JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

外付け鉱石検波器

2015年09月27日 | ゲルマラジオ


 手持ちの鉱石を使って、1週間ほど取り換えひっかえ検波しながら、聴き比べてみました。シリコン単結晶>シリコン精製結晶>紅亜鉛鉱>方鉛鉱>黄鉄鉱の順で高感度という印象です。黄鉄鉱は聞こえる箇所があまりなく、音量もかすか。他の4つは、検波位置や圧力をうまく探ることができればダイオードと遜色ない音量で聴くことができます。特にシリコン単結晶がすばらしく、鉱石ラジオの受け皿カップに入るよう砕いたものを使いましたが、ゲルマニウムダイオード以上では?と驚くこともしばしばです。しかも、夜そのままにして、朝にイヤフォンを耳に当ててみたら、ほとんど同じ状態で聴こえている、ということもあり、安定度も群を抜いています。他の鉱石では、こうはいきません。

 ただ、ダイオードのように常時同じ音量で安定して聴こえるかというと、そうではなく、大きな音量で聴こえていたかと思うと、突然フェードアウトしそうになり、そのまま消えてしまうかと思いきや、再度ぐんぐん感度を盛り返して、元の音量に戻る、そういう波を伴って聞こえることもあります。ちょうどHFの電離層反射の信号に似ていますが、信号自体の強弱ではなく、あくまで検波の強弱でそう聞こえるということかと思われます。金属皮膜の微妙な変化、針との間のコンデンサー成分の変化などが要因かと。でもこの聞こえ方は鉱石検波特有で、何も手を触れないのに、じわーっと感度を盛り返してくるところなどは、聴いていてクセになりそうです。鉱石検波、やはり奥が深いです。


シリコン単結晶 硬い鉱物で砕くのに難儀します


 さて、せっかくの鉱石ラジオなので、いろんな鉱石で検波してみたい、ということで紀伊国屋の東京サイエンスから何種類か通販で入手してみました。まったくの素人なので、どんなものが検波に使えそうか、事前に鉱物の本を買ってみましたが、当然ながらそういうことはどの本にも書かれてありません。全盛期ならいざしらず、今時、検波目的で鉱石を求める人はいないということでしょう。鉱物や鉱石の分野というのは、経済と直結しているだけあって広大かつ深淵なる世界のようです。研究者やアマチュア蒐集家、製鉄会社関係、アクセサリー・宝石商、はたまた占いや霊感商法までまさに玉石混淆。レアアースの鉱脈ともなれば、国家の趨勢まで左右してしまう。とり憑かれるとたいへんなことになりそうなので、ほどほどにしておくことにします。






 結局、『ぼくらの鉱石ラジオ』を参考に、鉄、亜鉛、銅などの金属を成分とする鉱石10種類ほどを入手したものの、もともと標本なので一つの大きさが2~3cm。鉱石ラジオの受け皿カップには納まりきれません。せっかくの標本を砕いてしまうのも忍びない。ということで、ある程度の大きさのものまで検波できる外付けの検波器を作ってみることにしました。


鉱石接合型検波併用の2方式検波器  

二つの検波針を樹脂板で絶縁

紅亜鉛鉱はもろく、慎重に取り付け(上)
 


 ホームセンターで売っているL字金具を組み合わせ、大小の鉱石はボルトで固定できるようにしてみました。また、検波針は2種類とし、一つはスプリング針、もう一つは紅亜鉛鉱を針に使い、接合型検波実験ができるようにしました。接続は、鉱石ラジオの検波部とミノムシクリップでつなぐだけ。





 形がまちまちな鉱石がしっかり固定されるため、だいぶ検波しやすくなりました。各種鉱石の検波実験は、秋の夜長、これからゆっくり試してみます。







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無芯コイル鉱石検波ラジオ

2015年09月23日 | ゲルマラジオ


 先日の鉱石検波実験の際、銅板だけの簡易装置では、安定して検波する難しさを痛感したことから、単体で受信できる鉱石検波専用の無電源ラジオを作ってみることにしました。構想は以前からあって、『ゲルマラジオ製作徹底ガイド』や『レトロラジオの製作に誘う本』などを参考に、やっと実現をみたというところです。製作にあたっては、これまで同様、1)外部アンテナ、アースなしで受信できること、2)セラミックイヤフォンではなく市販のステレオイヤフォンを使えるようにすること、を課題としました。鉱石の場合、ゲルマニウムダイオードほどの感度は期待できないことを考えると、ハードルはより高いと言えます。





 まずはコイル。石で検波するレトロなラジオなので、リッツ線を使ったバスケットコイルを思い浮かべ、実際、直径10cmのコイルを作ってみましたが、期待したほどのQは得られませんでした(実験ボードで実際聞いてみての印象)。そこで考えたのが、表皮面積のとれる太いポリウレタン線を使い、かつ、直径をさらに大きく巻き、少しでも巻枠の影響を受けないよう無心コイルにしてしまう、という方法。昔のエナメル線と同様のもので、いかにも工作実験という雰囲気があって、鉱石ラジオにふさわしいのでは?と思えなくもありません。巻枠(ボビン)が受信に影響するのかどうかは未確認ですが、無いに越したことはないし、巻枠からフリーになるということは、余計なコストもかからず好都合なわけです。
  
 ということで、太さ1.7mmのポリウレタン線を直径15cmで巻いてみました。いったんパイプに巻いて、あとで外すことにします。太くて巻きにくいですが、コイル巻きは大好きなので苦になりません。巻き終わって、ホットボンドで固定。一晩置いてパイプから外し、今度はコイル内側をホットボンドで再度固定し、外側のボンドは取り除く、こんな手順を踏み、何とか完成させることができました。41回巻き。30回巻きのところに中間タップを一か所。リッツ線に比べ、タップ出しは楽ですね。インダクタンス252μH、中間タップ145μH。891KHzのNHK仙台第一放送メインなので、これで良しとします。



パイプに巻いた状態

パイプから外し無芯に 


 次に、検波装置。『ぼくらの鉱石ラジオ』には、上から針で突くタイプや横から差し込み針を載せるタイプなど様々な検波器が紹介されています。全盛期は、鉱石が動かないよう金属カップに入れてハンダ固定したものが多かったようです。自分としては、様々な鉱石を交換して検波する目的であること、しかし、安定受信のためには動かない工夫が必要なこと、などから、直径15mmnの銅パイプで深めのカップを作り、その中に半固定することにしました。針は3mm銅パイプにボールペンのスプリングをハンダ付け。持ち手部分は基板用のベーク材です。上から突くオーソドックスな形にしました。


こんな感じではんだ付け



 以上でコイルと検波器完成。あとはいつも通り板材に配置、配線ですが、今回は、見た目にもこだわって、裏面配線にしてみました。トランスはラジオ少年の200KΩ:8Ωタイプを使用。今風にならないよう基板は使わず、板材に穴を開けて直に固定。こんなことができるのも板材ならではです。タップ切り換えも1か所のみなのでスイッチ式とし、木片で固定。


