<いんたびゅー>コロナ後の百貨店事業戦略 定額制拡大や外商強化 J・フロントリテイリング社長・好本達也さん
北海道新聞10/29 09:32
新型コロナ禍で打撃を受けた百貨店や商業施設。客足が戻ってきた一方、ネット通販やリモートワークの普及などで事業環境は大きく変化している。大丸松坂屋やパルコを傘下に持つJ・フロントリテイリング社長で、大丸札幌店の立ち上げにも携わった好本達也氏(66)に、コロナ後の戦略や道内事業について聞いた。
――コロナ禍の影響と回復状況をどう見ていますか。
「百貨店事業は、臨時休業が相次いだ2020年度は赤字でしたが、22年度上期(3~8月)はインバウンド(訪日客)を除く売上高が19年同期比7・4%減まで回復しました。中国で旅行目的の出国が認められていないこともあり、インバウンドの本格的な回復はこれからです。ただ大丸札幌店はもともと他店より中国人客への依存度が低く、東南アジアや欧米からの来店客も多かったので、正常化は早いでしょう。パルコ札幌店もテナントの入れ替えが奏功し、来店客数は19年より15%増えています」
――コロナ禍による変化や注力していることは。
「オンラインの買い物が定着したり、リモートワークが増えて外出着を買う頻度が減ったりと、消費行動は変わりました。お客さまが来店するのを待つのではなく、店舗以外にも接点を持たなければならない。その一つが、大丸松坂屋として昨年始めた婦人服のサブスクリプション(定額レンタル)サービスです。利益が出るまで1、2年かかりますが、いずれは紳士服や雑貨にも広げたい。大丸札幌店で以前から注力している外商も、訪問ではなくテレビ会議システムを活用するなどし、好調です。スタッフも03年の開店当初の3人から50人に増やし、道内各地の顧客に対応しています」
――円安や物価高が続いています。
「今売れている高級ブランドの腕時計や化粧品などは輸入品が多く値上がりしていますが、売れ行きには影響していません。ただ、インバウンドにとっては内外価格差が重要。このまま円安が続けば輸入価格が上がり、日本での買い物が割高になる。香港やシンガポールなどに客足が流れかねないので注意が必要です。一方、アイヌ工芸品や南部鉄器など国内の伝統工芸品の販売では円安が追い風になります。もちろん高級品を購入する富裕層だけでなく中間層への対応も必要。デパ地下の食料品などでは、値上げによる需要の変化を注視しなければなりません」
――グループ全体の事業戦略は。
「これまでは利益の8割を百貨店事業とショッピングセンター(パルコ)事業が占めていましたが、コロナ禍を踏まえデベロッパー事業も成長の柱にしたいと考えています。道内での具体的な計画はまだありませんが、札幌は開発を検討する7都市の中の一つ。北海道新幹線の延伸もありますし、従来より一歩進んだことができればと思います」
――大丸札幌店は来春、開店から20周年を迎えます。
「札幌店で取り入れた人員やコストを抑えた効率的な運営ノウハウが、今では他店にも浸透しています。周辺は再開発ラッシュで、短期的には大丸の来店客が増えるかもしれませんが、新しい施設は間違いなく強力なライバル。コロナ禍からの回復を図りつつ、5年後、10年後を見据えて支持される店づくりをする必要があります。実績を積んだことで高級ブランドの出店が実現するケースも出てきました。今後もお客さまに道内、国内、海外の良いもの、新しいものを提案していけたらと思います」(聞き手・権藤泉)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/752706/
北海道新聞10/29 09:32
新型コロナ禍で打撃を受けた百貨店や商業施設。客足が戻ってきた一方、ネット通販やリモートワークの普及などで事業環境は大きく変化している。大丸松坂屋やパルコを傘下に持つJ・フロントリテイリング社長で、大丸札幌店の立ち上げにも携わった好本達也氏(66)に、コロナ後の戦略や道内事業について聞いた。
――コロナ禍の影響と回復状況をどう見ていますか。
「百貨店事業は、臨時休業が相次いだ2020年度は赤字でしたが、22年度上期(3~8月)はインバウンド(訪日客)を除く売上高が19年同期比7・4%減まで回復しました。中国で旅行目的の出国が認められていないこともあり、インバウンドの本格的な回復はこれからです。ただ大丸札幌店はもともと他店より中国人客への依存度が低く、東南アジアや欧米からの来店客も多かったので、正常化は早いでしょう。パルコ札幌店もテナントの入れ替えが奏功し、来店客数は19年より15%増えています」
――コロナ禍による変化や注力していることは。
「オンラインの買い物が定着したり、リモートワークが増えて外出着を買う頻度が減ったりと、消費行動は変わりました。お客さまが来店するのを待つのではなく、店舗以外にも接点を持たなければならない。その一つが、大丸松坂屋として昨年始めた婦人服のサブスクリプション(定額レンタル)サービスです。利益が出るまで1、2年かかりますが、いずれは紳士服や雑貨にも広げたい。大丸札幌店で以前から注力している外商も、訪問ではなくテレビ会議システムを活用するなどし、好調です。スタッフも03年の開店当初の3人から50人に増やし、道内各地の顧客に対応しています」
――円安や物価高が続いています。
「今売れている高級ブランドの腕時計や化粧品などは輸入品が多く値上がりしていますが、売れ行きには影響していません。ただ、インバウンドにとっては内外価格差が重要。このまま円安が続けば輸入価格が上がり、日本での買い物が割高になる。香港やシンガポールなどに客足が流れかねないので注意が必要です。一方、アイヌ工芸品や南部鉄器など国内の伝統工芸品の販売では円安が追い風になります。もちろん高級品を購入する富裕層だけでなく中間層への対応も必要。デパ地下の食料品などでは、値上げによる需要の変化を注視しなければなりません」
――グループ全体の事業戦略は。
「これまでは利益の8割を百貨店事業とショッピングセンター(パルコ)事業が占めていましたが、コロナ禍を踏まえデベロッパー事業も成長の柱にしたいと考えています。道内での具体的な計画はまだありませんが、札幌は開発を検討する7都市の中の一つ。北海道新幹線の延伸もありますし、従来より一歩進んだことができればと思います」
――大丸札幌店は来春、開店から20周年を迎えます。
「札幌店で取り入れた人員やコストを抑えた効率的な運営ノウハウが、今では他店にも浸透しています。周辺は再開発ラッシュで、短期的には大丸の来店客が増えるかもしれませんが、新しい施設は間違いなく強力なライバル。コロナ禍からの回復を図りつつ、5年後、10年後を見据えて支持される店づくりをする必要があります。実績を積んだことで高級ブランドの出店が実現するケースも出てきました。今後もお客さまに道内、国内、海外の良いもの、新しいものを提案していけたらと思います」(聞き手・権藤泉)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/752706/