけです。宿泊のキャンセルが相次いだのは想定通りとしても、客が途中で道に迷う、食材業者が来ない、スタッフの皆さんの通勤、等々いろんなご苦労があったそうです。この道路寸断も年末にやっと復旧。日帰り客も待ちわびていたのか、そこそこ賑わいを取り戻しておりました。




 宿に着いていつものとおり温泉地を探訪。相変わらず集落に人の気配はありません。すぐ脇を流れる渓谷、碧玉渓の遊歩道は吊り橋修復が終わったのに柵があり、通れない状態でした。一度は開通したものの、これも台風の影響のようです。渓谷沿いの公衆浴場「かつらの湯」は健在。












 かつて温泉地で最も大きかったホテルの廃屋は解体工事が始まっていました。聞くところによると大手資本に経営が移り、高級旅館に衣替えするのだとか。寂し過ぎる温泉地にもなんらかの風が吹き始めているのでしょうか。

 「目に小原」と言われ、昔から眼病の湯として知られています。ほとんど塩分を含まない、このあたりで珍しい泉質です。自分だけかもしれませんが、塩分の濃い湯に入ると悪い夢を見ることが多いのです。ここはそれがありません。湯冷めしやすいので、何度でも入れます。今回も入っては休みを繰り返し、ふやけそうになるまで湯につかってしまいました。


 豊富な湯、渓谷、隔絶された環境、そして木々に埋もれつつある廃墟の数々。これからどう変わっていくのかわかりませんが、また訪ねたくなる温泉地の一つです。





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小原温泉

2019年09月02日 | 運用スタイルなど


 近隣にいくつかある温泉地の中で、何度も訪れるところとそうでないところがあります。白石市の小原温泉は二十数年前に一度だけ泊まったことがあり、その時は渓谷沿いの遊歩道のハイキングを兼ね、下流から上流に歩いた先に突如、巨大な旅館が現れ、驚いたのを覚えています。震災後、その旅館が廃業したとの報道を目にしました。もっとも大きな旅館で、川を眺めて過ごすのに絶好の宿でした。この隣に比較的大きな宿がもう一軒あり、それ以外は小さな宿が数軒、まばらに建っていたと思います。以前のパンフレットをみると、かつらや、いづみや、河鹿荘、ニュー鎌倉、上の湯、中の湯、しんゆの7軒あったようで、自分の記憶としても温泉地らしい雰囲気があったように思います。今回お世話になったのは以前に泊った旅館の隣の比較的大きな宿です。もう一軒は国道沿いの離れた場所にあります。なので、渓谷沿いに残るのはこの一軒のみなのです。今はどんな様子なのか、ふと思いたって、訪ねてみました。

 仙台から東北本線に乗り50分で白石駅。ここからバスもなくはないですが、送迎可ということなので、迎えに来てもらいました。トンネルをいくつかくぐり、国道を離れて谷へ下るとそこが小原温泉。旅館と民家十数軒が点在する小さな集落です。

 宿に着いてさっそく周辺を散策してみました。まずは以前歩いた渓谷(碧玉渓)へ。自分は川沿いにある温泉地が好みで、その点、ここはすばらしいです。切り立った断崖が数十メートル下に落ちる深い谷。岩肌を縫うように水面ぎりぎりの歩道が続く、はずなのですが、残念ながら工事中とのことで、先には行けませんでした。ただ、吊り橋の奥に以前はなかった「かつらの湯」という共同湯がありました。せっかく目の前に川があるのに露天ではなく、入ることはしませんでした。








 集落に戻り、上流方向に歩いてみました。かつての温泉旅館は看板のみを残し、すでに相当年月が経っている様子でした。驚いたことに、何軒かあった民家や商店?もほとんどが廃屋となっていました。川を眼下に望み、かつては風光明媚な旅館であったであろう建物も藪の中に消え入りそうに残っていました。そして以前訪ねた際に、今度はここに泊まってみたいなどと話していた旅館は跡形もなく、雑草の更地を残すのみとなっていました。どこの温泉地も旅館の廃墟が目立つものですが、ここはそういうレベルを過ぎてしまっているのかもしれません。














 忘れられたような静かな温泉地を好んで訪れるようにしているのですが、さすがに寂しいです。宿に戻ると、共同湯的な存在にもなっているのか、入浴のみの客は少なくないようで、宿の方々も明るい雰囲気で応対していました。アクセス的に悪くないし、環境は静か、渓谷もある。なにより「眼に小原」と言われる効能豊かな湯がある。ポテンシャルに満ちていると思うのですが、なにが廃れてさせてしまうのでしょうか? しばらくぶりに訪ねてみて、いろんなことが脳裏をよぎりました。


 帰路、白石市内を散策しました。白石城の石垣は復元後二十数年の歳月で苔むし、それらしい雰囲気を醸しておりました。





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鼠ヶ関周辺

2019年08月15日 | 運用スタイルなど


 14日、この日も雲一つない晴天。ほんと毎日良く晴れます。朝から気温30度以上。昨日の「日本国」で疲労困憊し、山はやめようということで、海に行くことにしました。山形、新潟県境付近の海岸線は、鼠ヶ関、笹川流れ、など松尾芭蕉ゆかりの地でもあります。

