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年金情報流出の教訓

2015-08-21 14:56:55 | ニュース
日本年金機構の情報流出問題で遅れていたマイナンバー法は、共通番号(マイナンバー)と基礎年金番号の連結を半年から1年延期することで与野党が合意する方向に向かっており、改正案が今国会で成立する見通しになったと今朝方報じられた(日本経済新聞8/21)。一時は政局の材料にされそうだったが、マイナンバー導入後は国民全体の利便性が大きく改善すると期待され大変結構なことである。

年金機構に関わらず情報流出問題が続出して以来、当初の問題点の把握とその対応が余りにも拙劣なので私はがっかりしていた。問題発生時に野党やマスコミは情報を盗んだ犯人よりも、まるで管理責任者が犯人かのように追及に熱中した。その情報を用いたと思われるサギ電話を受けた老人のニュースを被せて連日のように流した。野党は報道に連動して本来国民の為のマイナンバーの導入を管理責任を理由に遅らせようとした。

おいおい、違うだろう。なんかおかしいぞ、という声が上がらないのに私は違和感があった。確かに調査報告書が指摘したように、年金機構にはITの知識が全くない幹部や現場の職員と丸投げ体質の官僚的組織の問題があったろう。全くお粗末だ。だが、その前に最も非難されるべき「犯人」がいる。情報流出の被害は民間企業も例外ではなく、最先端を走る米国政府にまで被害が報告されている世界共通の問題なのだ。

一体誰が犯人か突き止め、外部からの攻撃に対応出来る強いシステムを開発するのは国家的最優先で取り組むべき問題なのだ。しかし、予想に反して唯々管理責任を追及する野党やマスコミの報道ばかりが目についたように思う。国全体が何が大事か見当違いのねじ曲がった方向に進んでいる。こういう時国民を正気に戻らせるはずの政治家や専門家の声は小さく、マスコミのポピュリズム報道ばかりが目についた。

これでは国の重要な制度に脆弱性が残ると私は懸念した。これほど極端ではないが、問題の核心から外れたポピュリズム報道や政局狙いの動きが他の件でも時々散見されるのは実に残念だ。それが民主主義のプロセスであり良い結果に結びつく場合もたまにはあるが、大抵は最も重要な対応がないがしろにされまま何年か後に国民がコストを払う場合が多い。それを又マスコミが非難するという笑えないケースもあった。

「失われた20年」の間に他国は出来たのに日本だけ出来なかった例が沢山ある。私が最も引っかかっているのは「反グローバリズム」を説いた学者達の責任だ(今でも色々な後ろ向きの発信を続けている)。日本の中にいると分かりにくいが、その間にグローバリゼーションの恩恵を受けた新興国も先進国も急成長し日本だけ地盤沈下した。我が国が米国の影響力低下などと言うのはいささか面はゆい、その間に日本はもっともっと低下した。

先に投稿したように、実はマイナンバーは更に遡ってもっと昔から世界に遅れていた。新興国にすら遅れている。更には情報流出の背後には中国やロシアの影が指摘される一方、米国も単なる対策以上に凄いヒト・モノ・カネをかけている。日本の技術流出もありうる。我が国も最優先で取り組むべき事項と与野党で合意して対応するのが最善の教訓であるべきだと思う。年金機構の事件からそんな発想が出てこない日本はもう難病だ。だが、幕末に田舎の下級武士が支配階級より広く世界を見て危機感を持ち維新を実行した。悲観しても始まらない。■

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