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ッシュ大統領の一般教書演説は内容よりも後ろに座るチェイニー副大統領とペロシ下院議長の不自然な動きが違和感となって画面から伝わり、演説そのものが真実味に欠けて聞こえ気の毒な感じさえした。残された任期が思いやられる。
私にとっては実利的な視点からではあるが世界がどう動くのか、その底流に流れるものは何かずっと考えていた。私が現時点で行き着いた仮説は、ソ連崩壊以降グローバル資本が世界を動かしてきた、その傾向は今後更に強まる。その中で2007年は「辺境の反逆-テロとの熱戦」から新たな段階に入り、「資源帝国主義的との冷戦」に移行するというものである。
イラク早期撤退が前提となった
先ずは現状分析から。ブッシュ大統領のイラク新方針は散々な評価を受けているが、右から左まで議論の前提はWhatからHowに移った。米軍のイラク撤退は議論の余地が無く、それをどう実行するかに議論が移った。それはとりもなおさずイラク撤退後の世界をどうしたいかの議論にかかわって来る。
ニクソンがベトナム撤退を公約して大統領になると、無責任で性急な感情的即時撤退論に悩まされたことは歴史の事実だ。既に信頼を失ったブッシュ大統領の場合、新方針は必要以上に冷たい反応を受けているように感じる。一体戦後世界をどうしたいのかの議論が無く、ただ撤退しろという声が強いように聞こえる。しかも今後米国内外の状況は悪化しそうだ。
今後2年間、政策が2箇所から発信される
ヒラリー・クリントンの大統領候補宣言やオバマ上院議員など有力候補の動きが早くも活発になったのは現職大統領が国民と議会の信を失ったのが一因だからだ。今後2008年大統領選に向けてイラクをどうするのか代案が具体的に議論されることになる。与党の共和党候補も不人気な新方針から距離を置かざるを得ない状況だ。
米国が大統領選に向けて国中がいかにして撤退するかHowの議論に没頭し、そのどれとも異なる政策のブッシュ政権がレームダック化するのは決して好ましい状況ではない。従来から行儀の悪い行いを抑制させられてきた国がこの状況を利用するのは間違いない。結局のところ悪口を言いながらも世界は米国に警察官の役割をおわせ、パックスアメリカーナの恩恵をこうむってきた。
この記事の目的は、このような状況にあってイラク後の世界は今までのテロとの戦いの延長線上にはない新たな視点が必要であり、既に新たな段階に入ったという仮説を紹介することにある。先ずは冷戦後の世界がどう変化してきたか簡単に要約する。
グローバリゼーションが全ての始まり
ベルリンの壁の崩壊に次いでソビエト連邦解体、世界は民主主義と資本主義の勝利を宣言した。以後資本主義経済と民主主義が世界を圧倒するルールになる予測は根拠の無い希望であった。世界を駆け巡ったのは資本のグローバル化のみであった。全てはグローバリゼーションの深化の過程で発生した。
その過程を、9.11を境にその前後を「米国一人勝ち」と「辺境の反逆期-テロとの戦い」に分けて説明するのはごく自然な見方であるといえる。その底流にあったのはグローバリゼーションであり、更に厳密には資本のグローバリゼーションであった。
第1段階: 米国一人勝ち
ソビエト連邦解体後、唯一のスーパーパワーである米国のいわゆるパックスアメリカーナのもと、資本の移動の制限が一気になくなった。資本集積があるレベルに達するとそれ自体が常に効率を追及するようになる(例えば資本市場における機関投資家の行動基準)。集積された資本は最も効率よく自己増殖可能な方法でのみ投下され運用される。
同時にインターネットの普及が冷戦終了後低くなった国境を軽々と飛び越え資本移動を瞬時に可能とし、グローバリゼーションが深化、世界市場の一体化が進み世界経済は新たな時代に入った。この過程で世界市場は資本集積の偏在が加速度的に進行した。富める国は益々富め、貧しい国は益々貧した。
グローバル市場は実質米国資本主義ルールからスタートした為、90年代に明らかに「米国一人勝ち」となった。米国とともに遅れてそのやり方を習熟した日欧が恩恵をこうむり、一方アジア諸国や南米・ロシアは古い体質を温存したまま恩恵を手に入れようとし通貨危機の手痛い教訓を学ぶ事になった。
第2段階: 辺境の反逆-テロとの戦い
今世紀に入り危機を克服したアジア諸国は速やかに立ち直り、グローバリゼーションの果実を再び手に取り戻し始めた。通貨危機から教訓を得たBRICsもまた徐々にグローバル・サプライチェーンに場所を得て経済成長の道を辿りはじめた。
その中で世界の繁栄から取り残されたアラブ諸国は経済的辺境に追いやられた。イスラム原理主義者達は、市場原理主義とともにもたらされる民主主義文化にアラブの危機を感じ、グローバリゼーションのシンボルである米国に9.11自殺攻撃を仕掛けた。私には「グローバリゼーションの辺境からの反逆」であり、ハンチントンは「文明の衝突」と予測、米国は「テロとの戦い」を開始した。
米国は直ちにテロ実行犯とテロ計画の背後にあったアルカイダの拠点アフガニスタンを攻撃しタリバン体制を追放し、選挙に基づく民主主義体制を確立した。その後、米国はアルカイダと関係がなく根拠のない大量破壊兵器保有を理由にイラク開戦に踏み切り、テロとの戦いは新たな展開の中で米国は泥沼に陥った。(続く)■
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