 鶴岡側から国道7号線を南下。右手に真っ青な日本海が見えてきました。反対側は急な山が迫り、海との間のわずかな土地に羽越本線の線路が敷かれ、そして小岩川、早田などの集落が身を寄せ合っています。この辺りに特徴ある板壁の民家。6月の山形県沖地震の影響が残りブルーシートで覆われた家もありました。




 集落を進むと「早田の御葉つきイチョウ」なる案内標識を見つけました。すぐ近くにイチョウの大木があるのかと思ったら、行けども辿りつきません。そのうち砂利の林道にかわり、車を置いて5分ほど歩くと、そこにイチョウの木がありました。巨木というわけではありません。案内板によると、扇状の葉の先に実をつける学術的に珍しい種類なのだそうで、国の天然記念物に指定されているとのこと。まだ実をつけている状態ではなく、その貴重な姿を確認することはできませんでした。蚊の襲撃も受け、早々に退散。ただ、山中に忽然と姿を現す2本のイチョウと周辺の雰囲気は悪くありません。







 国道に戻り、鼠ヶ関へ。漁港に車を置き堤防に上がると、小さな砂浜にパラソルが林立し、海水浴たけなわという感じでした。そのような楽し気な場所は苦手なので、誰もいそうにない反対側の灯台の方へ歩いてみました。でも、日蔭がまったくないのです。気温40度近く、海辺とはいえ、灼熱の中を歩いて行くと、ずっと先の灯台の北側にわずかな陰を見つけました。ほかの風景はどうでもよくなり、早く日差しから逃れたい、その一心で灯台に辿り着くと、ちょうど日蔭となった場所に数人が座れるベンチがあり、一人の先客がおりました。「ここは涼しいです」。われわれも隣に座ると、そこは風が心地よく、さきほどまでどうでもよかった海がとてつもなく透明であることにハッとさせられたのでした。




 漁港近くまで戻ると、数軒の売店でイカの一夜干しがたくさん並べてありました。試食してというので一口食べてみたら、うまいのなんの。一夜干し、二夜干し、朝干し・・・いろんな干し方があり、イカの大きさも様々、それぞれうまみも異なるようです。何種類か買って帰りました。







 温海温泉から瀬波温泉にかけての海岸線。小さな漁村が点在し、登りたい山もいくつかあります。仙台から行きにくい場所ではありますが、機会をみてまた訪ねたいと思います。



「道の駅あつみ」裏手の海岸にて





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湯田川温泉

2019年08月15日 | 運用スタイルなど


 鳥海山下山後、湯田川温泉に宿泊しました。鶴岡市の中心部から車で南に15分ほど。田んぼの中の道を進むと、小さな集落と商店街に入り込み、そこが湯田川温泉でした。鳥海山からも海からも離れた内陸にあり、なんとなく目立たない存在で、気にはなっていたものの、これまで足を踏み入れたことはありませんでした。







 奥まった小さな湯町といった風情で、ほとんどが木造2階建ての宿ばかりです。湯田川といっても川はありません。江戸時代かそれよりもっと古くからの宿が多いものの、年々少なくなって今は8軒ほどとか。お世話になった宿は、一度廃業したあと再開したのだそうで、ここではもっとも新しいとのことでした。老舗旅館などというと敷居が高いという固定観念があって、はじめから敬遠してしまうのですが、湯田川はそういう風はなく、湯町全体の古さに馴染んでしまっている、そんな感じを受けました。



 もともと山里なのか、温泉があって人が住み始めたのかわかりませんが、温泉街の周りに一般の家があり、そして中心に「正面湯」という共同浴場があります。住民の方はカギを持っていて、好きな時に入ることができるようです。浴場の前で休んでいたおばあさんに話を聞いたら、中を見せてくれるというので、カギを開けてもらいました。2m四方くらいの湯舟に尋常ならざる量の湯が注がれていました。湯田川の湯はぬるめです。大量に投入しても熱くないのです。それにしても気持ちよさそうな共同湯でした。

 散策してみました。













 「鶴岡の奥座敷」などと言われ、大いに賑わった時代もあったのだと思います。ただ、多くの温泉地のように巨大ホテルがあったり、それが廃墟となったりということもなく、バブル期もよこしまな商売気を出さなかったのか、気負いのなさがここの良いところかもしれません。昭和の町並み、細い路地、ぬるめの湯、気に入りました。



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145MHz帯のノイズ

2018年06月02日 | 運用スタイルなど


 先日、萱ヶ崎山で運用した際、145MHz帯にS5〜6の盛大なノイズが入り、一時、運用が厳しい状態に陥りました。デジタル(DV)の場合、S6ほどの信号で交信していても、ノイズが発生するとケロケロになってしまいます。この山頂は高圧線が通っているので、その影響かと思いますが、これまでも何度も運用して、これほどのことはありませんでした。また、いつも散歩がてら運用する大年寺山は、以前から430MHzへの抑圧がひどく使えなかったのに加え、最近は145MHzもノイズが発生するようになりました。

 東京出張の際、ホテル室内でワッチすると、145MHzに関してはどのホテルも常時ノイズまみれ、という状態です。とても運用できる状況ではないです。ホテルの特殊事情だけでもなさそうで、1エリアにおいて2mを運用する局が少ないのもわかるような気がします。一方、430MHzに関しては近くに送信施設があれば抑圧を受けますが、ノイズに関して気になったことはないです。


