先住民族関連ニュース

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日本テレビ社長 差別的な表現問題で道アイヌ協会に謝罪

2021-06-08 | アイヌ民族関連
NHK 06月06日 16時35分
ことし3月、日本テレビの番組でアイヌの人たちを傷つける差別的な表現があった問題で、日本テレビの社長が6日、北海道アイヌ協会の総会に出席し謝罪するとともにアイヌの歴史を学ぶ社員研修の実施など再発防止策について説明しました。
この問題は、日本テレビがことし3月に放送した情報番組「スッキリ」の中で、アイヌの人たちを傷つける差別的な表現があったもので北海道アイヌ協会が放送に至った原因の究明や再発防止策の説明を日本テレビに申し入れていました。
これについて日本テレビの小杉善信社長は6日、札幌市で開かれた北海道アイヌ協会の総会に出席し「アイヌの人たちの長年の活動で地位の向上や正しい理解がようやく進み始めているさなか今回の放送が正しい理解に水を差し、時計の針を戻してしまったことについて責任を痛感している」と述べ謝罪しました。
また放送に至った原因について「アイヌの人たちが差別を受けてきたことへの理解が足りず、放送した言葉が直接的な差別表現だという認識が欠如していた。放送前のチェック機能も働いていなかった」と述べました。
その上で再発防止策として▼アイヌの歴史や人権について学ぶ社員研修を行っているほか▼番組制作では放送前に制作担当者以外が内容を確認するようチェック体制を強化したと説明しました。
北海道アイヌ協会の大川勝理事長は「すべての差別がなくなるとは考えられないが、今回をきっかけに差別が減っていくことを願っている」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20210606/7000035059.html

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日テレ社長、陳謝 北海道アイヌ協会の総会で

2021-06-08 | アイヌ民族関連
JIJI.COM 6/6(日) 15:43

 日本テレビの情報番組でのアイヌ民族に対する不適切表現について、同社の小杉善信社長が6日、札幌市内で開かれた北海道アイヌ協会の総会に出席し、「アイヌ民族の地位の向上と正しい理解が進み始めた中、私たちの放送が水を差し、時計の針を戻してしまった。深くおわび申し上げる」と陳謝した。
 原因検証後、再発防止策などを取り上げた番組を放送する方針を明らかにした。
 総会には各地区の代表11人が出席。総会後、記者団の取材に応じた同協会の大川勝理事長は「再発防止策を着実に実行し、長期的に適切な対応をしていただきたい」と述べた。
 日本テレビが3月に放送した情報番組では、男性お笑いタレントがアイヌ民族に対し、差別的と取れる発言をした。放送倫理・番組向上機構は4月、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めている。 
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e028bdffae768e6e21247582006c2c55c006398


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【オマツリジャパンの毎週祭日 81】沖縄とアイヌ 歌と祈り オマツリライター・りえこ

2021-06-08 | アイヌ民族関連
観光経済新聞 2021年6月6日
チャランケ祭り(東京都中野区)
 東京は日本中から人が集まるだけあって、地方の文化を伝える祭りが多い。観光振興のためのものが多いが、在京県人コミュニティから自然発生したものもある。
 その一つが、中野区で北海道アイヌ民族と沖縄人の融合を祝って行われる「チャランケ祭」である。チャランケとはアイヌ語で「とことん話し合うこと」。偶然にも、沖縄で「チャーランケー」というと「消してはいけない」を意味する。
 発足は1994年。都内の小学校でアイヌの踊りを教えていた広尾正氏と、沖縄エイサーを教えていた金城吉春氏の出会いに起因する。中野区北口の広場でエイサーを練習していた金城氏ら沖縄グループに、広尾氏らアイヌグループが参加。交流を深めるうち、この共通の言葉を発見し、それを冠した祭りが誕生した。
 儀式や踊りは、民族のアイデンティティである。両民族がそれぞれの伝統を東京で示すことには深い意味がある。日本社会に組み込まれていく中で、厳しい差別を受け、言葉や伝統を隠さざるを得なかった歴史があるからである。
 祭りの朝はそれぞれの民族に伝えられる儀式で始まる。初日はアイヌ民族のカムイノミ。カムイは動植物や自然現象など、人の手に及ばない物のこと。柳の木でできた祭具や、酒や食べ物を捧げ、カムイの恵みに感謝を示す。2日目は沖縄の旗揚げ、旗おろし、シタク。旗頭を中心とし、鉦鼓(しょうこ)、銅鑼(どら)、ほら貝、太鼓に、合唱が加わる。そして東西の大将を乗せた台を担ぎ、皆の士気を高める。チャランケ祭りでは、東西の大将を沖縄とアイヌの代表が務める。
 儀式の後は、両文化の歌や踊り、交流ブースや郷土料理で文化を体験することもできる。古典的な特色が強く、音や人の歌声が体に響き、食すれば民族の味と香りが染み渡る。祈りの深さを心底感じさせる祭りである。
 毎年11月初頭の土日2日間。近年は中野区役所前広場で開催。2021年度の開催は未定。
(オマツリライター・りえこ)
【オマツリジャパン】
日本初の祭りサポート専門会社。「祭りで日本を盛り上げる」を目標に掲げ、祭りのコンサルティング、プロモーション、日本最大級のWEBプラットフォーム運営など、地方創生に取り組む。https://omatsurijapan.com

