Cinemarche 2024/08/29 星野しげみ
クリント・イーストウッド監督の第5作目は復讐の旅にでる無法者を描く
南北戦争後の西部に生きた男ジョージー・ウェルズの半生を描いた『アウトロー(1976)』。
クリント・イーストウッド監督がアメリカ建国200年記念作品として製作した監督第5作です。
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主人公は、南北戦争中に、北軍のゲリラに妻子を虐殺された農夫のジョージー・ウェルズ。鍬を捨てて銃を握り、復讐の旅に出るアウトロー(無法者)な男をクリント・イーストウッド監督自ら演じています。
復讐のために早撃ちを習得したジョージー・ウェルズ。扮するクリント・イーストウッドが披露するそのガン裁きも、西部劇ファンを魅了します。
1976年製作の西部劇『アウトロー(1976)』をネタバレ有でご紹介します。
映画『アウトロー(1976)』の作品情報
【公開】
1976年(アメリカ映画)
【原作】
フォレスト・カーター
【英題】
The Outlaw Josey Wales
【監督】
クリント・イーストウッド
【脚本】
フィリップ・カウフマン、ソニア・チャーナス
【音楽】
ジェリー・フィールディング
【キャスト】
クリント・イーストウッド、ジョン・ヴァーノン、ソンドラ・ロック、ビル・マッキーニー、チーフ・ダン・ジョージ、ポーラ・トルーマン、サム・ボトムズ、ジェラルディン・キームス、ほか
【作品概要】
アメリカ合衆国建国200周年記念映画。マカロニ・ウエスタンで活躍し、「ダーティハリー」(1972)シリーズでスターの座を確立したクリント・イーストウッドが監督として取りまとめた第5作です。
アメリカ南北戦争末期。家族を北軍ゲリラに殺され、復讐の旅に出た南部の農民ジョージー・ウェールズの粘り強い戦いが描かれています。
クリント・イーストウッド自ら主演を務め、共演にソンドラ・ロック、ジョン・バーノン、チーフ・ダン・ジョージ。脚本は『ライト・スタッフ』(1983)『存在の耐えられない軽さ』(1988)のフィリップ・カウフマン。
映画『アウトロー(1976)』のあらすじとネタバレ
1860年代なかばのミズーリ州。南北戦争の混乱のさなか、北軍の名を借りたならず者集団レッド・レッグスが、各地で暴行・略奪を繰り返していました。
彼らに妻子を殺され、重傷を負った農夫ジョージー・ウェールズ(クリント・イーストウッド)。
拳銃の腕を磨き、彼らへの復讐のために集まったウィリアム・ブラッディ・ビル・アンダーソン率いるミズーリのゲリラ部隊に加わって北軍と戦い、その早撃ちを知られるようになっていきます。
やがて戦争は終わり、リーダー格のフレッチャー(ジョン・ヴァーノン)の説得により、部隊はジョージーを除いて全員北軍に投降することになりました。
ところが北軍にいってみれば、北軍のテリル大尉は、戦争中のならず者集団レッド・レッグスのボスでした。
北軍は独善的なレーン上院議員の指示の下、フレッチャーとの約束を破り、卑怯にも投降してきた部隊を犯罪者扱いで皆殺しにしようとします。
そこへジョージ―が仲間たちを助けにやって来ました。騙し打ちの場から負傷した若者ジェイミー(サム・ボトムズ)を救い出し、その場から逃げ出します。
北軍から追われる身の2人は、仲間の復讐どころではなく、インディアン居住区を目指して身を隠す旅に出ました。
ジョージーに部隊の大半を倒されてしまい、怒りに燃える上院議員の指示で、元レッド・レッグスのボスのテリル大尉(ビル・マッキニー)は、北軍に寝返ったフレッチャーを伴い、ジョージーたちの追跡を始めます。
以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『アウトロー(1976)』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『アウトロー(1976)』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
