かぶれの世界(新)

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周回遅れの読書録09春

2009-05-30 17:08:33 | 本と雑誌

このところ論争が続いている「格差」の底辺と上澄み部分の両方について読み始めた。こういう本が古本屋に並ぶようになったというのも時代を感じる。是非読書をお勧めしたい本は今回それ程ない。強いて言うなら「希望格差社会」(山田昌弘)が若者の窮状を構造的に解説したもので、見方を変えて考えさせてくれる「格差と希望」(大竹文雄)をあわせて読むといいかもしれない。

一方、上澄み層についてはまだ読み始めたばかりで詳細に議論するにはもう少し時間が必要だ。格差社会の議論をするためには両端にいる層を同じように知ることにより、より議論が深まり理解が進む気がする。次回も続けて紹介したい。

2.0官邸崩壊-安倍政権迷走の1年 上杉隆 2007 新潮社 当時報じられた断片的なニュースに水面下の情報を結び付けて、安倍政権崩壊ドラマを生い立ちから政権誕生と歯車が狂い初め迷走する様子を描いたもので、一遍の政治ドラマとして読めば面白い。私は、自民党が政策でなく、勝ち馬に乗った形で安倍氏を総裁に選んだ時点で半ば運命が決まったと思うのだが、そういう根っこの部分の記述はない。

(2.0)国防 石破茂 2004 新潮社 国を守るとはどういうことか易しく解説した入門編。一昔前の社会党など左翼イデオロギー色が無く、我国の専守防衛の中で国防のあり方をよく説明している。国連やシビリアンコントロールの考え方は共感するものがある。最近我国を揺らした北朝鮮のミサイル実験対応のMD等、興味あるテーマもある。

2.5+希望格差社会 山田昌弘 2004 筑摩書房 数年前評判になり今も引用される、若者の窮状を日本が「リスク化した社会」に構造変化したとの視点から説明したもの。将来に希望が持てない若者が98年を境に急増した過程と処方箋を説いたもの。感情論に走らず論理的にアプローチし、最後の対応策の部分は今でもポイントをついているが、もっと詳細な議論が欲しい。

2.0+格差と希望 大竹文雄 2008 筑摩書房 近年話題となった格差問題を色々な角度から議論し、テレビ等で報じられた感情論から論理的に考え、判断できる材料を読者に与えている。

2.0+ハードワーク Pトインビー 2005 東洋経済 英一流紙のコラムニストが身分を隠して低賃金労働者の生活をした生々しい体験記。サッチャー以降の民営化に全ての責を問う考察は底が浅いと思うが、女性が低賃金労働者の7割を占め利用されている状況を描いている。又、一般に言われる教育訓練では問題は解決されないというのは、実体験と合せ説得力がある。

1.5+金融偽装 伊藤博敏 2008 講談社 リーマンショックで金融メルトダウンが起こる半年前に書かれたものだが、期待したサブプライム問題の掘り下げ不足は物足りない。バブル破裂以降の金融事件、特にみずほが1枚かんだ三流プレイヤーの欲がらみのドロドロは小説みたいだ。

1.5+新世代富裕層の研究 野村総研 2006 東洋経済 金融資産1-5億円を持つ富裕層81万世帯(2005年)のうち団塊世代以降の新世代富裕を、資産形成経緯で3分類し、夫々の投資行動パターンを分析し金融機関の対応を説いたもの。旧世代に比べ自ら決めていく姿が興味深い。

1.0+お金の現実 岡本史郎 2005 ダイヤモンド社 お金持ちになりたければ、先ずは基本に戻って節約して貯蓄しなさい、というところから始め、投資の話よりお金とは何かを易しく説いたもの。

2.0-幼児化する日本社会 榊原英資 2007 東洋経済 現代は何でも黒か白か二者択一で判断する社会に幼児化したと説く。教育問題やマスメディア等の問題指摘は大いに共感するが、大元にある官僚の見識や倫理観の欠如に触れず、他を非難する姿勢が本書を安っぽくしている。

1.5+正しいこと Lセグリン 2004 ダイヤモンド社 98-02年にNYタイムズに掲載された会社生活の色々な局面における倫理的な考察、正邪の線引き等について筆者の考えを述べたコラムをピックアップしたもの。テーマが善悪で議論できないような性格である為か、存外に歯切れが悪く物分りが良い内容のような気がする。

2.0人間と気候 佐藤方彦 1987 中公新書 人類が地球に生まれ熱帯から様々な気候の土地に移り住み、そこで進化を遂げていく過程と、現代の人類に見られるその痕跡を網羅したもので興味深い。本書をよりよく理解するのには人体の専門知識が必要で、残念ながら私にはない。

2.0+何故、「あれ」が思い出せなくなるのか DLシャクター 日本経済新聞 記憶が無くなる、間違う、薄れる、忘れる、捏造するなどの7つのパターンを記憶の構造を心理学的な考察から説いたもの。専門的な記述をなくしたというが、それでも難解。スポーツ選手の悪夢体験など興味ある部分も多い。個人的には記憶と老化の関係にも迫って欲しかった!?

2.0手入れ文化と日本 養老孟司 2002 白日社 東大退官後各地で講演する人気の随筆家、解剖医だが宗教から金融まで切味良く所見を披露する。講演集の寄せ集めの重複は少し気になる。男女差を脳の仕組から解説するさわりは近年辞任したハーバード大総長を想起させるが、日本語の特徴、里山の豊かな生命系、死の定義等々、軽快な切り口は読んでいて楽しい。

1.5凶刃 藤沢周平 1994 新潮文庫 用心棒日月抄の4作目で、主人公が40代半ばになり、藩の裏組織の暗闘を正す娯楽作品。人生の秋に差し掛かった主人公の姿が妙に生々しい。この書評は娯楽作品としてではないことを改めて断っておきたい。

今後も格差社会の両端にいる層を理解する為の本をもう少し読んで、問題の全体像を俯瞰してみたいと思っている(出来れば)。

もう一つ、民主主義というタテマエを具体的にどう政治に反映していくのか、それがイラク戦争とか世界大恐慌とかの現実の社会でどう政策が作られていったのか、庶民はどう政治に関っていったのか、どうあるべきだったか、特に米国と日本の対応を比較するような古本を物色している。3ヵ月後は衆院選、場合によっては政権交代と、間違いなく「政治の季節」になっているだろう。■

コメント (3)
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