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景気回復後の恐ろしい現実

2009-05-26 17:05:56 | 社会・経済

曾有の経済危機が底を打ち回復に向う兆しがちらほら語られるようになった。一方で二番底の前の上昇に過ぎないという警告も聞かれる。しかし、目の前が底なし沼のように見えた3月初め頃から比べれば、悪材料が出尽くし徐々にリスク許容度が高まってきた雰囲気を感じる。

今後紆余曲折はあっても大筋経済回復への道を辿ることになるだろうと私も思う。しかし、回復への道はどこに続くか考えると、私は容易ならざるものを感じる。どこに向って回復していくのか、リーマンショックやサブプライム事件前か、小泉改革時代以前か。失われた10年時代か。例によって、誤解を恐れず大胆予測してみる。

現実はもう昔には戻れない。ずっと以前に「好景気を実感できない訳」(2006/12/15)と題して、グローバリゼーションの中で労働分配率が改善しない構造的な仮説を紹介したが、今度は「景気回復しても改善しない失業率」というタイトルで記事を書くことになるだろう。

雇用は景気の遅行指数である。景気回復の前半は残業や外注を増やして需要増に対応する為、本格的な雇用は半年遅れというのが従来のパターンであった。今回はかつて無い速さで生産調整を実行したので、棚卸を適正レベルに戻し生産再開に要する時間はそれ程かからないはずだ。

だが、今回は違う。需要が戻ったとき企業がどこで生産を増やすかは別問題だ。最近、シャープは液晶テレビ生産設備を亀山工場から中国に移していくと報じられた。亀山工場で作られたテレビは「亀山モデル」として販売され、地方自治体との連携で国内回帰を果した物づくりのシンボルになっていた。

シャープに限らず今回の世界同時不景気で大打撃を受けた自動車やディジタル家電など日本の代表的な輸出産業は、昨年後半からの雇用調整を「派遣切り」といわれ国を挙げて大バッシングを受けた。逆に、私は日本を牽引してきた輸出産業がここまで追い詰められたかとショックを受けた。

民の雇用を守る責任を企業に押し付けることは出来ない。それは政治が解決すべき問題である。だが、メディアと政治家は安直に企業を悪者にして責め立てた。お茶の間で人気の経済評論家が、巨額の内部留保があるのに派遣を切るのは何事かと、無知丸出しで筋違いの非難したのにはもう救いが無いと呆れたが、現実は国全体をパニックが覆っていた。

私はこの筋違いのバッシングがやがて大きなツケを払うことになると「日本経済が世界最悪の打撃を受けた訳(続)」(09.02.23) http://blog.goo.ne.jp/ikedaathome/d/20090223 で警告した。その部分を取り出して、もう一度紹介したい。

推定原因3: 悲観大国日本 ・・・
派遣に対する性急な規制論が、最悪事態に展開する恐れがある。注意して経済欄を見れば、経済危機を機会に日本工場を整理縮小する一方で、海外に生産を移行する記事が散見される。1件1件の扱いは小さくとも、このトレンドが続けば数年後の雇用に巨大な影響を与える。
今回の派遣切り騒動で輸出産業の経営者の多くは、国内生産調整の下方硬直性リスクに懲りたはずだ。悪人扱いされてはかなわない。数年後のビジネス環境、消費と生産の場所、輸送等の風景がどうなっているか、転換点で経営者が何を考え、何が決断の後押しをしたか、注目したい。

注意深くニュースを追っていくと、多くの経営者は既に決断しルビコンの川を渡ったように感じる。彼等は決して海外生産シフト等とあからさまな言葉使いはしない。消費地での生産とか、為替変動対応、世界レベルでの部品調達先を含めた効率化と再編等と言うが、殆どの場合それは海外生産増で需要増に応えることを意味する。

それを非難することは出来ない。何度も紹介したように自動車産業の利益の大半は海外であげている。海外市場で競争に勝たないと生き残れない命がけの戦いになる時、経営者は最善の手は何かということしか頭に無い。日本に開発研究やモデル工場とかを残すとかは、それが海外で勝てるベストの判断かどうかだ、生き死にの判断に綺麗事など言ってられないだろうと思う。

財部誠一氏は現状を「日本の大手製造業は日本という国に愛想を尽かし始めた」と憂慮しているが、私は上述のように既に決定事項であると思う。日本を牽引し国民に富をもたらした輸出産業は、最早日本企業ではなく世界企業であり、彼らが何時まで競争力を保ち給与と税金を運び続けてくれるか、景気回復の道を辿りながら今後明らかになってくるだろう。■

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