旅の途中でジェイミーは怪我がもとで命をおとし、一人になったジョージーは先住民族チェルシー族の白髪のローン・ワティと出会って、行動を共にすることにしました。
ローン・ワティの乗る馬を買いに店に行き、そこで虐待されていたナバホ族の女・ムーンライトも救い出して、一緒に旅に出ます。
莫大な懸賞金がかけられたお尋ね者のジョージーの名は、広いアメリカ中に知れ渡り、一攫千金を狙う賞金稼ぎたちが彼の命を狙っています。
ジョージーたちがクリントネーションという街に来た時、交易所の主人には顔まで知られいませんでした。しかし酒売りに顔がばれて、ひと悶着のうえ逃げ出します。
次にジョージーたちは、サンタリオという町に到着。その道中で知り合った、コマンチェロに襲われた白人娘ローラや、カンザスから牧場を作りにやって来た老夫婦たちと協力し合いながら、現地住民の男女らと共に、町の外れの一軒家でしばらく暮らすことにします。
ですが、アメリカ先住民コマンチ族に襲撃されそうになり、ジョージーは酋長テン・ベアーズ(ウィル・サンプソン)に和解を申し入れ、共に生きようと誓い合いました。
一見落ち着いたかにみえるジョージ―ですが、妻子を殺されたトラウマから逃れられず、牧場コミュニティから立ち去ろうとします。
その時、北軍の追っ手一味がやって来て「一人になったか。仲間はいなくなったのか」と取り囲まれますが、ジョージーの背後の家から仲間たちが援護射撃し、ジョージーと共に応戦して追っ手を撃退しました。
その後、サンタリオにフレッチャーが訪れてジョージーを捜索しますが、宿酒場に集った町の者たちは、ジョージーが死んだと証言。
その場にジョージーが居るのですが、フレッチャーも何も見なかったように振る舞います。
「ジョージーが死んだとは思えないから、メキシコへ行って探すとしよう」というフレッチャーに、素知らぬ顔でジョージーは言います。
「会えたら?」「先に撃たせる。それだけの義理がある。そして、戦争は終わったと告げよう」と言いました。
ジョージーも「皆、戦争の犠牲者だ」と言って、独り馬に乗って広い荒野へ駆けだしました。
映画『アウトロー(1976)』の感想と評価
マカロニウエスタンで人気を博したクリント・イーストウッド。監督5作目でアメリカ建国200年の記念作品として、『アウトロー(1976)』を製作し、主演も果たしました。
南北戦争中、米南部で農民をしていたジョージー・ウェールズは北軍のゲリラに妻子を殺され、北軍から賞金を懸けられるお尋ね者となります。復讐の鬼と化したジョージーは、戦後も北軍を敵に回しながら、孤独な復讐の旅を続行。
賞金稼ぎたちから命を狙われながらも、無法者となってさすらうジョージー。権力に屈することなく、弱者のために戦うそのスタイルは、男の中の男と言えます。
ジョージーは、「一人の軍隊」と呼ばれるほどの凄腕のガンマンでした。西部中にその名を轟かせたアウトロー、ジョージー・ウェールズの激闘シーンは見応え十分!
瞬時の早撃ちで勝負が決まる西部劇ならではの決闘シーンが次々と繰り広げられ、クリント・イーストウッドでしか表現できない銃撃戦に惚れ惚れします。
また、ロケによって西部の広大な風景が画面に映し出されます。砂漠、砂の谷間、西部劇によく出て来る町並みも復活し、マカロニウエスタン時代からの西部劇ファンを喜ばせてくれます。
建国200年の記念作である『アウトロー(1976)』は、復讐を描きながらも単なる復讐活劇とは違い、200年にわたる時代の様々な歪みや、弱肉強食の世界で生きる無名の人々の苦悩とたくましさが描かれた秀逸な作品なのです。
まとめ
アメリカ建国200年を記念して、クリント・イーストウッド監督が手がけた『アウトロー(1976)』をご紹介しました。
懸賞金をかけられたアウトローの物語ですが、そこには南北戦争などの混沌としたアメリカの歴史や先住民族との小競り合いなども描かれています。
妻子を殺された復讐心から凄腕のガンマンになったジョージー・ウェールズ。
切ない思いを抱えながら、「一人の軍隊」と呼ばれ、西部中にその名を轟かせたアウトローの激闘ぶりは、西部劇ファン必見です。
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