強い思いでつながるアイヌと沖縄の出演者
https://www.kankokeizai.com/%E3%80%90%E3%82%AA%E3%83%9E%E3%83%84%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%AF%8E%E9%80%B1%E7%A5%AD%E6%97%A5-81%E3%80%91%E6%B2%96%E7%B8%84%E3%81%A8%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%8C/

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ザラ、メキシコ政府に「文化の盗用」指摘された訳 民族衣装の利用に対して説明を求める書簡

2021-06-08 | 先住民族関連
東洋経済 2021/06/07 20:00

メキシコ文化省はザラなどアパレル大手3社が「文化の盗用」を行っているとして、説明を求める書簡を各社に送った。写真はメキシコ文化省がホームページ上に掲載しているメキシコの伝統衣装(左)、ザラの商品(右)(写真:メキシコ文化省ホームページより)
メキシコ文化省は5月末、アパレル大手3社、スペインのザラとアメリカのアンソロポロジー、およびパトール対して、メキシコ・オアハカ州の先住民族の民族衣装のデザインを利用していることが「文化の盗用」に当たるとして、「何の根拠があって共通財産を使って利益を得ているのか、公的な説明を求める」書簡を送ったことを明らかにした。
同省は、ホームページ上で各社に送った書簡を「公開」。そこには、各社のどのアイテムが文化の盗用に当たるかわかるように、”元”となっている民族衣装の写真と並べて掲載。例えば、ザラについてはオアハカの女性が着る刺繍の入った民族衣装「ウイピル(Huipil)」のデザインに類似していると指摘している。
同省によると、ウイピルはこの地域の女性のアイデンティティーの一部であり、刺繍は環境や歴史、コミュニティを示すシンボルが表現されている。衣装は素材から手作りで、仕上げるのには1カ月以上の手仕事を要する。この技は世代を超えて伝えられており、民族衣装の販売は多くの先住民族コミュニティの生計を支える1つとなっている。
利益の一部はデザイン所有者に還元されるべき
こうした背景があるにもかかわらず、それをアパレル大手が容易に、しかも事前の許可なく模写して生産するということに対して、文化省は不満を訴えているわけだ。
2018年12月にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏(アムロ)がメキシコ大統領に就任して以来、同社会で差別されている人たちへの配慮を政治活動の重点の1つとして挙げている。
こうした中、メキシコに数多く存在する民族の文化などを守ることにも関心を払っており、大手3社の文化の盗用を訴える背景には、アパレル各社が民族衣装の盗用から得た利益の一部は、デザインの元となっている先住民族に還元されるべきだとの考えがある。
ロイター通信によると、ザラを運営するインティデックスはロイターの取材に対して、「指摘されたドレスのデザインについて、意図的にメキシコの(先住民族)ミシュテカの人々の民族衣装を模したり、影響を受けたりした事実はまったくない」と文書で回答している。
メキシコの民族衣装(左)と、パトールの商品(右)(写真:メキシコ文化省のホームページより)
文化省が盗用を指摘するのは、これが初めではない。2019年6月には、世界ファッション界で著名なベネズエラ出身のデザイナー、キャロリーナ・ヘレナ氏の新作コレクションに対してクレームをつけている。この作品の中に、メキシコ民族の伝統服から盗用したものがあるとして、同氏とクリエイティブ・ディレクターのウェス・ゴードン氏の両氏宛に書簡を送り、模写した根拠についての説明を求めていた。
スペインメディアによると、ゴードン氏はメキシコ文化省に対して、メキシコを旅行した時に素晴らしい民芸作品に魅了され、それを新しいコレクションの中に加えてすばらしい文化遺産を世界的により価値あるものにしたい、といった回答を送ったという。そこには模写したことへの謝罪は一切なし。逆にそれを世界に広めたい、という意向を示したのである。
一方、BBCによると、フランスのデザイナー、イザベラ・マラン氏は昨年11月、メキシコ文化省による「盗用」の指摘を受けて謝罪。「盗用しているという認識は全くなかった」とした上で、「(メキシコの)民芸品のプロモーションをすることで、こうした手仕事に対する尊敬の念を払いたかった」としている。
民族衣装の知名度を上げるきっかけになる?
実際、どちらが最終的に先住民族の利益につながるかは判断が難しいところだ。ザラのような大手企業の場合、大量生産品のため、実際の民族衣装よりずっと安価で販売できる。仮に先住民側がネット販売しても価格で対抗できないことは明らかだ。
メキシコの民族衣装(左)と、アンソロポロジーの商品(右)(写真:メキシコ文化省のホームページより)
一方で、ザラなどのメーカーを通じて商品のデザインのルーツとなった民族衣装が世界に知られるようになれば、これを機に「本物」が欲しいという消費者が出てくる可能性もあるだろう。
もちろん、大量生産品と手仕事品を同じ土俵で比べることには無理があるが、同じ土俵で戦った場合、手仕事のため価格が高く、販路もかぎられている先住民族の民族衣装が何らかの影響を受けるのは避けられない。また、最終的に先住民族への経済的メリットがあるとしても、無断で盗用するというのはモラル的にどうなのか、という議論もある。
ザラに限らず、ファストファッションブランドが、デザインの盗用を指摘されるのはこれが初めてではない。過去には、イヴ・サンローラン氏に長く仕えたピエール・ベルジェ氏は、「ファストファッションに創作は必要ない。市場にあるものを真似て、安く提供するだけでいい。あとはマーケティングの力だけである」と語っている。
実ザラなどの母体であるインディテックスには300人のデザイナーがおり、8つのブランドのために毎年1万8000着の新作を生みだしている。ライバルのH&Mやギャップは年間4000着だとされている。
つまりインディテックスの旗艦ブランドであるザラが、1年間で市場に出すアイテムの数は膨大。それをこなすには、消費者が興味を引かれる商品を生み出し続けなければならい。
ネットでデザインの盗用もわかりやすくなった
盗用を指摘するデザイナーも少なくない。2016年にはアメリカ・ロサンゼルス在住のアーティストが、自身のデザインがザラに使われていると、自身のデザインとザラの商品の写真を並べてインスタグラムに投稿。これに多くのデザイナーやアーティストが反応した。また、キューバで生まれた零細企業の作品が模写された、という訴えもある。
アパレル企業やファッションブランドが意図的に盗用した意図がないとしても、盗用された側は別の感情を抱くだろう。イギリスのガーディアン紙は、特にメキシコの民族衣装はそのデザイン性の高さなどから、長い間さまざまなメーカーから類似商品が出るなど、盗用の温床となっている。
もっとも、同紙によると、アパレル企業側は先住民側が知的財産権をめぐる訴訟でも起こさないかぎり、盗用などを認める可能性は低い。ほとんどの先住民族コミュニティは貧困にあえいでおり、訴訟費用をまかなうことは不可能だとされる。今回のメキシコ文化省による訴えは、アパレル企業にどこまで響くだろうか。
https://toyokeizai.net/articles/-/432539