 何度かブログで取り上げたノートパソコン用のモバイルバッテリーを無線機につないだ場合も、ノイズが発生するのは145MHzです。またパソコンそのものや電源類のノイズを拾うのも145MHz。ちなみに我が家のノイズ環境を調べたところ、LED関係(テレビ、パソコンモニター、照明器具)、エアコン、空気清浄機、各種電源アダプターが主な発生源となっていました。生活に必要なものなので無くすわけにもいきません。空気清浄機は「弱」でも強力なノイズを発生します。影響を受けるのは145MHzのみ、430MHzは問題ありません。


ノイズでS8(室内)


 ということで、145MHz帯というのはノイズを拾いやすいバンド、という印象を強くしています。逆に言えば、各種インフラにしても家電、電子機器にしても、このバンドに影響を与える発生源がちまたにあふれている、あるいは激増中、ということだと思います。移動運用であっても送電線の多い里山などでは安心できない状況で、良くなることはなく、無線運用環境は悪化する一方ではないかと不安ではあります。

 ハンディ機やFT817はノイズ対策がされていないので、まともに影響を受けることになります。特に双方QRP運用の場合。モービル機や固定機はいくらかマシ。

 開局以来もっぱら145MHzを中心に運用してきましたが、これからは430MHzの機会を増やそうかと考えています。





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東北復興アマチュア無線フェスティバル

2018年03月11日 | 運用スタイルなど


 震災から7年。「復興へ広がるアマチュア無線」ということで、東北で初開催となるフェスティバルに参加してきました。会場は我が家から歩いて20分ほどの仙台国際センター。10時30分頃、会場に入ると、多くの人でごった返していました。震災のパネル展示や防災関連のブースのほか、無線機・アンテナメーカーのブース、クラブ局ブースなどなど。東京のハムフェアを1/4にしたような規模。ネットでなかなか手に入らない掘り出しものとかジャンク品がハムフェアの魅力ではありますが、規模的に小さく、特に目新しいことはありませんでした。それでも仙台でこれだけのイベントが開かれたこと自体、復興の一つの表れと言えるのかもしれません。





 いつも通販でお世話になっているNPOラジオ少年、バリオメーター式の見事なコイルが展示してあった長中波倶楽部、わざわざ岐阜から出店されていたCQオームさんでひとしきり話をさせていただきました。長中波倶楽部では自分の思いつかなかったコイルの巻き方を教示いただきました。そのうち、ゲルマラジオに応用してみたいと思います。






 ヤエスブースでは、新製品のFT-818の実機が展示されて、実際いじってみたものの、見た目は817そのものなのでつまらないです。外観や機能は同じでも中のデバイスが最新のものに見直されたのか聞いたのですが、全面的に最新デバイスでもないらしく、受信性能などは従来機と変わらないとのことでした。ダイレクトコンバージョンのFT-65についても尋ねてみました。もともと海外向けで、国内で発売しても売れないのでは?と心配もあったそうですが、受信感度が良好とのことで、意外に売れているようです。CQオームさんで1台のみ破格の値札が付いているのを目にして、思わず買ってしまいました。いつもの衝動買い。実験用? ほかのハンディ機と受信比較でもしてみます。

 最後に、DCR、特小でいつも交信いただいているのにお会いすることができなかったフリーライセンス各局さんと、本日初めてアイボールが叶いました。各局さん、お世話になりました。これから暖かくなりシーズン到来、お空でもよろしくお願いします。




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自分的・山と無線(5)軽量化を考える

2017年10月22日 | 運用スタイルなど



 山に登るのに軽身に越したことはありません。が、登山という趣味はこだわりの固まりなのです。何を持っていくかは、人それぞれです。持ちたい装備もあるし、楽しみもある。写真とか、山で美味いものを食べたいとか、あるいは酒盛りしたいとか・・・。そのための荷物は度外視。無線などはその最たるものと言えなくもありません。

 無線機材の軽量化は置いておくとして、いわばベースとなる部分をいかに軽量化するか。登山靴、ザック、雨具、防寒具、食料、飲料、カメラ、もろもろの小物類・・・。日帰り登山なので重いと言っても知れており、これまで意識的に取り組んだことはありませんでした。今シーズンは、FT-817を持ち歩いたこともあり、最近のウルトラライト登山用具を取り入れてみようかと考えた次第です。




 まずは登山靴。これまで革製の片足800gのものでしたが、これを500gの軽登山靴にしました。両足で600g軽くなったことになります。次にザック。リグを痛めないようにと衝撃材入りの30リットルザック、重さ1.2kg。これを容量25リットル350gのザックに替えました。アンテナは一部外付けとなるものの、リグ、バッテリー、三脚などの機材はなんとか納まります。850gの軽量化。この二つで約1.5kg軽くなりました。1.5kgと言えば、FT-817一式に相当する重さです。これまでとの比較で言えば、817を持っているのに、ザックに入っていないのと同じ、ということになります。実際のところはそう単純でもなく、体感的な重さはそれなりです。また、めいっぱい詰め込むため余裕がなく使いにくい。ただ、足の軽さは格別ですね。雪山でない限り、軽量登山靴で十分との感触です。

