かぶれの世界(新)

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私的・黒田ショック

2013-04-06 18:32:50 | ニュース

 日銀の金融政策決定会議で導入を決めた新たな金融政策は、市場が事前に予測していた金融緩和政策を遥かに上回るものだった。政策の誘導目標を金利からマネー供給量に切り替え、マネタリーベースを2年間で倍増させる(270兆円)という誰もが予想しなかった大胆なものだった。

 市場はサプライズに対して過剰に反応した。一昨日、昨日の株価と債券市場は2か続けて乱高下を続け、未だにサプライズをきちんと咀嚼できて無いように感じる。この週末は頭を冷やす絶好の休みになるだろう。私は株をとっくに止めたので、この1ヶ月の投資残高は大きな動きをしていない。それが、チョット悔しいけど冷静でいれる訳かもしれない。

 という事で騒ぎから取り残された冷静な私が、今回の日銀サプライズ(もしくは黒田ショック)の印象を紹介する。最も印象深いのは黒田新日銀総裁のリーダーとしての強い意思だ。私がそう感じた彼のコメントを幾つか紹介する。従来の日銀の緩和策は「戦力の逐次投入」と厳しく非難し、「現時点で必要な措置は全て講じた」と言い切った。前任者への強い批判は異例だが、それだけ全ての責任を受け止め退路を断った覚悟の発言だといえる。

 私は「戦力の逐次投入」という言葉に強く反応する傾向がある。若い頃に第二次世界大戦に関る本を多読した結果だと思う。以後の戦局を左右する鍵となる戦いで、日本軍トップが兵力の損失を恐れ小出しに戦力を投入し勝利の機会を失い、結果的に多くの戦死者を出し敗戦に導いた(最終的に勝てる戦争ではなかったが)。戦争開始の真珠湾攻撃からこの臆病で官僚的なな意思決定の連続が、不必要に戦局を悪化させ兵を無駄死にさせたという思いがあるからだ。

 その点、黒田氏の意思決定は極めて明確で一点の曇りもないように感じる。「一点の曇りもない」とは意思決定の個人もしくは組織責任が曖昧な官僚的発想に基づくものではないということだ。日本では「戦力の逐次投入」的意思決定をするリーダーが圧倒的に多く、黒田氏のようなタイプのリーダーは日本では稀有だ。そこに新鮮さを感じた。

 私は会社勤めした時身につけた習慣で、交渉相手の立場になり何故そう主張するのか、私がそう言う時はどんな事情があるだろうか、等など考える。未だにニュースに出てくる人物についてついついそういう目で見る。そんな目で見た時、黒田氏のインタビューでの発言にはリーダーとしての強い信念と覚悟が感じられた。政策内容と結果はともあれ、彼のスタイルは滅多に見ない。

 私自身を振り返ると私は優秀な中間管理職ではあっても、優秀なリーダーではなかったと改めて思った。民間会社の一部門の運営を預かった程度でそもそも比べ物になら無いが、その程度でも確かな信念は無かったし、疑いながら少しずつ手をつけて失敗をしないように注意深くやった。殆ど意思決定しないと同じだった。今でも後悔の気持ちがある。

 だからといって私は日銀の新金融政策が良いとは言ってない。不安が残る。とりあえず市場は好感したが誰もが高く評価しているとも思わない。市場は身勝手だ。黒田ショックは強烈だったが、いつか麻痺してもっと強いサプライズを要求するようになる。黒田氏はやるべき事は全てやったというが、市場は薬が切れる前に次の強い薬を早くも期待している。

 そんなことありえないというが、私は十分可能性があると思う。世界は日銀サプライズを注意深く眺め、自国に有利な金融政策を打ってくる。金融緩和競争になる可能性は十分ある。一方的な円安が許されると思わないほうが良い。以前から指摘されているように、安倍政権の成長戦略の重要な仕掛けの規制緩和と財政改革が信任を失えば、日銀サプライズは逆効果となって失敗を拡大し地球の裏側のギリシャになるかもしれない。だが、黒田氏にはそこまでの覚悟も感じる。■

コメント (1)
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