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日テレ社長 北海道アイヌ協会総会でアイヌ民族に対する不適切表現を謝罪 理解が足りなかった… 動画

2021-06-08 | アイヌ民族関連
UHB 2021年6月6日 日曜 午後6:40

 札幌市中央区で6月6日開かれた北海道アイヌ協会の総会に日本テレビの社長が出席し、番組内での不適切表現について謝罪しました。
 日本テレビ 小杉 善信 社長:「アイヌ民族のみなさまを深く傷つける不適切で差別的な表現を放送したことについて、深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」
 この問題は3月、日本テレビの情報番組でアイヌ民族に対する不適切表現が放送されたもので、北海道アイヌ協会が日本テレビに対して謝罪と説明を求めていました。
 日本テレビの小杉社長は6月6日開かれたアイヌ協会の総会で謝罪し、再発防止とアイヌ民族への理解を深める番組作りを約束しました。
 北海道アイヌ協会 大川 勝 理事長:「お互いいろいろな面で友好的にお付き合いしていきたい」
https://www.fnn.jp/articles/-/192648

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<こだわりの一品>色彩豊かな民族衣装のテワナ メキシコ大使が持つ美へのこだわり

2021-06-08 | 先住民族関連
毎日新聞 6/6(日) 9:30

伝統衣装の「テワナ」を着たメルバ・プリーア駐日大使=東京都千代田区のメキシコ大使館で2021年6月3日、中村聡也撮影
 赤や黄、青などカラフルな花のデザインが刺しゅうされたブラウスに目を奪われた。メキシコの伝統衣装の一つである「テワナ」。「先住民の女性が日常的に着ていたテワナは、現在では多くのメキシコの女性が好むようになりました」。メルバ・プリーア駐日メキシコ大使(63)自身もこのブラウスを着ながら魅力を語ってくれた。
 テワナは、南部オアハカ州のイスモ・デ・テワンテペック地方に暮らす先住民のサポテク族の伝統衣装。花とグレカと呼ばれる同じパターンの模様をつなげた柄の刺しゅうが入ったデザインが特徴で、ほぼ手作りで裁縫されている。
 「サポテク族の女性は色を愛し、そして、美の象徴である花をデザインに取り入れたのです」。プリーア氏が初めて身に着けたのは20歳のころ。母親から譲り受けたものだった。「今では私もたくさんのテワナを持っています。イヤリングやネックレスと合わせることで、着ている女性の魅力を一層際立たせてくれるのです」
 テワナは、メキシコが生んだ世界的な女性画家フリーダ・カーロ(1907~54年)が好んで着たことなどで、30年代ごろから他の地域にも普及。現在は特別なイベントだけでなく、スカートやスーツなどと組み合わせて、日常生活や仕事など、場面に関係なく使われるファッションになった。2019年6月に着任したプリーア氏も、同年10月の天皇陛下の「即位礼正殿の儀」にテワナを着用して参列した。
 ◇食文化も多様性に富む 
スペインの植民地だったメキシコでは、現在も30万人を超える人々が68に上る先住民族の言語のいずれかを話すなど、多様な古来の文化が残されている。このため、衣装だけでなく、食事も多様性に富んでおり、10年には「メキシコの伝統料理」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。
 取材の際に出されたのは、国を代表する主食トルティーヤの上に目玉焼きを乗せて、唐辛子やトマトソースなどで作られたサルサロサをかけた「ウエボス・ランチェロス」。食用のサボテンやほうれん草などが入ったスムージーの「フゴ・ベルデ」もおいしそうだ。
 ウエボス・ランチェロスはもともと、農民が農作業に出る前に食べていた料理で、炭水化物やたんぱく質などを同時に摂取できることから都市部にも普及した。一方、フゴ・ベルデもビタミンや食物繊維などが含まれている。「どちらも定番の朝食で、私も家族と一緒によく食べていました」。プリーア氏は振り返る。「ヘルシーで豊富な栄養分を同時に取れることから、子どもの発育に良いし、日本の忙しい会社員にも向いています」とお勧めだ。
 先住民が伝統を守り続け、さまざまな文化が今も息づくメキシコ。「食や伝統衣装を通じて、メキシコが持つ豊富な文化をもっと知ってもらいたいです」。笑顔を交えながら話すプリーア氏の表情は、身に着けたテワナに描かれた花のように輝いていた。【中村聡也】
 ◇メキシコ
 かつてはマヤ文明やアステカ文明が栄えたが、1521年にスペインの植民地となり、独立戦争を経て1821年に独立を果たした。人口は約1億2600万人で、このうち、先住民が21%を占める。日本が1888年に初めて平等条約を結んだ相手国でもあり、明治天皇が感謝のしるしとして贈った東京都千代田区永田町の土地に在日大使館を建てた。メキシコには日本人が移住した歴史もあり、現在も約2万人の日系人が暮らす。「テオティワカン遺跡」など世界遺産の登録件数は35件と南北の米大陸では最も多い。
https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/world/mainichi-20210605k0000m030057000c.html