完成

正面から

検波部

検波器、切り替えスイッチ、トランス配置

検波器上部

トランス取り付け

コイル部取り付け 銅パイプで補強

裏面配線


 実際製作を始めてみると、考えていた通りにいかなかったり、逆に作っている最中に新たなアイディアが浮かんで変更を加えたり、今回は想定外のことが多く、時間ばかりかかってしまいました。丸2日を要し完成。

 はたして結果はいかに? 鉱石での受信の前に、ミノムシクリップでダイオード(1N270)を接続し、受信感度の確認および同調を取っておくことにします。窓際に置いてステレオイヤフォンで聴いてみると、NHK仙台第一放送が十分すぎる音量で聞こえてきました。第二放送もメリット5。直径が同じリッツ線を巻いたコイルと遜色なく、むしろ今回の方が低音良好で野太い音質。この無芯コイル、Qの高さはなかなかのものです。



 そして本命の鉱石検波。方鉛鉱をちょうど良い大きさに割り、検波器にセット。針を突くと、すぐに人の音声らじきものが聞こえてきました。何度か突いていると、突然、大音量に。1N270には及びませんがかなりな音量で、かつ前回の実験時と違って、すぐに聞こえなくなるということもなく、安定した受信状態が続きます。石の固定のみでなく、スプリング針の微妙な接触、圧力加減がポイントのようです。黄鉄鉱でも試してみたところ、こちらも実験時より格段に検波しやすくなりました。ベランダに出て、手持ちで動き回ってみても、受信できなくなるということもなく、受信感度、安定度とも、十分な感触が得られました。ただし、日中その状態でも夜に聞いたら、同じように受信できるわけではありません。針の微妙な動きに伴うコンデンサーの変化や熱や光による抵抗値の変化が影響しているのだろうと思われます。なので、受信を始める時は、必ず「探る」という作業が必要となり、ここに操作のし甲斐と面白さもあるわけです。また、コイルの中に手を差し込むと感度がアップするということを経験しました。原因は不明ですが、あちこちにコンデンサー成分が潜んでいるのかもしれません(感度アップのみで同調は変わらない)。


鉱石ジャストフィット

動き回っても良く聞こえる



 鉱石検波で外部アンテナ、アースなしの単体受信、そしてステレオイヤフォンで聴ける、という課題は一応クリアできました。無芯コイルの手ごたえを感じられたのも収穫でした。より高感度にするために、回路を見直してみるとか、検波針をタングステン製や他の材質にしてみるとか、ループコイルを追加し磁界誘導を図るとか、まだまだ工夫の余地はありそうです。

 なんにしても、このラジオで、まだお目にかかったこともない世界中の各種鉱石を、検波してみたいものです。






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続・探り式鉱石検波

2015年09月20日 | ゲルマラジオ



 『ぼくらの鉱石ラジオ』によると、JOAK東京放送局(現在のNHK第一放送)の本放送がが始まった大正14年(1925年)頃、国内の受信機の7割は鉱石ラジオだっとのことです。それから、90年、現在の高度な集積回路への変貌を思うと、「鉱石検波」というのは、偉大な発見だったのだな、とあらためて考えさせられます。ラジオに限らず、鉱石や鉱物というのは、いつの時代も資源として役立てられたり、多くの元素が発見されたり、はたまた争いの種になったりと、人類と深い関わりを持ち続けてきたわけです。鉱物は世界に約4700種ほどあって、今でも毎年数種類の新鉱物が発見されているのだそうです。

 さて、数年前、磐梯山登山の帰りに寄った資料館の売店で方鉛鉱を入手し、鉱石検波の実験をしたことは以前に書いた通りです。「石」で検波できることに素直に感動した記憶があります。その後、しばらく遠ざかっていたのですが、鉱物とか鉱石にまた興味がふつふつと涌いてきて、今回、いくつかの新たな「石」を入手し、検波実験をしてみました。

 <鉱石>
 ・方鉛鉱
 ・黄鉄鉱 
 ・紅亜鉛鉱
 ・シリコン(ケイ素)単結晶
 ・シリコン精製結晶(製造加工品 純度99.9999%)





 方鉛鉱と黄鉄鉱は、前回使ったものです(産地不明)。 『ぼくらの鉱石ラジオ』で、最も高感度と紹介されている紅亜鉛鉱は、どうしても試してみたかった鉱石の一つで、今回入手したのは、天然ではなく、ポーランドの亜鉛精錬工場の煙突内で、偶然に生成した酸化亜鉛の結晶です。厳密には鉱物とは呼べませんが、組成としては紅亜鉛鉱と同じもの。
 
 もう一つは、ミズホ通信研究所で領布されていたシリコン結晶2種。現在の半導体原料の主流をなす物質なので、ある意味、検波できて当たり前、という感じもしなくもありませんが、興味が涌いたので、入手してみました。

 ゲルマラジオ実験ボードに簡単な鉱石検波装置(ただの銅板)をつなぎ、実験開始、今回は、検波器の針を、1)縫い針、2)ノック式ボールペンのスプリング、3)針穴の糸通しの3種類で試してみました。


検波器具

検波器の針各種 (昔ながらのスプリング式がベストでした)


 実験の前に、ゲルマニウムダイオードでNHK仙台第一放送に同調をとっておきます。これをしないと、永久に針で探り続けることになります。鉱石ラジオ全盛期は、同調をとりつつ、検波したことを考えると、当時の苦労と根気は並大抵ではなかったと思います。


 はじめに、方鉛鉱と黄鉄鉱。どちらもうまく探り当てると、かなりの音量で聞こえてきました。針を手持したこともあって、安定して受信するのは難しく、大きな音量で聞こえたかと思うと、すぐに聞こえなくなったり。突然、さらに大音量で聞こえてきたり。この唐突感が探り式の楽しいところでもあります。どちらかというと、方鉛鉱の方が、探るのも楽で、感度も一枚上手という印象です。


黄鉄鉱


 次に、本命の紅亜鉛鉱。入手したのは直径1.5mm、長さ約3cmの小さな針状の鉱石です。磨いて宝石にされることもある美しい結晶。これで半導体??? 方鉛鉱や黄鉄鉱は、見た目にも金属という感じはありますが、これは透明感のある結晶そのもので、亜鉛が主成分といわれてもにわかに信じられない姿をしています。


半透明の紅亜鉛鉱


 折れないよう、そっと検波器に置いて、針を当ててみると・・・。なんと、なんと、感覚的には方鉛鉱の倍近い音量で聞こえてきました。不思議なことに、結晶のどこに針を当てても安定して検波できるのです。これぞ鉱石の神秘。

 続いて、『ぼくらの鉱石ラジオ』に紹介してあった、もう一つの方法。この紅亜鉛鉱の結晶を検波針として使う接合型鉱石検波を試してみました。結晶を慎重にミノムシクリップで挟み、方鉛鉱に当ててみたところ、音量アップが実感できました。安定感も良好で、スプリング針で検波が難しくとも、接合型にすると検波可能に。黄銅鉱との組み合わせがベストのようですが、方鉛鉱でも接合型検波の優位性を確認できました。ただし、黄鉄鉱ではうまく検波できず、相手の鉱石を選ぶようで、この辺りは課題としておきます。


紅亜鉛鉱と方鉛鉱の接合検波


 最後に、シリコン結晶。ケイ素単結晶はタテヨコ4cmほど、もう一つは工業的に純度を高めた直径3cm程の円盤型結晶。言わずと知れた半導体の主要元素。地殻中に大量に存在し、希少鉱物というわけではありませんが、結晶の現物を見るのは初めて。

 さっそく、針を当ててみると、どちらもたいへん良好に検波します。どこに針を当ててもほぼ検波可。安定度抜群。感度も今回実験した中では最も大きな音量で受信でき、ケイ素単結晶と高純度精製したもの、二つの違いはほとんど感じられませんでした。ケイ素の元素としての発見は古く、90年前にも既に精製技術は存在していたようですが、これを使えば、探る必要もほとんどなく、楽に受信できたのでは?