 続いて雨具。名称は雨具ですが、自分にとっては防風や防寒を兼ねており、雨天時のみ着用するというものではありません。朝露を防ぐのはもちろん、山頂に2〜3時間留まるため、寒さ対策としてほぼ毎回着用するといってもよいほどです。冬の里山歩きでも使います。使用頻度が高いので、おろそかにできない装備と言えます。今使っているのがモンベルのストームクルーザー上下で430g。一昔前を思えば十分軽量で、購入時はその軽さをしみじみ実感したものです。でも今はウルトラライト。同じモンベルのバーサライトは上下で約260g。170gも軽量な上、超コンパクト。ところが、モンベル仙台店で実物を確認したところ、生地が薄く、雨と風は防げても防寒にはなりそうにありません。ということで導入には踏み切れませんでした。

 食料、飲料は、以前も書いた通り、自分は年間を通してパンとテルモスのコーヒーです。無線運用中はなぜか空腹にならず、水分もあまり取りません。特に困ったことはなく、軽量化の余地なし。以前は必ず持ち歩いたガスバーナーやコッヘル類は無線を始めてからはいつも置いていきます。食料はこだわるとキリがありませんね。重いのは食べる前までなので、楽しみと思えば、我慢できるかもしれません。カメラも160gの軽いコンデジに替えました。小物も軽視できません。実際は使わないものが多いです。今期はとりあえずヘッドランプのみ軽くしました。単3電池1本タイプ70g程。
 

 無線機以上に登山用具の軽量化は進んでいるようです。でも、道具にばかり頼りすぎるのもよくありませんね。自然界にあるものも含め、使えるものは工夫して使わないと。一気にとはいきませんが、一つ、また一つと見直してみるつもりです。 軽身で山中を縦横に歩き回る、そして見晴らしの良いところでもあれば、人知れずアンテナを上げる・・・。いずれ自分の体力との相談ではあります。無線の方も、究極の軽量装備によるウルトラライト運用とはどんなだろう? などと考えているところです。






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自分的・山と無線(4)運用編

2017年10月17日 | 運用スタイルなど



 山での運用は様々なことがあります。いつも好天の日を選んで登るのですが、想定外の悪天候に見舞われ、無線どころでないのでは?と思いつつ、風雨に耐えながら運用を続けるなどということも何度となくありました。始めた頃は風防対策が不十分だったため、風切り音で何を話しているのか分からない、とのレポートもいただきました。山頂でOMと出くわし、無線そっちのけで話し込んでしまったこともあります。「変わった人がいるな」とは思われても、幸い他の登山者からひんしゅくを買ったり迷惑がられたことはありません。自分がそう思っているだけかもしれませんが・・・。多くの場合、迷惑がられる前に撤収してしまいます。そして人のいない別の場所へ移動。なので、設営・撤収が億劫にならない装備、これが必須条件で、山岳運用で最も気を使うところです。なぜ2mバンドで運用するかと言えば、1)アンテナが短く設営・撤収が楽、2)430に比べバッテリーの持ちが良い、3)伝搬が面白い(平地と山岳の飛び差が大きい)、ことが主な理由です。






 自分の場合、たくさんの局と交信したいということは特になく、交信数にこだわりはありません。せっかく山に登って2〜3局ではちょっと寂しいですが、基本、交信さえできればよい、そして1局でも意外性のある交信があったなら、なお良い、というスタンスです。スケジュールを組んでの実験目的の場合は、相手局と1時間以上交信、今日はこれにておしまい、ということもあります。移動運用を終えて充実感を感じるのは、1)思わぬ遠方と交信できた時、2)実験目的が達せられ手応えを感じた時、3)交信の内容に共感できた時、かなと思います。




 山岳移動に限らず、余韻の残るQSOというのがある一方、そうでない場合もあります。人と人なので様々です。アマチュア無線の「交信」という行為は、独特の体験を伴うもので、それがこの趣味の醍醐味でもあるわけです。思いもかけないはるか遠方との交信の場合は、互いの移動地とRSレポートが確認できただけで十分満足です。弱い信号のため、何度かコールサインや移動地を聞き返したり、QSBで信号を見失いがちになったり、いったんは諦めかけたところ再び浮き上がりファイナルを送る・・・。何を話したかという内容よりその体験自体が記憶に残るものとなります。遠方でなくとも、超QRPで交信できたときも同様です。ときどき特小トランシーバーでCQを出すことがありますが、10mWや1mWで交信できたときは、たった数キロでも感動を覚えます。不思議とその感動が薄れるということもないです。

 一方、話す内容そのものによって充実感や満足感をもたらしてくれることがあります。これは相性もあるかと思います。自分の場合、アンテナや登山の話で盛り上がるなどレポート交換だけでないプラスαが加わったときにそうした感覚が湧いてくるのかな、と漠然と考えています。山岳同士の場合は、共感意識が生まれるということもあるかもしれません。それらプラスαが何であるのか、よくわからないままです。逆に一方的であったり表面的な話になってしまったかな、と反省することもしばしばです。技術にしても運用にしても、言葉で語れるものは一部であって、分かってはいても言葉や文字にしにくい領域はけっして少なくないといつも感じます。余韻の残るような充実感のある交信に少しでも近づきたいとは思いますが、考えてできることとも思えません。結局自分の人間性に回帰するのかな、とも思います。かつてキングオブホビーといわれたアマチュア無線の本当の奥深さは、実はそこにあるのでは、と思ったりもします。