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軍事政権時代の憲法改正へ 岐路に立つ南米チリ

2021-06-08 | 先住民族関連
WEDGE Infinity 2021/06/07 09:00
 5月15、16日に行われたチリの制憲議会選挙では、ピノチェト軍事政権下で制定された現憲法を維持し新憲法に反対する、ピニェラ政権等右派の陣営が得票率で約2割にとどまり、議員数では新憲法阻止に必要な3分の1に達せず大敗した。
 新憲法は、6月から9ヶ月かけて、場合により3ヶ月の延長含みで起草され、国民投票に付される。制憲議会選挙と同日に行われた知事、市長、市議会選挙でも左派系が優勢であった。11月に行われる大統領選挙でもこの傾向が続けば、政権も左派系に交代する可能性が高い。6月のペルーの大統領選挙結果と並んで地域の政治バランスにも影響が出るであろう。
 ピノチェトの軍事独裁政権が民政移管する過程において、ピノチェト等軍事指導者が政治的影響力を引き続き有していたので、軍を優遇する軍事独裁政権時代の憲法がそのまま存続した。チリは、その枠組みのもとグローバル化と市場主義経済原理を活用して目覚ましい経済発展を遂げたわけであるが、他方で、大きく根深い経済格差と一般市民のための社会サービスやインフラの不足に対する不満が蓄積されてきた。富裕層を支持基盤とする右派のピニェラ連立政権ではこの大衆の不満に対応することができず2019年後半の抗議運動から今回の制憲議会選挙へのプロセスは必然的成り行きであったように見える。
 現在のチリでは、ジェンダー平等、先住民族の権利の承認、年金や教育の改革、市民参加の道の拡大、環境保護の強化、警察の改革などが強く求められている。人々は、尊厳、公正さ、そして敬意をもって自分たちを扱う、より敏感で包摂的な政府を望んでいる。制憲議会選挙で、左派や抗議運動の当選者たちは、こうした大衆の要求に応える改革を約束した。
 問題は、新憲法が何処まで急進的なものとなるか、更にその後の左派独裁政権化への道を開くものとなるのか、或いは、大きな政府ではあっても穏健な社会民主主義的憲法となるかであり、チリの将来やこの地域の政治的安定にも大きく影響してくるであろう。また、政治的急進主義への道を歩めば、企業の投資意欲が減退し、ビジネスに適した国というチリの評価が崩れてしまう。
 制憲議会の議論が社会民主主義的な方向に進むとしても、あまりに過激な改革となれば、右派や軍や警察の抵抗により、政治的不安状態に陥る可能性や、ベネズエラ化の道をたどる危険もある。他方、チリのビジネス上の強みを失わずに、多様性や包摂性の尊重といった民主主義理念と制度が守られれば、新憲法制定を契機にラテンアメリカのモデルとなるような国に生まれ変わることも不可能ではない。
 左派にはまだカリスマ的指導者がいるわけではなく、諸勢力の連合であり、急進派一辺倒ではなく、多少の柔軟性はあるのではないかとも推測される。左派急進派のアジェンデ政権の政策的失敗やピノチェト政権の人権侵害の経験を持つチリ人の賢明な選択が期待される。
https://news.goo.ne.jp/article/wedge/world/wedge_23166.html

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カナダの先住民族寄宿学校跡地で遺体が発見された子どもたちを追悼 オレンジ色のシャツ並ぶ