どちらも良好に受信



 1N60や1N270などのゲルマニウムダイオードには感度では及びませんが、放送が聞こえた時の感動は、探り式鉱石検波ならではのものがあります。空中の高周波信号と地中深くの鉱石、そして自分自身とが共振しているような・・・。異界に迷い込む楽しさ、そしてしばし異界に転んでみる、そんな感覚。いつか、自分の住んでいる県内産の鉱石を探して、そんな異界の声を聴いてみたいと考えています。




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ゲルマラジオ実験ボード

2015年09月13日 | ゲルマラジオ


 ゲルマラジオ作りに先だって、コイルを巻き終わった時とか、新たなダイオードを入手した時に、とりあえず回路を組んでみる、ということをよくやります。その際、ジャンク箱から部品とミノムシクリップを取り出し、以前に巻いたコイルとの比較だとか、ダイオードなら1N60との比較とか、試し始めると収拾がつかなくなります。また、耳で聞いて音量が大きい小さいだけでなく、視覚化もしたい、ということで、Sメーター付きのゲルマラジオ専用実験ボードを作ってみました。





 15cm×10cmの板上に下記のものを搭載しています。

・2連エアーバリコン 290pF 120pF 
・ポリバリコン    260pF
・電流計       100μA
・プッシュ式ターミナル端子 5個
・3Pスイッチ
・ステレオイヤフォン端子
・トランス 各種置くためのスペースのみ

 5個のプッシュ式ターミナル端子を使うことで、ダイオード、抵抗、コンデンサー、セラミックイヤフォンなどを簡単に交換可能で、倍電圧、倍電流はじめ、回路も自在に組めます。3Pスイッチはコイルタップ切り換え用で、ロータリースイッチにしようかとも考えましたが、タップに関してはあまりやる気がないので、これで良しとしました。ボードにコイルとイヤフォンを接続し、あとは、ミノムシクリップで配線するのみ。

 こんな簡単な実験ボードですが、けっこうできることはあります。

 ・コイルの性能比較
 ・コイルタップによる感度、分離の違いをみる
 ・ダイオードの性能比較
 ・トランスを使った場合と使わない場合のダイオードの適正比較(大きく異なる)
 ・バリコン容量との相性をみる。またエアーバリコンとポリバリコンのQの違い。
 ・電流計(Sメーター)での信号の視覚化
 ・トランスによる音量、音質の変化
 ・CR類による音量、音質の変化

  などなど。






 さっそく、大型バーアンテナをつないでみたところ、我が家の室内窓際では、電流計の針は最大で目盛1~2とわずかに振れるのみでした。耳ではメリット5なのに、この程度? ちょっとがっかりではありましたが、このSメーターを大きく振らせるコイルを作ってみたいものだと、意欲も涌いてきました。この他、ダイオードの代わりに鉱石検波器をつないでみるなども追々試してみたいと思います。



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縦長ミニループ ゲルマラジオ

2015年07月25日 | ゲルマラジオ


 ループアンテナは、フェライトコアを使ったバーアンテナより手軽にQを上げられる利点があります。一方、コイル面積が広い分、大型になってしまうことが欠点と言えます。集合住宅の我が家では、テーブルに置いて使えるくらいのものがちょうどよく、それでもリッツ線を使えばけっこう実用になります。以前にもミニループアンテナ付きのゲルマラジオは作っていますが、今回は、スリムな縦型で作ってみました。先日、100円ショップで「木製皿立て」なるものを発見。これを2個使って巻枠にしてみました(前作の倍電流型ゲルマラジオにも使っています)。使えそうなものを発見すると、無性にコイルを巻きたくなる、困った性分です。



<材料>
コイル巻枠(木製皿立て)100円ショップ
リッツ線(0.1mm×100本)20m ラジオ少年
ダイオード 1N270 aitendo
バリコン 3連エアーバリコン 200pF+90pF+28pF ラジオ少年 
トランス  BT-OUT-100(100kΩ:8Ω) ラジオ少年 
基板 タカチTNF29-42
ステレオイヤフォンジャック
土台用木板


 まずはコイル。「木製皿立て」を2個つなぎ合わせ、余分な突起を切り落として、コイル枠を作ります。縦33cm、横10cm。四隅に残した長さ5.5cmの突起部分に線材を巻いていきます。20mの線材がちょうど30回で巻き終わりました。ほぐれないように四隅および線材の裏側からホットボンドで固定。ホットボンドって本当に便利で、コイル作りには手放せません。インダクタンス325μH。ちょっと巻き過ぎかな思いましたが、3連バリコン側で調整することにして、コイル部完成。


ミニループコイル




 今回は、ダイオードのみのシンプル回路。タカチの万能基板にトランスとダイオードをハンダ付けし、あとは木台の上に乗せ、定石通りに配線するのみ。ちなみに、使用したBT-OUT-100(100kΩ:8Ω)は、ミズホ通信研究所で扱っているものと同じです。音量、音質とも素晴らしく、いろいろ試した中でこれ以上のトランスは見当たりません。注意点として、現在ラジオ少年で扱っているBT-OUT-101(200kΩタイプ)とは形はそっくりですが、まったくの別物です。OUT-101も試してみましたが、良くありません。OUT-100の取扱いは今はもうないようなので、ぜひ復活を願いたいところです。


BT-OUT-100

ダイオード1N270


 最後にバリコンの接続。これもラジオ少年より購入したものです。4連構造になっていますが、使えるのは3連まで。コイルとの組み合わせを試したところ、200pF+28pFがベストでした。コイル巻き数を多めに、バリコン容量を少なめにするHiL同調回路?