〈QSLカード〉
 山岳移動でCQを出しているので、基本、交信証を発行します。多いときは、月に200枚近くになるので、これがわずらわしく思えた時期もあります。パソコン印刷を導入してからはそういうことはなく、多くは山で撮影した写真を使い、カード作り自体が楽しみと言えなくもありません。ただ、カードを発行してもしなくとも、交信した事実に変わりはないわけです。これまでつながったことのない遠方とつながり、その局がノーQSLを指定したとしても、特に残念とは思いません。交信できた事実を自分のログ帳に記載できれば十分、と考えています。もちろんカード交換を指定されれば発行はいといません。カード交換よし、ノーQSLよし、どちらもよし、です。




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自分的・山と無線(3)アンテナ編

2017年10月11日 | 運用スタイルなど


 設営が楽で、なるべく目立たないようにとの理由から、これまで主に垂直ホイップ系のアンテナを使ってきました。最も使用頻度の高いのはJ型アンテナで、次に1本ラジアル追加の改造モービルホイップ(山岳GP)。何本か作りました。どれも工具不要、設営・撤収がすばやくでき、狭い山頂や尾根筋などではこれに限ります。特に冬場、里山の山頂で誰も来ないだろうと安心していると、大集団が登ってくることがあります。そんなときは、即撤収、別の場所に移動します。






 自分はどんなアンテナも基本、三脚設置です。信号のブレを最小限に抑えるためで、可能ならその足元を石で固定します。ただ、三脚の重さがネックで、軽量かつ丈夫なものはないかと、今も悩みの種ではあります。現状は、「ZIP SHOT」(312g)という超軽量なものを使っていますが、ビームアンテナの場合、回しにくいのが難点。

 第一電波のRH770も山岳移動の定番で、よく飛んでくれます。運用終了後、このロッドアンテナをハンディ機につないでワッチしていると、思わぬ遠方からのCQが入感、期せずしてDX、などということもありました。自分は予備としてお守り代りに持っていきます。クリップベースのコネクターケーブルと相性が良く、樹木の枝先に取付け運用などということもあります。

 今年に入ってからは、ビーム系アンテナを使うことが多くなりました。3エレや4エレ程度であってもホイップ系とは一線を画す性能を実感します。目的のエリアが明確な場合、ホイップ系アンテナで全方位に放射してしまえば、ある意味、損失以外のなにものでもないわけです。以前、DCR用の12エレ八木をお使いの山岳局と交信し、その威力に驚愕した覚えがあります。自分もさっそく8エレを導入してみたものの、フリーライセンス局が少なかったこともあり、その効果を実感するというよりは、ただただ疲れるのみで、早々に物置に仕舞い込んでしまいました。局数のまったく異なる2mバンドの場合は、手応えを得やすいということかもしれません。面白いのは、強く入感する方向が自分の想定と異なることです。あらかじめカシミールで予想をつけても外れてしまう。伝搬は一様ならず、反射や回折が入り交じる山岳ならなおさらですね。ただ、エレメントが多くなれば、それだけ設営・撤収に時間がかかり、場所も限定されます。今日の山行に何を持っていくか? 自分自身のアクティビティや体力、マインドの問題、シチュエーション、ロケーション、コンディション・・・判断材料はたくさんあって、いつも悩みます。

 山岳用のアンテナが市販されているわけではないので、山で実際に使えるもの、山に特化したアンテナに改造あるいは自作します。プロ(業務)用アンテナは種々の厳しい条件をクリアするのに四苦八苦すると聞きますが、アマチュアは作り放題です。利得の上限もないし、どんな形状でもおとがめなし。自由で寛容なる個人的興味の時間と空間。ありがたいです。軽量であること、コンパクトに収納できること、目立たず景観を損ねないこと、設営・撤収が簡単、風雨に強いこと、それらと性能との折り合い。相性が良いのもあれば、1度きりで使わなくなるのもあります。あまり異彩を放つことなく風景に溶け込み、体の一部のように使い勝手がよく身の丈にあったアンテナ、自分的にはそれがベストかな、と考えています。




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自分的・山と無線(2)リグ編

2017年10月04日 | 運用スタイルなど



 山頂付近で2〜3時間運用することが多く、もっと長くなることもあります。こんな長時間、山頂付近に留まる登山者はいませんね。「何をしているのですか?」とよく声をかけられます。逆に、長く留まることで、登山者の様子や人の動き、気象の変化がよくわかります。年代や服装、装備、単独あるいはグループ、どのコースから登ってきてどこを下るのか、などなど。無線をしながらの定点観察。これはこれで面白くもあり、参考になったりもします。

 さて、その山行に見合った機材を持っていくわけですが、どのリグ、アンテナにするか、いつも悩ましく、直前まで逡巡します。リグについては昨年あたりからハンディ機でなく、FT-817やFTM-10Sを使うことが多くなりました。バッテリーの軽量化が進んでいることもあり、登山=ハンディ機と限定せず、可能なものは何でも使ってみる、そのことで見えてくる風景もあるのでは?そんなふうに考えています。