2021-06-08 | 先住民族関連
キリスト新聞社2021.06.06

バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)近くの道路に215枚のオレンジ色のシャツが並べられている。同州カムループスの先住民族寄宿学校の跡地で遺体が発見された215人の子どもたちへの追悼の意が込められている、と周辺のニュース報道に特化する「バンクーバー経済新聞」(日本語)が6月6日報じた。
カナダでは先住民族の人々に対する同化政策の元、1880年代から1990年代まで各地で主にカトリック教会が寄宿学校を運営。15万人以上の子どもたちが家族と離れての生活を強制された。寄宿学校在籍中に行方が分からなくなった子どもについては記録もなく不明とされてきたが、先住民族の人々は校内での死亡事例も含めて調査を求めていた。今後、全国にある寄宿学校跡地での調査が進めばさらに遺体が見つかる可能性もあるという。
オレンジ色のシャツを着ることはカナダで寄宿学校に対しての意識を高めるための方法とされており、「オレンジシャツ・デー」は、1973年に寄宿学校に入学したフィリス・ウェブスタッドさんが着ていたお気に入りのシャツを記念して名付けられた。(CJC)
https://www.christianpress.jp/49196/

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「小さいおじさん」を目撃すると幸運が訪れる “東京のへそ”で都市伝説に挑む

2021-06-08 | アイヌ民族関連
よろずー 6/6(日) 14:00
 「東京のへそ」と呼ばれる場所を知っていますか。「東京のへそ」は、1998(平成10)年の都議会リポート6月号「東京のなんでもNO.1」で紹介されています。
 「へそ」というのは真ん中にあるということではなく、東京の重心にある場所という意味です。その場所は京王井の頭線「西永福」駅近くにある「杉並大宮八幡宮(はちまんぐう)」という都内有数のパワースポットです。
 ここは源氏にゆかりのある神社です。奥州で起こった前九年の役(1051~1062年)を鎮めるように、後冷泉天皇の勅命を拝した鎮守府将軍・源頼義が、この地で武運を祈り出陣。平定後の1063年に神社を創建したのが縁起です。また、頼義の子、八幡太郎義家も後三年の役(1083~1087年)後、父にならい社殿を修築し、境内に1000本の若松の苗を植えたと伝えられています。
 実はその「杉並大宮八幡宮」に、神様なのか妖精なのか分かりませんが「小さいおじさん」が時折現れ、目撃すると幸運が訪れるいう都市伝説があります。10年以上前にテレビ番組で「身長20センチほどのスーツを着ている小さいおじさん」が出没すると話題になりました。当時、俳優の的場浩司らがTV番組で熱く語っていましたが、今もその話は脈々と語り継がれています。今回、その「杉並大宮八幡宮」で「小さいおじさん」探しにトライしました。
 日本では小人の話は珍しくありません。昔話に「一寸法師」「かぐや姫」などの話があります。また、古事記には「少名昆古那神」、日本書紀では「少彦名命」とされる小人の神が登場しています。アイヌの神話には、蕗の下の人という意味の「コロボックル」も小人も登場します。ここは、1969(昭和44)年に旧境内地から弥生時代の祭祀(さいし)遺跡などがみつかった地です。神や妖精である小人の1人や2人が住み着いていても不思議ではないのでしょうか。
 今回は目撃情報の多い、境内にある「大宮稲荷神社」を、特に土台付近を這(は)いつくばるように入念にチェックしましたが「小さいおじさん」発見には至りませんでした。実は以前に一度「杉並大宮八幡宮」に行ったことがあります。もう20年以上も前のことです。
 当時、大相撲の横綱貴乃花がそのすぐ近くに住んでいたため、時間つぶしもかねて参詣しました。貴乃花を待っていたところ、偶然にも、そのマンションからやはり当時住んでいた木村拓哉が車で出てきて「人の家の前にいないでくれ」と注意されるという“ハプニング”。小人ではなく、どこに住んでいるのか分からなかった、芸能界のビッグスターに遭遇するという御利益がありました。
 緊急事態宣言が開けたら、みなさんも幸せの「小さいおじさん」探しに挑戦してみたらどうですか。信じる者こそ救われますよ。
(デイリースポーツ・今野 良彦)
https://news.yahoo.co.jp/articles/fc9cd94a1af7824037a14f573617b7db8139a7ad

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障害者と健常者が忖度なしに言い合う。ありそうでない超個性派揃いのバリアフリーサークルと出合って