 ということで約半日かかって、完成。さっそくステレオイヤフォンで聴いてみたところ、NHK仙台第一はパワフルに、NHK第二もそこそこの音量、東北放送もかすかに受信できました。分離も良好です。外部アンテナなし、無電源で、これだけ聞こえれば言うことありません。今回もループコイルのQの高さを実感した次第です。


<追記>
 昨夜、他のループアンテナを使ったゲルマラジオと比較しながら聞いてみました。ループは小型にも関わらず今回のこのラジオが最も高感度でした。NHK仙台第一は、コイルの向きを調整し音量を抑えてちょうど良いくらいです。窓辺でなくとも室内受信可。要因としては、コイルに太いリッツ線を使ったことや1N270の検波能力などが考えられますが、最大はトランスの性能かな、と思います。それとも縦長にしたのが良かったとか。たった数点の部品、それらのパーツも進化しており、以前のゲルマラジオとは格段の違いです。無電源でどこまで性能アップするのか、興味は尽きないです。





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倍電流型ゲルマラジオ

2015年07月20日 | ゲルマラジオ



 倍「電圧」をはじめ回路をいじっても、なかなか感度アップにつながらないことは以前に書いた通りです。では、ゲルマラジオ本体を2台作って、両方の電気信号を1本のイヤフォンに流し込んでみたらどうなのか?当然ながらアンテナも2本必要となります。この方式も多くの先人が試されているようで、「倍電流型回路」というのだそうです。ネットで検索したところ、あまり芳しくない、との記述も散見されます。物は試し、前回製作した「音質重視型ゲルマラジオ」をベースに、ミノムシクリップで簡単な回路を組んでみました。

<準備物>
・10mm×160mmフェライトバーを4本束ねたもの
・0.1mm×40本リッツ線
・ダイオード 1N270
・単連ポリバリコン


回路図 2個のダイオード極性を逆向きにします


 ベースとなるゲルマラジオはアンテナ、アースなし、フェライトバー4本の極太バーアンテナのみで、NHK仙台第一および第二が室内窓際で受信可能です。第一は明瞭に、第二は何とか話の内容がわかる程度。新たなバーアンテナも同様にフェライトバー4本を束ねて作りました。ただ手持ち線材の関係で、細めのリッツ線をスペース巻きとしました。34回巻き。インダクタンス136μH。これにポリバリコン、ダイオードをリード線で連結し、コイル部を窓際に置いて、ベースラジオのトランス入力に接続してみました。ベース側のバリコンをNHK第一に合わせた上で、連結側のバリコンを慎重に回してみると・・・、一瞬何も聞こえなくなり、さらに回すと急に大きな音量で聞こえてきました。そのピークはかなり尖鋭で、分離もたいへん良好です。次に、ベース側をNHK第二に合わせ、再度、連結側バリコンを回すと、こちらも十分了解できる程度の音量にアップ。倍電流を実感することができました。






 さて、ここで一つ疑問が。バリコンで同調を取っていることから、二つのコイルの電磁誘導による影響、もしくはフェライトコアそのものの影響により感度アップをもたらしたのでは? そこで、連結側のコイルの位置を変えながら、試行錯誤。その結果、ベースコイルの斜め5cm後方に設置したときにコイル誘導と思われる音量増加が、側方に3cm程離して設置したときにフェライトバーによる音量増加が確認できました。また、ベースコイルの中央部に垂直に設置した場合もわずかに音量増加がありました。電磁誘導による音量増加やフェライトコアによる音量増加は、倍電流によるものとさほど変わりません。ならば、単にコアを近くに置くだけで良いのでは?と思えなくもありませんが、設置位置が限定されてしまいます。倍電流方式は、コイル部(バーアンテナ)の位置を窓際とか、より電波の良好な場所に設置できるという利点があります。

 では、コイル間の影響を受けずに、感度をアップさせるにはどの程度の間隔を開ければ良いのか?これも試したところ、10cmまではほとんど音量増加はありませんが、15cmあたりから明らかに増加し始め、なるべく離した方がよいという結果に。ただ20cm以上離してもさほど増加はありません。したがって、二つのラジオをセパレート式にして、一定程度離して接続するのがベターなのかもしれません。

 以上の実験を経て、今回は、利便性を考慮して、ベースラジオの上部にもう一台の連結回路を組み、一体型の倍電流ゲルマラジオを作ってみました。


上下のバーアンテナは平行にして指向性をそろえる

上部

下部(ベース部)

1N 270 追加


基板部


 二つのコイルの間隔は20cmとし、そのため、木材で櫓を組み、ホットボンドで固定しました。二つの高感度バーアンテナのおかけで、外部アンテナ、アースなし。選局にはちょっとしたコツが必要ですが、倍電流回路の恩恵を十分実感できます。この方式は試してみる価値あり、です。






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音質重視?ゲルマラジオ

2014年11月29日 | ゲルマラジオ



 ゲルマラジオの音質にこだわってどうするの?とも思いますが、両耳ステレオイヤフォンで聞き比べてみると、それなりに違いはあります。サラサラして明瞭であったり、低音が効いてこもっていたり・・・。数点の部品すべてが音に影響します。Qの高いコイルでないと、そもそも何も聞こえません。同じ回路でもダイオードや抵抗、コンデンサーを変えると、音量、音質とも変化します。そんな中で、もっとも大きな影響を与えるのがトランスです。市販のステレオイヤフォンを鳴らすための必須部品。よく使われるのがサンスイのST32で、1.2kΩ:8Ωながら、そこそこ鳴ってくれます。ラジオ少年通販の20kΩ:8Ωトランスはさらに大きな音量。ミズホ通信研究所から購入した100kΩ:8Ωは音質も良く、タップ切り替えで好みの音量音質に変えられます。



 先日、秋葉原にて東栄変成器のトランスを入手しました。780円程。ちょっと大きめ。大雑把にいえば、大きい方が音は安定します。試しにミノ虫クリップで回路を組んでみると、なかなかの音量・音質で鳴ってくれました。今回はこれを使って音質重視型?ゲルマラジオを作ってみることにしました。トランスが大きい分、フェライトコアによりコイル部は小型化をはかることにします。

〈材料〉
フェライトコア 長さ16cm×4本
リッツ線    0.4mm×100本 数m
ダイオード   1N60(aitendo)
コンデンサー  100pF(101)
抵抗      470KΩ
トランス    東栄変成器7-10-12kΩ:4-8Ω
他、ポリバリコン、ステレオイヤフォン端子、3P基板など



 小型化といってもフェライトコア4本を束ねたものを使い、これにリッツ線を巻いていきます。Qの高いコイルの条件は、直径を大きくする、太い線材を使う、スペース巻き、この3点です。コアを使っても使わなくともこの原則は変わりません。これまでの多少の経験と技術?をつぎこみ、スペース巻き+分割巻きを採用することにしました。全部で41回巻き。空芯コイルと違って線材は数分の一で済みます。リーズナブル。でもコアが高いので結局同じ。巻き線が短いため実効抵抗は低くなります。またスペース巻きにより浮遊容量も抑えられ、インダクタンス180μH。ほぼ見込み通り。


コイル 材料一式

1N60


 続いて基板。aitendoの1N60を使って定石どおりの回路を組んでみました。トランス接点は一次側12kΩ、2次側8Ω。他の端子も試してみたところ、この組み合わせがベストでした。あとは、いつも通り板材に配置、配線。


完成


 ステレオイヤフォンをつないで聞いてみると、NHK第一放送がちょうど良い音量で聞こえてきました。高音が刺さらず、かつ、こもるわけでもなく、これまで作ったゲルマラジオの中では聞き疲れしない自然な音のように感じました。やはりトランスの影響は大きいです。アンテナ、アース不要。無電源で、聞きたい時にいつでも聞ける、卓上イヤフォンラジオ。邪魔にならず、気に入りました。