〈FT-817〉
 山岳でSSBとFMの両方に出られる唯一無二の現行機種なので、ありがたいです。このリグのおかげで2mサイドバンドの面白さをかいま見ることができました。山なら5Wでも楽しめます。リチウム電池内蔵で一式約1.4kg。これに外部バッテリーを加えると2kg弱。許容範囲とはいえ、重さはこたえます。





 山では立てた状態の方が使いやすいので、安定するよう木製スタンドを自作してみました。ただ、リグ自体の使い勝手が良くありません。ボタン類が小さいため、モード切り替えのつもりがバンドを替えてしまうということが頻繁に起る。VFOも小さなツマミで操作し、大きい方のダイヤルはほとんど使わない。なんだか無駄なように思います。自宅なら何でもないことも、山では誤操作が多く、困ったリグです。受信感度や音質など性能的なところは十分満足なのですが・・・。それにしてもこのリグに加え、何キロもある重い鉛バッテリーを担ぐとか・・・軟弱の身には考えられず、ですね。



〈FTM-10S〉
 現在のメインリグ。FM専用機なのでハンディ機で良いのでは?と思わなくもありませんが、山岳用として考えた場合、FTM-10Sの使い勝手の良さや優位性を実感することが多いです。天候に不安があるときはこのリグを持参します。
 自分の運用方法は、アンテナを設置した三脚の下にリグ本体を置く。これにより短い同軸ケーブルで済みます。あとはコントローラーを持ち、座りながら、あるいは立って運用。座ってばかりいると体に良くないので、時々立ち上がります。その際、コントローラー側ですべての操作ができるのは便利で、手元も熱くなりません。PTTのホールド機能があり、押したら送信、もう一度押すと受信に切り替わる。長時間の運用でも疲れず、この機能があるから使いたくなる、と言ってもよいくらいです。



 本来はバイク用ですが、自分にとっては電源さえつなげば、どこにでも持ち歩ける軽量ポータブル機、と言えます。3Ahリチウム電池と組み合わせ850gほど。ハンディ機並の消費電力なので、10W運用でも途切れなく交信を続けられるのが最大のメリットかと思います。パワー2倍の利得差は3db。山岳において、これがどれほどの意味を持つのか? 実験継続中、といったところです。

 二つとも発売から相当年月が経過し、パソコンや家電なら見向きもされない古い機種です。でも、良いものはそれなりのことはあります。手軽に使えるものより、少し面倒でやっかいなものほど愛着が湧く、ということも。人も機械も同じですね。修理に出して戻ってきたリグというのも愛着が増したりします。バッテリーや風防対策、使い勝手にしても一手間かけてみる。その結果、自分なりに納得いく交信ができたときは、ささやかな手応えと満足が得られます。そして新たな課題も生まれ、工夫を重ね試してみる・・・。自分にとって山岳は、そのための自由な実験の場、と言えなくもないです。





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自分的・山と無線

2017年09月20日 | 運用スタイルなど



 山岳移動といってもスタイルはそれぞれで、登山主体で休憩中1〜2局交信して下山という方もおれば、無線が目的で山に登るという方もおります。自分は、かつて無線趣味はなく、山歩きのみでした。今はどちらかというと後者に近いです。山頂付近での無線運用を楽しみに登るので、登ることや機材の重さはさほど苦になりません。人間、この先に具体的な楽しみがあると苦にならないものです。

 といっても登山用具を含め、必要最小限の装備にとどめます。食料はバンとテルモスのコーヒー、非常食のみ。山頂にこだわらない。日頃のトレーニング、装備や設営手順の練習をしておく。好天になりそうな山を選び、基本、ソロで登る。自分が心がけているのはそんなところです。もちろん他の登山者の迷惑にならないような場所を選んで運用します。そもそも無線ができそうにない狭い山頂の山にはあまり登らなくなりました。広い山頂や尾根を持つ山、たとえば蔵王・熊野岳とか地蔵山、吾妻・高山、月山、鳥海山など。定点運用の泉ヶ岳の場合は、藪漕ぎして登山道から離れたところで運用します。



 最近、SOTAという山岳無線のアワードプログラムのことを知りました。今のところ、SOTA参加局と交信したことはありませんが、山岳移動局が増えてくれるとしたらありがたいかな、と思います。

 自分的にはその山頂から、このアンテナを使ってどのような飛び方をするのか、どんな遠方とつながるのか、相手局のロケや設備を含めその際の諸々の条件とは?といったところに関心があります。なので、平地ではさほど飛ばない2mバンドで運用し、山で使うためのアンテナや器材を自作します。山頂のロケは圧倒的に有利なので、そこに偶然のタイミングが加わる確率が高く、驚くほど遠方から呼ばれたり、逆に信じがたい信号が飛び込んできたり・・・思いもよらないことが起こりやすいのです。時に想定外の電波の振る舞いに驚愕し、時に翻弄される。偶然性や意外性、これが最大の醍醐味であることをいつも実感します。

 アンテナも少しの工夫を加えることで飛び方が変貌します。その振幅が平地よりもはるかに大きく、そこが山岳の面白いところです。この世界に一度取り憑かれると、抜けられない不思議な魔力があります。山に登ること、機材一式を担ぐこと、けっして楽ではないですが、その壁を乗り越えてでも続けたくなる何かがあります。同じ山でも日々伝搬は変化する。リグ、アンテナ、バッテリー、登山用具・・・工夫のしどころも無限にある。技術的研究はともかく、自己訓練的ストイックさもあるのかな、とも思います。そして類は友を呼ぶ。休日、毎回声が聞こえていた局が突然聞こえなくなっても、彼はどこかに登ってQRVしているのです。山と無線、百人百様ではありますが、魔力には逆らえません。