2021-06-08 | アイヌ民族関連
ヤフーニュース 6/6(日) 7:30
 現在公開中のドキュメンタリー映画「ラプソディ オブ colors」は、東京都大田区にある、バリアフリー社会人サークル・colorsを500日間にわたって撮影している。
 「colors」があるのは古い3階建てのシェアハウス&イベントスペース「トランジット・ヤード」内。1階がイベントスペース「Transit Cafe Colors」となり、colorsとNPO法人「風雷社中」が協働運営し、定期的にイベントを行い、障がいのあるないにかかわらず、さまざまな人が集う場となっていた。
 2階はカメラマンやヘルパーさん、ミュージシャンがルームシェアしており、3階には重度知的障害のあるげんちゃんが1人暮らしをしている。
 colorsの代表を務めるのは、頚椎損傷と脳の血種による障害者でシングルマザーの石川悧々さん。DET(障害平等研修)のトップファシリテーターとして活躍する彼女のもとには、その人柄もあって障がい者のみならず実に多様な人々がやってくる。
 作品は、この場所に集う個性豊かな人々と、入居する建物の突然の取り壊しが決まり閉鎖されるまでの日々が合わせて記録されている。
 本作を手掛けた佐藤隆之監督はかつて大林宣彦、黒木和雄、鈴木清順らの助監督として活動。その後、テレビやネット配信の作品で監督脚本を手掛けながら、45歳でタクシードライバーに転職し、いまはドライバーを続けながら個人製作のドキュメンタリーを発表している。異色の経歴をたどる佐藤監督のインタビューを2回に分けてお届けする。
「へぇ、こういう場所があるんだなぁ」と思いました
 まず佐藤監督は「colors」という場との出会いをこう明かす。
「今回の『ラプソディ オブ colors』にも登場してますけど、友人の写真家、柴田大輔さんが、あの建物の2階に住んでいた。
 それで、彼が前作『kapiwとapappo~アイヌの姉妹の物語~』をcolorsで上映したいと言ってくれて。その打ち合わせで初めて『colors』を訪れました。2017年の9月でした」
 そのときの印象をこう語る。
「へぇ、こういう場所があるんだなぁと思いました。石川(悧々)さんも強烈な個性を放っていた。『打てば響く』と言うか。声もでかいしね(笑)」
 ただ、すぐに撮影を申し出たわけではなかったという。
「翌年、長年温めている映画のシナリオをちょっと直そうと思って。そのシナリオの主人公というのが知的障害のある設定だった。
 そこで、知的障害について実際をもっと勉強したいと思っていたところで、『colors』のことが頭に浮かんだんです。あそこに行けば、いろいろな障害を抱えた人が出入りしている。いろいろな話をきいて、参考にしたいなと。ということで、たとえばバーベキューとか、『colors』が開いているイベントに遊びがてら、行くようになりました。
 そのうちに、石川さんと、彼女の相棒というか、同志というか。『Transit Cafe Colors』を協働で運営するNPO法人『風雷社中』理事長の中村(和則)さんに惹きつけられた。
 まあ映画をみてもらえればわかりますけど、石川さんは白黒はっきりした性格で、多くの人に慕われる一方で、気に入らない人は一刀両断で突き放す。劇中でも言われてますけど、『魔女』と称されるぐらい個性的で異様に押しが強い(笑)。
 中村さんも地域の障害福祉の立役者で、やっていることはすごい。福祉や障害者の自立について語ることは舌鋒鋭くいずれも正論。役所が太刀打ちできないくらいやり手の人物ではある。でも、いつもくたくたのTシャツ・無精髭姿、歯を磨かなかったりとだらしなくて、とてもそんな人には見えない(笑)。
 この二人から目が離せなくなって。二人を中心にしたこのコミュニティを撮ったら、なにか見えてくるものがあるんじゃないか。単純に『面白いものが撮れるんじゃないか』と思ったんです。
 それで、『映画になるかどうかはわからないけど、周りの人も含めてまずは撮らせてもらえないかな?』と二人に話したのが2018年の5月ぐらい。こうして『colors』に通っての撮影が始まりました」
同じ障害がある人同士でも気が合う合わないはある。そういう当たり前のこと
前提で、障害者も健常者も付き合っている感じが『いいな』と思った
 撮影をはじめた当初、「アンチ感動ポルノ」といったコンセプトがあった。だが、途中からそういうことも意識しないようになったという。