 




 
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真円ループ ゲルマラジオ

2014年10月25日 | ゲルマラジオ


 ソレノイドコイルを大型化していくと、コイルというよりループアンテナとなって大きな威力を発揮する、そしてそのループは四角(クワッド)や三角(デルタ)ではなく、真円が理想的。これまで無電源ラジオを作ってみての印象です。アマチュア無線のアンテナ作りでは、ループの形による違いを感じたことはありませんでしたが、中波無電源ラジオでは、なんか違うな~と感じます。可能なら真円がベスト。問題はボビンです。直径数cm~最大12cmならホームセンターで塩ビパイプ大小選べます。それ以上となると、なかなか見つからないのです。ガラス瓶やペットボトルも加工の点で難あり。

 ということで、高くつきますがアクリルパイプを奮発することにしました。直径15cm。長さは20cmあり、切断無料ということなので、15cmと5cmに切り分けてもらいました。今回は、幅5cmの方を使います。つまり直径15cm、幅5cmのアクリルパイプ。これに線材を巻いていきます。ループアンテナとしては超小型、ソレノイドコイルとしては超大型ということになります。なんかよくわからない表現ですが、大きさ的にはこのくらいが好みです。前回、直径12cmソレノイドコイル搭載のMOSFET無電源ラジオを作りましたが、今回はインダクタンスを我が家の環境に合わせて200μH前後とし、エアバリコンを搭載してさらに高感度をめざすことにします。

〈材料〉
リッツ線 0.1mm×100本
ゲルマニウムダイオード1N34
CR類 コンデンサ100pF、33pF(並列)
    電解コンデンサ10μF(直列) 
    抵抗470kΩ
トランス 20kΩ:8kΩ
エアバリコン 2連290pF+120pF(290pFのみ使用)


 まずはコイル部。はじめにコイルを板に固定するための土台部分をアクリルパイプに接着しておきます。そして滑り止めとしてパイプ表面に両面テープを数カ所貼付けておきます。あとは巻くのみ。両面テープのおかげで、仕上がりはまずまず。最後にホットボンドで要所を固定し完成。枠ぎりぎりまで巻いて33回巻きとなりました。インダクタンスは194μH。ほぼ予想通り。


土台部分を水平になるように接着



 続いて配線。たいした部品でもありませんが、3Pラグ板に組んでみました。回路そのままに組めるので使いやすいです。ダイオードは海外の製作例でよく見かける1N34。なぜか海外では1N60よりこちらがメジャーなようです。いつも使っている1N270の方が感度(音量)では勝るものの、音の良さでは1N34? 回路は「無電源ラジオ原点回帰」で紹介したものとほぼ同じ。


基板部

1N34

コイル部固定

2連バリコンの一方のみ接続


 さっそくオーディオイヤフォンを接続し室内窓際で聞いてみると、NHK仙台第一がかなりの音量で聞こえてきました。もちろん外部アンテナなし。仙台第二も十分な音量。音圧低めのイヤフォンでも鳴ってくれます。特筆すべきは分離の良さ。信号のピークが先鋭で、何も聞こえないところから急に聞こえてきたかと思うとそこがピークという感じで、慎重にバリコンを回さないとNHK第二や東北放送は見失ってしまいます。直列に入れた10μFとエアバリコンによる相乗効果? 10μFを外すとピークは若干甘くなり、逆に音質は安定し聞きやすくなります。容量を変えてみるとまた違うかもしれません。いづれにしても、直径15cmのコイルにしては感度、分離ともなかなかのものです。小型で高性能を望むなら、やはり真円ループかな、と実感。


完成



 今回は接着作業が多かったことや、暇をみて少しずつ作ったので完成まで4日ほど要しました。配線方法など反省点もあります。部品数たった10点にも満たない簡素なラジオながら、工夫のしどころは尽きない、これが無電源ラジオの面白さかなと思います。一つ一つの部品や素材を吟味したり、その組み合わせによる違いを試してみたり・・・。次は、もう一方の15cmアクリルパイプ。さらなる高感度を求めて思案中です。







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1/8λ FMクワッドループ

2014年09月29日 | ゲルマラジオ


 FM無電源ラジオ3号機に搭載の中波用エアバリコン。容量調整のため、連結線が必須であること、その長さによって同調が変わることを前回書きました。長さ35cmリード線の両端クリップを使い、4連バリコンの内、28pF +200pF をつなぐとうまく同調が取れ、NHKFM、DateFMともよく聞こえます。短いと同調はとれず、何も聞こえません。いろいろといじっているうちに、リード線を伸ばしたり丸めたりすると受信感度が微妙に変化することがわかりました。ということは、容量調整のみではなく、アンテナとして機能しているということでは? バリコンに直接つないでいるわけで、考えてみれば当然ではあります。

 これを利用し、容量調整兼用アンテナを作って感度アップをはかれないか? 試しに作ったのは連結線と同じ全長35cm。リード線の代わりに直径3mm銅パイプにミノムシクリップを付けただけの小さなクワッドループ。グランドに接続しているわけではなく、バリコン間に挟んであるだけなので、ループアンテナといえるのかどうかはよくわかりません。








 さっそく装着して聞いてみると、NHK FMは聞こえるもののDateFMが聞こえません。同調が上にずれたようです。長さが同じでも細いリード線と銅パイプでは伝導やインダクタンスの違いを考慮する必要がありそう。でもDateFMが聞こえないということは混信もないわけです。しかも受信音量アップを実感。たいへん聞きやすくなりました。NHK FM専用アンテナと言えなくもありません。DateFMはどうするの?ということで、同調周波数を下げるため、もう少し長めの2本目を作ってみました。長さ46cm。1/8λ。こちらはDateFMもカバーし、両局ともよく聞こえます。なんといっても分離が良好で、混信が気にならなくなりました。予想以上の効果。


偏波面実験  垂直も水平もさほど変化なし



 室内でもこの状態で受信できます。外部アンテナ不要。ただし入感ポイントはシビアで、動かすと急に聞こえてきたり、聞こえなくなったり。このあたりが中波ゲルマラジオと大きく異なるところです。位置決めすれば安定して受信できます。適度な信号強度を確保したことで、FM特有のシャリシャリ感もかなり緩和されてきました。スロープ検波の簡素な回路では、外部アンテナを接続して感度を上げると、混信の問題とともに、音割れや歪みが生じやすくなります。バランスを考慮すると、あまり感度を上げ過ぎず、かつ一定の電界強度を維持するのがコツのようです。

 はじめは蚊の鳴くような音声で、しかも混信しまくりだった1号機。分離が改善された2号機。感度、分離とも向上した3号機。そして、このアンテナ?を付けることで、なんとか音質的にも聞くに耐えるものになってきました。