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FT-817 ローパワー運用

2016年12月19日 | 運用スタイルなど


 購入したもののあまり使う機会のなかったFT-817。実際、山に持っていくと、やはり重いです。山頂でHFを運用するわけでもなし、2、3度使って、結局VUハンディ機に逆戻り。いつもお世話になっているJA7RTG(おかざきKG295)局よりHF・QRPによる山同士の伝搬実験はどう?との提案があり、今回、しばらくぶりに817の出番となりました。

 本格的な機材はなにも持ち合わせていないので、無線機本体に第一電波のRHM8BをBNC直差しとします。なので無線機を立てたまま使うことになります。軽いアンテナですが全長178cmあり、この状態だとバランスが最悪で、コネクターにも負担がかかってしまう。ということで、リグを安定して立たせるためのスタンドを作ってみました。板を接着剤で貼り合わせただけのものではありますが、こんなものでも使い勝手は上々。バランスを気にすることなく運用に集中することができました。






 JA7RTG局は女神山(福島県川俣町)、当局は大年寺山(仙台市太白区)に移動。距離約65km。双方817でパワー5W。はじめに21MHz。バンド内ワッチすると電離層による数局の交信が聞こえていました。大まかにRHM8Bの同調点を合わせ、指定された周波数で待機すると、かすかに当局を呼ぶ変調が聞こえてきました。アンテナをさらに微調整し51-51でレポート交換。続いて50MHz。FMで56-56。SSBで51-51。いづれも直接波。SSBについては21MHzも50MHzもSメーター振らず、バックノイズがあったものの、聞きやすい変調で、交信になんら障害はありませんでした。JA7RTG局のアンテナは21MHzモービルホイップ、50MHz付属ホイップとのこと。当局はRHM8B+リグ低部にあるアース端子に2.5mのビニール線(ラジアル)を取り付けてみました。SWRはこれで問題ないようです。



 見通しに近い位置関係での試験的な交信でしたが、少しだけ手ごたえがありました。電離層反射によらないHFローパワーでの山岳運用というのも面白いかもしれません。重く、使いにくいFT-817。このスタイルで少し出番を増やしてやろうかな、と考えています。




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雑誌CirQ(サーク)のこと

2016年09月03日 | 運用スタイルなど


 FCZ研究所のホームページは何度か参考にさせていただいたことはあったのですが、CirQ(サーク)という雑誌があったことを恥ずかしながら最近知りました。2003年8月の準備号発行から始まり、2007年1月第66号をもって最終版となったようです。同研究所のサイトに全号の内容がPDFで掲載されています(http://www.fcz-lab.com/)。







 パラパラめくってみると、各種ヘンテナの製作記事や短波用バーアンテナ、地面アンテナの実験、QRP送受信機、LEDによる光通信など読んでいるだけでワクワクしてくるような記事が盛りだくさん。いわばボランティア的な手作り雑誌、ここまで続けてこられたのは情熱以外の何物でもないと思います。数々の試みに満ちた実験記事が読めること自体に感動してしまいました。「難しいことをやさしく、やさしいことを面白く、面白いことを深く探究する 楽しい自作電子回路雑誌」というのが編集方針だったようで、まさにその通りの内容。「アマチュアは親切である」「出し惜しみしない」そんな編集者の思いが伝わってくるようで、いまさらながら頭が下がります。



 この中に、「糸でんわ」という長期連載記事が載っていました。自分も小学生のころ、理科の実験か何かで糸電話遊びをした記憶があります。紙コップ二つを細い糸でつなぎ、5~6メートル離れて、交互に声を出し、コップを耳に当てて聞き取る。どんな感じで聞こえてきたのかもなんとなく耳に残っています。記事では、なんと50mも離れて「交信実験」。大の大人たちが「こちらJA○▽◇。もしもし聞こえますか?」「こちらJH◇▽○。59で入感」なんてやっているわけです。電力ゼロ。いわば究極のQRP。なんだかとても楽しそうで、自分もやってみたくなってしまいました(やりませんが・・・)。糸をピンと張るのが絶対条件だそうです。糸の種類とか、紙コップの大きさとか、さまざま実験を繰り返し、2005年3月の吹雪の中、ついに200メートルの交信に成功とか。さすがに200メートルも離れると厳しかったようで、風の音の合間にかすかにメリット3で交信成立、という感じだったようです。この時の様子はたいへん臨場感のある記事になっていますので、興味ある方はPDFでどうぞ。


 どれもこれも読みごたえがあって、とても一気には読み切れないので、自分はプリントしておきました。ときどきめくってはアマチュアの原点を思い返してみたり、いろんな刺激をもらおうかなと考えています。