「代表の石川さんからしてそうなんですけど、健常者とか障害者とか分け隔てることがない。世間一般には、障害者は守られるべきもの、可愛想な存在といったイメージがあって、なにか軽く触れてはいけないような風潮がある。もちろん、彼らが困っていることがあれば手を差し伸べるのは普通のこと。でも、彼らだって常に正しいわけではなく、間違うこともあって決して聖人ではない。colorsに集まる人々を見ていると、みんな言いたいことを言い合っている。 『障害者同士は互いに分かり合える』ようなことをこちらは勝手にイメージしますけど、そんなことないわけで。
 当たり前ですけど、同じ障害がある人同士でも気が合う、気が合わないはある。そういう当たり前のこと前提で、障害者も健常者も付き合っている感じが『いいな』と思ったんです。
 で、当事者たちにいろいろと聞くと、やっぱり自分たちの存在が『感動物語』にまとめられることにかなりの不満をもっている。僕自身もそういった障害者を感動ポルノ的な扱いをするテレビ番組、ドキュメンタリー番組には常々批判的で。
 平たく言うと、ある健常者がある障害者と出会って、『彼はこんなハンデがあるのにこんなに頑張ってます』といった内容を伝えて、それにみんなが感動するというのはいかがなものかなと。
 それを見た当事者が『自分ももっと頑張らないといけない』と思うようなことになりかねないのも危ういし、世間が『障害者はこういう存在』と短絡的にとらえてしまうのも危ういと思っていたんです。
 そもそもマジョリティの側から見てマイノリティを規定するということがすごくエゴイスティックなことだと思うし、どっちがマジョリティで、どっちがマイノリティっていう考え自体がおかしい。 そういうことをとっぱらった作品にしたいと思いました。
 そういう意味で、そのような『感動ポルノ』的なものになるのは絶対に避けたかった。
 でも、それと関係なく最初に掲げていた『アンチ感動ポルノ』うんぬんといった旗印は撮影を進めるうちにだんだん薄れてきた。刺激的な人物が次々と現れるから、自分の興味の赴くまま彼らを追っているといった感じで。『撮りたいから撮る』みたいなことになってました」
 作品は「colors」で行われるイベントが中心に構成されている。中でも、音楽イベントを注視した印象があるがその理由をこう明かす。
「『colors』ではほんとうにいろいろなイベントをやっていて。しかも、とても全部に足を運ぶのは難しいぐらいの回数をやっているんですよ。だから、撮影者としては全部に付き合うことはとてもじゃないけどできない。こちらもタクシー運転手の仕事で食っていかないといけないので(笑)。
 それでどうしようかなと思ったんですけど、僕の中では、とりわけ音楽イベントが目にとまったんですよね。ご覧になってもらえればわかりますけど、『colors』のイベントに参加している人たちの歌は、上手い人もいれば下手な人もいる。プロもいればアマチュアもいる。通常のコンサートやライブというのは、歌う人がいて、それを聴く人がいる。多かれ少なかれ、歌い手は与える側で、聴き手は与えられる側になる。
 でも、『colors』のあの場はちょっと違って限りなく対等というか。あそこでは歌い手と聴き手が入れ替わる、それこそオープンマイク。そういう自由な場で。これが『colors』という場を象徴しているような気がしたんですよね」
 ただ、その中であっても強烈な印象を放つのが、石川さんと中村さんだ。
「強烈でしょう(苦笑)。いや、二人ともに強烈なんですよ。僕にとって二人は撮影の当初、ナビゲーターだったんです。取材したいと思った人の連絡を頼んだりおすすめの人をコーディネートしてもらったりして。あくまで作品の案内人だった。でも、撮影を進めれば進めるほど、『この二人が一番おかしいんじゃないかな』と(笑)。 それで、映画の中でもだんだんあの二人にフォーカスがいっちゃったんですよね。
 二人は『知的・精神』の分野でいうと健常者に入ると思うんだけど、ここに登場する中で一番変で迷惑な存在なのは、実はこの二人じゃないのかと。
 そうこうするうちに、僕は二人に取り込まれちゃって。さっきも言いましたけど、二人を見ることで、障害と健常っていう分け方、それ自体を疑ったほうがいいとの思いがさらに強くなった。
 それでまったく意識していなかったんですけど、前作『kapiwとapappo~アイヌの姉妹の物語~』ともつながったんですよね。
 前作も根底にあるテーマは『ラプソディ オブ colors』と同じで。アイヌと和人というカテゴライズして分けて考えることを疑ってみようという作品でした。
 もっと広く言えば、マジョリティとマイノリティの関係。そこに自分の意識があるんだなと二人にフォーカスしたことで気づきました」
(※後編に続く)
https://news.yahoo.co.jp/byline/mizukamikenji/20210606-00241513/