 送信所から約1kmという環境ならではの話ではありますが、秋の夜長、しばしこれで楽しむことにします。



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無電源ラジオ 原点回帰

2014年09月23日 | ゲルマラジオ


 なんとか分離もうまくいったFM無電源ラジオ3号機。回路図を書いてみて、ふと、前にも同じような回路にお目にかかったことがあるような・・・。

 ゲルマラジオにのめりこむきっかけとなったマルツの「鉱石ラジオキットHG770」。震災の後、無電源というところに惹かれて作ってみました。小学生の時に「科学と学習」の付録で作って以来、数十年ぶりに聞いたゲルマラジオからのかすかな音声。このキットで少年の感動がフラッシュバックしてしまいました。そもそもゲルマラジオに電解コンデンサーなんてどうして使うのだろう?などと思いながら作った記憶があります。この回路・・・そう、このキットだったのです。

 ジャンク箱を探してみると、その時の基板やセラミックイヤフォン、説明書一式が出てきました。あらためて回路図をみると、出力回路と直列に電解コンデンサー10μF、そして並列に33pF。抵抗器2MΩの他は、FM3号機とほとんど同じで驚いてしまいました。ゲルマラジオにしては部品点数の多い面白い回路で、FM3号機の分離の良さなどを考えると、捨てたものでもないかな、という気がしてきました。






元基板(型番HG770)


 ということで、この基板をそのまま使って、セラミックイヤフォンではなく、オーディオ用イヤフォンを使えるように改良してみることにしました。

<変更点>
・トランス KT32(ST32相当品)追加 1.2kΩ:8Ω
・バーアンテナ 直径1cm×長さ7.5cmに変更
・バリコン トリマーから一般的なポリバリコンに変更
・イヤフォンジャック ステレオタイプに変更
・アンテナ端子 追加




 ゆったり目の基板なので、多少大きなバーアンテナを上部に、もともとあったバーアンテナの位置にトランス、トリマーとイヤフォンジャックを取り外し、同じ場所にポリバリコン、ステレオジャックをそれぞれ配置、配線し完了。


改良後




 たった7.5cmのバーアンテナなので、この状態では何も聞こえるはずもありません。わかってはいても、窓辺で慎重にバリコンを回してみました。やはり何も聞こえず。それではと、ミニループアンテナを近づけると・・・。聞こえてきました。NHK仙台第一がちょうどよい音量。さらに回すと、かすかに仙台第二放送。やはりこの回路、分離は良好です。ミニループから20cm範囲であれば十分な音量で受信できます。それ以上離すと不可。またラジオのアンテナ端子にループの一方を接続しても良く聞こえます。最大音量はどちらも同等。音もST32相当品にしては悪くない印象。聞いていて疲れない音ではあります。




ループに近づけただけで外部アンテナ代わりに(上)直接接続でもOK(下)



 いくつかの無電源ラジオを作り、試行錯誤の繰り返し。そして、はじめに作ったゲルマラジオに引き寄せられるように原点回帰。もともと単純明快な無電源ラジオ、回路など知れたものと考えていましたが、海外の製作例など見るといろんな作り方があるものです。実際、ちょっとしたことで聞こえ方に大きく影響することが多く、そこがまた無電源ラジオの奥深さでもあり、面白さかと思います。



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FM無電源ラジオ 3号機

2014年09月20日 | ゲルマラジオ

 AMZ同調コイルを使った2号機は、感度良く、分離もまずまずです。しかし、完璧というわけにはいきません。どうしてもNHKFMとDateFMがかすかに混じってしまいます。感度(音量)は多少低くてもなんとかなるにしても、混信は気になってしまいます。分離をさらに良くするにはどうしたらよいか?これまでの経験では、はやりコイルの良し悪しに尽きます。AMZ同調コイルは悪くはないのですが、あまりにも小さく、Qが低すぎですね。それに市販のコイルではなく、自作にもこだわりたい、ということで、今回、3号機を製作してみました。回路も多少見直し、トランスも変えてみました。

<材料>
コイル 2mm銅線30cm程
バリコン 4連エアバリコン 200pF、90 pF、28 pF×2
ダイオード 1SS106
コンデンサー 33pF、100μF(電解コンデンサ)
トランス  アウトプットトランス7kΩ:8Ω(ラジオ少年)
その他   ステレオイヤフォンジャックなど





 まずはコイル。1号機作製時の経験をもとに、いくつか作ってみました。線材は太さ2mmのエナメル線。太いので巻きごたえがあります。直径4cm、2.5cm、1.2cm、0.8cm各種。本命はアクリルパイプに巻いた1.2cm。8巻。ところが試験的に回路を組んで聞いてみたところ、周波数の低いDateFMがかすかにしか入感せず、コイルを伸ばしたり縮めたりしたものの変わりません。試行錯誤の末、12巻し、均等に伸ばして隙間をあけたものを使うことにしました。インダクタンス調整は「多めに巻いて伸ばす」というのがコツのようです。

 回路は通常のゲルマラジオとほぼ同じですが、いつもは使わない100μFを追加してみました。手書き回路図を載せておきます。



 あらかじめミノムシクリップで組んでみたところ、トランスの前に直列に入れている100μFはたいへん重要な働きをしているようで、これを入れると分離が大幅に改善されます。また並列の33pFを入れることで、感度が向上します。音量アップがはっきりと感じられました。ダイオードは今回もルネサスのショットキーダイオード1SS106を使いました。他を試してみたところ、1SS108(ルネサス)もほぼ同等ですが、型番が同じでも、他メーカーのものはまったく聞こえませんでした。1N60は聞こえるものの音量がかなり劣ります。それ以外のゲルマダイオード、ショットキーダイオードを試しましたが、検波できたのは上記の3種類のみです。

 ということで、いつものとおり、かまぼこ板に配置。トランスが大きいため、重さは2号機の4倍です。


FM無電源ラジオ3号機完成





2号機(左)と3号機


 さっそくロッドアンテナにつなぎ、聞いてみました。バリコン容量を調節するため4連の2か所をミノムシクリップで連結します。これをしないと何も聞こえません。そして結果は・・・事前実験で、ある程度感触はつかんでいたとはいえ、予想を上回る分離の良さで聞こえてきました。1局、1局の選局の山が明確で、1号機、2号機とは明らかに異なります。感度自体は2号機とさほど変わりません。音質について、2号機と聞き比べたところ、音に厚みが増し、FM特有のシャリシャリした感じがなくなりました。送信所から約1kmという強電界ならではの話ではありますが、無電源かつ簡単な室内ロッドアンテナでこれだけFM放送が聞こえれば満足で、とりあえず課題はクリアといったところです。


バリコン連結 連結線の長さによっても変化します

アンテナはRF-U700Aのロッドアンテナ(95cm)に接続


 1~3号機を作ってみて気付いたことを書いておきます。

1)コイルは適当に巻いても、けっこう同調してくれます。でも、目的の放送局に合わせた分離の良いコイルはカットアンドトライで骨が折れます。
2)20pF程度のポリバリコンやAM用2連ポリバリコン直列など試してみましが、良好に分離することは不可能でした。エアバリコンの方が分離は良好でした。
3)ネットの製作記事で紹介されているいろいろなFMの検波回路を試してみました。まったく聞こえなかったり、音量が小さかったりで、結局、ダイオード1個使用の今回の回路が今のところの到達点です。
4)ダイオードはルネサスの1SS106がベストでした。廃番となっているので、入手は今の内かもしれません。
5)オーディオ用イヤフォンを使う場合は、サンスイのST32が音量大きく良いようです。あとはお好み次第。
6)ちょっとした接続(回路)の違いで大きく音量が変化することがあります。またミノムシクリップなどで予備実験しても、実際組み上げると全然音がでなかったり、その逆だったり。無電源ラジオはそういうことが珍しくありません。見えないインダクタンスがあちらこちらに潜んでいるということでしょう。奥が深いです。