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ハムフェア印象記

2016年08月22日 | 運用スタイルなど


 4度目の参加となるハムフェア。たいへんな人混みで、相変わらず高齢の方が多いなとの印象でした。ケンウッドのハンディ機とかアイコムの広帯域受信機など新製品の展示もありました。メーカーブースで少し興味をひいたのは、第一電波の最重量級モービルホイップSG7900にチタンとカーボン素材を使い、軽量化した実物が参考出展されてありました。現行品が600gに対し280g減量し、320gだそうです。コネクターから外し現物を手に持ってみたところ、とんでもなく軽く仕上がっておりました。チタンやカーボンが伝搬にどのような影響があるのか、興味のあるところです。それに、これなら分解して山に持っていくのに好都合かと。車の素材革命も進んでいるようですし、アンテナもいつまでも鉄(ステンレス)を使っている現状は変わりつつあるのかもしれません。




 次に『QRP入門ハンドブック』。この日に合わせて新規出版されたそうで、さっそく会場で買い求めました。9年前、2007年2月号CQ誌の付録として『QRP通信の世界』が発行され、今も大切にとってあります。新版をぱらぱらめくってみると、当時、CQ誌の付録にせざるを得なかった事情などの記載もありました。導入編、運用編、技術編とそれぞれ内容の濃いもので、ネット情報が溢れる現代でも、一冊の本にする意義は大きいと感じました。QRPも人それぞれ。自分の場合は登山で少しでも軽くしたいという事情からハンディ機運用しており、必然的にQRPにならざるを得ないわけです。さまざまな制約の中で、いかに無線を楽しむか。そして、あえてローパワーという制約を設けることで、見えてくる風景もある、そんなふうに感じます。本書にはOMのコラムがいくつか掲載されています。その一つ「アマチュア無線は無用の用」の中にこんな一節があります。「アマチュア無線の魅力は簡単には交信できないことそのものにある。意味のないことや役に立たないことをあえてやってみることのメリットは計測不能」。無線という趣味の神髄が凝縮されている逸文で、感銘を覚えました。




 今年のハムフェアは40周年だそうで、マンネリといえば、それまでです。クラブブースでは、検波に工夫をこらしたゲルマラジオの展示やキット販売があり、バリオメーター式のキットを買い求めてみました。見事に巻かれた巨大な長波用コイルの実物、各種磁界系ループアンテナも興味をひきました。恒例のとおりCBや昔のハンディ機、ジャンク品も盛りだくさん。やはりネットだけではつまらない。費用もかかり疲れることではありますが、現物に触れたり体験したり・・・その場にいるからこそ得られるものがあるのでは?そんなふうに考えさせられました。



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山岳QRP

2016年07月27日 | 運用スタイルなど


 電波は目に見えない分、実に不思議な振る舞いをします。八木アンテナを山頂に担ぎ上げたからといって、また、パワー任せに送信したからといって、必ずしも遠くと交信できるとは限りません。実際、VUハンディ機で300km〜700kmの交信を何度か体験していますが、その時のアンテナは、J型アンテナとRH770という、どちらも1/2λの垂直アンテナです。もちろん、相手局のFBな設備に助けられたであろうことは否定できないものの、双方のロケ、タイミング、コンディション、これらがたまたま折り合った時に、DXは実現されるというのが実感です。なにより、このような簡素なアンテナとローパワーでつながった時の感動は、言葉に表せないものがあります。






 金をかけなければ実現できない、確かにそういう面はあるものの、電波伝搬は、そこに収斂されない奥深さを感じます。金をかけても手に入らない領域があり、だからこそ創意工夫が生まれる、ここに面白さがある、と。山頂で運用中、唐突にはるか遠方からのCQが聞こえたり、撤収間際、思いもかけないところから呼ばれたり、ほんと、想定を超えてその事象はやってきます。それは、まれに起こる偶然だからよいのであって、パワー任せで、常時つながったとしたら、そこにもう感動はないわけです。

 震災後、おかざきKG295局さんと特小トランシーバー(422MHz)による交信実験を続け、徐々に距離を伸ばしながら、2年前、ついに1mWで200kmを超す交信に成功しました。今もその時のスリリングな体験は忘れられません。特小トランシーバーなので、アンテナはわずか17cm程の付属ホイップ。厳しく整合のとれたアンテナがどれほどの底力を発揮するか、この時、思い知らされました。1mWのわずかなパワーを無駄なく送信する。そして息も絶え絶えの信号を果敢に捉える。マッチングの妙。145MHzでも、そんなアンテナで絶妙なQRP運用ができればと夢想しています。もちろん特小での更なる記録更新も。

 デジタルモードもアイコム、ヤエスの異なる方式が混在しているものの、シンプレックスで運用する局は増えているように感じます。この数年の実験で、デジタルだからアナログより飛ばない、というのは一面であって、その逆もあるということを何度も経験しました。アナログでノイズ混じりの厳しい信号が、デジタルではメリット5で明瞭に復調され、驚かされることもしばしばです。145MHzデジタル、けっこう粘りがあります。幸い自分の使っているID-51は100mWのローバワー設定が可能。見通しはもちろん、回折、反射、異常伝搬・・・デジタルならではの、どのような振る舞いを見せてくれるのか。アナログよし、デジタルもよし。山岳QRPの楽しみは尽きません。

 というわけで、山登りと簡素なアンテナによる2mおよび特小を中心とした運用に回帰。このところ封印していたアンテナ作りにも興味が湧いてきました。素人のガラクタいじりをまた始めようかと・・・。



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