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かつてニシン漁で栄えた集落の人のにおいと北国の遅い春 写真家・佐藤圭司〈dot.〉

2021-06-08 | アイヌ民族関連
アエラ 6/5(土) 17:00
 写真家・佐藤圭司さんの作品展「張碓から忍路へ-春-」が6月7日から東京・新宿御苑前のRED Photo Galleryで開催される。佐藤さんに聞いた。
*  *  *
 最初、作品を目にしたとき、(ずいぶん人里から離れたところだなあ)と、思ったのだが、意外にも、撮影地は北海道小樽市内の東西に広がる海沿いのエリアという。
 あの小樽の街のすぐ近くに、こんな場所があるとは、まったく知らなかった。
 小樽の東にある「張碓(はりうす)」と、西の「忍路(おしょろ)」という地名は、もともとアイヌ語で、それぞれ「食料・群生する」「湾」を意味するらしい。
■秘境、張碓駅
 昔はニシン漁で栄えた場所で、昭和の時代までニシンの番屋が並び、漁の時期になると目の前の海に網が仕掛けられた。その名残なのだろう。古ぼけた小屋が並ぶ、なんとも寂しげな風景が続いている。
 佐藤さんに撮影を始めたきっかけを聞くと、「かつて張碓にはJRの駅があったんです。時刻表に載っているんだけれど、電車が一本も止まらない駅」と、不思議なことを言う。
「えっ、それはどういうことですか?」と、たずねると、「海水浴客がそこで下りて、乗って帰る。そういう駅だったらしいです。だから周辺にまったく道がない」。 ずいぶん風変わりな駅だと思ったら、いわゆる「秘境駅」として、マニアの間では有名だったらしい。
 昔は夏期のみの臨時駅だったが、乗降客がいなくなると通過駅となり、15年前、廃駅になった。
 張碓駅があったという場所は、「張碓カムイコタンの断崖」と呼ばれる何キロも続く巨大な黒い崖の下にあり、「海には崖から落ちた岩がゴロゴロしているんです。冬に行くと、岩がぶつかるような音と、グォーっと、海鳴りがすごい」。
 駅前にあった砂浜は、いまはもう痕跡さえも見当たらないという。
■脳裏にこびりついた景色
 そんな壮絶な景色に出合ったのは十数年間。たまたま訪れた冬の北海道でのことだった。
「札幌から、ちょっと小樽でも行ってみようかと思って、電車に乗ったんです」
 電車は市街地を抜け、雪に覆われた石狩平野を走っていく。
 ところが、銭函(ぜにばこ)駅を過ぎたとたん、「いきなり、という感じで」、荒々しい日本海の景色が車窓から飛び込んできた。
「海の色や波がすごかった。そこに恵比寿島という大きな岩があるんですけど、その存在感にも圧倒された」
 その景色が「どうしても気になった。それで撮り始めたんです」。
 その後、何十回も北海道に通うようになるとは、思いもよらなかった。
 訪れるのは主に冬から春にかけてで、「毎年、12月から3月まで、毎月撮りに行ってました。12月中旬くらいから雪が降るので、そのころから行くことが多い。3月は雪どけで、(ああ、春だな)と感じるときもあれば、ものすごくふぶいているときもある。年によってばらつきが大きいですね」。
 迫力ある絵づくりには天気は悪いほうがいいそうだが、「帰るときに飛行機が飛ばないことがよくあるんです。何度か陸路で帰ったことがありました」。■手からの水蒸気でカメラが結露
 撮影は、昼食をとるタイミングで電車やバスで移動する以外、朝から夕方まで歩き続ける。そのため、しっかりとした防寒対策が欠かせないという。ダウンを着込み、足は「ずぼっと雪に入っても大丈夫」なように、膝まで覆うスパッツを身につける。
「ただ、いちばん最初に行ったころ、帽子をかぶっていなかったんです。そうしたら、歩いているうちに足が動かなくなった。(あれ?)と思って。いちばん近い駅まで1キロくらい足を引きずりながら行った。そこで、ほっとして、(ああ、別になんともないや)と、思ったんです。でも、後で聞いたら、『寒いときは脳を守るために血液が頭に集まる。それで、足が動かなくなる。頭はちゃんとしないとダメだよ』と言われて。それからは帽子をかぶるようになりました」
 カメラは雪が付着しないように、あらかじめビニール袋をかぶせておく。レンズはズーミングする部分から雪が入り込まないように、プラスチックのカップを半分にカットしたものを重ねてテープでとめる。
 カメラは相当冷たくなるので革の手袋をつけて操作する。
「問題は、手のひらから意外と水蒸気が出るんですよ。それで、カメラのビニール袋の内側が結露しちゃう。仕方がないので、手術用の白い手袋をして、その上に革の手袋をして、水蒸気が出ないようにしています」
■「3月はもう暖ったけえだろう」
「張碓シリーズ」の作品を最初に発表したのは2015年。
 これまでは冬の写真を展示してきたが、今回は春の写真で構成した初の個展という。そんなわけで、春の空気が感じられるように、比較的天気のよい写真を選んである。
 出だしの写真は雪に埋もれた海の家。青く塗られた看板には二羽のカモメが舞っている。そのすぐ右には線路が走り、左には小さく写った海が陽光に輝いている。
 電車から写した写真には、茶色く汚れた窓の向こうに大きな岩の塊のような恵比寿島が見える。波打ち際まで雪が残り、北国の春を感じさせる。
 張碓周辺の海岸には漁業用と思われる小屋や海の家が線路と海の間の細長い土地に点々とするほか、いまにも崩れそうな家が写っていて、郷愁を誘う。
「ここには線路沿いに少しだけ入れるんですよ。それくらいしかもう道がない。その上は山になっちゃうので、ほんとうに狭い場所」
 忍路に近い蘭島(らんしま)駅から写した風景の奥にはこんもりとした雪山が写り、人里から遠く離れた場所のように感じられる。
「この駅にはだるまストーブが置いてあって、冬の間はそこが唯一、温まれる場所なんです。でも、3月になるともう撤去されてないんです。『3月はもう暖ったけえだろう』って。いやいやまだ寒いから、という感じなんですけど(笑)」■新潟とも、東北とも違う魅力
 忍路半島の中央には漁港があり、切り立った崖に囲まれた入り江の奥には雪に覆われた積丹半島が見える。
「ここが忍路半島のいちばん先端で、ここから先は歩いても行けないです」
 その岸辺には1908(明治41)年に設置された北海道大学の施設、忍路臨海実験所があり、薄いえんじ色の屋根の瀟洒な建物は、スタジオジブリのアニメ映画「思い出のマーニー」の舞台をほうふつとさせる。
 これまで多くの写真家を引きつけてきた雪の日本海沿岸というと、青森県と秋田県を結ぶJR五能線沿いの風景が思い浮かぶのだが、この張碓周辺の風景は鉄道と海のほか、かつてニシン漁で栄えた集落の人のにおいが感じられ、とてもフォトジェニックな光景を生み出している。
「人はいないけれど、人の気配は写るかな、と。同じ雪国なんですけれど、新潟とも、東北とも違う。ここにはそういう魅力があります」
(文=アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】佐藤圭司写真展「張碓から忍路へ-春-」
RED Photo Gallery 6月7日~6月20日
https://news.yahoo.co.jp/articles/a90399fd9e8312182773566cdbe79737c656103c

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