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FM無電源ラジオ フィールド実験

2014年09月15日 | ゲルマラジオ


 大年寺山の送信所から我が家までは約1km。では、送信所直下では、無電源ラジオはどんな感じで聞こえるのか?今日はフィールド実験。

 以前に書いた通り、大年寺山には150m位離れて次の二つの送信所があります。
 NHK仙台FM     82.5MHz  出力5kw
 FM仙台(DateFM)  77.1 MHz  出力5kw


野草園入口より 手前がNHKFM、奥がDateFM送信所


 我が家から歩いて20分程。向山から急な坂を上ると野草園入口。目の前にNHKの巨大なテレビ塔、その奥に仙台放送テレビ塔が飛び込んできます。ちょうどバス停のベンチがあったので、さっそく1号機、2号機を取り出して聞いてみました。アンテナなしで強力に入感を予想していたのですが・・・まったく受信できず。聞きなれないノイズ(抑圧?)で1号機、2号機ともバリコンのどこを回しても何も聞こえずでした。送信所直下、しかも2局が近接、ということが原因なのか、腑に落ちないまま、もう少し離れた公園に移動することにしました。


東側公園(東屋)にて


 東屋のある東側公園。ここはいつもの移動運用場所。NHK送信所からは300m、FM仙台送信所からは450mほど離れており、どちらの電波塔も良く見えます。受信してみると、FM特有のサーッというノイズを確認、バリコンを回すとFM仙台が急に大音量で聞こえてきました。1号機、2号機とも外部アンテナなしの単体で十分過ぎるほどの音量で受信可能。特に音割れもなく音質もまずまず。これだけ送信所に近いのだから受信位置に関係なく聞こえるだろうと考えていましたが、さにあらず、入感ポイントはかなりシビアです。ラジオ本体を回すと明確な指向性も感じられます。きちんとポイントおよび方角を合わせると急に聞こえ、少しずれるとまったく聞こえず。そのポイントは2号機の方がよりシビア、との印象。先ほどの送信所直下では甘く見て、ポイント探しをしなかったのが、受信不可の要因だったかもしれません。


北側公園にて


 ここまでは良かったのですが、なぜか聞こえるのはFM仙台のみ。NHK仙台FMがまったく聞こえないのです。2号機のバリコン容量を変えていろいろ試したものの、最後まで聞こえずじまい。その後、北側の公園に移動し、再度試みましたが、結果は同じでした。我が家に帰って、改めて聞いてみると、ちゃんとNHK仙台FM、聞こえるではありませんか。??? よくわからずですが、強電界ならではの何かがあるのでしょう。でもこれだけ近い場所ではさすが音声も安定することがわかりました。また中波とちがって、やはりVHF、こんな強電界ですら受信位置によって天地ほどの差があります。逆に言えば、電波の通り道を探す面白さがあり、これはこれでハマりそうです。改良を加え、今度は少しずつ離れた場所での受信実験をしてみたいと思います。





<移動運用記>
 せっかくの大年寺山移動なので、1か月ぶりにDCR、特小運用してみました。各局様、FBQSOありがとうございました。

ミヤギIT03局 石巻市上品山 DCR5/5 特小5/5
ミヤギAZ17局 大崎市加護坊山 DCR5/5 特小5/5
フクシマFK1097局 福島市吾妻一切経山 DCR5/5
ミヤギOS147局 大崎市古川江合川 DCR5/5


北側公園からの北方向展望






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FM用マグネチックループ

2014年09月14日 | ゲルマラジオ


 無電源ラジオは電波のエネルギーのみで作動するので、なんといってもアンテナ次第です。特にFMの場合、信号強度が弱いと音が割れたり、歪みを生じやすく、なるべく強い安定した信号が必要となります。通常の中波ゲルマラジオと同じ単純回路を採用していることもあって1号機、2号機とも音質は最低レベル。せめて、アンテナだけでもと、ネットで製作記事の出ていた磁界型ループアンテナを作ってみることにしました。

 参考ページ
 http://www.cepstrum.co.jp/hobby/magnetic_loop/2magnetic_loop.html

 5D2V同軸ケーブル60cmを1ターン。これで直径18cm程になります。なぜ1/4λの90cmでなく60cmかいうと、5D2Vの強度で安定して円形を保持できるのはこのくらいが限界では?というだけの理由です。同調点はFM放送帯より高めになると思われますが、送信するわけではなく、受信専用なので良しとします。直径1m以上にすると、中波にも十分使えるそうです。作り方は二通りあり、上部の網線に切れ目を入れる対称型と、切れ目を入れない不平衡型。両端の芯線、網線の接続の仕方も異なります。興味のある方は、上記のページを参考ください。


対称型マグネチックループ

切れ目幅 5mm


 今回は、対称型、不平衡型の両方を作ってみました。無電源ラジオとの接続はミノムシクリップ。まずは対称型。手持ちでさっそく聞いてみると、意外にクリティカルで、入感ポイントを合わせるとまずまずの音量で聞こえてきました。ポイントが合わないと全然です。8の字指向性もあり、回すと強くなります。入感ポイントでは垂直でも水平でも変化なし。続いて不平衡型も試したところ、信号強度、了解度とも対称型と同程度でした。利得は感じられません。大きさ並みのアンテナということです。



 ふと、この二つをつないでスタックにしてはどうか?と考え、さっそく実験。結果は、シングルより確実に音量が増加、受信面積が2倍になった分、捉えられるエネルギーが増加したことを実感。ロッドアンテナ2本のダイポールと同等以上、と言ったところです。この大きさなので健闘していると言えます。聞こえ方はシングルと同じで、ポイントを合わせると急に音量が大きくなります。指向性も同様。


マグネチックツインループ

接続部


 磁界型ループをツインにしたことで、はたしてどのような動作になるのか、通常のツインループと違いはあるのかは?です。参考までアンテナアナライザーで共振点を調べてみると、95MHz付近にありました。80MHz~110MHzあたりは実用になると思われます。利得の得られるアンテナではありませんが、手持ちもできるので野外での移動受信には便利かもしれません。



 音質改善効果はあったか?といえば、まだまだ。せっかくのFM放送なのに、現状では中波ゲルマラジオの音質以下。次は回路自体を見直してみるつもりです。



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FM無電源ラジオ 2号機

2014年09月13日 | ゲルマラジオ



 中波ゲルマラジオと違って、FMの場合はアンテナがシビアな印象を受けます。適当にビニール線をつないでおけば聞こえる、というものでもありません。試したところでは、1/4λのロッドアンテナを2本、ダイポール風につなぐのがベストでした。その場合も、一方は垂直に、もう一方は水平とか、偏波面も単純ではないようです。また10cm動かしただけでも信号の強弱がはっきりとわかり、うまく電波を捉えるとフワッと浮いてきます。この感覚は、特小交信に似ていて、なかなか味があります。また、垂直、水平、方角、角度などを変えることで、混信の軽減にも多少、効果あります。

 とはいえ、前作の最大の問題はNHK仙台FMとFM仙台がかぶって聞こえてしまうことです。しかも、バリコンがほとんど用をなさず、回しても信号の山がはっきりしないのです。放送は聞こえているので、同調はしているのだろうとは思いますが、のべつ混信では面白くありません。バリコンを回す楽しみもないわけで・・・。


 ということで今回、分離(選択度)の改善をテーマに、2号機を作製してみることにしました。見直したのは、コイルとバリコン。前作のコイルはいい加減な試作でしたので、今回はきちんと80MHzに同調のとれている市販コイルを用いることにしました。またバリコンは中波用の4連エアバリコンの一部のみを使ってみました。

<材料>
コイル AMZ同調コイル(7mm角) 80MHz(せんごく電商)
バリコン 4連エアバリコン 200pF、90 pF、28 pF×2
ダイオード 1SS106
コンデンサー 2200pF
トランス  サンスイST32
その他   ステレオイヤフォンジャックなど



 AMZコイルは秋葉原のせんごく電商本店で調達。FCZコイルが絶版になって、その代用品という位置づけのようで、アマチュア無線各バンド用のコイルが多数取り揃えてありました。80MHzに同調するようにできており、アンテナコイルも内蔵されているので、アンテナをつないで同調が変わってしまう問題も解決できるのでは?一方、バリコンは中波用の4連ですが、28pF×1のみを使うことにしました。


2200pFを並列に入れた以外、回路は同じ


 コイル、ダイオード、コンデンサを小さな蛇の目基板にハンダ付けし各部を配線。いつものとおり、かまぼこ板のバラック風。アンテナ、アース各端子にミノムシクリップでロッドアンテナにつなぎ、さっそく受信。1号機のようにバリコンを回す前から放送が聞こえてくることはありません。最大限の集中でもって慎重に回すと、思いのほか大きな音声が聞こえてきました。何かのCM。ということはFM仙台。さらに回すといったんほとんど聞こえなくなり、今度は先ほどを上回る音量でNHK仙台FMが聞こえてきました。



 完璧とは言えませんが、分離の改善は一応クリア。バリコンを回す→放送が聞こえる→いったん聞こえなくなる→別の放送が聞こえてくる、この当たり前のことが可能となっただけですが、バリコンを回すこと自体とても楽しくなりました。

 エアバリコンの他の3連を組み合わせて結合すると、感度と分離が微妙に変わります。試した中では、28pF+90pFの組み合わせがベストでした。またAMZコイルのアンテナ端子にアンテナを接続するよりも、バリコンに直接接続した方が、感度はなぜか数段上がります。無電源ラジオはこういうことによく出くわします。ちょっとした接続(回路)の違いで天地の差。FMの場合は、とりわけその印象が強くなりました。教科書通りにいかないから電波は面白いです。



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FM無電源ラジオ試作

2014年09月06日 | ゲルマラジオ


 Web上ではFM放送を受信するゲルマラジオがいくつも紹介されており、いつか挑戦してみたいと思っていました。我が家から受信できそうなのは、NHK仙台FMとFM仙台(DateFM)の2局。どちらも送信所は大年寺山(テレビ塔)で、距離にして1km弱。ただし、テレビ塔は見えないので、完全見通しではありません。

 
 NHK仙台FM     82.5MHz  出力5kw
 FM仙台(DateFM)  77.1 MHz  出力5kw

 無電源で受信できる可能性は十分あるのでは?ということで、試しに作ってみました。まずはコイル。2μH前後あればよさそうなので、太さの違う線材で5種類ほど作製。中波と違って簡素なコイルです。インダクタンスはどれも1.5μH程。この他の材料は下記の通り。

 バリコン 20pF(aitendo)
 ダイオード 最終的に1SS106 ショットキーダイオード
 トランス  KT-32(サンスイST-32相当品)


大小の自作FMコイル

小容量バリコン


 せっかくのFM放送なので、今回も、トランスを使ってステレオイヤフォンを鳴らすつもり。基本的な回路は通常のゲルマラジオと同じです。違うのはコイルとバリコン。さっそくミノムシクリップで配線。据え置きラジオのロッドアンテナにミノムシクリップで接続し、慎重にバリコンを回してみました。最大限の集中力をもって聞いてみましたが、何も聞こえず。配線を見直したり、コイルを換えたりして何度か聞いてみるも結果は同じ。いつものゲルマラジオとは様子が違うようです。悩んだ末、ダイオードをショットキーに変えてみたところ、まずまずの音量で鳴ってくれました。でも、これって本当にFM放送なの?一抹の不安が・・・。RF-U700Aで確認したところ、まぎれもなくFM仙台でした。使ったのは1SS106なので、ゲルマラジオではありません。ショットキー無電源FMラジオ。


1SS106

 予想していたとおり、NHK仙台FMとFM仙台が混じって聞こえます。なにしろ二つの送信所はほぼ同じ位置にあり、出力も同じ。バリコンのどこを回しても混信は消えません。アンテナとコイルの間に直列にバリコンを入れてみたところ、多少改善されました。またロッドアンテナの傾きを変えると、そこそこ緩和されます。FM放送というのは音楽が中心なので、クラシックとポップスが混じって聞こえたりして、良く言えば新鮮な感じもしますが、できれば勘弁してほしいです。大小のコイル、これらもすべて試してみました。ほとんど聞こえ方に変わりはありませんでしたが、大きく巻いた方が若干感度は良いようです。きちんと同調しているのかどうかはよくわかりません。かなり大ざっぱです。我が家のような強電界においては、こんな簡素な無電源ラジオでも聞こえてしまうようです。



コイル直径5cm3回巻

黄色のミノムシクリップはアンテナ線



 そんな実験の後、いつものようにバラック風に組み上げてみました。ところが完成して聞いてみると、ミノムシクリップでの実験ではけっこうな音量で鳴っていたのに、虫の鳴くような音量でしか聞こえなくなってしまったのです。たぶん、ミノムシクリップのリード線がアンテナ代わりになっていたのでは?と推察しています。またFM仙台よりもNHK仙台FMの方が強く入るようになりました。回路は同じ、板に配置しただけなのに、けっこう変わるものです。室内ではかすかにしか聞こえなくなってしまいましたが、ベランダの一か所では、アンテナなしで鳴ってくれます。



 大年寺山の送信所(テレビ塔)は仙台市内や周辺どこからでも良く見えます。つまり見通し。VHFなので無電源の簡素なラジオでも広範囲で受信可能では?と考えられます。泉ヶ岳や蔵王からも見通しのはず。改良を重ねて、そのうち山頂で受信実験してみようかと思います。





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